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INTERVIEW

2023.10.25

満たされない気持ちに“救い”を求めて――愛美がTVアニメ『Helck』に触発されて作り上げた攻撃的なニューシングル「HELP」に迫る!

満たされない気持ちに“救い”を求めて――愛美がTVアニメ『Helck』に触発されて作り上げた攻撃的なニューシングル「HELP」に迫る!

2023年、3クール連続でTVアニメのOPテーマを担当してソロアーティストとしての存在感をますます強めている愛美。その締め括りとなる今回のニューシングル「HELP」は、TVアニメ『Helck』第2クールのOPテーマにして、作品内で描かれている争いの連鎖や人間ならば誰もが味わう負の感情を激しく燃やし尽くすような、“救い”を求める攻撃的なロックナンバーに仕上がっている。さらにアグレッシブな「ザ・センセーション」、刺激的なダンスポップ「Noise in me」といったカップリング曲を含め、愛美の新たな一面を解放した本作に迫る!

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

『Helck』との出会いがもたらした感情、イーリス役を演じてみて

――ニューシングル「HELP」はTVアニメ『Helck』第2クールのOPテーマ。大枠としては作品のどんな部分を意識して作られたのでしょうか。

愛美 第2クールということで物語も佳境に入って、ストーリーの根幹になる部分がどんどん見えてきますし、アニメ的にも争いごとの描写が増えて激しさが増していくので、激しいサウンドのかっこいい楽曲にしようと思って作りました。

――『Helck』の原作に触れたときの印象はいかがでしたか?

愛美 笑いあり涙あり、色んな感情が盛り込まれているし、テンポがすごく良くて、ずっとワクワクした状態で読みました。一気に読み終えてしまって。特に後半は怒涛の展開で、私も読みながら涙するくらい感動したので、いい歌詞が書けそうだなあと思いました。

――作品に触れるなかで、キャラクターの心情などに共感を覚えた部分はありましたか?

愛美 色んなキャラクターに共感できるポイントがあって、それが今回の歌詞に繋がってくる部分でもあります。例えば“劣等感”だとか、生まれながら持った才能に対する感情、「自分の人生とは?」「運命って決まっているのかな?」みたいな、人生を生きるうえで感じる“負の感情”が『Helck』ではたくさん描かれていて。自分も日頃からそういう感情を感じることがあるので、そこは作品から強く受け取ったメッセージでもありますし、そういう部分を歌詞に変換して書いてみたいなと思いました。

――愛美さんは本アニメの第1クールにイーリス役の声優として出演もされていました。イーリスは吟遊詩人のような雰囲気のキャラクターでしたが、実際に演じてみていかがでしたか?

愛美 イーリスは『Helck』という作品のキーとなるエピソードに関わるキャラクターなので、演じることができてすごく光栄でした。イーリス自体は儚い雰囲気を持った女性なので、儚さに重きを置いて演じさせていただきました。

――確かにアニメを観ていてイーリスが登場した瞬間、このキャラクターには何かがあることが伝わってきましたし、すごく印象に残りました。

愛美 イーリスが印象に残る理由は、第2クールを観ると明らかになっていくと思いますし、「ここが繋がるんだ!」ってなると思うので、ぜひイーリスの登場回をしっかりと観たうえで、第2クールも観ていただければと思います。

――イーリスは歌をうたうシーンもありましたが、あれは現場で直接歌われたのでしょうか?

愛美 はい。アフレコスタジオで何回か歌わせていただいて、どのテイクが使われるかはオンエアを観てのお楽しみという感じでした。イーリスとして歌ったので、歌声にも儚さや何かしらの意味合いを持たせられるように意識して歌いました。今までに歌ったことのない系統の楽曲だったので、難しかったけど貴重な経験になりました。

――劇中ではピウイ(CV:井澤詩織)と一緒に歌うシーンもありましたね。

愛美 ピウイ、かわいかったですよね!井澤さんとはアフレコでもご一緒できて。歌自体は別々で録ったんですけど、現場で井澤さんが歌っている姿を見ることもできました。

満たされない気持ちに“救い”を求めて――心の叫びのような「HELP」

――愛美さんは新曲を制作する際、コンペを行うことが多いですが、この「HELP」に関しては?

愛美 今回もコンペで選びました。シンプルな構成ではないところ、色んな楽器や音色が使われているところ、色んな感情を盛り込めそうなサウンドというのが決め手になって。『Helck』も色んな感情が描かれていますし、人間も魔族も含めて色んな種族が入り乱れている作品なので、この楽曲であればそういう部分も表現することができそうだなと思いました。

――歌詞は今回も愛美さんが作詞されていますが、先ほどお話いただいた『Helck』の原作を読んで共感できたポイント、人間であれば誰しもが抱く“負の感情”の要素が強く感じられます。

愛美 私は作詞をするとき、まずテーマを決めるところから始めるんですけど、今回、原作を読んで最初に書きやすそうだなと思ったのが、さっきお話した“劣等感”で。そこから“人間の愚かさ”、地球規模で考えるといつの時代も争いが絶えないし、似たような感情が引き金となって争いが起こる印象があるので、そういう部分を広げていこうと思いました。

――それは作品から受け取った部分だけでなく、愛美さん自身が普段抱いている感情とも重なるわけですか?

