INTERVIEW
2023.10.04
「第61回 日本レコード大賞 新人賞」を受賞した演歌・歌謡界の若きスター・新浜レオン。2022年にはTVアニメ『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』のOP主題歌「捕まえて、今夜。」を担当し、オープニングのダンスはネットでも大きな話題になった。演歌・歌謡曲の伝統をリスペクトしつつ、若い世代にその魅力を伝えるべくアニソンなどの新たな境地に挑んでいく新浜。その原点となったものはなんだったのだろうか?
INTERVIEW BY 冨田明宏
TEXT BY 金子光晴
――デビューから5年目になりますが、活動を振り返ってみていかがですか?
新浜レオン 最初の1年以外はずっとコロナ禍でなかなかコンサートもできない時間が続いていました。1年目はまず成田山新勝寺でのデビューイベントでスタートして、その年は目標にしていたレコード大賞新人賞をいただき、そこから全国でコンサートをやっていこうというときにコロナ禍にぶつかって……。2年目、3年目は全国での予定が全部白紙になり、自分が大事にしていたコンサートでの掛け合いや、ファンの皆さんとの握手ができなくなるというかなり厳しい状態が続いていたんです。逆にその期間で、今までの演歌界ではなかったネット配信やインターネットサイン会も初めてやったので、今となっては新しいツールを見つけることもできたし、活動の幅がコロナ禍で広がったのかなと思います。でもこの間のコンサートをやったときには、やはり皆さんに会って歌をうたって話をする、というのが自分にとっても一番幸せなことだなと再確認しましたね。
――LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)での“新浜レオン 5周年記念コンサート”では、大先輩歌手の皆さんからのメッセージや、五木ひろしさんの登場もあって、いかに新浜さんがファンや演歌/歌謡界で愛されているのかがよくわかる、なんて幸せなステージなんだろうと思って拝見していました。
新浜 嬉しいですね。よく「どうして若いのに演歌を?」って言われるんですけど、父親(髙城靖雄)が演歌歌手ということもあって本当に演歌が大好きだったんですよ。学生時代、高校までは野球をずっとやっていたんですけど、それと同時にどうやったら友達やまったく演歌などが興味のない人に、演歌や歌謡曲を届けられるんだろうってずっと思っていて。それで、ずっと演歌を支えてらっしゃる演歌ファンはもちろん、それ以外の新しい道を拓くことが自分の使命だと思って、B ZONE(旧ビーインググループ)からデビューしてからも、その意味を考えてきました。この間のコンサートで五木さんのカバーをやるときもダンサーをつけさせてもらったりとか、そういった演出もB ZONEとの融合感が新しいものになっていくんじゃないかなと思っています。自分は今まで演歌・歌謡しか勉強してないですけど、今の歌をディレクションしてくれるスタッフさんは演歌が初めてという環境で曲作りをしているので、「ポップスだったらこうやって歌うんだ」という引き出しをお互いに交換しながらやり取りができることに可能性を感じているし、わくわく感が毎回あります。今までの伝統はリスペクトしながらも、果敢に色んなものを吸収して、「演歌・歌謡界初」というものにどんどん飛び込んでいきたいですね。
――それが形になったコンサートでしたよね。一番思ったのが、歌い方の部分。デビュー当初は演歌・歌謡曲に対する絶大なるリスペクトを歌唱表現でわかりやすく体現していましたが、現在はポップス・シンガーでもあり、演歌・歌謡歌手でもあるという絶妙なラインが体現されていて。この流れがコンサートで一つの美しいストーリーになっていたように感じました。
新浜 めちゃくちゃ嬉しいですね。僕は西城秀樹さんがとにかく大好きで、秀樹さんからいただいている影響がものすごく大きいですね。
――それはこの間のコンサートからもビシビシ伝わってきました。
新浜 それくらい本当に好きで、いざデビューするとなったときに若い世代に演歌・歌謡曲を届けたいとずっと思ってきました。どうして小さいお子さんからお年寄りまで、ライブで「ヒデキー!」ってみんな言えるのかなと考えたときに気づいたんですが、一番のポイントは振り付けだったんですよね。皆さんご存じの「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」もそうですし、「情熱の嵐」とか……。
――あとは「ブーメランストリート」とか?
