リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

REPORT

2023.10.02

“真っ直ぐに不器用でも良い”――「どこかの誰かの物語」に寄り添い、様々な演出で魅せた「新しいホロライブ」の姿。“Blue Journey 1st Live「夜明けのうた」レポート

“真っ直ぐに不器用でも良い”――「どこかの誰かの物語」に寄り添い、様々な演出で魅せた「新しいホロライブ」の姿。“Blue Journey 1st Live「夜明けのうた」レポート

人気VTuberグループ・ホロライブとユニバーサルミュージックが共同で設立した新レーベルholo-nの第一弾プロジェクト、Blue Journeyの“1st Live「夜明けのうた」”が、9月13日、東京ガーデンシアターで開催された。本稿ではその様子をレポートする。

TEXT BY 杉山 仁

歌&ダンス&朗読で魅せる、「新しいホロライブ」が詰まったプロジェクト

Blue Journeyは、ホロライブから様々なメンバーが参加し、普段の明るくキラキラしたアイドル像とは一味違う楽曲によって、メンバーのこれまでとは違う魅力を伝えてくれるプロジェクト。今年3月に開催された4度目の全体ライブ “hololive 4th fes. Our Bright Parade” にて存在が明かされ、4月より1ヵ月ごとに「僕は独りだ」「君になりたかった」「あの日の僕らへ」「astro」といった楽曲を次々に公開。そして9月6日には全12曲入り(初回限定版&UNIVERSAL MUSIC STORE盤のみ13曲目『The Bonus Track(Instrumental)』を収録)」の1st アルバム「夜明けのうた」が発売され、話題となった。

今回の“Blue Journey 1st Live「夜明けのうた」”は、このプロジェクトにとって初のライブ公演。これまでのホロライブの公演とは異なり、歌やダンスだけでなくメンバーによる朗読パートも用意され、公演全体を通しておぼろげに「僕」を主人公にした架空の物語が浮かぶ構成のライブになっている。また、照明演出や衣装、ペンライトなどは全体的に青や白を基調にしたもので統一されており、Blue Journey(=青の旅)の世界観を大切にしたものになっている。

まずは冒頭、ステージに突然現れた無数の光が徐々に集って大きな光になり、最初の朗読パートがスタート。アキ・ローゼンタール、白銀ノエル、大神ミオ、天音かなた、獅白ぼたん、博衣こよりが感情を込めた語りを披露して、楽曲の登場人物の心の中に潜っていくような不思議な感覚が会場を覆う。多くの言葉は「~だった」という過去形で語られており、物語の主人公が抱える後悔などが臨場感たっぷりに伝わってくるようなオープニングだった。

その最後に、「これは、そんな僕の物語」と博衣こよりが伝えると、ステージに湊 あくあ、宝鐘マリン、角巻わためが登場。Blue Journeyの第一弾曲としてリリースされた「僕は独りだ」でライブがスタートした。

青と白を基調にした、「どこかの誰かの物語」に寄り添う演出・歌の魅力

Blue Journeyでは、楽曲の登場人物の感情を表現することに何よりも重きが置かれている。それはパフォーマンスや演出も同様で、フォーメーションダンスで互いにポジションを入れ替えながら、楽曲に込められた後悔や葛藤を代弁するように歌うメンバーの姿は、いつになく新鮮な魅力に溢れている。「僕は独りだ」でも、湊 あくあが序盤で披露する“不安でさ”という感情を込めた歌い方など筆頭に、3人の豊かな感情表現で会場を盛り上げていく。通常のように観客を煽って盛り上げることはなく、むしろ曲の世界観に引き込むことでじわじわと盛り上げてくれるような、不思議な余韻が感じられるライブになっている。

そのまま宝鐘マリンだけがステージに残ると、流れるように「君になりたかった」のイントロが始まり、バーチャルな存在ならではの一瞬の転換でさくらみこと尾丸ポルカが登場。3人でのパフォーマンスがスタートする。Blue Journeyではセンターは基本的に設けられておらず、メンバーが頻繁にフォーメーションを変えていくのも印象的だ。この構成は、Blue Jurneyで描かれている「どこかの誰かの物語」を集めた群像劇的な魅力とも相性が良い。

