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INTERVIEW

2023.10.25

アンジェの姿を見て自分自身が奮い立たされるような歌詞を――。南條愛乃、ニューシングル「閃 -Sen-」に込めた想いを語る

アンジェの姿を見て自分自身が奮い立たされるような歌詞を――。南條愛乃、ニューシングル「閃 -Sen-」に込めた想いを語る

ソロキャリア10周年を記念したアルバム『ジャーニーズ・トランク』を伴うツアーを大成功で終えた春を経て、秋にまたあらたなフェーズへと進もうとしている南條愛乃。ニューシングル「閃 -Sen-」は、自身としては初となる、TVアニメOPテーマの作詞となった。そうしたあらたな経験のなかで彼女が見せた変化とは? そしてその先に南條愛乃が見据えるものとはーー。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一

歌っていて「これも楽しいのかも」と思えるようになってきた

――ニューシングルのお話の前に、ちょっと前のお話になるのですが、今年4月から行われた“ジャーニーズ・トランク”ツアーについてお伺いしたいなと。

南條愛乃が長い道のりを経て辿りついた今、この瞬間――“南條愛乃 Live Tour 2023 ~ジャーニーズ・トランク~ supported by animelo”ファイナル公演をレポート

南條愛乃 すごく充実感や満足度の高いツアーだったと思います。「やりきった!」とか「終わった!」というよりかは、じわじわと満足感や充足感みたいなものが蓄積していった感じで、終わったあとの余韻も結構抜けなかったですね。セットリストやコンセプトとしても派手さはそこまでかもしれませんがやっぱり10年分の軌跡をステージ上で表現しようというのがあったうえだったので、ファンの方との距離感や温かさみたいなものを、改めて強く実感できた、すごくいいツアーだったなと思います。

――たしかに、久々の声出しライブということもあって、『ジャーニーズ・トランク』の楽曲も、定番曲もお客さんの歓声と共に聴くことができて、まさに10年の軌跡をファンと一緒に辿るようなステージに見えたんですよね。あのツアーも、そのあとのFCイベントでも、そのお客さんと対話しながらのライブという南條さんのライブ本来の姿が見えたなと思っていまして。ざっくりとした言い方になるんですけど、「居心地がいい」というか。

南條 そうですね、気合いを入れずにいける感じというか。ライブだと皆さんお洒落をして髪も整えてみたいな、「よし!」って気合いを入れて行く場所というイメージがあると思うんです。でも、私のライブはパジャマでも来れそうなくらいゆるい空気が流れ始めていると思います(笑)。お客さんも声を出したりすることもできるようになって、改めてこの場所の居心地の良さや尊さというのが実感できたツアーでもありましたし、その後のFCイベントも同じことは思いました。

――そうした居心地のいい場所を取り戻して、年末10周年ライブに向かうという、非常にいい流れにあるなかでニューシングル「閃 -Sen-」がリリースとなります。色々な要素を含む曲ではありますが、最初に浮かんだ感想は「ライブ映えしそうだな」と。「EVOLUTiON:」のときにも自身のソロワークでやれる幅が広がってきたというお話をしていましたが、こうしたアグレッシブな楽曲もまさにそうした幅の1つなのかなと。

南條 そうですね。今までは激しめの曲というのはあまりなかったものの、それが武器の1つとしてソロでもできるようになっているのは、おっしゃっていただいたとおり幅が広がると思っています。フェスに出たときに持っていける武器が増えたな、みたいな感じですね。もちろんバラードやミディアムもいいんですけど、「ここでもちょっと盛り上げたいな」みたいなときのバリエーションが増えたなという。

――実際に「EVOLUTiON:」はライブの鉄板曲になりましたからね。

南條 やっぱり幅が広がるっていいなというのはあります。あと、こういう激しめな曲のほうが歌っていて気が楽なんですよね。

――そうなんですか?

南條 丁寧に丁寧に一音ずつ紡いでいくのも楽しいんですけど、色んな自分の粗が目立ったりすると、歌いながら「あー……」みたいなこともあるんですよ。でもこういう勢い系はみんなで「おりゃー!」みたいな、どっしゃんがっしゃんみたいな感じで楽しめるので。昔はバラードや静かな曲のほうが圧倒的に好きだったんですけど、いつからかこういう楽曲も気を楽にして楽しめるからいいなと思いながら歌えるようになってきたというか、気づけば歌っていて「楽しいな!」と思えるようになってますね。

――こうしたアグレッシブなサウンドの中でも、南條さんのボーカルが光るところもまたポイントかなと。

南條 昔だと声の特徴を生かしたバラードものは得意だったので、音圧にたくさん詰まっている曲や厚めの曲だとやっぱり声が負けちゃったり、やりたい表現ができなくて、そもそも一生懸命歌うと表現どころではないので、どう乗りこなしていいかわからなかったです。でも最近は、「こう歌ったら面白いかな?」とか、「ここでこういうふうに歌いたいな」みたいな欲がアップテンポな曲に対しても出てくるようになって、そこが10年前と今とでは違うかもしれないですね。

アンジェの姿を見て自分自身が奮い立たされるような曲と歌詞になったら

――「閃 -Sen-」は、TVアニメ『冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた』のOPテーマとなります。OPテーマでは初の作詞になるんですよね。

南條 そうなんですよ。初めて作詞をさせていただいたアニメOPテーマ曲となりました。

――そこもまたトピックになりますが、現在の南條さんにとって作詞するということに対してはどういう思いがありますか?

