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INTERVIEW

2023.09.11

熊田茜音、『英雄教室』ED主題歌「Another Self」リリース!“向き合いたくない自分”と向き合った意欲作、樋口楓とのコラボや「熊田村」など様々なチャレンジについて語る

熊田茜音、『英雄教室』ED主題歌「Another Self」リリース!“向き合いたくない自分”と向き合った意欲作、樋口楓とのコラボや「熊田村」など様々なチャレンジについて語る

声優アーティスト・熊田茜音が放つ久々のニューシングル「Another Self」は、TVアニメ『英雄教室』のエンディング主題歌。主人公の元勇者・ブレイドの心情や心境に寄り添いつつ、熊田自身の気持ちや抱えている想いにもシンクロした、自分の弱さを受け入れることの強さを表現したエモーショナルなミディアムナンバーだ。さらにカップリング曲「Take My Chance(feat. 樋口楓)」では、同アニメのオープニング主題歌を歌うVTuber・樋口楓とのコラボレーションも実現。自分自身を含む色んな人々と向き合い、様々な新しい挑戦をすることで一歩ずつ前に進んできた彼女の、今この瞬間の感情に迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

“向き合いたくない自分”と向き合うことで気づくことができた自分自身

――新曲「Another Self」はTVアニメ『英雄教室』のエンディング主題歌。ここまでのアニメの放送をご覧になっていかがですか?

熊田茜音 原作を読ませていただいたときからアニメがすごく楽しみだったのですが、まず声優さんたちの声がイメージ通りですごく嬉しかったです。お話としては、元勇者だった主人公のブレイドが友達100人作ることを目指して学園生活を送る、というのがメインで進んでいくのですが、登場人物たちがみんな濃いキャラクターで、しかもその子たちと友達になるまでのエピソードが1話ずつ丁寧にテンポよく描かれていくので、1人1人に愛着が沸きますし、「この子はもう心を開かないんじゃないのか?」という子がみんなの力で友達になる瞬間もあって感動します。

――ブレイドが元勇者という素性を隠しているのも本作のポイントで、「Another Self」は物語のそういう部分に寄り添った楽曲になっていますよね。

熊田 そうなんです!エンディング主題歌の制作が決まったときに、この楽曲を作詞してくださった結城アイラさんと対面でお話をさせていただいたんです。がっつり1時間半くらい。そのときに、私が原作を読ませていただいたうえで感じたこと、“勇者”というのは強くてみんなから称えられるし羨ましがられるような存在だけど、だからこそ孤独な部分もあるんじゃないか、ということをお伝えしました。それこそブレイドが何度も「俺、ブレイド!」って自己紹介するシーンがアニメの第1話にもありましたけど、最初は「なんでこんなにしつこく自分の名前を言っているんだろう?」と思っていたんです。でも、「これは“勇者”という肩書きではなくて、自分は“ブレイド”だということを知ってほしかったんだ」ということに気づいて。きっと勇者ではなくて1人の人間として、本当の意味で友達になりたい気持ちの表れなんだと。

――なるほど。

熊田 で、そういうふうに作品を解釈したときに、自分もアーティスト活動をしていると、“ポジティブ”とか“元気で明るい”という印象が、自分の想像以上にどんどん先に歩いていってしまって、そういう“自分に対するイメージ”とブレイドの“勇者”の部分が重なるように感じたんです。もちろん“ポジティブ”や“元気で明るい”は私の大半を占めている部分でもあるし、表現としてもそうしていきたいんですけど、だからこそ自分の弱い部分を見せるのがどんどん怖くなっていくところもあって。でも、それって自分1人で勝手に歩かせていたんだなと思ったんですね。

――というのは?

熊田 例えばリリースイベントとかでファンの方の前で歌うときに、私はその場を盛り上げることだけに徹しすぎていたことがあったんです。楽曲に対する大事なことを置き去りにしている気がすると思ったときに、スタッフの方と相談して、いつもよりも笑顔を抑えめにして歌う部分を作ってみたりして。実際に、それをやってみたとき、自分の中では「大丈夫かな……?」って心臓がバクバクだったんですけど、みんな「いつもより良かったよ」と言ってくれて……だからきっと自分が“自分に対するイメージ”を意識しすぎていたんです。そういうお話を結城さんにしたら、この歌詞が届きました。

――確かに「Another Self」の歌詞を紐解くと、1番に“勇者のような正義感だって 僕の一部でも 僕の全部じゃない”や“偶像(イメージ)だけが 自分勝手あるいてく”といったフレーズが含まれていて、『英雄教室』のブレイドに寄り添った内容になっていますが、熊田さんらしさも感じたんですよね。特に2番以降の歌詞ですが。

熊田 そうなんですよ。結城さんとここまでしっかりとお話するのは今回が初めてだったのですが、すごく包容力のある方で、私自身が漏れちゃっていたのかもしれないです(笑)。なので歌詞をいただいたとき、自分の中身がバレたというか、真実を見抜かれたような気がして、心が痛くなってしまったくらいで。しかもこの楽曲をレコーディングしたときは、その感情が最も大きくなっていた時期でもあったので、自分の中の“向き合いたくない自分”、それこそ言葉をお借りするなら「Another Self」に向き合って成長していく、ということを主軸に歌いました。

――その“向き合いたくない自分”というのは?

