REPORT
2023.10.02
2002年10月から放送が開始されたアニメ『NARUTO-ナルト-』。放送20周年を迎えたことを高らかに祝うライブイベント“NARUTO THE LIVE”が、2023年9月2日、3日の2日間にわたり幕張メッセ イベントホールで開催された。この20年の間に、孤独な落ちこぼれ忍者だったナルトは、里一番の忍・火影となり、家族を持ち、息子・ボルトへと物語が受け継がれた。同じく『NARUTO』を夢中で見ていた少年たちが音楽を知り、楽器を手にし、いつしか『NARUTO』シリーズの主題歌を歌い、20周年を祝うステージに立つという奇跡も。繋ぐこと、繋がること、『NARUTO』が見せた音楽の奇跡が花開いたライブイベント、その1日目をレポートする。
TEXT BY えびさわなち
カメラクレジット:サイトウダイシ、ツボイヒロコ
「見てみろよ、サラダ!こんなにたくさんの人が集まってるってばさ!」と会場に響くボルトの声。「俺らと同じ年くらいから父ちゃんたち世代まで!さすが20周年記念ライブだな!これからスゲぇステージが見られるんだろ?早く始まらねぇかなぁ!」と期待感たっぷりの言葉に、「興奮するのはわかるけど!」と諫めるサラダ。ナルトとサスケの子どもたちがライブの注意事項を読み上げ、最後に「盛り上がる準備は出来ているかー!」と叫ぶと、いよいよライブがスタート。
祭囃子のような和太鼓の音が轟くと、最初に登場したのはKANA-BOON!大きな拍手が会場を包み、オレンジ色のペンライトの光で染まった。掻き鳴らされるギターが告げた「バトンロード」。2002年に始まったアニメ『NARUTO-ナルト-』(以下、NARUTO)の主人公・ナルトから、その息子・ボルトへとバトンが繋がったアニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』(以下、BORUTO)最初のOPとして2017年に画面から響き出した1曲だ。フロアのペンライトの色と同じくオレンジのTシャツを着た谷口 鮪(Vo&Gt)の歌声が会場を駆ける。
父・ナルトの物語を思わせる言葉が散りばめられながらも、それらを「追い抜いて」いく珠玉曲で幕を開けると、「俺たちの螺旋丸、受け取ってくれ!」と「スパイラル」が鳴り出す。PS4用ゲーム『NARUTO-ナルト- 疾風伝ナルティメットストーム4』のテーマソングであるこの曲は、谷口と古賀隼斗(Gt)の2本のギターが螺旋を描くように絡まり合い、小泉貴裕のドラムと遠藤昌巳のベースがうずまくようなグルーヴを生み出す様が印象的なアッパーチューン。その熱気を旋回させた1曲が終わると「めでたいね」と谷口が笑顔を見せた。
「せーの!」で好きなキャラクターの名を叫ぼうよ、と言う谷口。自身は「ヒナター!」と叫んでいた。「みんな、愛するキャラと共に生きていたわけで。こんな嬉しい日はないですよね」との言葉に温かな拍手が湧く。今日は『NARUTO』と『BORUTO』の曲しかやらないと告げると「最高の1日にどっぷり“飛び込んで”、楽しんでください!」と「ダイバー」へ。劇場版『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』の主題歌だ。ナルトとサスケの少年から青年へと紡いできた物語が結ばれた先の、まさに新たな物語の兆しへとダイブするような伸びやかなナンバーは、真っ直ぐにオーディエンスへと飛び込む。続けて、作品を作ってきたすべての人たちへの「ありがとう」を込めたという「きらりらり」では颯爽と駆け巡るように音が会場を席捲していく。
「ちょっと自慢話をしてもいいですか?」と話し始める谷口。今年に入り、サウジアラビアにライブをしに行ってきたという彼ら。「めちゃくちゃ盛り上がったの。びっくりするくらい!」。さらにインドネシア、カナダでもライブをしてきたと続けると「これはオレたちだけの力で行けたわけじゃないのよ。なにを隠そう『NARUTO』があったからこそ、オレたちは世界に行くことができたんだ。すごくない?」と笑みを浮かべる谷口に、会場から拍手が送られる。「海外で『NARUTO』はびっくりするくらい人気やったよ!誇れー!」という言葉を、大歓声が迎える。「あなたと同じように『NARUTO』を愛する人たちが世界中にいるということを教えたかったんです。自慢話を聞いてくれてありがとう!」。そしてKANA-BOONの最後の曲は「シルエット」。割れんばかりの大合唱が起こる幕張メッセ。これが『NARUTO』を愛する人たちの想いが1つになった瞬間だ、と感じさせた。
