REPORT
2023.09.01
8月27日、さいたまスーパーアリーナにて“Animelo Summer Live 2023 -AXEL-”のDAY3が開催。毎年夏恒例の世界最大級のアニソンフェスの3日目でも、出演したアニソンアーティスト・声優アーティストは誰もがアクセル全開のパフォーマンス。さらには伝説の声優ユニットの復活や、作品を絡めたコラボなどのサプライズが観客の感情を揺さぶり、そのたびに会場を大歓声が包んでいた。
■“Animelo Summer Live 2023 -AXEL-”
DAY1 セットリスト
DAY2 セットリスト
DAY3 セットリスト
TEXT BY 須永兼次
今年は出演アーティストが生で行なった開演直前の影ナレ、DAY3は内田真礼が担当。DAY1・DAY2同様に声出し練習も兼ねた煽りを織り交ぜて観客のボルテージを高めていく。
そんなDAY3では、1曲目から超弩級のサプライズが到来。キャラクターのシルエットを用いたボイスドラマムービーが流れ、“何か”を確信した観客から歓喜の絶叫が沸き起こると、キャラ絵が映し出されてRO-KYU-BU!の5人が登場。このSSAでのFINAL LIVEから約10年を経た奇跡の復活を、デビュー曲「SHOOT!」で果たす。間奏部分をはじめ、ダンスの中にしっかりフォーメーションチェンジも織り込んで、大観衆の声援に応えるパフォーマンスをみせる。曲明けにはユニットの名乗りや各メンバーの口上もキメると、「Rolling! Rolling!」はトロッコに乗車しての歌唱。5人全員がトロッコの外側を向き観客と視線を交わしながら、客席通路外周をぐるり周回。サビラストの“空耳歌詞”のコールも轟くなか、一夜限りの復活劇は幕を下ろした。
そのざわめき残るなかステージに登場したのは、芹澤 優。これまでi☆Risのメンバーとして出演を重ねてきた彼女のソロ初アニサマの1曲目は、代表曲の1つ「最悪な日でもあなたが好き。」だ。客席にはブルーのペンライトの海が広がり、サビでは「オレモー!」のコールが響き渡ると、その光景に芹澤は嬉しさを溢れさせる。落ちサビで改めてじっくりそのブルーの海に対面した際には、感極まりそうになる場面もあったが、それでも最後までしっかり歌いきってみせた。
曲明けMC中にはMOTSUが登場し、2人揃ってリリース前の新曲「JUNGLE FIRE」を初披露。スピード感のあるユーロビートに先ほどとは違うスタイリッシュでシャープな歌声を乗せ、ダンスも含めて艶っぽさも感じさせるパフォーマンスを展開し、ソロとしても多彩な魅力を感じさせてくれた。
続いては、「ダイアローグ+インビテーション!」のイントロに乗せてDIALOGUE+が登場。8人揃って、各メンバーの“らしさ”の詰め込まれた自己紹介ソングから出番を始めていく。そのうえで、緻密なフォーメーションを見せながらサビなどではハモも交えた歌唱もこなすなど、ユニット自体の自己紹介もこの曲を通じて果たすような形に。続く最新曲「にゃんぼりーdeモッフィー!!」は、1コーラス目序盤のソロを村上まなつが音源以上のファニーさ色濃い歌声で彩ると、サビ終盤の早口パートでは宮原颯希がこの曲にマッチしたぱたぱた感を歌とパフォーマンスの両面から発揮。大サビ直前のソロを歌う守屋亨香の、高音を堂々と突き抜けさせる姿から生まれる最強感もまたたまらない。そしてもう1曲、ハードなダンスナンバー「僕らが愚かだなんて誰が言った」では、うって変わって全員が凛々しい表情でパワフルなステージを展開。緒方佑奈が1-Aメロのソロで感じさせた冷感をはじめ、歌や声の面でも充実した表現をみせ、MCなしにパフォーマンスのみで大観衆を魅了していった。
伊藤美来は、まずは定番曲「Shocking Blue」からのスタート。彼女の持ち味であるピュアさの光る歌声を響かせながら、Bメロの指差し振付のポイントでは一瞬眼光を鋭めにするなど、楽曲の中のキメどころは決して逃さない。そしてもう1曲は、10月放送開始のアニメ『星屑テレパス』のOP「点と線」を初披露!ワルツのリズムをもった浮遊感のあるデジタルチューンであるこの曲、そのたゆたうような雰囲気や音域の高さが、伊藤の美しいファルセットとは実に好相性。そのまま最後まで微笑みながら、美しく歌声を響かせていった。
続いて登場した東山奈央は「door」で出番スタート。柔らかく温かく、想いをそっと手渡すかのような歌とパフォーマンスを繰り広げ、Dメロでは光に満ちた世界が自然と浮かぶような、希望の光に満ちた歌声を響かせていく。曲明けにはコラボ相手としてhalcaを呼び込み、2人が携わる『彼女、お借りします』の第1期OPテーマ「センチメートル」をデュエット。東山は同作で演じる更科瑠夏を連想させるキュートな歌声で「door」とはまったく違う表情をみせると、時折halcaと向き合いながらボーカルを重ね、サビでは追っかけのように歌声をやり取りするなど息ピッタリのステージをみせた。