熊田 私はネガティブな部分も結構あるので、「あー、こんな自分は嫌だ」とか「なんでこんな考え方してしまうんだろう」とか、自分のことが許せなくなってしまうときがよくあるんです。自分の理想の自分というのが私にもあって、そういう気持ちは1stアルバム(『世界が晴れたら』)の「いいんだよ」とかでも歌っていたのですが、今回「Another Self」をいただいて、リリースイベントでこの曲を歌ったときに、きっとみんなにもそういう気持ちはあるんだろうなって感じたんです。しかもそれは人それぞれの形をしていて、毎年、もっと細かく言えば毎秒変わっていくんだろうなって。そう感じたときに、やっと自分に「いいんだよ」と言ってあげられることができたので、今回は戻りながら進んでいくような感覚もありました。アルバムで挑戦した楽曲たちの彩度がより豊かになったというか……上手く説明できないですけど、もし2ndライブをやるとしたら、1stライブのときとはまた違った感情で『世界が晴れたら』の楽曲を歌えるような気がしています。

――レコーディングのときは、“向き合いたくない自分”とどのように向き合ったのでしょうか。きっとご自身としては辛い部分もあったと思うのですが。

熊田 私としては、そういうもやもやした気持ちを乗り越えた自分、「こんなこともあるよね」っていうちょっと大人になった自分で届けたかったんですけど、まだ歌詞が自分の心にグサグサ刺さったままの状態でレコーディングを迎えたので、歌っていてもどんどん暗くなってしまって……。まずワンコーラス分を録って、自分でも納得できなかったんですけど、とりあえず最後まで録ってみたんですよ。でも「暗いね」っていう話になって。プロデューサーも最初は「なんでだろうなあ」なんて笑顔で言っていたんですけど、3時間くらい録り直しても全然良くならなくて、「もういいよ。これで出そう」って言われたんです。すごく悔しくてショックだったんですけど、言い返すことができなくて、「はい」と言ったものの、そのままトイレにこもってワンワン泣いてしまって。自分では5分くらいで出てきたつもりだったんですけど、あとから聞いたら1時間くらい泣いていたらしいです(苦笑)。

――そんな大変なエピソードがあったとは。

熊田 で、トイレの中で泣きながら自分の中の“Another Self”と向き合ったんですけど(笑)、「こんな自分も納得していない歌を世の中に出すぐらいなら全部辞めたい!」っていうところまでいった結果、吹っ切れて、目もパンパンで鼻もグズグズでボロボロなのにしれっと出てきて、「もう一回録らせてもらえますか」って頭を下げてお願いしたんです。それで歌ったらプロデューサーさんも私も納得のいくテイクが録れて、結局、ほぼ録り直しました。最初の3時間は何だったんだ、みたいな(笑)。特にワンコーラスと最後の“Together”というフレーズは、泣いたあとに録ったテイクです。

――今回の「Another Self」の歌を聴いたときに、色んなことを受け止めるような包容力を感じたのですが、それはそうやってご自身と向き合ったことが大きかったのかもですね。

熊田 それだけヤバい自分を受け入れたので、もう誰でも受け入れられますよね(笑)。こんなことを言うのは恥ずかしいんですけど、泣いたあとは、歌っているときに光っている感覚があったんですよ。最初の3時間はスタジオのブースが暗くて彩度が低かった気がして……泣き腫らして目が潤んでいたのかもしれないですけど(笑)。でも、最初は歌詞を暗く捉えてしまっていたんだと思います。別に暗くないし、むしろすごく前向きな歌詞なんですけど、自分の本質を突かれてしまったから自分が暗くなってしまったんですね。だけど、泣いたあとはすごく輝いている歌詞に見えて。「Sunny Sunny Girl◎」や「ココロハヤル」とはまた違う光り方をしていることに気づいたし、それって自分自身にも当てはまることだと思ったんです。“暗い自分”にも“暗い自分”なりの光り方があるし、それを見つけてあげられたのは成長だと思いますし、自分に対しての“愛”というのは特に難しいけど、その破片は掴められたような気がします。ようやく自分の中の“Another Self”を、暗い意味ではなく、ちゃんと受け止められるようになったというか、“Together=一緒に”って思えるようになりました。

――そして「Another Self」のMVは、熊田さんが同曲の歌詞を探して旅をする、ドキュメンタリー風の映像に仕上がっていますね。バンジージャンプにも挑戦していて。

熊田 今回は、自分と向き合う歌だからこその熊田の良さを表現したMVにしたいという話をしました。
私はカメラが回るとスッと入って“熊田茜音”になろうとする節があるのですが、もっと普段の自分、素でしゃべっている感じを映像に収めたらどうか?ということになりまして。それで実際に街に繰り出して、役者さんやエキストラの方ではない、小学生やお店の方といったリアルな方たちと触れ合ったときの私の表情を撮ることになりました。バンジージャンプは打ち合わせのときに冗談で出てきたアイデアなんですけど、今回のMVを制作してくださったのが、普段はテレビのバラエティ番組を制作しているチームということもあって、結構バラエティ寄りの方向にも話が広がり出してしまって……私のマネージャーさんもノリノリになって「落とし穴とか面白いんじゃないですか?」とか言ってたんですよ(笑)。でも、確かにバンジージャンプなら表情を作るような余裕はないだろうし、私もデビュー当時から一度挑戦してみたかったのでOKを出したら、100メートル級のすごいところで飛ぶ羽目になりました(苦笑)。

――アハハ(笑)。でも熊田さんの自然体の表情をたくさん観ることができて、素敵なMVだと思いました。

熊田 ありがとうございます!街の方たちと触れ合っているシーンは、1日中カメラに密着して撮影していただいていたので、自分でもいつ撮られていたのか覚えていないんです。逆にカメラを意識せずに楽しんで撮影することができました。

次元を超えたコラボからWEBラジオまで!熊田茜音、チャレンジの日々

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