INTERVIEW
2023.09.08
――ここからはMyGO!!!!!の音作りのこだわりに関して深堀りできればと思います。具体的な音源制作に関しては、札ノ辻さんが主導されているとのことですが、最初はどのように制作を進めたのでしょうか。
札ノ辻 2021年の暮れくらいにプロジェクトのお話をいただいて、そこから楽曲の選定やスタッフィングを進めていったのですが、MyGO!!!!!の楽曲に関しては制作プロセスとして、演奏するプレイヤーとトラックダウンするエンジニアは基本統一して、同じ座組みでやっていきたいというお話だったんです。そこでプレイヤーに関しては、緒方さんとも相談したうえで、ギターはこのプログラムのスタートになった「迷星叫」を作ってくださった長谷川さん、ベースは木下さん、ドラムは弊社の植木建象という座組みで統一することにしました。手探りでスタートしたので大変だったのですが、ミュージシャンも含めて基準になったのは「迷星叫」で、あの楽曲でMyGO!!!!!ができたと言っても過言ではないと思います。「迷星叫」は一番時間をかけて制作した楽曲で、実は羊宮(妃那)さんの歌も1度録り直したんです。
――えっ、そうだったんですか?
札ノ辻 最初の段階で燈ちゃんのキャラ設定や声の出し方の方向性を緒方さんにチェックしてもらったうえで、レコーディングを行ったのですが、やはりMyGO!!!!!は楽曲が強いので、それに負けないリードボーカルという意味では、ニュアンスが強すぎると、歌声としての乗りが弱くなるところもあったんですね。その後も制作が進行していくなかで、羊宮さんは並行してボイスレッスンに通われていて、2~3曲できたところで、燈ちゃんとしての歌い方を確立してきたんです。そこで「迷星叫」をもう一度録り直すことにして、歌っていただいたのが今の「迷星叫」になります。なので歌のレコーディングを固めるまでにもかなりのプロセスがありました。しかも「迷星叫」に関しては、トラックダウンも5~6回ぐらいやり直したんですよ。
――それはどんな音を目指したのでしょうか?
札ノ辻 個人的に既存の「バンドリ!」との立ち位置の違いを明確にしたくて、TD(トラックダウン)エンジニアに関しても今までとは違うタイプの方にお願いしたんです。それがmillennium paradeのエンジニアを担当されている佐々木優さんという方で。MyGO!!!!!は楽器構成がシンプルな中にハイクオリティなスキルが入っていて、ベースやドラムも手数が多くてテクニカルなので、millennium paradeに通じるようなドープな鳴りというか音の太さがほしかったんです。ギターに関しても、長谷川さんに作り込んでいただいている音色からさらにリアンプして、アナログを通したりもしていて。1つのアーティストバンドというか、声優さんの枠を超えたアーティストとしてのバンド像というところを意識して作っていきました。
――MyGO!!!!!のサウンドにはすごくパンチがありますが、そこは佐々木さんのエンジニアリングの力やアナログ機材を通すことで実現していたんですね。
札ノ辻 そうですね。TDは池袋にあるDedeというスタジオで作業しているのですが、そこのオーナーの吉川(昭仁)さんという方が機材マニアで、ビンテージ機器だらけなんですよ。millennium paradeもそのスタジオでがっつりやっているんですけど、佐々木さんにはそのスタジオで作業していただいていて。もちろん最初の音色の選定や演奏ありきではあるのですが、そこに色んな手法やエッセンスを取り入れて、こだわった音作りをしています。
――長谷川さんと木下さんは、MyGO!!!!!の楽曲を演奏レコーディングする際、どんなことを意識していますか?