新浜 まさにそうです。「みんなと会場でできる」という要素が若い人や、演歌・歌謡曲に興味ない人へのきっかけになるのかなと思って、今回の新曲「捕まえて、今夜。」や前作も振り付けをポイントに置きました。自分もダンスが得意なほうではなく、デビューしてから始めた感じなんですけど。
――新浜さんは演歌・歌謡を閉じた文化にしない、という使命感を強烈に持っていらっしゃると思うんですね。演歌/歌謡界では最若手でありながら、そこまで使命感を持つのはなぜだと思いますか?
新浜 原点を振り返ると、自分の夢はプロ野球選手だったのですが、プロ野球選手には登場曲ってあるじゃないですか。そのときに父親の曲を流したいって幼少期は思ってたんですよ。登場曲に演歌が流れたら良い意味で違和感があって笑いも起きるかもしれないし、父の曲も売れるきっかけになるんじゃないかと。それくらい、根っから演歌・歌謡曲が好きなんでしょうね。
――せっかくの機会なので、アニメ・アニソンを扱うメディアとして伺いたいんですけれど、アニメって観ていましたか?
新浜 はい、観てましたね。高校までは野球に打ち込んでいたのでプライベートの時間はなかなかなかったんですけど、王道のアニメは観ていました。『ちびまる子ちゃん』とか。
――ああ、西城秀樹さんが主題歌を歌われてましたよね。
新浜 そうなんですよ!秀樹さんを一番最初に知るきっかけになったのが、実は『ちびまる子ちゃん』なんです。あの世界に秀樹さんが出てきますけど、僕は本名が髙城(たかじょう)なので、翌日小学校で「昨日、髙城出てたよね」ってネタみたいになってて(笑)。秀樹さんがアニメに出てくると自分がいじってもらえることや父の影響もあり、秀樹さんの曲を聴くようになったんです。そういった意味では、まるちゃんが秀樹さんへの憧れを作ってくれた一歩だった気がしますね。あとは、当時流行った『NARUTO -ナルト-』とか、野球をやってたので『MAJOR』はめちゃくちゃ観てました。それから中学校くらいのときには『イナズマイレブン』のゲームをニンテンドーDSでやってましたね。もちろん『名探偵コナン』も観てましたし、普通にアニメは観ていました。
――なるほど、そこがルーツだったんですね。ファンの皆さんが「レオン!」って言いたいのは、「ヒデキ!」と同じじゃないですか。そこから発展して「レオン語」が生まれてきて。
新浜 「レオン語」、そうなんですよね……(笑)。まあ、演歌・歌謡を知ってもらうきっかけとして、まず「新浜レオン」という名前を知ってもらえればと思って、バラエティも去年くらいから挑戦させていただき、そこから生まれてきたのが「レオン語」なんですが……一向にウケなくて現場が凍り付くんですよぉ(笑)。「さんま御殿」でも(明石家)さんまさんに「もうやめろや」と言われたり、「ダウンタウンDX」でもダウンタウンさんに「そんなのより『伯方の塩』(父・髙城靖雄の有名なCMソング)言ってたほうがいいよ」と言われたり……(笑)。バラエティに出るときには、まだまだ僕の演歌・歌謡が世間的に届いていないので、毎回キャッチコピーは「伯方の塩」なんですよ。だからまずは「伯方の塩」を超えたいなと。
――偉大なお父さんの仕事を超えるという。
新浜 でもそういった意味でも父に感謝ですね。これからもバラエティや色々なものに挑戦していきたいです。なかでも、デビューして一番大きなきっかけを踏めたのが「捕まえて、今夜。」(TVアニメ『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』OP主題歌)で、こんなにも早く夢が実現するとは思わなかったです。
――やはりB ZONEといえば歴代の『コナン』のテーマ曲ですから、「いつかは『コナン』」という想いはありますよね。
