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INTERVIEW

2023.10.06

『fhána Best Album「There Is The Light」』メジャーデビュー10周年――節目のタイミングでfhánaが提示する過去・現在・未来、これまでの歩みを彩った楽曲の思い出を振り返る

『fhána Best Album「There Is The Light」』メジャーデビュー10周年――節目のタイミングでfhánaが提示する過去・現在・未来、これまでの歩みを彩った楽曲の思い出を振り返る

今年8月21日にメジャーデビュー10周年を迎えたfhánaが、それを記念したベストアルバム『fhána Best Album「There Is The Light」』をリリース。そして10月7日には、10周年を記念したスペシャルライブ「fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE “There Is The Light”」を東京・LINE CUBE SHIBUYAで開催する。バンドの体制や周りの環境を一新して大きな転換点を迎えた彼らが、節目となるこのタイミングで提示するfhánaの過去・現在・未来、そしてそれらを祝福する“光”とはどのようなものなのか。“新しい世界線”への大きな一歩を踏み出す彼らに、ベスト盤と来るべきライブについて話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

メジャーデビュー10周年、そして“新しい世界線”に辿り着いた今の気持ち

――メジャーデビュー10周年おめでとうございます。改めて、10周年を迎えた今の所感についてお伺いしたいのですが、やはり特別な感慨もあるのではないでしょうか?

佐藤純一 感慨というよりも、このタイミングをしっかりと盛り上げなくてはいけない、という使命感が強いかもしれないです。これまで支えてきてくれたファンやスタッフの皆さんへの感謝の気持ちもありつつ、それに報いるためにも、10周年を良い形で迎えたい気持ちが強くて。メジャーデビューした頃の僕らは、まだ活動に対しての姿勢がふわっとしていたと思うんですね。もちろん良い楽曲を作りたい気持ちは強くあったけど、それぞれのリリースやライブを今後にどのように繋げていくか、活動の連続性や計画性という意味では深く考え切れていない部分があって。それが10年続けてきたことで、この先もしっかり積み上げていきたい気持ちが増したというか、解像度が高くなった感じがあります。

towana 多分、他人から「10年続けてきました」という話を聞くと、すごいなと感じると思うんですけど、自分のこととなると、長いのか短いのかよくわからないんですよね。でも、私の人生でこんなに長く1つのことを続けたことは他にないし、音楽活動を続けていくことの難しさ、それを続けてこられたのはたくさんの方たちのおかげだということを、年月が経つにつれてより感じるようになって……ひとまず「すごい!」と言ってもいいんじゃないかなと思います(笑)。この10年の中で責任感みたいな気持ちも強くなったんですね。デビューしたての頃は目の前のことをこなすのに精一杯だったけど、そういう時期はとっくに終わっているので、これからも続けていくために能動的に動かなくてはいけない。今はますます頑張っていきたいという気持ちです。

kevin mitsunaga この10年、長いか短いかで言ったら、僕はすごく短かったなと感じていて。その時々で目の前の課題にみんなで取り組んでいたら、いつの間にか10年経っていたっていう感覚なんですね。そんな10年間で何をすごく感じたかというと、自分自身の変化ぶりに一番びっくりしているんですよ。というのも、僕は性格的に保守的な人間で、自分で「僕はこういう人間だ」と意識すると、それに固執してしまう傾向があるんです。

towana わかるー!

kevin でしょ(笑)。でも、佐藤さんからのディレクションやアドバイス、外部からの働きかけによって、この10年で色んなことにチャレンジさせてもらった結果、そういう自分を好きになれたんです。それこそ「ケセラセラ」(1stシングル表題曲)でデビューしたときは、見た目からしてこういう人間になるとは思っていなかったし、ライブでのパフォーマンスやラップ、アニソンDJの活動もまったく想像してなかったことで。バンドにおいてもファンや周りの人たちに恵まれたからこそ続けてこられたことを強く感じています。

――今年7月には佐藤さんが代表取締役となるNEW WORLD LINE株式会社を設立して、fhánaとメンバーの皆さん、そして作詞家の林 英樹さんが所属となりました。そういった動きも、今お話いただいた活動に対する意識の変化の表れのように感じるのですが、いかがでしょうか。

