INTERVIEW
2023.11.03
声優でアイドルの芹澤 優が、10月18日に4thシングル「JUNGLE FIRE feat. MOTSU」をリリース。“芹澤 優 with DJ KOO & MOTSU”での「EVERYBODY! EVERYBODY!/YOU YOU YOU」から約2年半、久々にMOTSUとタッグを組んだ表題曲は、彼がメンバーだったm.o.v.eが主題歌を担当し続けていたアニメ『頭文字D』の後継作であるアニメ『MFゴースト』のOPテーマ。“伝統”と“新風”を絶妙なバランスで併せ持つユーロビートに仕上がった本作は、YouTubeでのMV公開から約20日で100万再生を突破するなどアニソンファン以外の間にも話題を呼んでいる。今回は、そんな2人の対談をCDリリース直後に敢行。制作の裏話からリリース後の反響まで、様々な話題について語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
――まずは、この曲への反響についてどのように感じられているかをお伺いできますでしょうか。
芹澤 優 いやぁ、ヤバいですよね!?これはもう、本当にMOTSUさんのおかげです。私はこれが4thシングルになるんですけど、こんなに「色んな人に聴いてもらってるな」と感じるのは初めてなんですよ。もちろんファンの皆さんからも「最高!」みたいな反応をもらえていますけど、私のことを初めて知ってくれたであろう人からの「え、良いじゃん!」みたいな反応も多くて。すごく嬉しい広がりを感じています。
MOTSU 今回はセリコ(=芹澤)を『頭文字D』のファンの人たちに紹介するというミッションもあったので、反響が上々のようで本当に嬉しいですね。僕も結構エゴサしまして、「これは、悪くないなぁ」と感じているというか(笑)。我々が意図したように楽曲が広がっていて、今は非常に「よしよし」と思っています。
――今回は「EVERYBODY! EVERYBODY!(以下、エビエビ)」以来、二度目のコラボとなりました。
芹澤 「エビエビ」のときは、MOTSUさんにお会いするまでは正直結構ビビっていたんですよね。エイベックスの先輩で、今まで色んなことをバズらせてきた方だし、見た目もサングラスとムキムキだからやっぱり少し怖そうじゃないですか(笑)。
MOTSU ははは(笑)。
芹澤 でも「エビエビ」のレコーディングのときからすごくフレンドリーにお話ししてくださったし、それからは会う度に「調子どう?」って声をかけてくださるんですよ!だから今では本当に、家族みたいに安心できます。
MOTSU セリコって、僕の明るい曲の魅力をすごく広げてくれる人なんですよ。僕、前回のコラボみたいなすごく明るい曲って結構得意なんですけど、それがあまり世の中に知られていないのを感じているんですね。なのでコラボ前からセリコの歌声を聴いたりして「良いきっかけになるかも」と感じたし、実際レコーディングでもすごく弾けていたものを録ることができて。結果も上々だったのですごく「助かる!」って思いましたし、「明るい曲、合うねぇ!」と感心もしました。
芹澤 わー!嬉しい!
MOTSU そのとき感じたことが、「1つ言うと、ちゃんと盛って返してくれる人なんだな」ということ。そういう人って事細かに言わないほうが結局良いものが出来上がるので、具体的なディレクションは最低限にして、「ちょっとほかの飾り付けも見てみたい」くらいの感じで進めていった気がします。
芹澤 今回もでしたけど、MOTSUさんはそうやって私から色々なものを引き出してくださるタイプなんです。だからレコーディングを楽しみながら、自分でも「じゃあ、こういうのを提案してみようかなぁ」と思えたり、すごく創作意欲をそそられます。
――そんなMOTSUさんと再びタッグを組んだのが、『MFゴースト』のOPテーマ「JUNGLE FIRE」です。
芹澤 どちらかと言うと、前回は元々私が主題歌を担当していた『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω』にMOTSUさんとDJ KOOさんが来てくれたという感じでしたけど、今回はm.o.v.eを背負っていたMOTSUさんがずっと大切にしていたものにお邪魔するような感覚だったんです。だから最初は正直、「(m.o.v.e )yuriさんのボーカルを求めていた方たちに満足していただけるのかな?」という不安もありました。
MOTSU 僕、実はこの曲の制作に入るちょっと前の時期にたまたま真鶴ブルーラインとか箱根のあたりを走ったんですよ。だから、曲想みたいなものはすぐにできて。本当に偶然だったので、「これは、神の啓示みたいなものを感じざるを得ない……!」と思ったりもしました(笑)。
芹澤 あはは(笑)。
MOTSU ただ、今回はカタルシスをズドーンと重厚に響かせるような楽曲だから、それをセリコと一緒に『頭文字D』の後継作品であるアニメ『MFゴースト』のオープニングとして作る……と条件を全部並べたとき、最初は自分の中で上手く結び付けられなかったんですよね。
――それがクリアされた、きっかけのようなことは何かあったんでしょうか?
