――そして今回のアルバムで最多の4曲を手がけているのが、IZ*ONEや乃木坂46への楽曲提供でも知られているプロデュースデュオのtee teaです。HACHIさんの作品に関わるのは今作が初ですが、これはどんなご縁で?
HACHI マネージャーからの紹介だったのですが、楽曲を聴かせていただいたら私の好みのものばかりだったので、「ぜひ!」ということでお願いさせていただきました。制作にもすごく前向きに取り組んでくださって、たくさんデモを出してくださったのですが、それがすべて良かったので結果4曲も提供していただきました。しかもどれも違った色のある楽曲になっていて。
――そのうち「まなざし」は、HACHIさんが得意とされているバラード調のドラマチックなナンバー。
HACHI サウンド的にはロック寄りで、エモロックバラードみたいな楽曲になりました。私はこういうロックバラードや力強く歌うのも好きで、今までの楽曲でも「涙することは疎か、息も出来ない。」や「20」では感情を爆発させるような歌い方をしていて。実は今回のアルバムの中でも一番のお気に入りが「まなざし」なんです。
――どんなところがHACHIさんの心に刺さったのでしょうか?
HACHI イントロのピアノや、ちょっと重めのギターとストリングスが綺麗に合わさっているところ、力強いロックの中に繊細さが感じられるところもすごく好きですし、歌詞の“あなたがくれたまなざしが生きている”というフレーズも、その言葉の綺麗さに感動したんですよね。その言葉からも、楽曲全体からも、キラキラしたまなざしが感じられて。言葉にするのは難しいですが、この曲の色が好きなんです。
――そんな楽曲を歌で表現するにあたって、こだわったポイントは?
HACHI この楽曲は、今お話した“あなたがくれたまなざしが生きている”を含むサビのフレーズが全部で3回繰り返されるのですが、それぞれ歌い方を変えて展開を作るようにしました。1サビは少し弱く細い感じのファルセットを使いながら、2サビはそのファルセットだった部分も地声で歌ってもう少し力強く、ラスサビは全力で歌うっていう。しかもこの曲、レコーディングを終えたあとに、自分の中で「もうちょっと声を出せるだろう!」と思ってしまって、どうしても妥協ができなくて、もう一度録り直させていただいたんです。そんなわがままを言うのは初めてのことでした(笑)。
――それだけ大切に表現したい曲だったんですね。同じくtee teaさんが手がけた「いつまでも」は、いわゆるハウスミュージックに近いアプローチで、なおかつボーカルも感情を込めるというよりは、より大きな視点で歌われている感じがして、すごく新鮮さを感じました。
HACHI ありがとうございます!「いつまでも」と「Level off」は今回の中でもチャレンジ的な楽曲で、VTuberシーンはクラブミュージックとの繋がりも強いのですが、私は今までこういう曲調の楽曲はあまり歌ってこなかったんですよ。今どきのお洒落な感じのトラックなので、それに合った歌い方を悩むところもありました。こういう楽曲はグルーヴ感が大事になるので、リズムをちょっと後ろノリで取ったりして。
――確かに。特にムーンバートンっぽいリズムの「Level off」ではそういう印象を受けました。
HACHI 今回tee teaさんに書いていただいた楽曲全体を通して得た歌い方が、語尾をストンと落とす歌い方なんです。ロングトーンのあとに、音をフッと消すのではなく、音を下に落として締めるとグルーヴ感が出るんですよね。余裕感というか遊びが出るし、楽曲自体にもお洒落な余白が生まれて。それはかなり大きな学びでした。
――個人的にはこういうクラブミュージック寄りの楽曲ももっと歌ってほしいですね。以前にDÉ DÉ MOUSE & Kakeru「Dive To Paradise」というフューチャーファンク曲にボーカルで参加していましたが、あれも最高だったので。
HACHI 本当ですか!?嬉しいです!あの楽曲は、自分がこういうクラブミュージックっぽい楽曲の歌い方を習得する前に収録したので、今は改めて歌い直したい気持ちもありますけど(笑)。
――ファンから好評という話の「空が待ってる」もtee teaさんが書いた楽曲で。この曲ではこれまでになく晴れやかな歌声を響かせていますね。
HACHI ほかの楽曲をRecするときは、マイナスな気持ちに寄り添えるように優しく穏やかに、ちょっとだけうつむきながら歌っているイメージがあるのですが、この曲は顔を上げてにこやかにRecができたんです。マイクも高めだったし、声のトーンも明るめに歌うことができました。