佐藤 どこかの事務所に所属するのではなく、自分の会社を設立して、自分たちで判断したほうがスムースに事を運べるんだろうなとは、ここ何年か思っていたので、前の事務所との契約更新のタイミングで独立することにしました。雑務を含めて自分でやらなくてはいけないことが増えたので大変ではありますけど、自分が「こうしよう」と思ったらそのまま実行に移せるので、アーティスト活動にとって何が良いかを優先できるようになったのは良いなと思います。

kevin やっぱり関わる人が多ければ多いほど、「やりたいけど、でもなあ……」みたいなことも多いので。佐藤さんは社長業があるので大変だと思いますけど、僕はフレキシブルに色々やれそうな期待感があって、これからの動きにすごくワクワクしています。

towana ただ、独立して責任感が増したことで、ライブに対して今までにない怖さみたいなものを感じるようにもなりました。だからこそ、今までよりも1つ1つに心を込めることを意識するようになりましたし、前のインタビューでもお話したように、今は「やるしかない!」っていう気持ちです。もちろんそれが嫌なわけではないんですけど。

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佐藤 自分で決められることでストレスがなくなったぶん、別のストレスが増えて、色々な責任を引き受けなくてはならなくなったので、どこかに所属していたときのほうが楽でよかったなあと思うこともありますけどね(苦笑)。

――いやいや(笑)。あと、会社名は、fhánaがインディーズ時代に発表した最初の作品『New World Line』(2012年)から引用しているところにグッときました。

佐藤 以前から、もし独立して会社を作るとしたらこの名前でいこうと考えていて。「NEW WORLD LINE」か「SATOPRO(サトプロ)」のどちらにするかで悩んだ結果、こっちにしました。

kevin 前者になって良かったです(笑)。

メンバーたちが振り返る、この10年のストーリーを彩った楽曲の思い出

――メジャーデビュー10周年を記念したベスト盤『fhána Best Album「There Is The Light」』は、ランティス時代の楽曲を中心にした全32曲をCD2枚組にコンパイル。収録内容や曲順にもこだわりが感じられます。

佐藤 5周年のタイミングで出した前回のベスト(『STORIES』)はシングル曲を時系列順に並べていましたが、今回はシングル曲だけでなく、アルバムの表題曲やライブで重要な楽曲なども含めたので、曲順もライブのセットリストを決めるようなイメージで考えました。ただ、収録したいけど入れることのできなかった楽曲もたくさんありました。最近、10月7日に開催する10周年ライブに向けて、“FC限定ライブ当日リハーサルツアー”の応募者を対象にライブでやってほしい曲のアンケートを取ったんですけど、そこで自分的にもすごく好きな「The Color to Gray World」(2ndアルバム『What a Wonderful World Line』収録曲)が4位に入ったんですよ。なので、この曲もベスト盤に入れたら良かったなあと思って(苦笑)。

towana この間、ライブのセトリをみんなで考えるために、今ある楽曲を全部書き出したんです。そうしたらトータルで85曲くらいあって。10年続けていると、こんなに楽曲があるんだと改めて思いました。今回のベスト盤を聴いていても10年間の年月を感じることができて。古い曲と最新の楽曲が混ざって並んでいるんですけど、自分の歌い方や声の出し方が全然違うんですよね。昔の曲を聴いていると「もうちょっと口を開けて歌ってくれ」って思っちゃうんですけど(笑)、でも「ケセラセラ」とかを聴くと、このときにしか残せない声だなあと思いますね。

佐藤 昔は昔で良いよね。

kevin CDのほうは新旧入り乱れているけど、Blu-rayのMV集は完全に時系列で収録されているから、順を追って観ると面白いよね。「ケセラセラ」の頃はみんな撮影に慣れてないから、ほとんど棒立ちで、首がちょっと動くくらいっていう(笑)。

towana やだ~(笑)。そこからライブも経験して、見せ方とか撮られ方がわかるようになって、だんだん動けるようになっていきましたね。でも、そんなには変わらないよね、私たち。

kevin 根本の部分が?

towana なんか芸能人っぽくない感じというか(笑)。普通の人っぽいところはずっと変わらないじゃん。あと、ライブのMCがまったく上手くならないのは、10年経っても変わらないところかも。

kevin 確かに(笑)。でも、あれが我々の空気感だからね。もはやそれが持ち味になっているっていう。

towana でも、そこに甘えてしまってはいけないんだよ。

kevin もちろん、もっと良くしていこうという気持ちはあります!