長谷川 ギターに関しては、本人が鳴らせる音を越えないことをテーマにしているので、キャスト本人が使っている機材情報を共有していただいて、同じメーカーの機材を使うようにしています。で、MyGO!!!!!の場合はリードギターとリズムギターが明確に分かれているので、そこも意識して、リードのほうはよりテクニカル、リズムはよりシンプルに、というのを意識しています。リードギターに関しては(要)楽奈ちゃんが使っているSUPROというメーカーのアンプを使っていて、リズムギターはLaneyのアンプでコード弾きをしっかり支える作り方にしていますね。
木下 ベースのフレージングに関しては、それこそ1曲目の「迷星叫」を録るときに、ベースがどれくらい動くかのバランスを、楽曲を書いた長谷川さんとも話しながら試行錯誤しました。キャストの方が弾くことが前提にあったので、最初はそこも意識していたのですが、だんだん「やっちゃっていいかな」と思うようになって(笑)。多少やりすぎたかな?と思っても、ライブを観ると小日向(美香)さんがちゃんと弾いているんですよね。特に「潜在表明」は楽曲を書いた鈴木(裕明)さんの好みもあってベースがだいぶ動いているのですが、ちゃんとフレーズを拾って弾いてくれていたのですごいなと思って。長谷川さんも話されていたように、難しいフレーズがあると燃えて弾きたくなると思うんですよ。音色に関しては、速い曲が多いので、アタックがしっかり見えるように意識しているのと、エンジニアさんの要望で低いサブベースみたいな音を作って重さも担保するようにしています。
長谷川 あと、楽曲で言うと「影色舞」は苦労したんですよ。というのも、元々のデモのアレンジはパンクスタイルじゃないギターだったんですね。でも僕はパンクスタイルの人間がやっているという線は崩してはいけないと思ったんです。確かにああいう曲調の場合、シングルコイルのギターでカッティングとかで演奏したほうがかっこいいのはわかるんですけど、それをそのままやってしまうとMyGO!!!!!ではなくなると思って。あくまでもパンクバンドがやっているテイストを残したくて……めっちゃくちゃ苦労しました(笑)。でも、ライブを観たときにちゃんとそのスタイルを継承してくれていて、こだわって良かったと思いましたね。
木下 しかもステップを踏みながらですしね(笑)。僕が作ったデモはもっとチャキチャキしたギターだったんですけど、長谷川さんが音色を変えてくださったんです。でも、聴いたら確かにこの太さがいいなあと思って。やってもらって大正解でした。
――ちなみに、皆さんの個人的なMyGO!!!!!の推し曲を聞いてみてもいいですか?
木下 僕は「無路矢(のろし)」の重たい感じが好きですね。この曲もベースを頑張ってしまったので、小日向さんには申し訳ないなと思いつつ(苦笑)、ツインボーカルもリズムも特殊だし、歌詞も交わる部分があって。ただ、曲名の読み方は4th LIVEのMCで初めて知りました(笑)。
長谷川 僕はアニメのOPテーマの「壱雫空(ひとしずく)」です。ギターのレコーディングをしたときは、アニメのOPテーマになることを知らなかったんですけど、弾くのが楽しい曲だなあと思って。サビの突き抜け感とかノリがいいので、バンドマン受けしそうですよね。
札ノ辻 僕はやっぱり「迷星叫」ですね。思い入れが強すぎて、デモのタイトルもずっと頭に残っているくらいで(笑)。羊宮さんの憑依するニュアンスやパッション、歌も含めて、声優さんってすごいなあと改めて思いましたし、長谷川さんのメロディもキャッチーで、本当にいい楽曲だと思います。
緒方 立場上、1曲を選ぶのは難しいですが、プロデューサー云々は抜きにして話すと、僕は「焚音打」がめっちゃ好きです。この1~2カ月、「焚音打」のことしか考えてなかったくらいなので(笑)。もちろん5th LIVEの表題だったこともあるのですが、難しいことは抜きにして、やっぱり“このパンクロックの中で同じ熱になれるいまがすべて”ですよね。
長谷川 自分で作っていうのもなんですけど、「焚音打」はすごく不思議なパワーを持った曲だと思います。僕もMVを観させていただいたときに、ぞわぞわっとしたんですよね。特に歌詞がすごく好きですね。迷って迷って迷ったんだけど、最後に何か吹っ切れた感があるというか。自分たちで“パンクロック”と言い切ったところも含めて、すごく意志を感じる曲だと思います。
札ノ辻 あの曲の歌は、ほぼファーストテイクだったんですよね。一応、もう一本だけ録らせてくださいっていうレベルで、1テイクめでもう出来上がっていました。
――アニメの音楽制作についてもお伺いさせてください。劇中に登場する楽曲はどれもアニメとシンクロした内容になっていますが、アニメ制作サイドとはどのようなやり取りを行って制作したのでしょうか。
緒方 僕がアニメの本読み(脚本会議)に毎回参加して、そこで監督が伝えてくださるイメージに合わせて、こちらから音楽的にどう表現するかを提案させていただく形で進めました。例えば第10話の「詩超絆(うたことば)」は、1度はバラバラになったメンバーが、燈のもとに1人ずつ戻ってきて、どんどん音数が増えて最終的に楽曲になる、というイメージを実現するために、脚本のト書きに「ここでドラムがINする」といったような書き込みなんかを何往復もやり取りしながら調整して、フィルム合わせで楽曲の構成を計算して制作しました。あとはダビング(アニメの音響作業の最終工程)時にも直接立ち会って確認させていただき、監督とも相談のうえで楽器やコーラスのバランスを原曲とは変化をつける形で調整していきました。最終的に音楽と映像の高い次元での融合が実現できていれば良いなと思っています。