歌唱後、halcaが降壇すると、引き続きステージに立つ東山の口調は徐々に無機質なものに。そしてinterludeが流れるなか、GARNiDELiAが登場し、東山がヒロインの人型ロボット・レイシアを演じたアニメ『BEATLESS』のOP「Error」で2曲連続のコラボ。パワフルな歌声を切れ味抜群のダンスとともに響かせていくMARiA(Vo.)のテクに見劣りしないスタイリッシュなダンスで、魅せるステージを展開。クールでシャープな歌声も含めて、この3曲で“東山奈央”という表現者の底知れなさを感じさせてくれた。
そのままGARNiDELiAはもう1曲、「幻愛遊戯」を披露。歌謡曲のテイストも取り入れたブラスの映えるナンバーでありながら、ダンサブルな要素も持っている曲ということもあり、サビ前のクラップや曲中のジャンプをMARiAが先導。ノリよく観客を跳ねさせながら艶っぽさのある歌声を響かせ、5年ぶりのアニサマで確固たる存在感を示していった。
さて、ここからは10月からのアニメ放送を控えた『Paradox Live』のターン。まずはcozmezがスローなナンバー「Get it」を披露し、キャラクター性を投影しながら強く想いを乗せたフロウを幾度も叩きつけ、その声と身振りで観客を『パラライ』の世界へといざない踊らせていく。続いてはBAEの「G△L△XY∞」。この日は3人中2人が出演し、梶原岳人(朱雀野アレン役)がまっすぐでパワー感ある節回しを披露すれば、シルエットで登場した96猫(アン・フォークナー役)がときにグルーヴィーに、ときに艶っぽく聴かせる変幻自在な歌声で観客を魅了していった。
2曲披露後、この日出演の『パラライ』4ユニットのキャスト陣がステージに集結し、持ち曲を次々リレーするメドレーがスタート。トップを飾った悪漢奴等(あかんやつら)の「ROWDIEZ -悪漢奴等 Wanted Vibes-」は、ギャングによるユニットらしく荒くれ感のある歌声を生でも響かせ、曲中幾度も登場する「so what」のコールが場内のボルテージを上げていく。続いてcozmezは「Hit em up」でも、スローなビートの中にしっかりと熱い想いを込めて届ければ、The Cat’s Whiskersは「Shooting Arrows」を、序盤は少しセクシーめに入りつつ、途中からは力強く言葉を打ち出すようにパフォーマンス。一音一音が強くハートに響く。そして最後を飾ったのは、BAEの「BaNG!!!」。前述した各々のボーカルの個性はここでも発揮され、それが良いコントラストとなって鮮烈な印象を残していった。
雰囲気をガラリと変えたのが、スペシャルユニット“マサヨシがめがねを忘れた(小村くんと三重さんとオーイシマサヨシ)”。スペシャルステージに伊藤昌弘(小村 楓役)と若山詩音(三重あい役)が迷い込むと、そこに「この世のめがねの全てを司る精」としてオーイシマサヨシが登場。アドリブ混じりの小芝居を経て、ダンスも交えながら「メガネゴーラウンド」を歌っていく。ピュアさ溢れる伊藤のボーカルとキュートな若山の歌声はまさにキャラそのままで、その2人の掛け合いをオーイシの高らかな歌声が楽曲を彩ることで、曲中での“2人を見守る”という立ち位置も見事に体現していた。
メインステージにはsajiが登場し、2年連続となるアニサマのステージを「灯日」からスタート。客席を真っ赤な輝きに染め上げ、Aメロではクラップも起こして一体感を生み出すと、ハイトーンな歌声をもって場内に再びアツさを投入していく。曲明けには「今日はみんなと、友達になって帰りたい!」と意気を上げると、最新ナンバー「フラッシュバック」の演奏へ。キーボードの音色の映えるアグレッシブなナンバーを、その言葉通りにとにかく小細工なくとにかく真っ直ぐに届け、MC中に言及した昨年のアニサマでの思い出のように、また会場中の観客と心で繋がっていったように感じられた。
そのアツさを受け継いでステージに現れたのが、前半のトリを飾る内田真礼。まず披露したのは、実はアニサマでのフル歌唱は初となったデビュー曲「創傷イノセンス」。ダンサーとともに金網を用いたパフォーマンスとともに、歌声はパワフルに、セリフはシャープにカッコよくキメていく内田。客席から上がるコールの大きさが、瞬時に観客を虜にしたことを感じさせるステージだ。それに続けて、『SSSS.GRIDMAN』のEDテーマ「youthful beautiful」を、OxTとして同作のOPを歌唱するオーイシマサヨシとコラボ。メロを交互に歌い合い、サビでは向き合って力いっぱいの歌声をぶつけていく2人。その光景に酔いしれながら、観客は白とオレンジ2色の輝きを灯していた。
