アニソンシーンで独自のポジションを築き上げているダンスボーカルグループ・MADKIDが、TV アニメ『盾の勇者の成り上がり Season 3』OPテーマ「SIN」をタイトルに掲げたシングルをリリースする。新たなナンバーは、「RISE」をオマージュしつつも、それを超えていくことを目指して制作したという。主人公・岩谷尚文が迷い込んだ宙吊りの世界で逆境を乗り越え、自ら未来を切り開いていったように、MADKIDもまた、『盾の勇者の成り上がり』をきっかけに、自分たちの武器に磨きをかけて新たな境地を切り開いてきた。来年には結成10周年を迎えるMADKIDに、ここで今一度『盾の勇者の成り上がり』との歩みをボーカルのYOU-TA、KAƵUKI、ラッパーのLINに振り返ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
──今年の夏も熱かったですね。“Animelo Summer Live 2023 -AXEL-”(2日目出演/以下、アニサマ)の手応えはいかがでしたか?
KAƵUKI 2年連続で“アニサマ”に出演させていただき、とても嬉しかったです。ステージ上から2万人以上の方々の歓声を聴いたのは初めてで、本当に感無量でした。しかもセンターステージでの出演ということもあって、360度からイヤモニ越しにも歓声が聴こえて。今年は「RISE」を一緒に歌おうと元々話していたので、一緒に歌ってもらえて感動しました。
LIN あれだけの人数のエネルギーを感じられることってなかなかなくて。齋藤さん(アニサマ統括プロデューサー:齋藤光二氏)のご厚意で最終日にも観に行かせていただいたんです。改めて客席からステージを見て「自分たちがあそこにいたんだ」と、ステージに立っていたときよりも信じられないという気持ちになったりして(笑)。改めて、すごいステージに立たせていただいたんだなと。今年はコラボもあり、色々なことにチャレンジさせてもらいました。
YOU-TA 今年は愛美さんやグレート-O-カーンさんとコラボさせていただいたり、松本梨香さんと歌わせていただいたり。僕個人的には、“アニサマ”の最新テーマソング「heartbeat-axelator」のメンバーに選んでいただいたことも大きな出来事でした。当日MCでも話したんですが、自分たちのアニソンシーンの立ち位置って異質だと思っていて。そのなかで、あれだけの方が僕らを受け入れてくれたことがすごく嬉しかったです。またあの場所に戻りたいなと、早くも思っていますね。
──その夏を経て、秋にはアニメ『盾の勇者の成り上がり Season 3』(以下、『盾の勇者』)のOPテーマを担当されることに。皆さんにとっての『盾の勇者』への想いを今一度お聞かせ下さい。
KAƵUKI 僕らのことを変えてくれた作品と言いますか。初めてのタイアップを経験させてもらい、しかも連続でOPテーマを担当させていただけていて、感謝しかないですね。それこそ“アニサマ”に出演できているのも、この作品のおかげです。作品と一緒に僕たちも成り上がっていけているので、一緒に成長できているのかなと思っています。
YOU-TA 本当に僕たちを成り上がらせてくれた作品ですね。まだまだ道半ばではあるんですけども、『盾の勇者』に出会えてなかったらまた違う未来にいたんじゃないか……と思うほど、僕らのことを大きく成長させてくれた作品です。しかもアニメだけではなく、「パチスロ盾の勇者の成り上がり」の曲も担当させてもらえていて。それって本当にすごい経験だと思うんですよね。岩谷尚文がもしもこの世にいるなら、感謝を伝えたいくらいです。感謝、感謝、感謝ですよね。
LIN 2人が言ってくれたことは、もちろん僕も同じように感じています。そのうえで、視聴者目線で話をするとしたら……元々はライトノベルだったところから、アニメになって、さらにSeason 3まで続く人気作となり、『盾の勇者』という作品自体が成り上がっているなと感じています。
──その作品と共にMADKIDは歩んできて、『盾の勇者』の音楽を通して様々な挑戦をされてきました。『盾の勇者』とのコラボレーションは、MADKIDにどのような影響を及ぼしましたか。
KAƵUKI 楽曲面で言うと、『盾の勇者』以降、ロックテイストのエッセンスを取り入れるようになったのが大きな変化なのかなと思っています。あとは、男性がライブに来てくれるようになったことも『盾の勇者』のおかげだと思っています。去年の“アニサマ”以降は、男性の方がさらに来てくださるようになり、男性限定イベント(“MEN’S AXCEL TIME”)も初めて開催して。タイアップをやっていなかったら出会えなかった方たちとも出会うことができましたね。
──「SIN」は罪という意味ですが、どのような流れで本作を制作されたのでしょうか。
LIN メンバーそれぞれでプロットを読ませてもらい、コンペで楽曲を選ばせてもらって、僕が歌詞を作ってという流れで制作は進んでいきました。ただ、プロットを読む前から、タイトルのイメージは浮かんでいて。というのも、Season 3のキービジュアルをアメリカのイベント(CruncyRoll Expo2022)に出演させていただいたときに見たんですよ。アメリカで見たというのも大きな出来事だったのですが、“七つの大罪”というワードが作品に絡んでくるというのもすごく印象に残っていました。それで“罪”というテーマで歌いたいなと。だから、結構前に罪という言葉自体は頭の中に浮かんでいました。そのときはSeason 3の主題歌を任せていただけるとは思っていなかったんですけども。
──逆に私はMADKID以外は思い浮かばなかったです。それほど作品の顔という印象があります。
LIN 紆余曲折しながら活動をしているなかでご縁があって、とても幸せなことだなと思っています。
──コンペではどのようなご希望を出されていたんですか?