――「詩超絆」のライブシーンは、アニメーションと楽曲の展開が完全に一致していて本当に感動しました。
緒方 札ノ辻さんにもご相談して、プレイヤーの方にも尺に合わせて弾いていただいたり、色々な方とのコミュニケーションとご協力を経て完成しました。CD音源にはないアニメ用の素材も作っていただいて、「詩超絆」も原曲にないイントロが2種類存在しています。
札ノ辻 他のシーンも含めて、アニメでMyGO!!!!!のメンバーが演奏する音は全部、実際に音源で演奏しているプレイヤーの方々に録っていただいていて。例えば(千早)愛音がミステイクするシーンの演奏も、長谷川さんにわざとミスった演奏を弾いてもらっていますし、なおかつ手元の映像も同録して、それをサンジゲンさんに資料として渡してアニメーションに起こしていただいているんです。
長谷川 そうそう。ミスったように弾くのって結構難しくて(笑)。他にもアニメ用に違うバージョンのアルペジオも弾いたりしましたね。なのでアニメを観ていると色んな想いが入ってしまうんですよ。「あのとき俺が弾いたギターがアニメーションになってる!」って(笑)。
木下 僕も第7話のリハのシーンで(長崎そよが)サウンドチェックせずにチューニングがズレた状態で弾くバージョンの「碧天伴走」を録りましたね。確かあれは上の空の状態という設定だったのですが、チューニングってちょっと狂ったぐらいだと一般の方はわからないと思うので、結構めちゃくちゃにして録りました(笑)。
緒方 それと第12話のライブシーンの「迷星叫」に関しては、今回のアニメを通して既存曲が登場するのはここだけになるので、ファンの方がハッとなるポイントを作りたくて、ボーカルをアニメ用に録り直しました。先ほど「迷星叫」の音源は1度録り直したというお話もありましたが、そこからまた1年以上経っていましたし、その間で羊宮さんのボーカリストとしての変化や成長も感じていたので、それを一番良い形で発揮できればと思いまして。実際どんなイメージで録ったかは、どこかの機会で羊宮さんご本人から直接お話いただくのが良いのかなと思っています。
――ここまでMyGO!!!!!の音楽制作について興味深いお話たくさんしていただきましたが、そのようにMyGO!!!!!の音楽を築いてきた皆さんから見て、MyGO!!!!!の音楽の核になっているのは何だと思いますか?
木下 難しいですが、僕はやっぱり“歌”だと思います。羊宮さんのあの声で楽曲を聴いた瞬間に、「ああ、これがMyGO!!!!!なのか」と納得したので、自分は。燈ちゃんというキャラクターと、それを表現する羊宮さんの歌声。それが大きいと思います。
長谷川 僕は抽象的ですけど、“感情”という気がしていて。あの年頃の今しか出せない感情の揺れ動きみたいなものが、そのまま音楽に出ている感じがするし、バンド名の由来でもある「迷いながらでも進んでいく」という感情そのものが核だと思うんですね。僕も、ギターを弾くときや楽曲を作るときは、その感情をまず詰め込もうと思っていて。音に感情なんて入らないと思うかもしれないですけど、僕は意外と入ると思うんですよ。そういう感情がMyGO!!!!!というバンドで作られていて、聴いた人・観た人はそこに惹きつけられていくんだと思います。
緒方 僕は“言霊”ですね。言葉が持っている強さ、そこに積み重なって溜まっている色んな想いの強さというか。結構キャッチーな言葉遣いもありますが、歌詞の1つ1つに意味合いがあって、ファンの方も考察したくなるような深みや濃さがあると感じていて。僕も制作の段階で不思議と歌詞をほとんど覚えてしまうのですが、そういう言霊の強さが届いているからこそ、ファンの方にも他人事ではない何かとして受け入れられているんだと思います。
札ノ辻 そういう意味でも“アーティストバンド”という見え方になっている気がするんですよね。もちろんキャストの皆さんが自分たちで楽曲を作っているわけではないですが、リードボーカルの羊宮さんの歌を中心に、バンドのアンサンブルも含めて、1つのアーティストバンドとして成立している印象があります。
――最後に、今後のMyGO!!!!!の音楽活動の構想について、緒方さんにお話いただけますでしょうか。
緒方 ライブの話で言うと、1st LIVEから4th LIVEまででMyGO!!!!!の世界観が確立されたなかで、新たにアニメの文脈が加わってからの5th LIVEがあったことで、ライブの意味合いも少しずつ変わってきたように思うんです。5th LIVEはキャストも公開されアニメも放送真っ只中での開催ということで、改めて考えなければならないところも多かったのですが、最終的にはメンバーの皆さん1人1人がキャラクターと真剣に向き合ってくださったおかげで1つの形になりましたし、10人としてのMyGO!!!!!がまた1つステージを進めることができたのではないかと思っています。4th LIVEでキャストが公開されて新しいMyGO!!!!!