INTERVIEW
2023.09.17
『映画プリキュアオールスターズF』は、『プリキュア』シリーズ20周年記念作品となるスペシャルメモリアルな一作。そのOPテーマソング「For “F”」は、現在放送中のTVアニメ『ひろがるスカイ!プリキュア』(以下、『ひろプリ』)のオープニング主題歌「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」と同じ布陣が制作(作詞:青木久美子、作曲・編曲:森いづみ)。歌唱は「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」の石井あみと、北川理恵と共に同曲のコーラスを担ったMachicoが“ふたり”でボーカルを務める。ときに伸びやかに、ときにかっこよく、異なる魅力を持つ石井とMachicoの歌声は、時空を超えて聴かれるであろう名曲に“愛”と“強さ”を埋め込んだ。互いを想い合う、プリキュアらしい“ふたり”がその制作を振り返る。
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司
――映画のOPテーマソングについてはオーディションではなく指名というお話ですが、依頼されたときの感想から教えていただけますか?
Machico 自分にお声がけいただけるとは思っていなかったです。しかも、このOPテーマソングだけでなく挿入歌(「All for one Forever」)にも参加させてもらったので「2曲もいいんですか!?」みたいな感じでした。20周年という大きな節目の作品に関われることはとても光栄なことですし、誰もが経験できることではないので、とにかく「全力でプリキュアの魅力を伝えたい!」という気持ちになりました。
石井あみ 私は『ひろプリ』のオープニング主題歌で歌手デビューさせていただき、プリキュアを通して毎日成長させていただいているところなのに、さらに20周年記念作品となる映画のOPテーマソングも歌えると聞いたときは「これは夢なの?」と思いました。しかも、憧れのMachicoさんとのデュオということで本当に嬉しくて(照れ笑い)。子供たちに素敵な歌だと思ってもらえるように頑張ろうと決意した瞬間でもありました。
――お二人が選ばれた理由というのはどのように考えていますか?
Machico 私も気になってスタッフの方に聞いてみたんです。映画本編の内容とも関わるところなので詳しくは言えないですけど、私を選んでもらえた納得のいく理由があって。20周年記念で全プリキュアが登場する作品だからこそできるデュエットだと思いました。なのでファンの人たちには期待していてほしいと思います。
――レコーディングではどう歌おうとイメージを膨らませましたか?
石井 楽曲を初めて聴いたとき、すごく爽やかだけど熱さも感じられて、プリキュアらしさがたくさん詰まっている曲だと感じました。Machicoさんとは今まで、コーラスという形でしか一緒に歌えていないので、お互いがメインで歌い合ったらどうなるかを想像しながら練習していました。レコーディングはMachicoさんが先に録られていたので、私はMachicoさんの声が入った状態で歌わせていただいたのですが、二人の歌声が合わさったらお互いのニュアンスが絶妙に混ざり合って、プリキュア同士が手を繋いで一緒に歩んでいるような情景が浮かんできて。歌いながらも色々な表現やイメージが広がっていきました。歌詞も素敵で、私が担当した“ありがとうよりも深い キモチがあるって知った”のところではプリキュアを通じて出会った方々を思い浮かべたりしながら、言葉を1つひとつ明瞭に伝えることを意識しながら歌わせていただきました。
Machico 楽曲をいただいたとき、全体的に明るい描写が多くて、仲間と出会えたことの喜びや、サビ頭にある“どうなる? どうする?”という歌詞からも未来への期待感をすごく感じたんです。でも、Dメロには心情を吐露するような、思わず出てしまった心の叫びのようなフレーズがあって、明るい気持ちと本音が絶妙に表現されているとも感じました。なので、あみちゃんと一緒に歌うと考えたとき、変に“先輩”であることを意識するのではなく、自分らしく歌おうと思ったんですね。私自身も人生において、下の世代の子たちを引っ張っていくタイプではないので。