――そして2ndシングル「Rainy proof」の頃からHACHIさんのクリエイティブに深く関わっている海野水玉さんが、今作2曲に携わっています。そのうちの「ビー玉」は、HACHIさんと海野さんが過去に制作してきた「八月の蛍」や「夏灯篭」の世界観にも通じる、“感傷的な夏ソング”に仕上がっています。
HACHI 実は海野さんと私はすごく夏オタクなんです(笑)。お互い好きな夏の世界観がすごく合致しているんですよね。青空とか、夏の終わりの寂しさとか、そういう“日本の夏”のノスタルジックな空気感がすごく好きで。私はアニメでも昔から『ひぐらしのなく頃に』が好きだったり、最近だと『サマータイムレンダ』とか、ああいうタイプの夏がとにかく好きなんです。
――どちらも日本の田舎や郊外の夏を舞台にした名作ですね。アニメで例えてもらえるとよくわかります(笑)。
HACHI しかも海野さんが夏の和風曲を作ると最強なんですよ(笑)。プラスして海野さんが書く失恋ソングも本当に素晴らしくて、音楽の価値観も私と合っているんですよね。元気な楽曲よりも切ない楽曲のほうが好きで。海野さんと楽曲を作るときは、あまり多くを語らなくてもお互い良いものを出し合えるような感覚があります。
――そういえば「Rainy proof」も切ない失恋ソングでした。今回の「ビー玉」に関しても、歌詞の“君からもらったビー玉を 手放せずいる”というフレーズからは、失恋かはわからないですが心残りが感じられて。
HACHI 確実に未練がある感じが、すごく良いですよね。忘れられないひと夏の恋、みたいな感じで。レコーディングでも夏の郷愁感や懐かしさ、昔の思い出みたいな感じをイメージして、本当は忘れたいけど忘れられない自分がいる、複雑な感情が伝わるように歌いました。
――しかもこの曲、夏アニメの名作『凪のあすから』の劇伴を手がけたことでも知られる出羽良彰さんがアレンジを担当しているんですよね。
HACHI 私もびっくりしました(笑)。マネージャーからの紹介でお願いすることができたのですが、私も元々「僕が死のうと思ったのは」(※amazarashiの秋田ひろむが提供した中島美嘉の楽曲。編曲は出羽が担当している)や、出羽さんが関わっている楽曲を歌っていたので、今回お願いすることができて本当に嬉しかったです。
――海野さんはもう1曲、アルバムのラストを飾るカントリー調の華やかなアップチューン「HONEY BEES」。“BEES”というのはHACHIさんのファンネームでもあるので、この楽曲はやはりファンに向けて作ったのでしょうか。
HACHI そうですね。いつも配信を観てくださっているリスナーの方に向けて感謝の気持ちを込めたプレゼントという感じで、海野さんと一緒に「しめしめ、大きいプレゼントを持っていくぞ!」と思いながら作りました(笑)。リスナーに感謝を伝えたい気持ちは常に持っているのですが、ここまでストレートに感謝を歌う曲はこれが初めてで。海野さんが歌詞に“今夜、独りにはしない”というフレーズを入れてくださったり、BEESのみんなのことを思うような楽曲を提案してくださいました。
――歌うときもファンのことを思いながら歌うことができたのではないでしょうか。
HACHI はい。レコーディングのときも、ライブで披露したときも、ニコニコしながら歌ってしまって(笑)。HACHIの楽曲の中で一番ニコニコしながら収録したと思います。
――やはりHACHIさんにとってファンは大切な存在なんですね。
HACHI 一番大切です!自分が色々なことに挑戦できるのは、リスナーさんが応援してくれるおかげですし、応援していただいているから、私も自信をもって好きなことができるんです。そして、私が好きなことをしたら、またみんながそれを喜んでくれる。とても良いループができている感じがします。こうやって楽曲を制作できたり、ライブを開催できるのも、すべてみんなのおかげなので、本当に常日頃から感謝しかないです。一番特別で、一番大好きな存在ですね。
――そうした感謝の気持ちを直接伝える場として、今秋には東京と台湾を巡るツアー“Close to heart”の開催が決定しています。
HACHI 過去に2回のリアルライブを開催してきたのですが、クラウドファンディングをせずにライブを計画できたのは今回が初めてなんです。それを実現できたのも、いつも応援してくれるリスナーさんのおかげ。しかも今は日本だけでなく、世界各地でHACHIの音楽を聴いてくれる方がどんどん増えて、グローバルになってきていて。その期待に応えられるようにしっかりと準備と練習をして、全力で頑張っていきたいです!
