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INTERVIEW

2023.09.24

ニューアルバム『THE ORIGIN』から紐解くアーティスト・Geroの10年、そしてその先に見据えるもの――。

ニューアルバム『THE ORIGIN』から紐解くアーティスト・Geroの10年、そしてその先に見据えるもの――。

ネットシーンからセンセーショナルな登場を果たしたのち、アニソンシンガーとしてもキャリアをスタートさせて10年。シンガー・Geroはまさに道なき道を切り拓いてきたパイオニアの1人だ。そんな彼がメジャーデビュー10周年を記念したスペシャルなアルバム『THE ORIGIN』をリリースした。まずはインタビューの前に収録楽曲と参加アーティストを見てほしい。彼がこの10年、あるいはそれ以上のキャリアのなかで出会ったシンガー、クリエイターとコラボを果たした実に重厚な1枚になった本作。そのなかで、オリジンたる彼は何を考え、そして何を叫んだのか。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一

誰もやってなかったことをやってきたので、1年後すらどうなるかわからなかった

──2013年7月10日にリリースしたデビューシングル「BELOVED×SURVIVAL」から10年を数えることになりました。改めましてメジャーデビュー10周年をGeroさんご自身はどう受け止めていますか?

Gero 10年ですもんね。本当に色んなことがあったなって。体感的にはあっという間だったんですけど、考えるとめっちゃ長かったなと思うし、めちゃくちゃ不思議な感覚ですね。

──以前リスアニ!本誌での連載でも語られていましたが、この10年のなかでも紆余曲折があって、音楽性も含めて様々な変化を経ての現在になりますよね。

Gero 思い出すとやっぱり、色んなことをやらせてもらって、ありがたい10年間だったなという。好き放題やらせてもらった感謝の10年間という感じですね。

──あえて聞きますが、メジャーデビュー当時は10年間もメジャーで続けられると思っていた?

Gero いやいやいや。というかそもそも、ニコニコ動画出身のシンガーって先輩が周りにいないんですよ。僕ら辺りが“始まった世代”だったので。

──Geroさんが歌い手としてのキャリアを始めたのが2008年。今から15年前ですから、それ以前のニコニコ出身のアーティストとなると数えるほどしかいませんよね。

Gero なのでこの業界がどうなるかとか、それこそ2年後3年後どうなってると思います?って聞かれて答えてくれる人なんか1人もいなかったんですよ。だから「10年できると思ったか?」という質問に対しては、「まったくそうは思わなかった」ですし、誰もやっていなかったようなことをやらせてもらっていたので、1年後すらもわからなかったんです。なので10年もできたのは本当に万々歳で、ありがたいことですよね。

──そうやって道を切り拓いてきた存在だからこそ、10年という数字には様々な感情が込められていると思うんです。だからこそ今回リリースされる『THE ORIGIN』には、10周年を迎えて“嬉しい”だけではない複雑な感情が内包されているのかなと。さて、本作『THE ORIGIN』はGeroさんと多くのシンガーとクリエイターとのコラボアルバムとなりました。その構想はいつ頃からありましたか?

Gero 前作『Parade』を出してから、かなり早い段階でこういうコラボレーションアルバムにしたいんですというのをレーベルには伝えていましたね。この10年で本当に色んなことやらせていただいたんですけど、コラボレーションアルバムというのは初で、逆にもうここでしか出すところがないってくらいだったので、結構悩まずに決めることができましたね。

──コラボとしても、Geroさんがシンガーと組むだけではなく、そこにクリエイターも絡めたトリプルコラボ的な構成になっていますよね。またいずれもがGeroさんとの縁の深い方々を真似ている。

Gero 僕と全然関係ない人に作曲や作詞をお願いするという選択肢も最初はあったんですけど、それだと10周年にはちょっと寂しいかなと思ったので。あと、聴いている人たちにもニヤッとしていただけるような座組が組めたらいいなと思っていたので。アルバムの詳細を発表したときにも、みんなに「この人の曲でGeroちゃんの歌聴きたかった!」みたいな感想を言ってくれたりもして嬉しかったです。

誰よりも近くでめいちゃんの歌を聴いてきた

──そういう意味では今までやったことがなかったコラボアルバムだけど、みんなが聴きたかったものが詰まっているアルバムになっていますよね。そんな『THE ORIGIN』の楽曲について深く聞いていきたいと思います。まずはあらきさんとDECO*27さんとの「導火線」。Geroさんとコラボも多いお二人とのタッグはいかがでしたか?

