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2023.10.20

EGOISTがラストライブで刻んだ永遠の“アイの歌”――横浜公演“Echoes of Everlasting”全18曲が紡ぐ楪いのりとchellyの最後の物語

EGOISTがラストライブで刻んだ永遠の“アイの歌”――横浜公演“Echoes of Everlasting”全18曲が紡ぐ楪いのりとchellyの最後の物語

10月9日、1つの時代が終わりを迎えた。アニメ音楽のシーンに革命を起こした、ryo(supercell)がプロデュースを手がける架空のアーティスト・EGOISTが、神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールにて開催した「EGOIST LIVE 2023 Resonant Indigo“Echoes of Everlasting”1009 YOKOHAMA」をもって、その活動に終止符を打ったのだ。しかし、その歌声は永遠に響き続けることを、EGOISTは、そしてchellyは、このラストライブで確かに証明してくれた。観る者すべての心に“アイの歌”を刻み付ける、あまりにも完璧なフィナーレがそこにはあった。

PHOTOGRAPHY BY 高田真希子
TEXT BY 北野 創

“楪いのり”と“chelly”最後のライブ、モールス信号が伝えるラストメッセージ

2011年、TVアニメ『ギルティクラウン』に登場するヒロイン・楪いのり(CV:茅野愛衣)がボーカルを務める劇中アーティストとして誕生したEGOISTは、オーディションで2,000人を超える応募者の中から選ばれたボーカリスト・chellyが歌唱を担当。『ギルティクラウン』の放送終了後も、同アニメの世界から飛び出して活躍の場を広げ、数々のアニメの主題歌を歌い、ライブ活動も精力的に行うなど、あくまでも“楪いのり”という存在をベースにしつつ、他に類を見ないアーティスト活動を展開してきた。

なかでも、3Dアバターを用いたライブでは、chellyの動きをモーションキャプチャしてステージ上のスクリーンにリアルタイムで反映する手法が取られており、これによって“楪いのり”が実際にライブを繰り広げているような臨場感と、現実空間では難しいダイナミックな映像演出を融合させたステージングを実現。今やVTuberの台頭によりAR(現実拡張)技術を駆使したライブは珍しいものではなくなってきているが、その先駆け的な存在としてEGOISTがいたことは、改めて特記しておきたい。

“楪いのり”と“chelly”、もはや一心同体となった2人のEGOISTとしてのラストライブは、鐘の音を合図に、厳かに幕を開ける。真っ暗闇のステージにピンスポットが当てられて彼女の姿が浮かび上がると、アカペラで歌い始めたのは「原罪の灯」。EGOISTの唯一のオリジナルアルバム『Extra terrestrial Biological Entities』の1曲目に収められていた楽曲だ。まるで祈りのように神妙な歌声で“来たる日まで共にあらん”ことを誓うと、その静かな立ち上がりから一転、続いて最新シングルでもある『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』の主題歌「当事者」を艶やかに歌い上げ、さらにTVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 2』のEDテーマ「Fallen」を披露。会場一面がペンライトを赤色に変えて沸き立ち、ノイズが侵食するようなグラフィック演出が激情感をさらに高めるなか、chellyは熱を孕みながらもあくまで優雅なボーカルを鮮烈に解き放つ。

MCパートでは、いつも通りのゆるい雰囲気でファンと交流するchelly。この日は雨模様だった横浜近辺の天気を受けて、「奇跡的に“雨”の入っている曲があったりして」とセットリストの匂わせをしたかと思うと、「思い残しのないように精一杯楽しんでください」と告げた彼女は、ここから「Extra terrestrial Biological Entities」「LoveStruck」「雨、キミを連れて」の3曲を続けてパフォーマンス。いずれも1stアルバムからのナンバーであり、曲調もEDMから青々しいギターロックまで様々。この時点で、本公演のセットリストはいわゆるベスト的な内容にはならないであろうことを予感させる(ちなみに9月23日に行われた「EGOIST LIVE 2023 Fleeting Ruby“The Crescendo”0923 OSAKA」はシングル表題曲/タイアップ曲を中心にした構成だった)。

続いては「しっとりめの雰囲気」のコーナーということで、まずは神秘的なムードを湛えた「カナデナル」を披露。ファルセットを交えた狂おしくも美しい歌声の高ぶりに呼応するように、上空に浮かぶ月が徐々に大きくなり、赤く色づいていく。そしてモールス信号の音が流れ始めると同時に、客席からは歓喜の声が。歌われたのは、OVA版『ギルティクラウン』の主題歌「Planetes」。そこに込められたのは、『ギルティクラウン』の主人公・桜満 集(CV:梶 裕貴)に対する想いであり、いつかまた再会できることを願う、もう1つの“アイの歌”だ。星々がロマンチックにまたたくなか、彼女は“あなたの記憶に私はずっと生きてる”と歌う。その言葉はラストライブという状況において、さらに特別なメッセージとして響く。楽曲の最後には、曲中で流れているモールス信号がリフレインされると同時に、スクリーンにその信号の意味する内容が表示され、感謝の気持ちといつかまた会えたら、という想いが伝えられた。

そして“しっとり”コーナーを締め括ったのは「キミソラキセキ」。2ndシングル「The Everlasting Guilty Crown」のカップリングに収められた、アニメ『ギルティクラウン』本編には使用されなかったものの、ファンであればいのりと集の関係に思いを馳せずにはいられない名バラードだ。スクリーンいっぱいに星空が広がるなか、天高く響き渡るchellyの歌声は、筆舌に尽くしがたい美しさで、例え過酷な運命が2人を引き裂いたとしても、永遠の愛を信じさせる説得力がそこにはあった。

「いびつで美しいアーティスト」EGOISTが最後に残したもの

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