続いて不知火フレアが登場し、「Blue Journey 1st Live『夜明けのうた』へようこそ。今日は皆さんとともに旅に出たいと思います」と伝えると、常闇トワ、尾丸ポルカも加わって「また傷に触れる」を歌唱。背後にこの日出演するメンバーの名前が流れ星のように次々に現れては消えるなか、常闇トワが“ねぇここが痛いのは”と胸を叩いて歌うなど、このプロジェクトらしいパフォーマンスで会場を盛り上げる。終盤に伸びやかな3人の歌声が畳み掛けるように盛り上がっていく様子が素晴らしい。

以降は大空スバル、癒月ちょこ、さくらみこ、常闇、沙花叉クロヱ、角巻わためによる朗読パートへ。続く、白上フブキ、兎田ぺこら、雪花ラミィの「ラブソングはいらない」では、実写映像や歌詞のタイポグラフィを使った演出と、青や白を基調にしたライトがメンバーの髪色などとリンクしてステージに映える。「astro」では上空に吊られたブランコに乗って、猫又おかゆ、白銀ノエル、天音かなたが登場。出会いや別れを経験してなお続いていく人生を銀河の旅になぞらえた曲を相性抜群のソフトな声で歌うと、映像も惑星などをモチーフにした演出で華を添える。

次の「不純矛盾」では、戌神ころね、兎田ぺこら、姫森ルーナ、博衣こよりが登場。ステージを横に広く使って観客の元に向かいながら、都会のビル群を映した映像をバックに繊細で洒脱なディスコファンクを披露。全体ライブなどでは「なぜそんな選曲を……!?」と良い意味で観客を驚かせてくれる戌神ころねが、シックな衣装でしっとりと歌う姿も新鮮だ。

以降もライブは青と白を基調にしながらも、楽曲ごとに様々な演出を織り交ぜて続いていく。アキ・ローゼンタール、白上フブキ、鷹嶺ルイによる「泡沫」は、海の底に水面からちらちらと光が差すような演出が用意されており、楽曲で描かれている登場人物の心情と重なる。大神ミオ、猫又おかゆ、鷹嶺ルイの「夏を許せない」では、夜空の星をバックにスタンドマイクで3人が歌唱。どの楽曲も「夜」がテーマになっていることが多く、そこに徐々に光が差していくような内容になっていることで、登場人物が悩んだり葛藤したりしながらも次第に成長していく様子が表現されていく。「夜明けのうた」というタイトル通り、いつか来るはずの夜明けに向かって、「僕」が自分を見つめ、向き合っていく姿が描かれる。

続いて湊 あくあがタイトルを告げると、天音かなた、雪花ラミィが現われて3人で「あの日の僕らへ」を披露。この楽曲は3人の動きが時間差で連動していく振りが印象的で、サビでは視界を広げるようなイメージでサーッと照明が広がっていく。高音/中~低音が混ざった3人の歌声の相性の良さも印象的だった。

全体曲「水たまり」も披露。Blue Journeyは次の物語へ

ライブ終盤では、鷹嶺ルイ、姫森ルーナ、尾丸ポルカ、不知火フレア、宝鐘マリンが朗読を披露。Blue Journeyでは朗読といっても声だけではなく、身振り手振り、表情なども含めてメンバーの演技が楽しめる。そのため、語りだけでなくちょっとした目線の動きや表情の変化などでも、楽曲の登場人物の心情が丁寧に表現されているのが印象的だ。

アキ・ローゼンタール、大空スバル、大神ミオによる「光の軌跡」は、3人が向き合って声を合わせて歌う1番のサビ終わりのリフレインや、互いに手を取り合って前に踏み出していくような終盤の振り付けが印象的。角巻わため、獅白ぼたん、沙花叉クロヱによるアルバムの1曲目「ツキノナミダ」は疾走感がありつつも切ない演奏と歌声とでライブ終盤をさらに盛り上げていく。“届いて”という歌詞に合わせて手を空に向けて伸ばす振り付けや、歌詞に連動して夜空に浮かんだ月が登場する映像演出も印象的だった。