愛美 かなりシンクロしていると思います。私は何に対しても「もっとこうだったらいいのになあ……」と思うことが多くて(苦笑)。どの物事に対しても、上を見れば切りがないし、自分の性格的に一生満たされないんだろうなとは思うんですけど……ただ、『Helck』のストーリーの中でも、みんな満たされないから、正解を求めて、何かに辿り着きたくて、もがいている印象を受けたので、そこをしっかりと描きたいなと思って。諦めきれない感じというか。私は“諦めること”と“満たされること”は結構似ているなと思っていて。

――というのは?

愛美 私も今の状態で、色んなことを諦めてしまえば、現状で幸せを感じることは可能だと思うんです。言い換えれば、現状が満たされていると感じれば、諦めることも可能っていう。

――自分の気持ちに折り合いを付けると言いますか。愛美さんは現状、満たされている感覚はあるんですか?

愛美 ないです(笑)。その気持ちがすごく理解できるから、『Helck』で描かれているゴールの見えない戦い、それでも何かが変わると信じて戦い続けるところが共感できるなと思って、そこを広げて歌詞を書いていきました。

――なるほど。その一方で、2番の歌詞は“平然みたいに弱さ嫌って 狂気増してく優越感情”から始まっていて、“劣等感”を描いた1番とは対称的な印象を受けました。

愛美 そうですね。“劣等感”と相対して“優越感”というものがあって。人と比べて“劣等感”を感じることもあれば、“優越感”を感じて心が満たされることもあるし、それは甘い蜜でも毒でもあって、ときにはそれで心が救われることもあると思うんですね。

――でも、この楽曲の歌詞を紐解いていくと、その“優越感”をもってしても、結果的に気持ちは救われていないように思います。

愛美 そこが人間の愚かさですよね(笑)。多分、その瞬間は“優越感”で満たされたとしても、その先にあるのは“虚無”で、一寸先は闇の状態だと思うんです。だけど、快楽が忘れられなくて、人と比べたときの“優越感”をどんどん求めてしまう人もいて。

――確かに人の気持ちは容易に満たされるものではなくて、その意味では誰もが“助け”を求めている一面があると思うのですが、だからこそこの楽曲のタイトルを「HELP」にされたのでしょうか?

愛美 『Helck』には色んなキャラクターが登場しますけど、みんな“助け”や“救い”を求めているように感じたので、このタイトルにしました。いいタイトルになったと思います。

――なおかつ歌詞では“HELP”という言葉を使っていなくて、“Helck, please me 助けてよ”と歌われているのが粋です。

愛美 ありがとうございます!こういう歌詞を見て初めて気づくような仕掛けは、アニソンの面白いところかなと思っていて。

――あと、歌詞の中に“「大丈夫」”というフレーズもありますが、これは主人公のヘルク(CV:小西克幸)のセリフから引用しているのでしょうか?

愛美 そうです!他にも“「こんにちは」”はピウイがよく言う言葉ですし、“バカ”もヴァミリオ(CV;小松未可子)がよく使っているセリフで。きっと原作を読んでいる方は気づいてくれると思うんですけど、意味のある言葉の置き方をしていたりするので、ぜひ考察してほしいです!

――この楽曲の愛美さんの歌唱は、力強さもありつつやさぐれ感もありますが、どんなことを意識しながらレコーディングしましたか?

愛美 この曲のレコーディングの日は疲労が溜まっていたのですが、その疲労感と楽曲が上手く合っていたらしく、元々はアニメサイズのワンコーラス分だけ録る予定だったのが、このままフルサイズまで録ってみようという話になりまして、私は満身創痍の状態で歌いました(笑)。

――そんなことを感じさせない、気迫を感じさせる歌声です。ご自身としては完成した音源を客観的に聴いて、どのように感じましたか?

愛美 確かにこの楽曲には上手くハマったように思いました。がなり声の成分を多くしてみたり、色々な歌い方を試させてもらえたので、それは嬉しかったですね。がなり声は好みが分かれるので、もしかしたら直されるかなと思っていたんですけど、そのまま使っていただいて。

――特にラスサビは心からの叫びのようなニュアンスを感じたのですが、歌い方の表情の付け方や起伏で意識されたことはありますか?

愛美 普通に歌ってしまうと、1番からクライマックスみたいな歌い方になってしまうので、そこはディレクションしていただいて、ラスサビに向けてだんだん高まっていくように歌を組み立てていきました。

――ビジュアル面のこだわりについてもお聞かせください。今回はアーティスト写真やジャケット、MVを含め、スチームパンク的な世界観になっていますね。

愛美 今年、“デザフェス(デザインフェスタ)”に遊びに行ったんですけど、そこでスチームパンクのブースを見かけて、「この世界観は「HELP」に合いそう!」ってピンときたので、スチームパンクの要素をビジュアルに取り入れていただきました。歯車がたくさん付いている感じとかも、なんだか『Helck』の世界に合っているなと思って。勇者側の勢力がどんどん生まれ変わっていく感じもそうですし、色んな要素が噛み合いました。

――ちなみにこの歯車だらけのギターは実際に弾けるものなんですか?

愛美 弾けるらしいです。まだアンプに繋いで音を出したことはないんですけど。ただ、MV撮影でも部品が取れて撮影がストップしたりもしたので、弾くのはちょっと大変そうです(笑)。でも、これ1本持つだけでめちゃめちゃ映えるので、とても気に入っています。

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