INTERVIEW
2023.09.01
ロックバンドであり、自身のアニメタイアップ曲だけで「アニメ縛り」としてライブが出来てしまうバンドは稀有であろう。そして『NARUTO-ナルト-』(以下、NARUTO)シリーズのアニメの楽曲だけで5曲もタッグを組んでいる唯一のバンドーーそれがFLOWだ。
『NARUTO』のファンも多い海外の国々からの評価も高い彼ら。2010年にリリースした「Sign」は世界中で愛され、発売から13年の時を経た2023年にSpotifyでの再生回数が1億を超えた。まさに“『NARUTO』の主題歌の代名詞”ともいえるFLOWは9月に2日間開催される「NARUTO THE LIVE」の両日に出演する。ライブを前に彼らが『NARUTO』へ向ける想いを聞いた。
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INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY 三橋優美子
――アニメ放送20周年を迎えた『NARUTO』へ、お二人からメッセージをお願いします。
KEIGO おめでとうございます!アニメ『NARUTO』とは、我々奇しくも同期なので(デビュー20周年)、ここまで世界規模で愛されているアニメの楽曲を担当できたことを嬉しく思っています。5回もテーマソングをやらせてもらいましたし、勝手に“戦友”と呼んでいますが、そんな戦友の20周年は本当におめでたいです。
TAKE 20周年おめでとうございます。我々、30回も海外のアニメコンベンションに行っておりますが、暁のコスプレを見なかった日はないです。
KEIGO みんなやっているよね、暁。
TAKE 必ずいる!月日を経てもずっといるよね。
KEIGO やっぱりカッコいいんだろうなぁ。
TAKE 暁は最強のヴィランだよね、魅力的だし。そんな作品の20周年をお祝いできて、光栄です。
――そんな『NARUTO』に対して主題歌でタッグを組まれる前はどのような印象がありましたか?
KEIGO 僕は年齢的にも連載タイミング当初はすでに週刊少年ジャンプを卒業していたんですね。ドンピシャの世代は『ドラゴンボール』でしたから。次世代の大型作品、という印象でしたね。主題歌の話が出た時点では『NARUTO』を見たことも読んだこともなかったけど、名前を聞いたことはあったし、『ONE PIECE』と『NARUTO』は「面白いマンガがあるよ」ということも聞いてはいたので、印象的には自分たちのあとの世代がドンピシャな作品なんだろうな、という感じでした。
TAKE やっぱりジャンプは脈々と「友情・努力・勝利」の3つのテーマが根底に流れる作品が続いていっているんだな、という印象でした。
――「GO!!!」が『NARUTO』のオープニングとなったのが2004年4月のことでした。FLOWにとって初のアニメタイアップだった1曲。19年前に初めてこの作品と関わることになったときの思い出をお聞かせください。
TAKE 当時はソニーミュージック内での楽曲コンペだったんです。いくつかのアーティストが楽曲を提出して、その中から決めますよ、というお話をいただきました。今でも覚えているのですが、当時「残り2曲のところまできています」という話を聞き、ソワソワした日々を送っていたんですよ。その日はプライベートで六本木ヒルズにいて、マネージャーから「決まったぞ!」って電話を受けて「ありがとうございます!」と六本木でものすごい愛を叫んだ記憶があります。
KEIGO 「コンペに出さないか」という話があったときに、ちょうど「Matthew’s Best Hit TV」(マシュー南こと藤井 隆司会のバラエティ番組)のイベントライブに出るために八景島シーパラダイスにいたんです。その楽屋で話を聞いて、『NARUTO』の1巻から再不斬のエピソードくらいまでのところを読んだんです。
TAKE みんなで読み回したよね。
KEIGO そうそう。だから「Matthew’s Best Hit TV」のイベントの楽屋の記憶がすごく印象に残っています。
――その後「Re:member」が8代目オープニング曲に。まだ『疾風伝』前でしたが、原作から離れたオリジナルエピソードでの主題歌でした。2曲目のコラボ、『NARUTO』のオープニングだからこそこうしよう、と意識したことはありましたか?
