昨年春、TVアニメ『可愛いだけじゃない式守さん』OPテーマ「ハニージェットコースター」でインパクト大のデビューを飾ったYouTubeシンガー・なすお☆が、8月23日にニューシングルを2作同時リリースした。ポップななすお☆のイメージを一新するような切ないラブソング「星屑レクイエム」は、TVアニメ『死神坊ちゃんと黒メイド』第2期のEDテーマ。そして、疾走感あふれるバンドサウンドとキャッチーなメロディーが魅力の「バグちゃん」は、TVアニメ『聖者無双〜サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~』のOPテーマと、いずれも現在放送中のアニメ主題歌となる。また今回は“Animelo Summer Live 2023 -AXEL-”の開催直前に行ったインタビューということで、その初出演に向けた思いも交えつつ最新楽曲の魅力を語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
――「ハニージェットコースター」でのデビューから1年3ヵ月が経ちましたが、なすお☆さん自身のなかで何か変化は感じられましたか?
なすお☆ YouTubeでの活動は変わらずに続いていますが、「ハニージェットコースター」発売後はフリーライブもたくさんやらせていただきまして。『可愛いだけじゃない式守さん』のアニメを観て来ましたとか、「ハニージェットコースター」をアニメで知って来ました、というお客さんがめっちゃ増えました!ライブの後に直接お話もさせていただくんですけど、小っちゃいお子さんがお父さんお母さんと一緒に来てくれたりもして。 “なすお☆お姉ちゃん”と呼んでもらえたり(笑)、すごく新しい経験をさせてもらってます。
――YouTubeなどの動画サイトでも、「ハニージェットコースター」を“歌ってみた”カバーをしている方がいますよね。
なすお☆ それもめちゃめちゃ嬉しいんですよ。楽器を“弾いてみた”やドラムを“叩いてみた”系の人もたくさんいて。今までは私がアニソンをカバーさせてもらう側だったので、自分の曲をカバーしてもらえるなんて、夢みたいですね。
――そして今年の夏は、アニメ主題歌として「星屑レクイエム」と「バグちゃん」が、なんと2曲同時リリース。大盤振る舞い過ぎですよ(笑)。
なすお☆ あはは、ほんとですね(笑)。「ハニージェットコースター」のときは、初めてのことばかりですごくバタバタしちゃったので、今回はそんなバタバタも2倍になるかも、ヤバい! ありがたくて嬉しいけど、大丈夫かな?って思いました(笑)。
――「ハニージェットコースター」に続いて、「星屑レクイエム」「バグちゃん」ともに作詞がなすお☆さん、作曲はまどくん。2曲とも、まどくんに曲をお願いすることは決めていたんですか?
なすお☆ はい。まどくんと一緒に曲作りしたいなと思ってました。まどくんは私よりアニメに詳しいオタクだから、タイアップの2作品のこともめちゃ詳しくて頼りになるんです。今回もすごく力を借りました!
――では『死神坊ちゃんと黒メイド』第2期EDテーマ「星屑レクイエム」のほうから、お話を伺いますね。前回の「ハニージェットコースター」では、アニメ側からのオーダーを意識せずに、まずはまどくんと2人で曲を作り上げることから始めたそうですが、今回はどうでした?
なすお☆ 今回も同じですね。EDテーマだからちょっと落ち着いた曲にしよう、とかはあまり考えすぎず、『死神坊ちゃんと黒メイド』という作品全体の曲を作るくらいの気持ちで、私たちが感じたままやってみよう!と、始まりました。いつも、2人で部屋に篭ってまどくんがギターを弾きながらコードやメロをつけていって、そこに私が同時進行で歌詞をつけて。2人で「ここはもっとこんな感じじゃない?」とか話し合いながら書いていくんですけど、今回もまったく同じやり方で作っていきました。
――アニメ主題歌の作品への寄り添い方は、アーティストによってそれぞれ違いますが、「星屑レクイエム」で意識したことは何でしたか?