KANA-BOONがステージを降りると、会場に轟いたのは『NARUTO』のテーマソング。威勢の良い掛け声と勢いある和太鼓の音と共に、ナルトとサスケの声を20年担う竹内順子と杉山紀彰が登場した。「ついに始まったってばよ!“NARUTO THE LIVE”in幕張メッセ!みんな、盛り上がってるかー?」と声を上げる竹内。ここではナルト、サスケとしてMCというSランク任務を担当し、イベントの進行を担う。ナルトとサスケの軽快な言葉のやり取りに、大興奮のオーディエンス。「アニメ『NARUTO』を語る上で欠かせないのが、そう“音楽”だ。今日は歴代の主題歌アーティストたちがそれぞれ熱いライブを届けてくれるらしい」とサスケも語る。また、幕間に登場の竹内と杉山による“アニメ『NARUTO』名シーンセレクション”のコーナーも。特大スクリーンで名シーンを映し、その場面について2人が語るこの場面では、会場も涙していた。
そんな幕間ではさらにアニメ『NARUTO』の最初のOPとして2002年10月から2003年3月まで物語の幕開けを彩ったHOUND DOG「R★O★C★K★S」を皮切りに、歴代OP&ED特集として当時の映像と共に懐かしい楽曲が会場に響くと、オーディエンスは大きな歓声と拍手とでその時間を楽しんでいた。
ナルトとサスケのアナウンスでこのライブの2番目に登場したのは、4人組ロックバンド・ハンブレッダーズだ。アニメ『BORUTO』で2023年1月放送の第282話からEDを務めた彼ら。『NARUTO』シリーズと初めての邂逅となったその1曲「またね」からライブをスタートさせる。「友達になれないはずなんてないだろ!」と力強く言い切るナンバーは、大きく隔たれていくボルトとカワキの運命の歯車が、兄弟のように友のように、いつか笑顔を向け合う日々へと戻るのではないかと思わせてくれる、そんな真っ直ぐな想いが満ちる、爽快で優しいアッパーチューン。広い会場に染みわたっていくその1曲に向けて、観客はペンライトの光を揺らした。
『NARUTO』は超ド世代だと話すムツムロ アキラ(Vo&Gt)。毎週テレビにかじりついて見ていたという彼は、水風船を持ち、ナルトのように螺旋丸の練習をやっていたのだとか。ドラムの木島は「千鳥を練習した」とサスケ派であることを告白。会場からは笑い声も漏れる。そして、初めて買ってもらったCDも『NARUTO』の主題歌を集めたコンピレーションアルバムだったというムツムロ。音楽を知ったのもバンドを知ったのも『NARUTO』、まさにミュージシャンの第一歩を『NARUTO』によって踏み出せたと伝え、「僕らは、皆さんと同じ『NARUTO』ファンです」と笑顔を見せた。
そんな彼らは、ここから『NARUTO』を彩った名曲をカバー!『BORUTO』の4代目OPであるBrian the Sunの「Lonely Go!」を皮切りに、2004年の『NARUTO』ED曲であるザ・マスミサイル「今まで何度も」では会場からも大きな歌声が上がり、2005年にEDを飾ったガガガSPの「はじめて君としゃべった」では、でらし(Ba&Cho)とukicaster(Gt)もムツムロと共に歌い上げ、新旧の名曲で会場の熱を上昇させる。バンドの背後のスクリーンに当時の映像も映し出され、オーディエンスも満面の笑みを浮かべていた。最後に自身のバンドを象徴するような「DAY DREAM BEAT」で音楽への愛を謳う。『NARUTO』から生まれたバンドと言っても過言ではないハンブレッダーズのステージは、20年という『NARUTO』の時間へと思い馳せる時間となった。
