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2023.11.04

“君”と“僕”の出会いを喜び合い、fhána とともに“憂鬱の向こう側”へ――「fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE “There Is The Light”」レポート

“君”と“僕”の出会いを喜び合い、fhána とともに“憂鬱の向こう側”へ――「fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE “There Is The Light”」レポート

fhánaとふぁなみりーの光に溢れた未来、10周年の先に待っているもの

「いやあ、怒涛ですね」(佐藤)、「びっくりしたよね?」(towana)と語るメンバーたち。なんでもセトリ会議でやりたい楽曲候補が30曲以上もあったため、できるだけ多くの楽曲をやるために今回はメドレーにも初挑戦したという。そして佐藤は、この10年の活動のうち数年はコロナ禍によりライブでファンと直接会えない、もしくはファンは声が出せない時期があったことを振り返り、「そんな時期があったからこそ、ふぁなみりーのみんなと作ったこの曲を演奏しようと思います」と語る。その楽曲は「Choir Caravan with fhánamily」と「Ethos」。前者はコロナ期間中に、ファンから募集したコーラス音源を重ねて作られた楽曲だ。その分厚いコーラスに包まれた荘厳な幕開けに連なる「Ethos」では、不安の闇を切り裂くような光の演出、そしてtowanaの真っ直ぐ突き刺さる声の力が、希望の未来を見せてくれる。特にラスサビ、赤い光のアラートのような明滅から、一気に真っ白な光に包まれる流れは清々しいほどの解放感を感じさせるものだった。

そしてキーボードの印象的なイントロが奏でられた瞬間、客席から歓喜の声が上がったのが「君という特異点」。彼らのメジャー1stシングル「ケセラセラ」のカップリングに収められた、それほど頻繁に披露されているわけではないが、ライブでのファン人気の高い楽曲だ。虹色のライトがステージを照らすなか、爽やかだけどエモーショナルな、fhánaらしい楽曲が会場の気持ちを1つに高めていく。ラストはtowanaがフラッグを手にして、みんなで「ラララ~♪」と歌いながら、今ここで出会えた喜びを確かめ合った。そして、それまでの華やかな照明演出とは違って、必要最低限のシンプルなライトが逆に楽曲の世界観を抽出してみせたのが「The Color to Gray World」。それによってtowanaのイノセントな歌声もより強調された印象で、徐々に力強く色づいていく表現も含めて、心が洗われるような名演だった。

長い旅の果て、この日のライブの本編ラストを飾ったのは、「whight light」。彼らの大きなライブの大切な局面で披露されることが多い、ふぁなみりーにとっても特別感のある楽曲だ。佐藤によるピアノのイントロから始まり、鈍いギターサウンドが空気を震わせると、ステージの背面に備え付けられたライトが煌々と燈り始める。あまりにも強く白い光に、ステージと演者の区別もつかなくなるような、すべてがホワイトライトに飲み込まれてしまったような世界。そのなかで淡々と、あるいはエモーショナルに紡がれる音の波。閃光のように輝くtowanaの歌声。音と光の粒子に包み込まれたようなサイケデリックな感覚に、彼我の境界も溶けていく。ラストは再び佐藤が奏でるピアノの音だけになり、深い余韻を残して白い光は消失した。

アンコールは、fhánaの未来を示す楽曲からスタートした。それは「Last Pages」。12月22日にリリースされるアドベンチャーゲーム「ONE.」のEDテーマとして制作された、ライブ初披露となる彼らの新曲だ。透明感のあるシンセサウンドが期待を高めるなか、夜明けのように白んでいくステージにメンバーたちの姿が浮かび上がり、スクリーン前面の紗幕に投影されたリリックビデオと共に、ドラマチックかつピュアな歌がfhánaの新しい物語のページを開いていく。その後のMCで佐藤は「ONE.」への思い入れの強さについて説明。fhánaは名作ゲーム「CLANNAD」のファンだった佐藤、kevin、yuxukiが意気投合して結成されたことで知られるが、「ONE.」の原作ゲームとなる「ONE 〜輝く季節へ〜」は「CLANNAD」のメインスタッフの麻枝 准や、fhánaがEDテーマを担当したTVアニメ『天体のメソッド』に原案・脚本で携わった久弥直樹がシナリオを手がけた作品であり、佐藤としても今回のタイアップはとても感慨深いものなのだと語る。そしてここで同ゲームのOPテーマとなる新曲「永遠という光」も初披露。こちらは仄かにセンチメンタルな香りが立ち昇りつつも、明るく美しいメロディーが際立つエモーショナルなナンバーに仕上がっており、まさに“光”を感じさせるような清廉さが感じられた。