Gero DECO*27さんもあらきちくんも世代が近いというのもあって、「2000年代のミクスチャーロックって良かったよね、そういう攻め攻めな曲作ろうよ」って話になって。こういうコラボアルバムって作ってる本人がもう全部決めちゃうっていうパターンもあると思うんですけど、この曲ではちょっとあらきちくんにも相談して、「こういう曲どうだろう、こういう方向性どうだろう?」とか逐一報告して、あらきちくんからも「こっちがいいんじゃないですか」みたいな調整してやらせてもらったので、すごくスムーズに作れました。

──シンガーやクリエイターをゲストとして招くだけではなく、ソングライティングから入ってもらったわけですか?

Gero この曲に関してはそうですね。録音もあらきくんがすごくて、僕のサビ全部録り直しましたね。「ちょっと待ってくれ、まだ俺も頑張れる」みたいな(笑)。

──たしかにサビの2人のテンションはぶつかり稽古といいますか(笑)。

Gero 「サンクチュアリ -聖域-」って感じですよね(笑)。これは聴いていて本当に熱くなると言いますか、筋トレしながら聴いてほしいです!

──続きましてオーイシマサヨシさんとNeruさんの「ふて寝DISCO」。オーイシさんにはアルバム『EGOIST』で「ベイビーミュージックライダー」を提供されていますが、こうしてデュエットするのは初?

Gero 初めてですね。いやあ、オーイシさんはめちゃくちゃお上手なので歌い上げ系とか一緒に歌うのは、プレッシャーがあるから絶対嫌なんですけど(笑)。この曲はNeruさんらしいはっちゃけ曲なので、自由にやらせていただきました。オーイシさんもところどころおふざけを入れて遊んでくれて、そこに僕も乗っかって真面目にふざけられたのが僕的にはすごく嬉しかったですね。

──たしかに。そのふざけの塩梅がよくて、なんならGeroさんとオーイシさんなら、もっとふざける方向にもできるじゃないですか。

Gero そうなんですよ。オーイシさんを「うどん」とかの方向にはあまりもっていきたくなくてですね、これくらいにはとどめたんですけど(笑)。でも十分にはっちゃげた、かっこいいファンキーな楽曲になったなと思います。

──続いてはめいちゃんとてにをはさんとのコラボで「ナッツクラッカー」です。Geroさんの愛すべき後輩として、めいちゃんも欠かせないコラボかと思いますが、こうした音盤でのコラボというのは?

Gero 昔めいちゃんのアルバムでコラボさせてもらったことがあって(アルバム『めいちゃんの頭の中はだいたいこんな感じです』収録曲「ドリチャレ!!!!!feat.Gero」)。めいちゃんがまだ新人の頃に「CD出すんですけど、1曲コラボ歌ってくれませんか?」といういうところから僕ら知り合って、オリジナルではそれ以来になりますね。こう仲良くなってからは初なのかなと。

──となると当時の距離感とはまた違ったなかでの制作なのかなと。

Gero もう全然違いましたね。いやあ、でも誰よりも近くで彼の歌を聴いてきたので、本当に成長速度がえげつなくて、「そんなに歌上手くなくていいんじゃないか?」っていうくらい歌上手いんで(笑)。だからちょっとびっくりしました。「ナッツクラッカー」はやっぱり難しい曲なんですよ。これは彼の得意分野っていうのもあると思うんですけども、すっごく上手になられちゃってて……大きくなってねえ……本当に……(笑)。

──歌唱についてはいかがでしたか?