3番手としてステージに登場したCHiCO。CHiCO with HoneyWorksの活動休止に伴い、ソロアーティストとしての活動をスタートしたばかりの彼女。ソロアーティストとしての初ステージとなるこの日の1曲目は、little by littleの「悲しみをやさしさに」のカバーで幕を開けた。伸びやかな歌声が印象的なこの曲は、『NARUTO』の3代目のOPとして2003年10月から2004年3月までの物語を彩ったナンバー。「もう一回!」とCHiCOと共に大きく指を上げて歌うオーディエンスは『NARUTO』愛を奏でるように1つになっていく。続けてNICO Touches the Wallsの「Diver」のカバーを披露するCHiCO。男性ボーカル曲を、まるで螺旋丸をぶつけるかのように大きな熱の塊のような力強い歌声で響かせる姿に、幕張メッセは青いペンライトの光で染められた。
「1曲目と2曲目、みんなが大好きな、わたしも大好きな楽曲をカバーさせていただきました。正直とても緊張して、足が震えているんですけど、皆さんどうでしたか?」とCHiCOが問いかけると「最高!」という声と拍手が送られる。そんな観客へ、ソロアーティストとしての姿勢を込めた新曲「光のありか」を届けると、改めて客席へと向き合うCHiCO。
「皆さん、声出しが解禁されてそんなに日が経っていませんが、声の出し方忘れてないですよね?」と言うと、観客も次の曲が頭に浮かんだのか、歓声で迎える。一緒に歌う部分もたくさんある、というこの曲。「イケるのか!“NARUTO THE LIVE”―!」とオーディエンスを煽ると、パワフルな歌声で「我武者羅」を響かせる。畳みかけるように撃ち込まれるビートに疾走するギターリフが軽快に響くなか、会場を揺らすようなパワーボーカルで席捲していく。ボルトとカワキ、サラダ、ミツキというフォーマンセルによる新生第七班が結成され、ボルトたちの反撃の始まりを告げたパワーチューンに会場は大きく腕を振り、共に声をあげて応え、熱い時間で“NARUTO THE LIVE”を彩った。
休憩を挟み、スクリーンに映し出されたのはアニメ『NARUTO』シリーズの始まりからサウンドトラック(劇伴)制作に携わってきた高梨康治。彼が海外で『NARUTO』の劇伴でライブする様子が映し出され、さらに海外のファンたちがその音楽を、ライブを絶賛する姿が映される。そして、この日は海外でのライブに出演中で残念ながら会場に駆けつけることができない高梨からのメッセージが。「僕も皆さんと一緒に会場で楽しみたかったのですが、ただいまドイツにライブに来ております。その代わり、僕が選りすぐったメンバー・刃-yaiba-第二班の演奏を楽しんでいただきたいと思います。ドイツ公演、そして日本公演、同時進行で一緒に楽しみましょう!」と挨拶が終わるや、力強い和太鼓の音と「ソイヤ!」の掛け声が響き、会場は大歓声に包まれる。バイオリン、和太鼓、三味線、エアロフォン(尺八)、パーカッションにギター、ベース、ドラムという編成の刃-yaiba-第二班が全身全霊で鳴らす「動天」。タイトル通り、まさに天を動かさん勢いある1曲はアニメ『NARUTO』の代名詞的なナンバーでもある。
歌い上げるようなエアロフォン(尺八)の音と唸るギターが和太鼓の鼓動に突き動かされるように鳴ると、会場はオレンジのペンライトで光を放つ。スクリーンのアニメーションと音楽とのシンクロが素晴らしく、楽曲を堪能しながらも物語への没入感もあるパフォーマンスを披露していく。
続けて「臨界」。クラップでビートを刻み、楽曲に参加しながら胸を熱くさせた数々のシーンに沸くオーディエンス。さらに「疾風伝」では、歴代火影の姿やオビトとカカシの熾烈な戦いの場面などと共に鳴り響く楽曲に会場の想いが1つになっていくのを感じる。バイオリンの美しくも勇壮な旋律を軸に伸びやかなエアロフォン(尺八)と共に聴かせるドラマティックな「NARUTO メインテーマ’16」のあとには、数多くのドラマを彩ってきた「形勢逆転」で熱いパフォーマンスを締め括った。最後には、右へ左へと『NARUTO』ファンへと楽曲の熱を届けるようにステージ上を動くメンバーたち。ライブを終えてメンバーが会心の笑みを浮かべ、大きく手を振ると、会場の割れんばかりの拍手はなかなか鳴りやむことがなかった。
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