佐藤 それでも、7月9日のライブ(“fhána Looking for the New World Tour 2023”)は、初代プロデューサーの佐藤純之介さんや初代マネージャーといった初期メンバーも観に来てくださったんですけど、「MCのバランスや流れの作り方が良くなった」と言っていましたね。下手なりに少しずつ成長しているみたいです(苦笑)。

――今回のベスト盤収録曲の中から、特に思い出深い楽曲や改めてみんなに聴いてほしい楽曲を、1曲ずつ挙げていただけますでしょうか。

佐藤 もちろん全曲思い入れはあるのですが、今パッと浮かんだのは「white light」(1stアルバム『Outside of Melancholy』収録曲)ですね。この楽曲は音源で聴いてもエモいんですけど、ライブでやるとまさに白い光に包まれるような感覚があって、それが自分の中にずっと残っている感じ。ベスト盤の1曲目にした「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」(1stアルバム『Outside of Melancholy』収録曲)も思い入れが強くて、ライブの定番曲としてほぼ毎回セトリに入れているんですけど、「white light」は重厚かつ壮大なので、ライブでは節目になるようなタイミングでしかやっていなくて。だからこそ特に印象深く残っていますね。

――自分も2019年のツアー“where you are Tour 2019”のファイナル、12月15日に行われた千葉・舞浜アンフィシアター2デイズ公演の2日目のラストで披露された「white light」の光景は脳裏に焼き付いています。確か、前日にも演奏したんですよね?

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佐藤 そう、1日目は1曲目にやったんですけど、それはそれで「これからすごいライブが始まるぞ……!」という雰囲気が出て、エモい始まり方になりました。

kevin 「white light」は1曲目にやると、世界観が作られて特別感が出ますよね。僕は今回のベスト盤から1曲を挙げるとしたら、「君という特異点 [singular you]」(1stシングルのカップリング曲)ですね。この曲は自分の中で他の楽曲と何か違う感覚があるんですよ。特にライブでやると、イントロがかかった瞬間から、お客さんの「この曲をやってくれた!」っていう反応も含めて、すごくキラキラ感があるんです。あとは単純に1stシングルのカップリング曲という、記念すべき最初のタイミングで“特異点”というワードを使っていることもエモくて。だってそのメジャーデビューした瞬間から、僕らの運命は大きく変わっていったと思うんですよ。そこからこの世界線が始まったという意味も含めて、思い入れが強い曲です。

佐藤 この楽曲もライブではたまにしかやらないけど、やるとワッと盛り上がりますね。

towana 明るいしアップテンポな楽曲だけど、エンドロールみたいな感じがして。

kevin そうそう、切ないんだよね。最後は“ラララ~♪”って手を振って終わるところも含め、この楽曲はすごいエモーショナルパワーを感じるんですよね。

towana 良い言葉(笑)。“エモい”って、今の時代、使われすぎてて、ちょっと軽いもんね。もっと違う言葉で表現したいことがよくある。

kevin そう、この曲にはもうちょっと重々しい感覚があって。それがエモーショナルパワー。

towana 私はやっぱり「青空のラプソディ」(10thシングル表題曲)ですね。この楽曲を歌う前にポリープの手術をしたので、自分のボーカリスト人生的にも特異点だったんですよ、「青空のラプソディ」は。私は手術をすること自体そのときが生まれて初めてで、怖いからできればやりたくなかったんですけど、手術すると決めたときに、歌手として生きていく覚悟が強まったんです。そこから術後明けて一発目にレコーディングしたのがこの楽曲で。そうしたら『小林さんちのメイドラゴン』も人気が出て、この楽曲に「歌手を続けてもいいですよ」と言ってもらえたみたいな気持ちがあるので、もちろん楽曲自体のパワーもすごいですけど、いつ聴いても、いつ歌っても、楽しくなれちゃうんです。それは多分これからもずっとそうだと思っています。

――どのライブで観ても、最高に楽しいですからね。

towana しかもどのライブでもやってるんですよ。

kevin そうだね、名刺代わりみたいな楽曲になっていて。

towana 「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」も結構な数やっているけど、多分、リリースしてから一度もライブで欠かしていないのは「青空のラプソディ」だけだと思う。でも、どのアーティストさんにも、ライブに行ったら何回も聴いているけど、それでも聴きたい楽曲があると思うんですよ。fhánaにとってはそれが「青空のラプソディ」なんだと思います。

kevin 間違いなくそうだと思う。

――今お話を聞きながら気になったのですが、towanaさんはポリープの手術をした前と後で、自分の歌声が変わった感覚はあったのでしょうか?

towana 全然変わりました、本当に別人になったような感覚。術後の安静期間が明けてから最初に歌ったとき、世界が全然違ったんですよ。それまでは本当に灰色の世界、という感じで。2ndアルバム(『What a Wonderful World Line』)の頃はつらい思い出が多くて、毎日「もう歌えない……!」と思ってずっと沈んでいたんですけど、そこから「青空のラプソディ」でパーン!と開けて。神様が助けてくれたような感じでした。

佐藤 作って良かったなあ。

ベスト盤のための新録曲、towana版「True End」が生まれた理由

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