が始まって、5th LIVEがその序章だったとすると、次の12th☆LIVEのDAY2で、そこからまた成長した姿を見せられると思いますし、ゆくゆくはお客さんとの距離が近いライブハウスでのライブもまたできればと考えています。キャスト公開後はイベントだったりお客さんとのコミュニケーションや対話の場が増えてきたので、そういう部分も意識して音楽を作っていければと考えていて。MyGO!!!!!はサウンドとしてはお客さんを引っ張っていくような激しめの楽曲も多いですが、歌詞やライブでのコミュニケーションに“押しつけ”がないところが特徴の1つだと思っているので、その意味でもお客さんとの距離感を大事に活動を続けていきたいです。最高の楽曲を生み出してくださるクリエイターの皆さん、最高のパフォーマンスを魅せてくれるメンバーの皆さん、そして最高に熱いファンの皆さん全員を巻き込んで、これからも迷いながら一緒に進んでいければと思っています。
●作品情報
アニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』
放送局(※放送時間は編成の都合により変更になる場合がございます)
・TOKYO MX
毎週木曜23:00~23:30
・テレビ愛知
毎週木曜25:30~26:00
・サンテレビ
毎週木曜24:30~25:00
・静岡放送
毎週木曜25:25~25:55
・BS日テレ
毎週木曜24:00~24:30
・AT-X
毎週金曜22:30~23:00
リピート放送:毎週火曜10:30~11:00、 毎週木曜16:30~17:00
・北海道テレビ
初回7月2日(土)#1:26:30~27:00
#2以降:毎週土曜日26:30~27:00
・新潟テレビ21
初回7月6日(木)#1~#3:26:15~27:45
#4以降:毎週木曜日26:15~26:45
・北陸朝日放送
初回7月8日(土)#1:26:30~27:00
#2以降:毎週土曜日26:30~27:00
30分先行配信
ABEMA
毎週木曜22:30~23:00
配信
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ビデオマーケット
music.jp
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ふらっと動画
TELASA
J:COMオンデマンド
milplus
スマートパスプレミアム
Amazon Prime Video
FOD
カンテレドーガ
●リリース情報
MyGO!!!!! 1st Album
「迷跡波」
11月1日発売
【Blu-ray付生産限定盤】
価格:¥9,900(税込)
品番:BRMM-10716
【通常盤】
価格:¥3,850(税込)
品番:BRMM-10717
<CD>
1.迷星叫
2.壱雫空
3.碧天伴走
4.影色舞
5.タイトル未定
6.潜在表明
7.音一会
8.春日影(MyGO!!!!! ver.)
9.タイトル未定
10.タイトル未定
11.無路矢
12.名無声
13.栞
<Blu-ray>
・MyGO!!!!! 4th LIVE「前へ進む音の中で」
初回生産分限定封入特典
・2024年開催予定 MyGO!!!!!単独ライブイベント最速先行抽選申込券
・2024年開催予定 MyGO!!!!!出演ライブイベント最速先行抽選申込券
・オリジナルキャラクターカード1枚(10種+シークレット箔押しサイン入り10種)
商品詳細はこちら
●ライブ情報
MyGO!!!!! 6度目の単独ライブが開催決定
BanG Dream! 12th☆LIVE DAY2 : MyGO!!!!!「ちいさな一瞬」
2023年11月4日(土) 開場17:00/開演18:00(予定)
会場:東京ガーデンシアター
チケット:プレミアムシート:22,000円(税込) 一般指定席:9,900円(税込)
最速先行抽選
受付期間:2023年8月9日(水) 10:00 ~ 9月18日(月・祝) 23:59
受付URL:https://eplus.jp/mygo_hitoshizuku/
※本公演のチケット最速先行抽選には、8月9日(水)リリース MyGO!!!!! 3rd Single「壱雫空」初回生産分に封入の申込券でご応募いただけます。
詳しくはこちら
Roselia単独ライブ「Farbe」DAY1にMyGO!!!!!のオープニングアクト出演が決定!
Roselia「Farbe」
2023年9月16日(土)、17日(日) 開場17:00/開演18:00(予定)
オープニングアクト DAY1:MyGO!!!!!/DAY2:Ave Mujica
※MyGO!!!!!の出演は16日(土)のみとなります。
会場:有明アリーナ
チケット:プレミアムシート:22,000円(税込) 一般指定席:9,900円(税込)
チケット一般販売 受付中
受付URL:https://eplus.jp/roselia_2023/
※先着順・無くなり次第終了
詳しくはこちら
アニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』公式サイト
https://anime.bang-dream.com/mygo/
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