MOTSU セリコのライブに「エビエビ」を歌いにサプライズ出演したときに、短調の曲を歌っているのを聴いて「そういう感じか!」となったときです。やっぱりライブで演者とお客さんの表情を見て、「歌うとこういう感じになって、お客さんはこんな感じで……」という空気感みたいなものを掴めたことは、すごく大きかったんですよ。だから「セリコの熱みたいなところを乗っけてくれれば、これはいけるな」みたいに、非常に得心したというのはありました。
芹澤 ソロにも短調の曲ってぽつぽつあるんですけど、意外とキャラソンに多いんですよ。だから普段皆さんに届けている「かわいい」が強めな私とは違う印象が、そういった曲をライブで歌っているときの私にはあるのかなぁって思います。
――そういったイメージを具体化されていくときに、MOTSUさんはどんなことを大事にされましたか?
MOTSU やっぱり『頭文字D』の後継作ということで、みんなやっぱりm.o.v.e的なものを求めるじゃないですか?だけどそれをなぞるよりも、yuriちゃんの強さとは全然違う、ライブを観て感じたセリコの強さとめちゃめちゃアクの強い僕との新しいぶつかり合いみたいなものを作りたくて。そのうえで“古くて新しい”みたいなものをテーマにして、アレンジも加えて新しくしたりとか、新しい技を入れてみたりもして……例えば、サビの最後はラップと歌が必ずかぶってるとか。そういう、m.o.v.eのときはやってなかったことをやったりしました。
芹澤 私自身も「私にはyuriさんみたいには歌えない」ということはわかっていましたし、逆に声優としての活動を通じてたくさん感情表現をやってきたからこそ、切なさとかエモい感情みたいなものを込められるのかなぁと思って。例えば1コーラス目のBメロの“全身で抱きしめなきゃ”みたいな部分のちょっとねばつくような歌い回しとかは、自分が表現できる新しい感情的な部分だった気がしています。
――ほかにもサビやラストの部分などには、今までのソロ曲よりもはっきりと切なさみたいなものを込められています。
芹澤 それは、この曲を初めて聴いたときから切なさを感じていたというのが大きいかもしれません。2-Bメロの“ねえどうして この胸 ギュッと絞めつけられるほど アナタがいま 世界を埋めつくしてる”っていうフレーズはすごくドラマチックで素敵だし、『MFゴースト』も結構恋愛の要素も強い作品なんですよ。だから、恋する女子が全てを彼に埋め尽くされるような感じとか、乙女チックで切ない感じを入れたいなというのは、初めて聴いたときからすごく思いましたね。
MOTSU そういうふうにセリコの中に作品がバッチリ入っていたから、セリコが演じている(北原)望の立場一辺倒ではなく作品を背負ってカナタ(主人公・片桐夏向)に向かって歌っているんだろうなというのが伝わってきたんですよね。それに、さっきも言ったようにセリコはキャッチボールをするなかで多めに投げ返してくれる人だから、ディレクションでは「お試しで、なんかやってみる?」くらいの最低限のことしか言わなかったよね?
芹澤 はい。でも「リズムもあるしテンポもいい曲だから、全部切なくなっちゃうと曲に合わなくなる」というのはあったかなぁ。感情を入れすぎると息が強くなって歌声が弱くなるから、突くところは突いてほしい……みたいな。
MOTSU メリハリみたいなね。あとは「JUNGLE FIRE」の発音?
芹澤 あ、「ジャンゴーパイヨー」ですね(笑)。これ、最初から「『ジャンゴーパイヨー』でお願いします」って書いてあったんですよ。たまに曲振りのときそれを忘れて「ジャングルファイヤー」って振っちゃって、「あっ、間違えた……」ってなったりするんですけど(笑)。
MOTSU やっぱりダンスミュージックなので、あそこは英語っぽく発音してほしかったんです。ほかの英語のところも英語っぽく響いたほうがいいので、そこだけは細かくやりましたね。あとは「R」とか。
芹澤 “Ride on”とかですよね?
MOTSU うん。「Rは全部『ワイウエオ』だよ」って伝えたり。
芹澤 でも「大きな壁にぶち当たって……」みたいなことは、本当になかった気がします。それはきっとMOTSUさんが私を知ってくれて、最初から私にできそうなものを作ってくださったからだと思うんですけど。
MOTSU いやいや。こういうペンタトニックっぽい太いメロディって、意外と歌うのが難しいんだよ?メロディってシンプルなほど、自分自身の飾りみたいなものを持っていないと本当に難しいから、多分この曲を歌が下手な人がカラオケで歌ったら、すっごい一本調子な感じになっちゃうはず。そのくらい難しい曲なんですけど、「まぁ、セリコならできるだろうな」という感じだったので、そこは期待通りでしたね。……もしかしたら、セリコにもどこかにできない分野があるのかもしれないけど(笑)。
芹澤 え、苦手な分野ですか?それこそ私、ラップは本当に自信ないです。ラップって「ちゃんと喋る」ことよりも、すごくたくさんのニュアンスを込めていくことのほうが大事になるじゃないですか?でも私がやると、細かい言葉を詰め込むときにどうしても声優としてバーっと喋る感じが先に立っちゃって。かっこよくならないから、変で笑っちゃうんです……(笑)。
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