――最後に、今後のアーティスト活動の展望と目標を教えていただけますでしょうか。
HACHI 一番に掲げている目標は、日本武道館のステージに立つことなのですが、いきなり武道館に行けるとはさすがに思っていないので、一歩ずつステップアップしていければと思っています。音楽のお仕事ももう少し手広くチャレンジしていきたくて。それこそ主題歌のお仕事にも興味があるので、アニメや映画、ドラマなどで作品のテーマに合わせて楽曲を作ることにも挑戦していきたいです。
――ちなみに先ほど『ひぐらし』の名前が出ましたが、アニメもよくご覧になるのですか?
HACHI 実は昔からテレビを観る習慣があまりなかったので、本当に一般的なアニメしか観ていなかったのですが、最近、ようやく自分のパソコンを手に入れて色々と追うことができるようになったので、今は改めて色んなアニメを観始めているところです。
――その中でお気に入りの作品に出会えましたか?
HACHI 音楽系のアニメ、作品の中に歌が入ってくるアニメが好きです。『マクロス』シリーズは昔から追っていたのですが、最近だと『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』が大好きで。ストーリーがあることで、さらに歌が輝く作りになっているし、(キャラクターが)歌っているときの心情にすごくのめり込んでしまって、号泣してしましました(笑)。
――『マクロス』シリーズにせよ『Vivy』にせよ、歌パートを声優ではなく歌手の方が歌うケースもあるので、HACHIさんもいつかそういう作品に巡り合う機会があるかもしれないですね。
HACHI そうなんですよ!そういうお仕事にも憧れるので、機会があったらぜひチャレンジしてみたいです。
●リリース情報
HACHI 2nd アルバム
『Close to heart』
発売中
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
配信リンクはこちら
【特別仕様盤】
価格:¥5,000(税込)
・CD+特典
特殊紙三方背スリーブケース仕様
特典:記念カード Close to heart ver.(シリアルナンバー入り)
【通常盤(CD)】
販売価格:¥2,500(税込)
<収録曲>
1. Deep Sleep Sheep
Lyrics / Composition / Arrangement:ササノマリイ
2. まなざし
Lyrics / Composition / Arrangement:tee tea
3. ビー玉
Lyrics / Composition:海野水玉 Arrangement:出羽良彰
4. いつまでも
Lyrics:yacco Composition / Arrangement:tee tea
5. さよならfrequency
Lyrics / Composition / Arrangement:春野
6. Level off
Lyrics:yacco Composition / Arrangement:tee tea
7. 空が待ってる
Lyrics / Composition / Arrangement:tee tea
8. HONEY BEES
Lyrics / Composition:海野水玉 Arrangement:Seiji Iwasaki
●ライブ情報
東京・台湾ツアー 「Close to heart」
東京公演会場:Spotify O-EAST
日時:2023年10月9日(月・祝)
Open 17:00 / Start 18:00
台湾公演会場:TAIPEI Clapper Studio
日時:2023年11月19日(日)
HACHI
公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/8HaChi_hacchi
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