INTERVIEW
2023.09.15
――ここからは、アニメ後半のライブシーンで登場した新曲について詳しく聞いていきます。第10話の挿入歌「詩超絆(うたことば)」は、それまでの物語の流れや演出とリンクした楽曲展開・構成を含め、素晴らしいアニメーションに仕上がっていました。皆さんはどんな印象をお持ちですか?
羊宮 いやあ……あれは最高ですよね。
青木 そのひと言に尽きるよね(笑)。
羊宮 あれ以上のものはないというか、本当に心の底からあのライブシーンを観てほしいと思います。絆がないはずなのに、仲間感というか、この熱いものは何なんだろう?と思って。構成から何からしてこの歌はヤバいです。
青木 第11話の冒頭でみんなが「わかんないよー!」とか言いながら泣いていたけど、私もいち視聴者として観ながら理由もない涙がただただ流れてきて、「私、何で泣いてるんだろう」って思った(笑)。なんなんだろう、あの感覚。言語化できない。
小日向 ライブシーンでみんなが演奏しながら泣いてしまうけど、そよちゃんはきっと普段はステージ上で泣かない女の子だと思うんです。でも、燈ちゃんやみんなの気持ちをダイレクトに受けて、感情を抑えられなくなったようなお顔を見せてくれているところに、そよちゃんの心の変化が感じられて。
林 しかもアニメだと、燈がみんなのほうを向いて歌ってくれるんですよね。燈にとっては、お客さんに向けた歌ではなく、メンバーに向けた歌というのがすごく熱くて。もちろん私たちがライブでやるときはお客さんに向けて届けますけど、羊ちゃんにみんなの方を見る演出もやってほしい。
立石 すごく胸アツになっちゃうだろうね。アニメでは立希ちゃんが最初に泣き始めていたけど……。
林 私も泣いちゃうと思う。この曲、泣かせにきているよね。燈のポエトリーに対して他のメンバーが楽器で応えていく構成で、まず楽器が1人ずつ加わっていくところがエモいけど、ラストの“うたう 手と手をつなぐうた”のところから急にリズムが三拍子になるのを聴いたとき、「エモい……!」ってなって(笑)。それと歌詞を改めて見ると、CRYCHICを乗り越えた燈の歌という感じになっているところにもグッときます。“ひだまりを抱きしめていた春も”なんて「春日影」じゃん!ってなるし。
青木 私も歌詞が特に好きで。決して明るいことばかり歌っているわけではないけど、メロディは前向きで、そのコントラストの混ざり合いがすごく胸に刺さるんですよね。MyGO!!!!!には「音一会」や「潜在表明」といったポエトリー要素のある楽曲がアニメの始まる前からあったのですが、「詩超絆」はアニメのストーリーと相まってより言葉として刺さる作りになっていて。
立石 MyGO!!!!!がポエトリーリーディングを大事にしてきたことの理由に繋がる1曲として描かれているし、MyGO!!!!!の楽曲の軸には燈ちゃんの心の叫びがあるということがちゃんと伝わる楽曲なので、今後も大事にしていきたい楽曲だなって感じます。
羊宮 私は、歌と向き合ってきて良かったなと思いました。最初の頃は、色々な葛藤や悩みがあったので。
一同 え~!