TAKE まず、オープニングの幕開け感も含めて疾走感を大事にすることは意識しましたね。そこは常に意識していたんですけど、最初にHOUND DOGさんの「R★O★C★K★S」がオープニングを飾って、そのあとのASIAN KUNG-FU GENERATIONさんの「遥か彼方」の作りが、その後のアニメ主題歌のフォーマットに繋がっていると思うんですよね。Aメロの疾走感から始まって、Bメロに少し切ないメロディがきて、サビで拓けるみたいな、ある種のフォーマットを意識して作っていたところはあったと思います。それと、何よりもこの曲のときはKEIGOくんの復帰とバンドの復活がありましたから。
KEIGO そうだよね。バンドのストーリーがすごく濃いですね。
TAKE (KEIGOの)怪我でバンドが半年活動を止めたなかで、バンド史上初の挫折を味わうわけです。ライブの日程も決められないし、KEIGOくんは休養していて、残ったメンバーでスタジオに入るけどしっくりいかないというところで、復活の狼煙の第一弾として書かせてもらいました。中忍試験前後の、ナルトの仲間たちの物語にも通じる部分は少なからずあったのかなと思います。
KEIGO バンドの物語も濃かったし、自分たちの復活の歌でもあったので、その想いを『NARUTO』と組んで出すことができたのは、バンドの想いとアニメの想いがリンクしたことを強く感じましたし、そういった部分では「GO!!!」とは違う部分を感じられました。
TAKE FLOWのターニングポイントに『NARUTO』在り、なんですよね。これも不思議なご縁で。だからもう、木ノ葉の里には足を向けて寝られないですね。
――2009年には「少年篇」の主題歌として、これまでとは色合いの違う「SUMMER FREAK」が起用されました。こちらの曲の制作はいかがでしたか?
TAKE これはアニメ制作側に選んでいただきました。当時『NUTS BANG!!!』という夏をコンセプトにした作品を出すにあたって作っていた曲ですが、実際にアニメ側に選んでいただいて面白かったこととしては、オープニング映像で夏休みを過ごすナルトくんたちがいたことで。スイカ割りをしていたり水着姿だったり、そんな姿が描かれていた記憶があるんですが、普段のストーリーでは絶対に見られないようなほのぼのサイドストーリー篇みたいなカラーが出ていたんです。それはこの曲だから、そして「少年篇」だからこそ観られた映像なのかなと思っています。面白かったですね。
KEIGO 『NARUTO』側が「SUMMER FREAK」側に寄り添ってくれたような感じがしましたね。オープニング映像もそうだし、本編では見られないような姿で、そういった部分を担えて、ご一緒できて嬉しかったですね。
――そして『疾風伝』になって「Sign」がオープニングに。リリースから13年を経た2023年に、サブスク1億回再生を突破しましたね。
KEIGO 海外の方を含めての数字というのが本当に嬉しいですね。「Sign」を海外で演奏したときには、出だしの英語詞をみんなが大合唱してくれるし、なんだったら泣いているお客さんがたくさんいたんです。「Sign」の持つ世界観と、そのときの『NARUTO』の自来也先生との別れやペインとのエピソードとのリンク度がすごく高いんだろうなってことを実感しています。もちろん当時も「すごいな」と思っていましたけど、ライブでより強く実感しています。未だに日本でも海外でも泣きながら聴いてくれる人を目の前にしますし、彼らは生で聴きながらもアニメのシーンが脳内再生されているんだろうなと思って。暁のシリーズの中でも佳境になり、なかなか熾烈な戦いになっていく時期でしたし。いきものがかりさんの「ブルーバード」があって、井上ジョーさんの「CLOSER」があって、飛段を倒して、アスマ先生のこともあって……ある意味「シカマル疾風伝」だった。そのあと、いきものがかりさんの「ホタルノヒカリ」から、ナルトの物語的にもナルトと自来也、サスケとイタチという関係、そしてナルトとサスケの2人にとってもターニングポイントとなるシリーズで主題歌を任せてもらったという印象があって。この2人がそれぞれの別れを経て、痛みを抱えながらも前に進んでいくことを選んだことを、上手くリンクさせた歌詞にできたなと思っています。
――自来也と、そしてイタチとの別れは、ナルトとサスケが本当に少年から青年になっていくきっかけになっていましたよね。
KEIGO 大人になる、というか。まだ少年としての純粋な部分がどちらも強かった。ナルトもサスケも純粋な想いだけで行動していたものが、この別れを分岐点として変化していく。ナルトとサスケの成長物語としてのターニングポイントでしたよね。
TAKE 痛みを覚えて、かさぶたになってからまた強くなる。筋肉も一度分裂させてから強くなるように、その痛みが成長に繋がるところはあったと思います。ただ、別の意味での孤独を抱えていたナルトとサスケが師である自来也先生や兄であるイタチとの別れを経験することでまた違う道を選んでいくことは、「なんでそっちにいくんだよ!サスケ!」って思ったものですよ。どうしてそこから木ノ葉崩しになっていくんだよ!って。兄のこと好きすぎるだろう!って思いましたよね。
――そして『NARUTO』シリーズで初めてのエンディングを飾った「虹の空」。こちらはいかがでしたか?