ここで紗幕が上がり、fhánaのメジャーデビュー前からの持ち曲である「光舞う冬の日に」を歌唱。この楽曲もライブに足繁く通うふぁみなりーにはお馴染みのもので、特にサビでtowanaが指で星の形を描く振付は、多くのファンが同じ動きをして気持ちを1つにしていく。しかもこの日だけの特別な演出として、間奏でステージの上空から雪が降ってきて、towanaは手をかざして舞い散る雪を受け止める。fhánaとふぁなみりーの思い出に、また美しい1ページが刻まれた。

その後のMCで、彼らは12月20日にメジャー1st EP『Beautiful Dreamer』をリリースすること、そして同作のリリースを記念してバンド初のアジアツアー(韓国・台湾・東京の3公演)を行うことを発表。EPにはアンコールで歌われた「永遠という光」「Last Pages」を含む6曲が収録されるとのことで、まさにfhánaの新しい未来を約束するものとなる。そしてメンバーそれぞれ、「こうやってライブに来てくれる皆さん、応援してくれる皆さんがいなければ、10年迎えられなかったので、本当に感謝しかないです」(kevin)、「この居場所を見つけられたことが、私の人生にとって宝物だし、“True Rute”だなって思います」(towana)、「今日は10周年の記念でしたけど、15周年、20周年、30周年も、こうして合流して、共に祝いあいましょう。僕たちfhánaとふぁなみりーの旅路に光あれ」(佐藤)とファンに感謝の言葉を伝えると、いよいよこの日の最後の楽曲へ。ラストは「Outside of Melancholy 〜憂鬱の向こう側〜」。冒頭で記したように、彼らのライブには欠かせない楽曲であり、晴れやかなメロディと歌声に乗せて届けられるのは、この広い世界でお互い巡り合えたことの奇跡だ。サビではバンドメンバーや客席も一緒になってジャンプして、誰もが“君”と“僕”の出会いを喜び合う。fhánaの音楽が連れて行ってくれるのは“憂鬱の向こう側”であることを、そして彼らの行く先にはたくさんの光が溢れていることを証明して、10周年記念ライブは大団円を迎えた。

<セットリスト>
1. Outside of Melancholy 〜憂鬱の向こう側〜(There Is The Light Ver.)
2. World Atlas
3. コメットルシファー 〜The Seed and the Sower〜  *『コメット・ルシファー』OPテーマ
4. tiny lamp  *『ぎんぎつね』OPテーマ
5. Runaway World  *『逃走中 グレートミッション』OPテーマ
6. いつかの、いくつかのきみとのせかい  *『僕らはみんな河合荘』OPテーマ
7. ケセラセラ  *『有頂天家族』EDテーマ
8. true end
9. 現在地  *作曲:yuxuki waga
10. little secret magic  *2ndアルバム『What a Wonderful World Line』収録
11. メドレー(虹を編めたら ~ Hello! My World!! ~ ワンダーステラ ~ GIVE ME LOVE)
12. Relief  *2ndアルバム『What a Wonderful World Line』収録
13. 愛のシュプリーム!  *『小林さんちのメイドラゴンS』OPテーマ
14. 青空のラプソディ  *『小林さんちのメイドラゴン』OPテーマ
15. divine intervention  *『ウィッチクラフトワークス』OPテーマ
16. Choir Caravan with fhánamily ~ Ethos
17. 君という特異点  *1stシングルのカップリング
18. The Color to Gray World  *2ndアルバム『What a Wonderful World Line』収録
19. whight light

EN1. Last Pages  *『ONE.』EDテーマ
EN2. 永遠という光  *『ONE.』OPテーマ
EN3. 光舞う冬の日に
EN4. Outside of Melancholy 〜憂鬱の向こう側〜


●ライブ情報
fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE “There Is The Light”

開催日:2023年10月7日(土)
会場:東京LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)

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