なすお☆ 『死神坊ちゃんと黒メイド』は、触れたものを死なせてしまう呪いをかけられた貴族の坊ちゃんと、孤独な坊ちゃんを支えるメイドのアリスちゃんが恋するお話なんです。特に第2期は、坊ちゃんとアリス以外も、色んな恋愛が同時並行で進んでいくのが、原作でも印象的で。だから坊ちゃんとアリス以外の子の気持ちも絶対、歌詞に入れたいな!っていうところから、曲作りを始めました。
――作品全体に寄り添う曲にしたかったんですね。
なすお☆ このお話って、他のペアもみんな何かしら障害みたいなものがあって、すんなりいかないんですよ。絵柄はすごくほのぼのしてるんですけど、切ない描写がめっちゃ出てくる。なので、どのカップルのここにフォーカスしました!というよりは、みんな境遇は違うけど、最終的に思っていることは一緒なんじゃないかな、というのを1曲にした感じです。
――歌詞の“ズキズキでも好き 触れてみたい”とか“ごめんね こんなぼくで”というフレーズには、アリスを大好きなのに、普通に触れ合えない坊ちゃんの切ない気持ちも感じますしね。
なすお☆ あと、2番の頭のラップパートに、“ガラス越しでも”という言葉があるんですけど、そこは放送前のPVでもすごく素敵だった、坊ちゃんとアリスがガラス越しにキスをする名シーンを絶対に入れたくて書きました。あと原作にもアニメにも夜や暗いシーンが多いので、月の夜や星屑をモチーフにしています。
――冒頭の“あのガラクタを恋と呼びました”というフレーズも印象的でした。ここにはどんな思いが?
なすお☆ 歌詞の中に“おもちゃ箱”というワードも入れたんですけど、おもちゃ箱って楽しげなイメージがあるけど、おもちゃ箱に入れてあった小っちゃい頃に遊んだものって、どんどん使われなくなったり、ほったらかしになるから、私の中では切ないイメージなんですよ。お話に出てくるそれぞれのペアの恋愛も、楽しくてキラキラしているようで、やっぱり切ない……そんなものを、どうにか表現したくて、おもちゃ箱とガラクタという言葉が出てきました。
――そう聞くと、曲の味わいもすごく増しますね。制作中には、まどくんとどんなやり取りがありましたか?
なすお☆ 「星屑レクイエム」は、今までまどくんと一緒に作った中でも一番って言っていいくらい、何度も何度も作り直したんですよ。切なさも欲しいけど、かわいい曲にもしたい。多分、5~6曲分くらい全体を書き直して、やっと完成したのが、この「星屑レクイエム」でした。あと『死神坊ちゃんと黒メイド』の第2期ではサーカスが登場するシーンが印象的だったので、サーカスの音楽をイメージした音も意識しましたね。
――ボーカルも、なすお☆さんらしいウィスパーな感じが、楽曲のやさしさ、切なさを素敵に表現されていて。
なすお☆ やっぱり夜のイメージが強いので、曲の雰囲気や歌い方でも、夢と現実の狭間で揺れているような感覚を出したかったんです。寝落ちする前、みたいな。めっちゃ好き同士なのに触れられないというのも不思議なことだし、この恋は現実なのか?夢なのか?というところを、ずっと行き来してるイメージを、曲調や声で出せたらなと思いました。
――この曲が流れるアニメのED映像も、かわいらしくて大好きです。
なすお☆ そう、めっちゃかわいいんですよね! あのチビキャラのぬいぐるみがほしい(笑)!
――なすお☆さんのMVも、おもちゃ箱の中にいるようなキュートな映像ですね。そのYouTubeのMV動画の概要欄にも書かれていましたが、最初はEDテーマを歌うのが不安だったそうですね。
なすお☆ はい。第1期はOPもEDも、坊ちゃん(CV:花江夏樹)とアリス(CV:真野あゆみ)の声優さんが歌われていたんですよ。私自身も、アニメで演じている声優さんがキャラクターとして歌う曲にいつも感動してきたので……「いきなりEDが私でいいんですか?」という思いは、すごくありました。
――今は、その不安は消えましたか?
なすお☆ MVを公開した後、SNSや動画のコメント欄を通じて、作品のファンの方からも嬉しい言葉をたくさんいただけて。アニメが始まってからも、いい曲だと言ってもらえて……「良かったーー!」って。まどくんも、今までで一番書くのが難しい曲だったけど、世界観に合った曲が作れて僕は満足です!って言ってました(笑)。
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