INTERVIEW
2023.10.13
10月より放送中のTVアニメ『ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』のOPテーマを歌う上坂すみれと、EDテーマを歌うカノエラナの対談が実現した。普段は引っ込み思案な2人だが、ゲスト出演をキッカケに意気投合し、プライベートでも親交を深めている。そんな互いの良さを知る者同士が楽曲について語り合うリスアニ!独占のスペシャル対談!この機会に声優アーティスト、シンガーソングライターとしての特徴を感じ取ってほしい。
HAIR MAKE BY 澤西由美花(上坂すみれ担当)
STYLING BY 佐野夏水
PHOTOGRAPHY BY 梁瀬玉実
INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉
――お二人は、上坂さんのYouTubeチャンネル『上坂すみれのおまえがねるまで』(2022年3月5日配信)にカノエさんがゲストで来られたことをきっかけに、意気投合され親交を深められた間柄だそうですね。
上坂すみれ そうですね。あの2回の番組収録で一気に仲良くなった気がします。このときが本当に初めましてだったのですが、話していて安心する感じというか、人間の根の部分がとても似ているなと思いました。カノエくんに対しては好きなものへの突き詰め方もとても尊敬できます。私はまったくシンガーソングライター的な活動をしていないのですが、声優と同じようにモノづくりに情熱を捧げて、自分のポリシーがきちんとあって、もし同じクラスにいたら絶対に仲良くなっていたと思います。
カノエラナ めちゃくちゃ仲良くなって、昼休みまでずっと一緒に給食を食べていたんだろうなって(笑)。番組にお呼ばれしたときはやっぱり緊張していたんですけど、番組内のコーナーでお話ししたら共通点がありすぎて。
――その後、プライベートの交流はいかがですか?
上坂 一緒に食事に行きました。創作カクテルを出すバーに行ったときに、渋い茶色系のカクテルを出してもらって、それがすごくカノエくんにお似合いで。
カノエ 上坂さんのカクテルにはお花が乗っていましたね。
――絵になりそうな感じですね。どんなお話をされたんですか?
上坂 フィールドがまったく違うから、互いの生活のことを聞くだけでも全然違って。カノエくんは「アフレコってどうやるんですか?」と、逆に私は「曲ってどうやって作るんですか?」みたいに、それだけで2時間も3時間も経ってしまう感じですね。
カノエ お仕事っぽい話から、内々の話まで色々するなかで夜が更けていって……。普段はあまりお酒を嗜むほうではないので、上坂さんのペースに合わせているとお酒が大変進みました(笑)。お互い、他人と打ち解け合うのがあまり得意じゃないと聞いていたのですが、会話が止むことなく、食べているときもずっとしゃべっていましたね。
上坂 もう、聞きたいことがたくさんあって純粋に楽しくて、そのままラジオで流せるくらい。生活から仕事から、スタンスもまったく違うし、面白くてめちゃくちゃ質問しまくっていた記憶があります。
――カノエさんは上坂さんのアルバム『ANTHOLOGY & DESTINY』で『シャニカマエ―ル』を楽曲提供されました。どのように書かれましたか?
カノエ 上坂さんに歌っていただきたいことを書くのは大前提ではあったのですが、番組の中で結構同じところが見つかったので、私自身の思っていることも書いてみたら、意外と上坂さんに合うのかもしれないなと思って。私自身もステージに立つときに武装するかのように強い格好をして、ステージ上ではイキがるみたいな姿勢を取るんです。ステージ上という境目はあっても、どんな状況にあっても自分自身は曲げないぞという性根の強さみたいなものも折り込みつつ、作らせてもらいました。
上坂 『シャニカマエ―ル』というタイトルから最高だなと思いました。斜に構えているけどエールもくれるんだって。ちょっとひねくれているけど、根っこに優しいところがあったり、でも一定の自分のエリアを守るという意思があったりして。ジャズ調というのも新鮮でした。私的にはあまりキャラソンでも歌ったことないジャンルで、本当に私のキャラソンみたいにぴったりな歌詞とメロディも歌っていてとても楽しくて、早くライブで披露できたらいいなと思っています。
――ジャズというジャンルを選ばれたのは?
カノエ 自分自身が、曲調としてちょっとダークっぽいジャズのメロディラインがとても好きなこともあり、上坂さんだったら自分自身には出せない色気みたいなものもお料理してくださるのでは、といった願望も込めて作りました。
――必ずしも自分が生み出すものを自分で歌うのではなく、相手がより良く料理してくれそうなところを想定したうえでご提供されるんですね。
カノエ そうですね。シンガーソングライターといっても、本当に色んなタイプの方がいらっしゃるんですけど、私は自分の曲をいつも歌うというよりも、誰かに成り代わって歌うという歌い方をしているタイプなんです。相手方の立場になって、相手を見ている第3者、第4者みたいな目線にも立って書いていたりするので、誰かに対して曲を送るっていうスタイルがすごく合っているなと、活動を通じて知りました。歌うのが自分自身でなくとも、その方になり変わるような目線で書けると、幅が広がるかなと思って。
上坂 憑依するんですよね。普段のカノエくんは、とにかく親近感が湧く方なのですが、歌が憑依した瞬間のギアの入り方は役者にも通ずるものがありますね。メロディに乗せて一緒になってしまう姿がすごくかっこ良くて、それをセリフではなく歌声で、声を変えるわけでもないのに、色んな人生が見えてくる。歌声とギター1本で人間を作り上げ、こんなにも無限に表現できるというところがかっこいいなと思いました。
――表現者という意味で共通する部分はありつつも、アプローチの仕方に違うところがまた互いの味になっているんですね。
上坂 そうですね。カノエくんは思いついたら止まらない感じで曲を作られていて、すごく楽しくやっているんです。好きなことを仕事にするのって、バランスが大変だと思うんですが、曲作りに対する情熱と楽しさが伝わってくるのが良いなと思います。
――カノエさんは大変ではありませんか?
カノエ 私は裸の自分のままでは舞台に立つことができないと思っていて、自分自身で演じないといけないなと思って歌詞や曲を書いているんです。逆に役者さんは台本があって、その子の人生を本当に言葉だけで表現するのがすごいなと思っています。メロディも歌もなしに、一言だけで決める。私もアニメ作品をたくさん観てきて、本当にそれだけで空気が震える瞬間を感じてきました。自分自身はメロディがある程度助けてくれるので、そこにその日の感情だったりを少し出しつつ、ライブで手を変え品を変え自由にやるとできるんですけど、役者さんはそこが自由ではないぶん、色々アプローチをしつつ、一瞬で決めなくてはいけないという大変さもあって、本当にすごいです。
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