南條 歌詞を書くのは本来好きなんですけど、今は書き始めるまでが恐怖で、「何か言葉出てくるかな?」とか「今の私の中に一体何があるんだろう?何も出てこなくて一生懸命書いても書いてもAメロまでしか埋まらなかったらどうしよう?」とか、そういうプレッシャーがすごいんですよ(笑)。

――それは意外ですね。

南條 今回はタイアップなので原作もありますし、OP楽曲の歌詞というのはfripSideも含めて書いたことがなかったので、またひとつチャレンジできる機会だなと思って、挑戦させていただきました。

――今の話を聞いて思ったのは、南條さんの現在の作詞に対するモードと初のOPが曲の作詞というのが関連するのかはわからないですが、南條さんの歌詞としてまた新しい境地といいますか、ワードチョイスなどが非常にOP的な歌詞だなと。

南條 最初にタイアップで歌詞を書かせていただいたのが「ゼロイチキセキ」(TVアニメ『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』EDテーマ曲)だったんですけど、あのときも「自分がタイアップの歌詞を書くなんてできるのか?」というプレッシャーがすごくて。でも、原作やシナリオを読んだり、ゲームをやってきた自分の体験と紐づけて書けたんですよね。今回はもっとがっつり作品に寄ってみたいなと思っていて。まず楽曲を聴いて、キャラクターたちが戦ってたりしてる絵が思い浮かびやすかったのと、原作読んで「このワードも入れたいな」とか「このシーンの出来事を入れたいな」とか、情報量がすごく多かったし、そこを私が拾えたという感じでした。なので、言葉が出てくるかな?というプレッシャーはあったんですけど、意外と書き始めたら面白くノリノリで書けましたね。

――まさしく作詞のアプローチも変わっていったわけですね。まさに“誰が為に戦う”というヒロイックな歌い出しからして違うといいますか。

南條 まるで『サイボーグ009』ですよね(笑)。

――そうですね(笑)。でもそうした日常とは違うフィクションを映す歌詞として作品にわかりやすくハマっているなと。

南條 ありがとうございます。原作を読みながら、作詞に着手する前に言葉拾い、ヒント拾いをしようと思って原作を読み始めたんですけど、ストーリーとストーリーの合間にキャラクター説明のページが1ページずつ挟んであるんですよね。アンジェリンはこういう女の子で、みたいな。そのなかでアンジェリンのお父さんのベルさん、ベルグリフの紹介で、小さい文字で「実は主人公はこの人なんだよね」みたいなことが書いてあったんです。それで「あ、アンジェが主人公じゃないんだ、面白い!」と思って、そこからお父さん目線で書いてみようかなって。

――なるほど。

南條 もちろんストーリーを動かしていったり華やかさがあるのはやっぱりアンジェなので、彼女のこと書いているんですけど、実はその目線がアンジェ自身じゃなくて彼女を見守るお父さんということにしようと。ベルもかつては冒険者で、足を怪我して村で穏やかに暮らしてるけど、その娘の勇ましさに闘志を燃やされるというのが、それが聴く人にも重なって、アンジェの姿を見て自分自身が奮い立たされるような曲と歌詞になったらいいかなというイメージで書いていきました。

――力強くもあり、優しさも垣間見えるワードが感じられるのはそういうことなんですね。

南條 夢を追って家を出ていく子供っていつの時代もいるわけじゃないですか。私も上京してきた身だし、2番のサビもそうなんですけど、離れていても親は子を思ってくれているんじゃないかな?って。想像の域を出てないですけど、そういうところも盛り込みつつ、ベルさんが大好きになる気持ちで書きました。

――お話を聞いていると、図らずも作品からのインプットというものがとても多かったわけですね。

南條 そうですね。この作品はほかのキャラクターたちも基本的にそれぞれの課題に立ち向かっていく物語だと思うんですけど、それも人との繋がりを大事にというのが根底にありつつ、それが力になって立ち向かっていけるみたいなストーリーで、アンジェのことを見ている歌詞ではあるんですけど、聞き方によってはほかの女の子たちの覚悟や強さというのも感じられる言葉選びになればいいなと思いながら書きました。例えばDメロの“繋ぎ合う他人(ひと)がいるから 手の温もりだって 熱さだって 互いに 分かち合える”ところも、シャルロッテがベルさんに手を繋いでもらうシーンで心が解けるシーンもあったので、手を繋ぐという表現も入れたいなって思ったんですよね。ベルとアンジェのことではありつつ、登場人物たちにも繋がるといいなって思って、とにかく今私が入れられるものを全部入れるつもりで楽しんで書けました。

次ページ:強さはあるけど綺麗に発声するというのがすごく難しい

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