羊宮 私は普段の声が、歌で表すとミックスボイスやファルセットと呼ばれる位置にあって、当時の歌声では楽器に埋もれて自分の声が聞こえない、という状況での練習が続いていたんです。音程やリズム感、表現やリズム感、表現や呼吸法なども、どれだけ頑張っても聞こえないという環境や、届かないと知りながら、それでも歌わないといけないということがとても辛くて。たくさん悩んでいました。それでも燈ちゃんの想いだけは届いてほしくて。燈ちゃんから目を逸らすことだけは絶対にしたくないと……こんなふうに、1つ1つ向き合い、燈ちゃんとして歌い続けてきたからこそ、第3話、第7話、第10話、第12話と歌で成長過程を表現できたことがとても嬉しくて。MyGO!!!!!として活動していくなかで、初めて自分に「よく頑張った」って伝えられました。
――少し話が逸れますが、連載第5回の音楽制作陣による座談会で、羊宮さんはMyGO!!!!!の最初のオリジナル楽曲「迷星叫」のレコーディングを一度録り直したというお話を伺いまして。その過程で、楽曲の音圧に負けない歌声を出すために、ボイスレッスンに通うなどして努力していたというお話も聞いていたので、相当の覚悟のうえで燈の歌声に向き合っていたんですね。
羊宮 ありがとうございます。ただ今でこそ感情的な歌い方が前に出ている燈ちゃんですが、そういう歌い方を成立させるためには、それ相応のリズム感と音程と、その感情の浮き沈みに対抗できるだけの音圧が必要なんですよね。練習を重ねれば重ねるほど、どんどん喉が酷使されていって、出せていたはずの音まで出せなくなってしまうことがあって。精一杯練習をして臨んだ1回目の「迷星叫」のレコーディングは色々あって、泣きながら帰りました。
青木 そうだったんだ……。
羊宮 でも、2回目のチャンスをいただけると聞いて、今度こそ絶対にやり抜こうと思って。もう一度録らせていただけて本当にありがたかったです。
――「詩超絆」のレコーディングのときはいかがでしたか?
羊宮 担当していただいた方からも「すごく良かった、これを歌えたんだから大丈夫」と言っていただけました。あと、ポエトリーの部分の表現をどう組み立てていくかはものすごく考えていたので、ポエトリーの部分をそのままフルで使っていただけて嬉しかったです。それとレコーディングの前に、この楽曲の歌詞はそよちゃんに向けて書いたものということを伺っていたので、そよちゃんのことを想いながら歌いました。
小日向 私もこの曲は歌詞をいただいたときから、そよちゃんに向けた歌ということがわかったので、レコーディング前の音源を聴いたときから涙が出てきて。第8話の祥子ちゃんとの会話で、誰もCRYCHICの復活を望んでいなくて、そよちゃんが「どうして……?私だけなの……?」というセリフがあるのですが、そこでそよちゃんはまた一人ぼっちになってしまったと思うんです。でも、そんななかで燈ちゃんが「一緒に進みたい」というのを伝えてくれたのが、きっと本当に嬉しかったと思いますし、私も「ありがとう」という気持ちになりました。
――第12話のライブシーンで初披露された挿入歌「迷路日々(メロディ)」についてはいかがでしょうか。
羊宮 楽奈ちゃん、輝いていたね。
青木 ねー。楽奈ちゃんはライブでギターを弾いているときが一番輝いているから。「詩超絆」は燈ちゃんがメンバーに向けてリードしていく曲だと思うのですが、「迷路日々」はみんなのコーラスが入っているのを含めて、楽曲を届ける方向がちゃんとお客さんに向いているのが、バンドだなと思いました。楽曲的には、拍子が途中で変わったりするのですが、ミドルのテンポ感もありつつ、サビは疾走感があるので、音からも“迷う”と“進む”の対比が見えるような気がして。ライブでやるとなるとリズムキープが大変そうですけど(笑)。
林 4拍子だと思ったら3/4拍子になったりして、最初はMyGO!!!!!らしい凝った展開の忙しい曲だなと思ったんですけど、歌詞が本当に美しいですよね。さっき凛ちゃんが話していたように、「一瞬一瞬が一生に」というセリフがあったなかで、“ちいさな一瞬 あつめたい”という言葉があるのにグッときます。最後は“迷っても 一生離れない”という歌詞で終わるんですけど、その後に(ステージ袖で)そよが燈に「離さないでくれて、ありがとう」という流れもすごく良くて。
