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REPORT

2023.08.30

ここがまた新たな分岐点――椎名へきる待望のフルバンド&声出し解禁ライブ「椎名へきる LIVE 2023~STARTING LEGEND“0”~」で見せた尽きせぬロックスピリッツ

ここがまた新たな分岐点――椎名へきる待望のフルバンド&声出し解禁ライブ「椎名へきる LIVE 2023~STARTING LEGEND“0”~」で見せた尽きせぬロックスピリッツ

1994年のアーティストデビュー以降、声優音楽シーンにおいて現在まで多大な影響を与えてきた声優・椎名へきる。1995年の初ライブから始まり、声優初の日本武道館/国立代々木競技場第一体育館での単独コンサートといった金字塔を打ち立て、“椎名へきるの音楽=ライブ”という強烈なイメージを現在まで継続してきた。ここ最近はコロナ禍によって停滞を余儀なくされながらも、2022年4月17日にはおよそ2年ぶりとなるワンマンライブ「椎名へきる LIVE~STARTING LEGEND 2022 “R”~」を開催。今年3月のバースデーライブでは、アコースティックセットながら観客の声出しを解禁するなど、徐々にかつての光景を取り戻しつつあった。そんななか、満を持して観客の歓声を解禁し、フルバンド編成でのステージとなったのが、8月11日に東京・竹芝ニューピアホールで開催されたライブ「椎名へきる LIVE 2023~STARTING LEGEND“0”~」というわけである。ゆえにタイトルには原点回帰、あるいは新たなスタートを意味する”0”が刻印されているのだが、そこで展開された光景は熱狂に包まれた、まさに新たな伝説の幕開けを印象づける強烈なものとなった。

TEXT BY 澄川龍一
PHOTOGRAPHY BY 江藤はんな

最新曲から十数年ぶりに披露するあの名曲まで

会場となったニューピアホールでは、開演前から夏の風物詩「へきるん音頭」がリピートされるというほっこりした雰囲気。それが開演と共にロッキンなインストへと様変わりすると、いよいよ椎名へきるによるフルバンドのライブが幕をあける。バンドメンバー、そして椎名がステージに登場し、「みんな、会いたかったよー!」と叫ぶなか、「Graduater」のあの小気味良いギターリフが鳴らされた。フルバンドでのライブの幕開けにはこれしかないと思わせるロッキンな走り出しに、観客も拳を突き上げて大歓声で応える。ステージ上と客席のエネルギーが真正面からぶつかりあうような、とてつもない熱量が会場を包み込む、実にロックな現場が開幕から醸成されていった。なかでも印象的なのはもちろん椎名のボーカルで、爽快感溢れるメロディを歌い上げるその声は瑞々しくも力強い。そんな彼女のバックには、斉藤“JAKE”慎吾(g)、倉内 充(dr)、堀川真理夫(b)、川村ケン(key)、木村“dog”建(g)というこれまで彼女のステージを彩ってきたメンバーが並んでいる。彼らによるアタックの強いバンドサウンドと、椎名のパワフルなボーカルが見事な調和を果たしている、のっけから”お見事”と言うしかないかっこいいロックが鳴らされていた。途中サビを観客に歌わせるなどステージも観客も1曲目から”仕上がっている”パフォーマンスを見せ、最後に長いアウトロを聴かせたあとは、そのまま「ガンバレ」へ。斉藤と木村の心地良いギターのハーモニーが聴かれるイントロから、キャッチーなメロディと”ガンバレ!!”というメッセージがグッとくる。観客のクラップと共に切ない歌唱を聴かせる「MOON LIGHT」のあとは、ダンサブルなビートに乗せて「目を覚ませ、男なら」へと続く。序盤からライブアンセムが連続するなか、観客も途切れることなく歓声を送り続けるという、これぞ椎名へきるのライブというものが展開されていった。

最初のMCでは「久しぶりにこのメンバーが揃いました!」と改めて喜びを爆発させる椎名。「今日はとっても素敵な時間を、最高の夏を過ごしたいと思いますので、みなさん倒れないように!倒れない程度に悔いを残さない感じでお願いします!」と宣言したあとは、椎名の最新の楽曲となる「青空Highway」を披露。実に彼女らしい爽快感溢れるサウンドに、聴く者の心に優しく触れる椎名の歌唱がグッとくる1曲だ。そこから(ハイウェイ繋がりか)「246」を切なく聴かせたあとは、冒頭から椎名の澄んだハイトーンを聴かせる「-赤い華- You’re gonna change to the flower」と、キリッとした歌唱を堪能できる楽曲が続く。なお、この日は事前にSNSで聴きたい曲を募集し、それもセットリストに組み込まれているとのこと。それもあってかイントロが鳴ると客席からはどよめきにも似た歓声が起こるのも興味深い。そのなかでもファンからの希望が多かったという「ROLLING STONE」は直後のMCで「披露するのは15年ぶり」と語るように、長年のファンにとっては嬉しくも新鮮な光景が見られたセットとなった。

続くMCでお馴染みのバンドメンバー紹介を挟み、「また久々な曲を」と告げてスタートしたのは「この世で1番大切なもの」の印象的なピアノイントロだ。そのなかで中盤に入っても変わらず澄んだボーカルを聴かせたあとは、こちらもピアノが切ない「PROUD OF YOU」へとメロディアスな楽曲が続いていく。アウトロで椎名が退場し、バンドのインストパートを挟んで、セットも折り返しへ。青い衣装へと着替えた椎名が戻ってくると「live to love -もう少し早く逢えたなら-」が鳴らされ、再びロッキンなセットへと加熱していく。テンションの高いバンドサウンドのなか、静かな激情を聴かせる椎名のボーカルが素晴らしい……と圧倒されていると、そこから切り裂くような「BESIDE YOU」へと突入する。いずれも直後のMCで10年ぶりぐらいに披露したと語っていたが、その切れ味は衰えることなくあまりにかっこいい流れを見せる。

MCでは「次の曲も懐かしい曲を」と言ってタイトルを告げると客席からどよめきが起こる。そこで鳴らされたのは、1996年リリースのアルバム『with a will』に収録された名バラード「私の未来」だ。斉藤のアコースティックギターの音色に乗せての椎名の歌唱がまた絶品で、大人になっていく未来を歌ったこの曲を、今の椎名が歌うというグッとくる光景が見られた。そのあとはこれもまた懐かしい1994年のデビューアルバム『Shiena』から、この季節にぴったりな「花火」としっとりな曲が続く。そしてこのブロック最後にはロッキンなミディアムナンバー「大切なページ」を披露。最後には観客と共にシンガロングする感動的な光景を見せ、バラードのブロックを締め括った。

想定外のWアンコールも!ロック魂全開のクライマックス

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