新浜 はい、夢でしたね。しかも『犯人の犯沢さん』でというのがものすごく嬉しくて、『犯沢さん』の大地(丙太郎)監督が僕を指名してくださって決まったんですよ。2つ前の作品で「ダメ ダメ…」という曲があるんですけど、この曲を監督がすごく気に入ってくださって。大地監督自身も演歌・歌謡が大好きらしく、最初は「ダメ ダメ…」みたいな曲でちょっとコミカルで、「マツケンサンバ」みたいなイメージでというお話もあったんですが、でも『犯沢さん』らしいミステリーな雰囲気もほしいねということで何曲かデモを作ったんです。そこから大地監督を含めたチームの皆さんに選んでいただいて、「捕まえて、今夜。」が生まれたんです。
――これ以上やりすぎるとコミカルになりすぎるし、新浜レオンの新曲としてはもう「ここしかない」という絶妙なラインの曲ですよね。ポップスに近いテイストだけど、馬飼野康二さん、鎌田俊哉さん、船山基紀さんという、いわば歌謡曲からJ-POPに亘るこの業界を作った方々が手がけて、EARSYさんの歌詞も作品を的確かつユーモラスに捉えていて素晴らしかった。
新浜 初めてデモが送られてきたときに、僕が大好きな70年代、80年代の王道の歌謡曲の香りがして、かつ船山先生の演歌・歌謡ではない打ち込みの音がものすごく面白いなと思って、この曲に大きな可能性を感じました。歌入れをする時に歌詞が届いて、どこまでも『犯沢さん』の世界観が伝わる作品に、というのをテーマに制作したので、ものすごく面白かったですね。
――ノンクレジットOPムービーのコメント欄を見ていると「このOPは飛ばせない」という感想があったり、海外の方のコメントもあったりして、犯沢さんが踊る、蘭と灰原も踊るというキャッチーな映像との相乗効果がすごいなと思いました。ある意味、踊るのはコナンにおいても伝統でもあります。あの映像をご覧になってどう思われましたか?
新浜 まさか自分の声でここまでキャラクターのみんなが踊ってくれるとは夢にも思っていなかったので、ただただ感動でした。普段は演歌を聴かない、演歌歌手は誰も知らないという方もたくさん聴いてくれるんだろうなと思うと、これから先の未来に希望を感じましたね。
――アニメソングの良いところですよね。ロックだろうがポップスだろうが歌謡曲だろうが、作品に合えばジャンルは問わない。実際に若い世代の新浜さんの歌が若いアニメファンに届いたということは、きっと今後の演歌・歌謡界に大きく寄与すると思うんですよ。
新浜 嬉しいです。僕自身もアニメをたくさん観て、まだまだこの曲から生まれる可能性でワクワクしたいですね。秀樹さんのヒット曲の背景を見ても時代と共に生まれてくるものなので、様々な方法で、とにかく大好きな演歌/歌謡の魅力を伝えていける人間でありたいと思います。
――去年、私(冨田明宏)も参加している「令和4年アニソン大賞」でも、この曲の話題で盛り上がったんですよ。
新浜 もう、しっかり見させていただきました(笑)。
――それはお恥ずかしい(笑)。でもギャグ要素の強いスピンオフ作品であり、今までの『コナン』の主題歌とは違う形ではあったと思うんですが、「このポジションは新浜レオンしかいない」という1つのジャンルになった感があるんですよね。
新浜 実は、僕自身の歌い方って演歌・歌謡というジャンル的には思いっきりこぶしを回して歌っているわけではないし、とはいえポップスでもないということで、最初は会社としても立ち位置として難しいという話をされていたんですね。でも、この『犯沢さん』で完全に吹っ切れて、「この路線でいいんだ」という確信に変わったんです。むしろオンリーワンを目指して、もっともっとこの道を極めたいですね。
SHARE