TAKE その時点で4曲のタイアップをやらせてもらっていて、すでに1つの作品のタイアップ数としても過去最多だったのですが、さらにもう1曲やらせてもらえたことが嬉しかったです。物語も第四次忍界大戦に入っていて佳境に差し掛かっていたと思うんですけど、毎回『NARUTO』の曲を作るときって、不思議なことにFLOWにとっても特別な時期なんですよね。単純に一番楽曲数をやらせてもらっているし、だからこそ常に超えていかなければいけない。それもあって「虹の空」は泣きながら書いていた記憶があります。少年だった頃のナルトやサスケや仲間たち、そこからの成長物語を思い返しながら、走馬灯のように巡っていく場面を音の中に入れて紡いでいった記憶があります。結果、映像になったときにその成長物語を木ノ葉の里のラーメン屋・一楽のカウンターからの視点で映像にしてくれたぴえろさんには「このやり方があったか!」と感嘆の声が出ました。
KEIGO 泣いたね、本当に。一楽でテウチさんはずっと、見ていたんですよね。
TAKE サビで娘のアヤメさんがすごく良い笑顔で、最後には虹がかかるっていう映像で。色々と大変なこともあったけれど、最後は乗り越えて虹がかかってほしいなっていう想いで作りました。
KEIGO FLOWとぴえろさんとで想いが重なりましたよね。自分たちも「GO!!!」から始まり、何曲も経て「虹の空」に繋がるんですけど、自分たちの中の『NARUTO』と歩んできた物語であり、ぴえろさんがそれを映像化してくださったときには本当に嬉しかったですね。
――そんな『NARUTO』シリーズの主題歌の代名詞的存在として世界中から支持されているFLOWが、ナルトの息子・ボルトの物語である『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』(以下、BORUTO)のOPテーマ「GOLD」を書き下ろしました。父親、火影となったナルトへの想いと、その息子であるボルトに向けての今のお気持ちをお聞かせください。
TAKE まずはナルト、おめでとう!ですよね。
KEIGO 火影になりましたからね。
TAKE 九尾を宿して、里の嫌われ者だった1人の少年が、里のみんなに認められて火影になった。「“火影になった者”が皆から認められるんじゃない。“皆から認められた者”が火影になるんだ」っていうイタチの言葉をまさに体現して、いよいよ子供まで授かった。過去の辛い想いを思い返せば「よく頑張ったね」「おめでとう」と伝えたいです。そしてまた新しいボルトの物語が始まりますが、火影を父に持ち、しかも現存しているボルト。ナルトの場合はミナトさんが残念ながら亡くなったけれど、親父である火影を見ながら成長するボルトにはナルトとは別の悩みがあるという描き方がまた良いな、と思いましたね。
KEIGO 当時、ナルトの物語はある意味、完結したように感じていたんですよね。あの最終話で終わっても文句がないくらいの超大作であり、大満足の物語で終わっていたので、息子の物語が始まることへの驚きがありました。想像でしかないですが、岸本斉史先生含めスタッフ側もだいぶ覚悟のいることだったと思うんです。あれだけ評価された『NARUTO』という作品が完結したのに、その先を描くということに対して「知らなくても良かった」という感想だってあるかもしれない。だから相当な覚悟で物語が幕を開けて、息子はナルトとは違う悩みを抱えながら生きていく姿を見て「こういう悩みもあるよな」とも感じましたし、物語の設定に齟齬がないからこそ納得できるんですよね。出てくるキャラクターたちに対しても。ナルト世代の息子や娘が出てくるし、ほかのキャラクターも出てくるなかで首を捻るような事態には一切ならなかったですね。
――「GOLD」はどのような想いで制作されましたか?
TAKE 個人的には泣きながら、心の血を流しながら作った「虹の空」で『NARUTO』に対して完全に燃え尽きて、完結していたんですね。そういう意味では『BORUTO』では次世代のアーティストが関わるほうがいいんじゃないかっていう想いがあったんです。それは例えばASIAN KUNG-FU GENERATIONを聴いて育ったKANA-BOONのような、次世代のバンド、アーティストがナルトの次世代であるボルトの物語を彩っていったほうが、作品としてはいいんじゃないかって。でも、我々がデビュー20周年、そして『NARUTO』がアニメ化20周年ということでお話をいただいたご縁は、1つの出会いだと思ったんです。ボルトの立場では書けないかもしれないけれど、我々が『NARUTO』の主題歌で経てきた経験があるからこそ、ナルト目線でボルトに掛けられる言葉があるんじゃないかな、というテーマを主軸に書かせてもらったのが「GOLD」です。
KEIGO ボルトに対してどう向き合うかはバンドとしての命題だったと思うし、それで出た答えがFLOWなりの立ち位置からボルトに投げかけられる言葉があるんじゃないかなってことで作っていきました。KOHSHIの書いた歌詞に“黄金”(GOLD)というフレーズがあって、『それは「GO!!!」と「OLD」を掛け合わせた言葉だよ』ということで、「GO!!!」から脈々とやらせてもらってきた自分たちからのメッセージとして歌えたし、それは自分たちにしか出来ないことだったのかなと思っています。
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