KAƵUKI 「Bring Back」(『盾の勇者の成り上がり Season 2』OPテーマ)のときに、僕らができる最大限のチャレンジをしたのですが、今回は原点に戻るというか、「RISE」をオマージュした形で、MADKIDの良さは残しつつも聴きやすさに重点を置いていました。ほぼほぼ毎回満場一致で曲は決まっていて、今回も「これだ!」となっていましたね。
──今改めて初心に返った理由はなんだったのでしょうか?
KAƵUKI 僕たちにとって「RISE」はとても大切な曲で。ここまで色々なことをやってきましたが、今一度、「RISE」を超えるような作品を、と思っていたんです。
──“アニサマ”では「RISE」のあとに「SIN」が初披露となりましたが、新曲とは思えぬ盛り上がりでしたね。まさに超えていくような瞬間でした。
KAƵUKI あの歓声がすべてかなと思っています。初めて聴く曲であれだけノッてくれたということは成功と考えて良いのかなと。僕たちに求められていたものと、僕たちが出したものが、繋がったのかなと感じていました。
──前作は齋藤Pが制作に携わっていましたが、本作でも?
YOU-TA 今回も齋藤Pのお力をお借りしました。アメリカでライブさせてもらったりと、世界を意識した活動が増えていくなかで、発音や音の置き方を見直したほうが良いんじゃないかという話になったんです。齋藤Pが元々アメリカでお仕事をされていたということもあって、今回収録されている「SIN (English ver.)」のディレクションもお願いしました。
──日本語バージョンも英語詞が多いですよね。
YOU-TA そうですね。英語のフレーズに関してもアドバイスいただきました。これまでの曲にも英詞はありましたが、今回の曲は僕らが聴いてもクオリティが高いものができたなと思っています。
──前回のインタビュー時に、LINさんが齋藤Pの英語のディレクションが難しかった、というお話をされていましたが、今回はどうでしたか。
LIN 僕らが「できる」と期待してくれているからこそ、常にハイレベルの要求をしてくれるんです。現段階で納得ができる発音ができるようになったのは、齋藤Pのおかげだなと思っています。だから、求められることは厳しいけれど確実に良くなるということはわかっているので、楽しみながらチャレンジをしていけました。
KAƵUKI 僕は英語が全然できないんですよ(苦笑)。いつも英詞のレコーディング前には僕なりに発音をカタカナで振っていたんですが、今回、細かい発音を教えていただいて落とし込むことができました。本当に頼りになる存在でした。
YOU-TA KAƵUKI自身は英語が苦手と言うんですが……実は「SIN」のレコーディングのあと、直談判して個人的に齋藤Pに英会話レッスンをお願いしていたんです。アメリカに行ったときにコミュニケーション力不足を痛感して、何かできないかなと。それで3ヵ月ほどレッスンをしてもらっていました。そのときに齋藤Pが「KAƵUKIが一番伸びしろがある。発音に癖がないから言ったことがスッと入ってる」とおっしゃっていて。アメリカでもコミュニケーション力を発揮していたんですよね。例えば、ライブのときに「My passion is worldwide」って言ってたんですけど、お客さんがすごく湧いていて。僕らも海外の方が日本に来たとき、シンプルな言葉でもテンションが上がったり、気持ちが通じたりするじゃないですか。そういうことってほかのメンバーはできないことなので、すごいなと。良い役割をしてくれています。齋藤Pには英文法というよりも、実践で使えるものを教えてもらったので、これを海外で活かせたらなと思っています。
──LINさんは普段から英詞を書かれる機会が多いですが、そういうことは相談されたんですか?
LIN 自分の場合は、中学時代からの幼馴染がアメリカとのハーフなので、英語にはよく触れていたんです。それと、歌詞の相談もしていて。だから「こういう表現ってどう?」って聞いていますね。……実は大昔のMADKIDのメンバーなんですけどね(笑)。
──では、皆さんもご存知なんですね!
YOU-TA はい(笑)。
LIN そういう関係性なので、気兼ねなく相談できています。その友人の存在も制作に大きく影響を与えているかなと。「SIN」の歌詞についても相談をしていました。その後、齋藤Pにも見ていただいていますが、リテイクが少なくなっているのは彼のおかげなのかなと思っています。
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