――以前も、現場に下の世代が増えてきた今、どう接するかという意識についてお話されていましたね。
Machico そうなんですよ。私は下の世代の子たちとも横並びで関わっていきたいので、そういうところを歌でも表現したいという想いがありました。歌詞に込められた優しさをニュアンスとしてプラスしつつ、あみちゃんにバトンを繋げることを意識して。だから、あまり気張らずに歌えました。先ほどお話ししたDメロの“勝つためにきっと戦うんじゃなく 怖れるキモチに負けたくないだけ それでもホントは解り合えたら 笑い合えたらって思う”はすごくお気に入りのフレーズで。プリキュアたちは、敵を憎んで戦っているのではなくて、分かり合いたいからこそぶつかっている印象が強いのですが、その“プリキュアの核”みたいなところが、この部分にギュッと詰め込まれていると思うんですね。友だちに対しても、ただ仲良しなだけではなく意見がぶつかったりギクシャクしたりする瞬間もあって、でも正面から向き合うから絆が深くなっていく。それはすべての『プリキュア』シリーズを通して感じていることでもあったので、そういう“プリキュアの核”みたいなところをこのDメロで込めたいと思っていました。なので、他のところは明るく歌いつつ、Dメロは等身大の少女のようにアプローチしてみました。
――今回は20周年記念作品ということもあり、子供たちだけではなく、大人になったプリキュアファンにも向けた楽曲に感じました。MachicoさんがおっしゃったDメロが特にそうだと思いますが、歌う側にもその意識があったのではないかと思ったのですが。
Machico そうですね。今回の歌詞は現実味のある部分が多かったですし、私もあみちゃんも少なくとも20年以上は生きている身なので。ね?(笑)。
石井 そうですね(笑)。
Machico 酸いも甘いもそれなりに経験しているので、歌うときに自分が経験した感情をよりイメージするというのは、確かに今までのプリキュア楽曲より大きかったかもしれないです。「わかる!」って共感できるところが多いというか、感情を表現するときにパズルのピースを当てはめるようにできるというか。なので、自分の実体験をリアルに想像しつつ、今まで観てきた『プリキュア』シリーズの色々なシーンやキャラクターも勝手に想像していました。自分の中でイメージムービーを作る感覚ですね。ここの部分はあのプリキュアの表情が合うな、とか。主題歌で関わらせていただいた3作品(『ヒーリングっど♥プリキュア』『トロピカル~ジュ!プリキュア』『デリシャスパーティ♡プリキュア』)と『キラキラ☆プリキュアアラモード』(Machicoは岬あやね役の声優として出演)の記憶を色々と当てはめながら歌いました。
――石井さんも、『ひろプリ』の主題歌を歌う際は『プリキュア』のシーンを当てはめながらイメージを膨らませていたとおっしゃっていました。
石井 そうですね。私もMachicoさんと同じで、今回の「For “F”」でもプリキュアのオリジナルムービーが自然と頭に浮かんできて、テイクを重ねるなかでそのムービーに合った歌い方に近づけることで、自分の中でも納得して前に進むことができました。それとプリキュアたちの魅力というのは、かわいらしさ、かっこよさ、力強さだけではなく、風とか自然を感じさせてくれるところにもあるという感覚があって。風が吹いてプリキュアたちの髪がなびいているとか、そういうイメージも大切にしています。子供たちは大人の私たちよりももっと想像力が豊かだと思うので、きっともっとたくさんのオリジナルムービーが心の中にあると思うんです。そこを歌で伝えてこそ子供たちにも伝わるんじゃないかな、といつも思っています。
――互いがメインでのデュエット、というところでの相手の印象を教えていただきたいのですが、さかのぼれば初対面は「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」のレコーディングですか?
Machico そうですね。あみちゃんの収録前に私と(北川)理恵さんがコーラスを収録させていただくという流れで、そのときに私も理恵さんも初めてあみちゃんにご挨拶しました。「日曜日のともだち」(アルバム『Machico♡プリキュアのうた!』収録曲で石井がコーラスで参加)のときは、あみちゃんがサプライズみたいな感じでの参加で、私が立ち会えなかったので。
――では改めて、デュエットしてみて相手がどのような歌手と感じたか教えてください。
Machico 『ひろプリ』のオープニング主題歌であみちゃんの歌声を聴いたとき、選ばれたことにすごく納得したんですね。空に向かってどこまでも伸びていくような透き通った声で、でも柔らかさだけではなくて優しい強さもあって。これから色々なものに染まっていくような、白い雲が浮かぶ青空のように色々な表情を見せてくれそうな歌声だと思いました。あと、「For “F”」の完成版を聴いたとき、私は音がはっきりと聴こえるような歌声なんですけど、あみちゃんはマイルドでキラキラな歌になっていて、すごく馴染みが良かったんですね。(『ひろプリ』の前期エンディング主題歌「ヒロガリズム」で)吉武(千颯)ちゃんと一緒に歌ってもすごくまとまりがいいし、「誰と歌っても相手を引き立てるような要素があるのかな?」ということに最近気づいた気がします。今しか出せない真っ直ぐさを持っている歌声なんですけど、デビューしたばかりということで、これから色んなことを経験して度胸がついたら、もっと表現力が広がっていくと思いますし、そういう意味ではすごく未来にワクワクするシンガーだと思います。
石井 嬉しい……!私は、元々色々な作品を通してMachicoさんの存在を知っていたのですが、どんどん好きになっていって。去年のプリキュアライブ(“デリシャスパーティ♡プリキュア LIVE 2022 Cheers!Delicious LIVE Party♡”)を客席から見ていたとき、Machicoさんが色々なジャンルのプリキュア楽曲を素敵に歌い上げられていて、もちろん他のプリキュアシンガーの方々のパワフルさにも感激したんですけど、そこから愛が止まらなくなりました。
Machico こんなに愛を伝えられるとは(笑)。
石井 歌声には人柄が出ると思うのですが、Machicoさんはお仕事や歌に対してすごく誠実で真っ直ぐで、その部分が歌声にもダイレクトに出ているから、子供たちにもたくさん伝わるものがあるんだと思います。あたたかい人柄や歌はもちろんですが、パフォーマンスや歌のニュアンスで見せてくれる背中もすごくかっこ良さを感じるんですよね。私は自分の声に対して“透明”や“白”という感想をいただくことが多いのですが、Machicoさんがパフォーマンスや歌で見せてくれたものを受け取って、白からMachicoさん色に近づけたり、色々な色を出せるようになりたいと思いました。
Machico きゃっ♪
――Machicoさん推しの証拠として、以前のインタビューで、携帯電話の待受画面がMachicoさんになっていると教えていただきました。
Machico そうなんですよ、今日見せてもらいました。想像以上にあみちゃんの携帯に私がいました。
石井 10人くらい?(笑)。
Machico しかも、アー写とかジャケ写とかではなく、私がSNSに上げた写真だったりしたので、自分が好きな写真を選んでいることが伝わってくるんですよ。
石井 Machicoさんがアップした写真がベストだと思うので!
――2ショット写真ではなく?
石井 2ショットも何枚かはあるんですけど…。
――自分が邪魔みたいな感覚ですか?
石井 あ、そうです。
Machico えー!? そうなの?いや、私がレコーディング中に、私のマネージャーさんがあみちゃんと話していたらしく、出演作の話とか私の話をすごくしたということは聞かされていたんですよ。そのときに待受画面の話も聞いていたので「おやおやおや」と思っていたんですけど、ふたを開けてみたら本当に写真がいっぱいで。思っていた以上に愛が深かったですね。レコーディングのときはそういう態度を見せなかったのに(笑)。
石井 憧れのシンガーの方とデュエットさせていただくので、しっかりしなくてはいけないという気持ちがあったので。“推し”としての抑えきれない気持ちもありつつ(笑)、Machicoさんからたくさん吸収させていただきながら、子供たちに素敵なお歌をお届けしたいという想いでした。
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