小日向 あそこは伝え方こそぶっきらぼうに聞こえたかもしれないですけど、きっと照れ隠しでもあるんじゃないかなって。実はあのセリフ、監督さんからOKテイクをもらっていたのですが、自分の中で納得ができていなくて、初めて自分からお願いしてもう一度収録させていただいたので、思い入れが深いです。
林 以前2人でご飯に行ったときに、私が「自分で納得がいかないお芝居のままで終わらない方がいい」という話をしたことがあって。私も基本的には監督さんがOKしたのであれば、余分なことを言うのはあまり良くないかなと思うんですけど、ただそれでもやもやするのは良くないし、美香ちゃん(小日向)がお芝居のことを真剣に考えていることを知って素敵だなと思ったんです。私も現場で先輩たちが自ら「もう一回やらせてください!」と言う姿を見て教わってきたので。だからみかんちゃんがアフレコ現場で「もう一回やらせてください」と言っているのをみて、「おおー!」と思いました(笑)。
小日向 私は声優になる前から鼓子ちゃんの出演作を観ていて、私はこの作品が初めて名前をいただいたアニメのアフレコだったので、一緒にご飯に行ったときにたくさん相談したんですけど、1つ1つ丁寧に答えてくれたんです。現場のことってなかなか聞ける機会がないので、優しく教えてくれる鼓子ちゃんは心強く大きな存在でした。本当にありがとう。
林 いえいえ。あと、“傷つけたことに 傷ついてる”という歌詞は、立希目線でグッときますね。これは多分、燈自身が気づかないうちに祥子のことを傷つけていて、それに自分も傷ついているということだと思うんです。立希目線でも自分は燈のことを傷つけないように守ってきたつもりだったのに、その行動が燈のことを傷つけていた、っていう部分と繋がるように感じて。
立石 その意味でも、それまでのストーリーがあったうえで流れることにすごく意味を感じる曲だと思います。それと“迷路”や“迷う”というプラスの意味ではない言葉がMyGO!!!!!の歌詞にはたくさん散りばめられていますけど、それをマイナスの意味に捉えさせないような疾走感があるところにもMyGO!!!!!らしさを感じます。
羊宮 私は2Cの“叫びだした”のところが大好きで。アニメだとあそこで歓声がワーッて上がるんですけど、私の心もワーッて上がってしまいます(笑)。だって燈ちゃん、最初は全然歌えなかったんですよ。歩道橋で叫んでいたあのとき、祥子ちゃんに手を引っ張ってもらってCRYCHICで歌い始めたあのときから、こんなに凛々しく叫べるようになったんだと思うと、本当に感慨深いです。
青木 成長したね。
羊宮 そうなの。歌詞も成長しているし。その意味では、いつもはあまり世界観を壊したくないので“燈ちゃんの歌”と言っているんですけど、作詞家の藤原(優樹)さんが書かれる歌詞が本当に素敵だなって、ずーっと思っていて!
――燈のそのときの状況や心情を的確に落とし込んでいて、本当にすごいですよね。ちなみに「迷路日々」の歌詞で燈の成長を感じたポイントは?
羊宮 さっきお話した“叫びだした”もそうですが、“それでもこの手を ほどかない”や“迷っても 一生離れない”も、ちゃんと相手ありきで、それでも「自分はこうしたいんだ」というのを言っているところが、すごく成長だと思うんです。「人間になりたいうた」のときはほぼ自分の世界だけで、「春日影」の歌詞も“どうかこのまま 離さないでいて”という風に受け身の想いだったのが、「迷路日々」は自分から“ほどかない”とか“一生離れない”と言っていて。
青木 それと「迷路日々」は自分を肯定するような歌詞が多いなと思いますね。完璧に肯定できるほどではないんですけど。“ちっぽけだって 隠さないでいたいよ”とか“はみ出したまま 不揃いな僕らでも”とか。
羊宮 そうなの!そこもちゃんと言葉にしていて。“まだ言葉にならない無数の声が”と言っているし、“迷子”なんだけど一歩ずつ進んでいることが歌詞の中からも伝わってきて。本当に音楽から脚本家さんから監督さんから、すべてに置いて1つのズレもない完璧なるアニメで。本当にもっともっとたくさんの方に観てほしいです!
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