Gero すごく刺激にはなりましたね。僕は元々こういう楽曲が得意じゃなくて、最近よく歌うようになったんですよね。また彼には今までもたくさん刺激をもらいましたけど、今回は特に、「そういう歌い回しするんだ、そういう表現方法なのね、なるほど、じゃあ俺はこうするぜ」みたいな。そういういい刺激になりました。あと、てにをはさんの楽曲ですよね。高速スライダーみたいな、キレがいいぞこの変化球みたいな楽曲(笑)。そこはめいちゃんとも合うなと思っていたので、この3者の組み合わせはすごく良かったんじゃないかなって思いますね。

──そしてお次は超学生さんと柊キライさんとの「アルバ」。柊さんとは前作のヒット曲「ヴィータ」でのコラボが記憶に新しいですね。それもあって柊さんにはお願いしたかった?

Gero お願いしようと思っていました。柊キライさんへのオファーが先で、じゃあ彼の曲と誰が合うかなって考えて超学生くんにも。

──「ヴィータ」でもGeroさん1人で多くのテイクを重ねた大作になりましたが、超学生さんとのコラボとなった今回はいかがでしたか?

Gero 他のシンガーもそうですけど、超学生くんがすごい独自の世界観をお持ちになっている方で、本当に新しい世代のシンガーさんという感じだったので、正直俺と合うのかな?っていうのはずっとあったんですよ。でも完成したものを聴いてみると、「あれ、今どっちが歌ってるんだ?」っていうくらい溶け込んでるような瞬間が何度もあって、コラボしてすごく良かったなと思いましたね。

──しかも柊さんの世界観を、ですからね。

Gero キライさんの曲も演劇演劇を見せてくれたぞみたいな曲なので、展開もすごいですし、ニュアンスをどんどんディティール細かくつけていきたいんですけど、歌うのに必死であんまりニュアンスつけれないんですよね、歌が大変すぎて(笑)。でも何度も何度も喰らいついてやっていきました。キライさんの曲は毎回なんですけど、チャレンジ精神を掻き立てさせられるようなところがあって、いい意味でモチベが上がるんですよね。なので歌っていてすごく楽しかったです。

自分では“最果てのシンガー”みたいな気持ちでやっていた

──続きましては+α/あるふぁきゅん。さんとれるりりさんの「ミッドナイト・シンドローム」ですが、この曲には驚きました。

Gero いいでしょこれ!(笑)。れるちゃんといえば「脳漿炸裂ガール」ですけど、そういう攻め攻めな曲にしようかなと思ってたんですよ。で、れるちゃんに打診したところ、れるちゃんが「好きに作らせてくれませんか?」って。僕的にはクリエイターさんが気持ち良く作れる環境が一番いいなと思っていたし、僕もそうしてほしいタイプなので、「じゃあ逆に面白いかも」と思ってお任せしました。それで出来上がったのを聴いて、案の定「面白っ!」って。

──冒頭のGeroさんの歌い出しからゾクゾクするような、すごくフレッシュな仕上がりですよね。

Gero これは歌い回しに一番悩んだかも。テンションを上げてもいいし、下げてもいいし、あとはお好みで調理してくださいみたいな感じの楽曲だったので。これは僕から先に録ったんだったかな?例えば向こうから先に「こういうボーカルでどうですか?」ってデータが来たら、そのテンションに合わせてやれるんですけど、今回は僕から先だったから僕がテンションを決めるので、「こういう歌い回しでどうでしょう?」って。きゅんちゃんもこう妖艶さがあって、すごいシンガーさんだなと思いました。

──まさに男女の声の絶妙さが感じられる楽曲ですが、+α/あるふぁきゅん。さんやこのあとの96猫さんなど、女性シンガーとのコラボも本作に入れたいと思っていた?

Gero 思っていました。96ちゃんは昔からずっとコラボしたいなと思っていたんですけど、+α/あるふぁきゅん。ちゃんは何度もコラボしている相手なので、ぜひお願いしたいなと思っていましたね。

──ここもある意味で狙い通りのコラボになったわけですね。そしてアルバム後半戦は天月さんとFAKE TYPE.による「最果てのスーパースター」からスタートになります。