本編最後はさくらみこ、癒月ちょこ、大空スバル、常闇トワ、沙花叉クロヱによる「サザンクロス」。ここでは沙花叉クロヱと大空スバルが「私たちと皆さんの旅が、これからも続きますように」「この曲は声出していくよー!」と伝えると、照明がぐっと明るくなり「オイ!オイ!」という観客のコールが生まれ、いよいよ前を向いて歩き出す「僕」の背中を押すような温かい雰囲気が生まれていく。終盤には、アルバム音源にはないライブならではの台詞も登場。「生きるのは楽しいことばかりじゃないのは知ってるから」「誰にも話せない悩みにだって共感したいから」「輝きだけじゃない、影とともに歩んでいく」「Blue Journeyは、これからも旅を続けていきます」「誰かの心に少しでも寄り添えるように」と順番に伝えると、紙吹雪が会場いっぱいに舞い、心の旅を強く肯定するような雰囲気でライブを終えた。

通常のライブとは異なるストーリーテリングを重視したライブならではの雰囲気を伝えるように映画のようなエンドロールを挟んで始まったアンコールでは、兎田ぺこら、白上フブキ、湊 あくあ、猫又おかゆ、雪花ラミィが朗読を披露。ここでは「僕」の心模様を雨が降っている様子に喩えて朗読し、その後初披露となる全体曲「水たまり」を23人全員で披露。

この楽曲はアルバムの初回限定盤とUNIVERSAL MUSIC STORE盤に13曲目として収録されていた「The Bonus Track(Instrumental)」に歌をつけたもので、ここまでのパフォーマンスで描かれてきた「僕」が力強く前を向いて新しい場所に進んでいく様子が歌われた楽曲になっている。メンバーのボジションがどんどん入れ替わっていくバーチャルならではの演出も、Blue Journeyの群像劇的な魅力を改めて伝えてくれるようだった。最後は全員で挨拶をすると、大歓声が生まれてライブ終了となった。

全編を終えて感じたのは、1時間というコンパクトな公演時間の中でも、このプロジェクトならではの、誰かの心の中を深く表現するような楽曲の魅力がたっぷりと感じられたこと。どこかにいる誰かの物語を、歌、ダンス、朗読で伝えるこのプロジェクトならではの演出は、普段以上に楽曲そのものの魅力を体感したり、何かを考えたり、想いを馳せたりするような、通常のライブでは体験できないような詩的なライブ体験を与えてくれる。果たして次の物語はどんなものになるのか、ますます楽しみになるような素晴らしいライブだった。


■Blue Journey 1st Live「夜明けのうた」セットリスト

M1.僕は独りだ
M2.君になりたかった
M3.また傷に触れる
M4.ラブソングはいらない
M5.astro
M6.不純矛盾
M7.泡沫
M8.夏を許せない
M9.あの日の僕らへ
M10.光の軌跡
M11.ツキノナミダ
M12.サザンクロス
M13.水たまり


●ライブ情報
Blue Journey 1st Live「夜明けのうた」
主催:カバー株式会社 / hololive production / hololive

【公演特設サイト】
https://bluejourney1stlive.hololivepro.com/

【出演者】
アキ・ローゼンタール、白上フブキ、湊あくあ、癒月ちょこ、大空スバル、大神ミオ、さくらみこ、猫又おかゆ、戌神ころね、兎田ぺこら、不知火フレア、白銀ノエル、宝鐘マリン、天音かなた、角巻わため、常闇トワ、姫森ルーナ、雪花ラミィ、獅白ぼたん、尾丸ポルカ、鷹嶺ルイ、博衣こより、沙花叉クロヱ

【配信チケット】
▼配信チケット(Z-aN、SPWN):¥6,500(税込)
受付期間:2023年7月8日(土)21:00~2023年10月17日(火)20:00まで購入可能。
※ライブ終演後準備が整い次第アーカイブ視聴可能となり、2023年10月17日(火)23:59まで何度でも ご視聴いただけます。
※2023年10月17日(火)23:59を過ぎると、アーカイブ視聴中でも視聴できなくなります。

Z-aNチケット購入URL :
https://www.zan-live.com/live/detail/10308

SPWNチケット購入URL:
https://spwn.info/45PLv7f

関連リンク

Blue Journey 1st Album「夜明けのうた」特設サイト
https://sp.universal-music.co.jp/bluejourney/yoakenouta/

Blue Journey 公式YouTube
https://www.youtube.com/@BlueJourney

Blue Journey 公式X
https://twitter.com/BlueJourneyInfo

ホロライブ 公式YouTube
https://www.youtube.com/@hololive

ホロライブ 公式X
https://twitter.com/hololivetv

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP