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INTERVIEW

2023.09.13

アーティスト・KOTOKOが歩んだ20年、そしてこれから――。メジャーデビュー20周年記念アルバム『リデコレイト・マイセルフ』に詰まった過去、現在、未来に迫る。

アーティスト・KOTOKOが歩んだ20年、そしてこれから――。メジャーデビュー20周年記念アルバム『リデコレイト・マイセルフ』に詰まった過去、現在、未来に迫る。

2004年4月21日、アルバム『羽 -hane-』でジェネオン(現:NBCユニバーサル)からメジャーデビューを果たしてから、来年で20年を迎えようとするシンガー・KOTOKO。そんな20周年のカウントダウンの最中である現在、47都道府県を股にかけた全国ツアー中の彼女が、自身のキャリアを網羅したアルバム『リデコレイト・マイセルフ』をリリースする。これまでのキャリアを彩ってきた名曲たちから自身が提供した楽曲のセルフカバーなど、そのキャリアを新たなアレンジと自らの歌声で再録した本作はどのようにして生まれたのか。そして、リビングレジェンドでありながら挑戦者であろうとする彼女が見据える20周年とその先についても聞いてみた。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一

自分の大切な楽曲と、自分が歌っていない楽曲のカバーという2つの要素

――来年のメジャーデビュー20周年に向けて、現在は4月22日からスタートした47都道府県ツアーの最初のブロックを終えたところですが、改めてこのアニバーサリイヤーをどう過ごされていますか?

KOTOKO 今は来年4月21日の20周年の日までをツアーでカウントダウンしながら回るという感じなので、まずそういった前祝いみたいなことをできるということがすごく嬉しくて。私にとっては、もちろん曲作りやリリースもこの20周年に対してとても大事なことではあるんですけど、約20年前にメジャーデビューして大きく変わったことといえば、やっぱりライブができるようになったことなんですね。私にとって本当に大切なライブをしながら20周年の当日に向かっていけるということが何より嬉しいんです。なのでこの時間を大切に、皆さんに感謝の気持ちを47都道府県1ヵ所ずつお伝えしに回れているというこの事実がとにかく幸せだなという想いでいっぱいです。

――2024年4月21日の満20年という記念日に向けて各地のファンとテンションを高めていくという最中であると。

KOTOKO ファンの人と皆さんと一緒に20周年を迎えようよ!という、桃太郎じゃないですけど、犬猿キジみたいにどんどん仲間が増えていく感じかな(笑)。全国の皆さんと一県一県回っていくうちに、皆さんと手を繋ぎながら最後は47都道府県の皆さんと一緒にゴールテープを切るみたいなイメージなので、今はその仲間がどんどん増えていっている感覚ですね。

――そうしたなかでもう1つ、20周年を祝うアルバム『リデコレイト・マイセルフ』がりリースされました。リデコレイト=模様替えというタイトルにあるように、ご自身が手がけられた楽曲のセルフカバー作となりましたが、この構想はいつ頃からあったんですか?

KOTOKO 6年くらい前かな?15周年を迎えた辺りから、20年に向けて何をやろうかということで、5年単位での計画みたいなものをお話しさせていただいて、「これをやりたいです」というなかの1つがこのセルフカバーでした。

――15周年のこの頃から構想があったんですね。

KOTOKO 最初、私の中ではどちらかというと自分が楽曲提供した曲、自分が歌ったものではなくて楽曲提供した曲たちを、改めて私がボーカルとして歌って世に出すという作品を出せたらなっていうのがあったんですよ。ただ、この20周年というタイミングで出すことになったときに、プロデューサーである西村(潤)さんたちスタッフの方々から、楽曲提供だけではなく、過去の自分の人気曲や私の名前を知っていただくきっかけになった曲を今のタイミングだからこそリアレンジをして、また聴いてもらうべきなんじゃないかというアイデアをいただきまして。それを受けて、そういう自分の中で大切な楽曲と、もう1つ自分が歌っていない楽曲のカバーというものも入れた、2つの要素を合わせたような内容にしました。

――20周年というキャリアの中で、改めてKOTOKOさんを知ることのできる内容にもなっているわけですね。

KOTOKO 最近の音楽事情も変わってきているじゃないですか。CDではなくストリーミングという形で音楽を聴くことが主流になってきて、私の曲をCDで持っていないような方たちもいるなかで、過去の私の有名曲で聴いたことがあるなとか、タイトルくらいは知っているなとか、そういった曲に目を向けてもらうことができればいいのかなと思っています。そういった歴史を振り返ることもできる1枚にしたいということもあり、色んな要素を加味していったなかで今回の内容になったということですね。

――とはいえKOTOKOさんの歴史を20曲に絞るという選曲もなかなか難しいとは思いますが……。

KOTOKO 私からファンの方に、「もしこういうアルバムを作るんだったらどういう曲を聴きたいですか?」というアンケートを取ったんですけど、それだけではなく最近のストリーミングのバイラルチャートの結果も参考にしました。バイラルチャートだとちょっと意外な順位結果も出て、そういうのも昨今の流れということで、ずっと応援してくださった方の声ももちろん軸としてはあるんですけれど、ライト層に向けてもこのアルバムを作っています。

――構成としてはKOTOKOさんのアニソンを中心としたDisc1と、電波ソングを中心としたDisc2という2枚組になりました。

KOTOKO この構成も最初は考えていなかったです。ただせっかく2枚組にするなら、昨年”電波曲の女王”ということで大きく打ち出したカラーは、いつものKOTOKOとは別の立ち位置で今回も出していきたくて、そこでディスクでそれぞれ色を分けさせていただきました。

リスペクトと信頼の証となったリアレンジ

――このアルバムのポイントの1つとしては、そうした過去の曲をオリジナルとは異なるクリエイターがアレンジしている点ですよね。

KOTOKO 絶対に原曲のアレンジをした人と被らないようにと振り分けました。あえて原曲とは逆の音楽性の方を選んだりして、この方ならこの曲をこうしてくれるだろうなという期待を込めて私からオファーさせていただきました。なかには若い頃から私の曲を聴いてくださった方もいて、IOSYSさんはチームの中で「この曲やりたい!」って曲の取り合いになったみたいで(笑)。

――同じ北海道で活動するIOSYSが、特に電波ソングでフィーチャーされているのは歴史を感じますよね。またKOTOKOさんの数々の楽曲を作られた高瀬一矢さんや中沢伴行さんもそれぞれ自身が書いた曲以外のアレンジをされていて、なかでも中沢さんは「Re₋sublimity」や「being」といった名曲のアレンジを担当していますね。

KOTOKO 中沢さんはこの2曲でオファーされたらきっと悩むだろうなって思っていて、まあ反応も想像通りだったんですけど(笑)。

――過去にも中沢さんは「Red fraction」のOuterバージョンのリアレンジで大変悩まれたというエピソードがありましたが、今回もプレッシャーのかかる2曲ですよね。

KOTOKO でもそれは信頼の証だと思うんですよ。彼なら絶対に素敵なものを上げてきてくれるに違いないという信頼ですね。「Re₋sublimity」は自分にとっても大事な曲だし、誰にお願いするか一番悩んだ楽曲でもあって、悩んだ結果、お願いするなら私のことを知り尽くしてくれる中沢さん以外に考えられないなと。

――またそれがオリジナルの高瀬さんとはまた異なる素晴らしいアレンジで。

KOTOKO もう本当にやってくれましたね。素晴らしい。期待通りの出来で、本当に中沢さんにお願いして良かったなって思いました。

――一方で高瀬さんは「radiance」と「Light My Fire」のアレンジを手掛けていますね。

KOTOKO 「radiance」もすごく悩まれてたと思うんですけど、それ以上に「Light My Fire」に対してすごくプレッシャーを感じてらっしゃっていて。オリジナルが完成されている楽曲なので、「ちょっとどうしていいかわかんない」って最初おっしゃってたんですけど、「こんな感じでどうかな?」って聴かせてくれたのがすごくかっこ良くて。高瀬さんがアレンジしたらこうなるんじゃないかな?って思っていた通りのものだったので、一発で「もう全然バッチリです!」っていう感じでした。

――名曲のリアレンジというのは歴戦の猛者といえどもプレッシャーを感じるんですね。それこそ「Shooting Star」と「went away」を手がけた齋藤真也さんも……。

KOTOKO これもシャイニー(齋藤)さんに対するリスペクトと信頼の証です。やっぱり「Shooting Star」をやるっていうのも結構なプレッシャーだと思うんですよ。私にとっての出世作で、私を知ってくれた方が一番多い曲なので。でもこれもシャイニーさんだったら綺麗なところを残しながら新しいところも入れて壮大な雰囲気にしてくれるんじゃないかなっていう想いもあって、信頼してお任せしました。

――この信頼もKOTOKOさんの中期以降の作品の中心人物である齋藤さんだからこそできたアレンジでもありますよね。

KOTOKO はい!たくさんお世話になっているので。

――さて、もう1つポイントとしては本作のコンセプトである、KOTOKOさんが提供された曲のセルフカバーですよね。Disc1では「radiance」(川田まみとの共作)と「Pure Heart ~世界で一番アナタが好き~」が収録されています。

KOTOKO そうなんですよ。特に「Pure Heart」は、実は私が歌手デビューする前に作詞家として世に出たもので、KOTOKOという名前が世に出たのは、この曲の作詞家としてというのが一番最初なんですよね。なので、私がプロとして歩み始めた1曲目といっても過言ではないのでどうしても入れたかったんです。知名度という部分ではほかの曲と比べると少し落ちるんですけれども、20周年だからこそカバーできる曲なんじゃないかというのもあったので、「この曲入れたいです!」って推して、収録することになりました。

――これがKOTOKOさんのボーカルで聴かれるというのは非常にレアといいますか……。

KOTOKO オリジナルを歌っていたAKIさんはすごくキュートな歌声の方なんですね。私とは全然タイプの違う少女のような声を出す歌手で、原曲が好きなファンの方も多いのでプレッシャーもあったんですけど、アレンジをsolfaの橋咲(透)さんにお願いして。原曲がアンドロイドの女の子が恋をするという作品のEDテーマだったので、ピコピコしていてかわいい曲だったんですけど、今回はそこにプラスしてスタイリッシュなアレンジで、KOTOKOの「Pure Heart」としてお届けできるようなすごくお洒落な感じのアレンジに仕上げていただきました。

この19年の積み重ねがそのままパッケージされた仕上がりになっている

――そうした過去の楽曲をリアレンジしたアルバムとなりましたが、一方でそんな楽曲たちについてKOTOKOさんはボーカル面でどう向き合いましたか?

KOTOKO 元々ライブで歌っている曲が多いんですよね。ライブではみんなCDなりゲームやアニメで原曲を聴いてるじゃないですか。そこで生で歌ったときに、違って聴こえるとちょっと冷めると思うんですよね。だから私はとにかく原曲を再現することをずっとライブではこだわってきたんですよ。なのでこの19年間、ライブで歌うたびにある意味自分をコピーしてきたので、今回歌い直すときになっても、意図せずに昔と同じ歌い方をしているなということに気がつきました。だから今回はあえて原曲に寄せようみたいな感じで意気込んでしたわけじゃないんです。

――なるほど。

KOTOKO しかも、このレコーディングをしているときもツアー中だったんですよね。そこで歌っていた曲も多くて、「↑青春ロケット↑」や「Short Circuit」なんかはまさに「さっきまで歌ってたじゃん!」みたいな曲で(笑)。ライブだと動き回りながら、バンドの音も大きいのでもうちょっとヤンチャな感じにはなるんだけど、ライブで歌い込んできた楽曲のしっかり歌うバージョンというか、本当にこの19年の積み重ねがそのままパッケージされた仕上がりになっていますね。「Shooting Star」だけは原曲の自分の歌に納得がいっていなくて、今の上手に歌えるようになったよっていうバージョンを聴いてほしくてしっかりと歌わせていただいたんですけど、それ以外は原曲とあまり変わらないかもなという出来になった気がしていますね。

――たしかに、電波ソング中心のDisc2はボーカルが色褪せることなく、まるで上質なリミックス盤を聴いているようで。

KOTOKO そうですね。2枚目なんかもう本当に原曲とどこが違うのかなって(笑)。やっぱり歌い方は昔から変わってないんだなっていう感じです。

――そういう意味では素材本来のタイムレスな魅力が現代向けにアップデートされた印象はありますよね。

KOTOKO あと歌以外の部分の、セリフやガヤはこの20年歌ってきてすごく上手になったっぽくて、セリフがやたら上手になっていたり、ガヤのキャラづけも増えてたくさん人がいるみたいになりました。

――それこそ「Change my Style~あなた好みの私に」の冒頭はアレンジ含めて最高ですね。

KOTOKO そうですそうです。「Change My Style」は私の作詞作曲なので、アレンジの舞ちゃん(井内舞子)には「本当に好きにいじっちゃっていいからね!」って言って結構遊んでもらいました(笑)。

――またそれぞれのDiscの最後の曲も印象深くて、まずDisc2ではAiobahnとのコラボ2作目となった「INTERNET YAMERO」がボーナストラック的に11曲目に収録されています。

KOTOKO 人生って予期しないことが起きるんだなっていうのを感じた曲ですね。前作の「INTERNET OVERDOSE」もここまで人気になる曲だとは思っていなかったんですよ。それでその第2弾で「INTERNET YAMERO」を出すときも、歌うところよりしゃべるところのほうが多くて度肝を抜かれたんですよね。でも前作を凌ぐ勢いで再生回数も伸びていって、「こんなことってあるんだな」って思いました。

――Aiobahnさんとの一連の楽曲が、また今の時代に電波というものを強烈に提示したものになりましたし、そこも本作のDisc2に繋がっているのかなと。

KOTOKO この曲のきっかけにKOTOKOのことを、ゲームのことも知らないような世代が、TikTokとか動画コンテンツを通じて知ってもらってという新しい出会いもあったことは、本当に私にとっても大きくて。この20年を迎えようというタイミングで、こういう新たな世界に連れていってもらえたという意味では、本当に大きなコンテンツになったなっていう気がしてますね。

――そして、Disc1の最後には「421₋a will₋」が収録されています。

KOTOKO そうですね、最後はこの曲に以外に考えられないなって。

――イントロから来年の4月21日に向かっていく壮大さもあって。

KOTOKO このアレンジは壮大で温かい感じにしてほしいというお願いをしました。これも原曲が完成されている世界観だったので難しかったのかなと思うんですけど、そこは本当に上手くリアレンジしていただきました。私の中でも思い入れも深い曲なので、改めて今回歌い直しをして想いを入れ直すようなことができたし、やって良かったなと思います。

――ここでのボーカルは特に、20年近く歩んできた重みを感じさせる印象が強かったですね。

KOTOKO 実はこの曲に限らずですが、譜面というものが存在しないので私もアレンジャーさんもほぼ耳コピなことが多いんですよね。コーラスやハモリについても、原曲を聴いても聴き取れないような部分がたくさんあるんです。なので私も自分で聴き取れる範囲では、「実はここにこういうの入っていたと思います」ってアレンジ段階でお願いすることもあったんですよね。「421」に限っては、レコーディングの現場に行くまで忘れていた大事なパートがあって、出来上がったのを聴いたら「あれ、何かが足りない……あれだ!」って思い出したところもあって。それくらい大事な曲だったんだなというのを再確認できた気がします。

――改めて楽曲の秘密を解き明かすようでもありますね。しかし現場で大事な箇所を思い出すというのも示唆的といいますか……。

KOTOKO エンジニアさんも「よく思い出せたね」ってちょっとびっくりするくらいの箇所だったんですよね。やっぱり音の1つ1つってすごく大事で、当時作ってくれた作家の方の想いも込められている。そういうのも大事にしたいという気持ちも今回あったんです。「あそこがエモかったんだよな」っていうディレイがあって、そこに対してあえて今回はディレイをつけるのかなくすのか、そういう細かいところにも作家さんやエンジニアさんとのやり取りがあったんですよ。なので全体を通してやっぱりパワーがいる作品でしたね。

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