Gero 天月くんの声はなんかやっぱこう、主人公感がありますよね。伊東歌詞太郎くんとかもそうなんですけど、やっぱこういう声の人と歌うとこっちも気持ち良くなるというか。仕上がりとしてはすごく気持ち良かったんですけど、やっぱりFAKE TYPE.さんの曲は難しい(笑)。キーは高いし速いしラップは難しいし。作曲を依頼するときに、「FAKE TYPE.さんってハイトーンのイメージがあるけど、低いところもちょっと面白いんじゃないかなと思ってます」とか、「逆にテンポが遅くなったり速くなったりとか面白いんじゃないですか」って話をしたんですよね。そしたらもうノリノリで「めっちゃいいっすね!それでいきましょう」ってそのままちゃんと曲に落とし込まれていて、やっぱりさすがだなって。

──どんどんテンポが速くなっていくスリリングなパートは、歌っている側は大変じゃないですか?

Gero いや大変ですよ(笑)。歌い分けは全体を通して僕がやってるんですけど、Neruさんの「ふて寝DISCO」と「最果てのスーパースター」は、「この歌い分けで歌ってください」みたいなのがあって、ちゃんと僕と天月くんのことを理解してくれたうえで、しかも歌詞も歌い手にすごく刺さるような歌詞にしてくれて。天月くんとも「この曲すごいエモいですよね」って話していたんですけど、それも制作依頼するときに「こういう歌詞にしてください」というのをバッチリそのままはめ込んできてくれたんで嬉しかったですね。

──先ほど天月さんの主役感というお話がありましたが、まさにこの曲で語られているのは、2人の主役=スーパースターによる歌い手として矜持といいますか、この10年を考えると本当にエモいですね。

Gero 自分でスーパースターとは思わないですけど、“最果てのシンガー”みたいな気持ちでやっていましたから。

──そしてお次は96猫さんとなきそさんによる「お仕舞い」。ゾッとするようなボーカルが聴けるダークな楽曲がきましたね。

Gero 群を抜いて暗いですよね。96ちゃんは明るい曲も暗い曲もできる器用なシンガーさんだと思っていて、でもちょっと影のある歌い方も彼女の魅力的な部分だなって昔からずっと思っていて。あと前回のアルバムからお願いしたかったなきそさんに今年やっとお願いできたんですけど、黒ちゃんが合うんじゃないかなと思ってやってみました。

──まさになきそさんのダークな世界観に96猫さんのボーカルが見事ハマりましたね。

Gero すごいですよね。96ちゃんもどういうテンションでいくかわからなかったのか、「Geroさんのほうから先にボーカル録ってもらえませんか?」って言われて、そのテンション感に合わせていただきました。

──Geroさんとしても、前作でも聴かれたちょっとメンタルこじらせ系のボーカルがお見事です。

Gero 楽しかったですねー。家でボソボソボソボソ歌ったんですけど、気持ちいいんですよね。ちなみに「お仕舞い」というタイトルも、なきそさんから「何かテーマありますか?」って言われて、「“おしまい”ってテーマどうですか?」って言ったんですよ。「もう終わり」みたいな感じで言ったんですけど、それがタイトルになって嬉しかったですし、ありがたいなって。

──そこからウォルピスカーターさんと164さんの「妄言」へと続くのも面白いなと。一聴すると女性シンガーが続いたみたいに感じるくらい、ウォルピスカーターさんのボーカルがすごいですね。

Gero やっぱりすごい。僕は陰で彼のことを“歌い手新人類”って呼んでいるんですけど、艶やかで聴いていてなんのストレスもなく気持ち良く聴けるシンガー、しかも男性ですからね。

──それに対して164さんのサウンドも、ボトムが効いたロックサウンドが合わさり面白いコラボになっていますね。

Gero 164さんといえば「天の弱」とか名曲もたくさんあるんですけど、ウォルピスカーターくんといえば「天の弱」で伸びたイメージもあったし、ここの組み合わせって絶妙なんじゃないかなと思っていて。164さんは曲を作ってもらうは初めてだったんですけど、そのうえでずっとお願いしたいなと思っていたところに、ウォルピスカーターくんはピースとしてバッチリ完璧なんじゃないかなみたいな。「天の弱」みたいなハイテンポでもよかったんですけど、ミドルテンポでどっしりとしたテンションで歌えましたね。

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