そして最後に内田真礼は、再びソロで最新ナンバー「ラウドへイラー」を歌唱。スピード感あるシンフォニックロックに乗せて、ここでも力いっぱいの歌声をSSA中にぶつけていく。特にサビに入ったところでもう一段階ギアの上がったボーカルは、観客のハートをさらに熱く燃やすもの。彼女自身も全パワーを注ぎ込んで、前半のラストに観客の全力を引き出すようなステージをやりきっていった。
後半のトップを飾ったのは、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。この日出演の6人が2階ステージに登場すると、ニジガク随一のお祭り騒ぎなナンバー「わちゅごなどぅー」でいきなりアクセルベタ踏み。ステージ上の6人は表情と歌声で各メンバーの個性をしっかり表現しながら、改めて観客をライブに没頭させていく。また、もう1曲披露した「Just Believe!!!」は、「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS」でのこの曲のMVを背負いながら披露することで、映像の中の12人とともに“全員でアニサマに出演”する形に。ハイテンポな曲の中でペアダンスなどの見せ場もしっかりと魅せつつ、この曲ならではのエモーショナルさも交えて観客の胸を熱くしていった。
halcaは1曲目の「誰彼スクランブル」を、肩に提げた黒いバッグをめぐって“こわい人たち”から逃亡する――というMVのオマージュを盛り込みながら歌唱。終盤奪い返されたそのバッグの中身はサイリウムで、大サビでは“こわい人たち”がそれを用いてパフォーマンスを繰り広げた。ただ、こういった展開をしながらも、歌をしっかり届けられる彼女のボーカル能力はさすがの一言。猛スピードで疾走するトロッコ上や駆け回りながら歌唱したDメロででも、彼女の歌声はブレないパワフルなものだった。
そしてポップなラブソング「恋愛ミリフィルム」では、ちょっとハスキーでハイトーンな歌声の持ち味を生かして、聴く者の心をキュンとさせると、1サビが終わったところでこの曲がOPを飾る『彼女、お借りします』出演キャストでもある雨宮 天(水原千鶴役)、東山奈央(更科瑠夏役)、芹澤 優(八重森みに役)の3人が登場!4人のユニゾンで楽曲を彩りながら、豪華かつ充実の2曲を締め括った。
スペシャルステージに登場したMyGO!!!!!は、まずはメドレー形式で2曲続けて披露。どこか退廃的な世界観の「無路矢」を青木陽菜(要 楽奈役 / Gt. )のハイトーンな歌声が彩ると、ダンスロック「影色舞」ではステージ上でメンバーが演奏・歌唱とともにステップも踏み、観客を巻き込み踊らせていく。さらにそのまま続けた「潜在表明」は、羊宮妃那(高松 燈役 / Vo.)がポエトリー部分で、燈の内面を吐露するかのように溢れんばかりの激しい感情を表す。特にDメロ部分のそれは非常に鋭く鮮烈なもので、一言一言が聴く者の心に突き刺さるよう。その一方で、サビでは光が差し込むような光景も想像できるサウンドのこの曲を歌いきると、最後に現在放送中のアニメOPテーマ「壱雫空」を演奏。登場から基本シリアスな表情を貫いていた5人が、この疾走感ある青春パンクでは笑顔で歌い演奏していくという流れは、非常に胸を打つ。客席のペンライトの色は終始同じ青だったのに、この曲ではまるで雨上がりの空のように感じるもの。その晴れやかな空気のなかで5人は、最後に拳を掲げて出番を終えたのだった。
ソロでは4年ぶりの出演となる小倉 唯は、その間に迎えたデビュー10周年を振り返る意味も込めてか、デビュー曲「Raise」からライブスタート。決めどころをはっきりさせたメリハリあるダンスとともに、凛とした表情でピンと張らせた歌声を届けていく。そしてもう1曲は、最新曲「秘密♡Melody」。サウンド自体がそもそもキュートさを持ったポップなナンバーなのだが、そこに今度は甘々に振った歌声で、とてつもないラブリーさを上乗せ。さらに、サビ明けに一瞬顔をぷくっとさせたり大サビ冒頭でぴょこっと片足を上げて跳ねたりと、視覚の面でもキュートさを全開にして、大観衆をメロメロにしていった。
と、ここでまたもサプライズ!アニメ『明日ちゃんのセーラー服』の蠟梅学園中等部1年3組から、村上まなつ(明日小路役)・雨宮天(木崎江利花役)・鬼頭明里(兎原透子役)・若山詩音(古城智乃役)の4人が登場して、同作のOPテーマ「はじまりのセツナ」を歌唱。フレッシュで瑞々しい歌声と爽やかなサウンドが、客席を“明日ちゃんのセーラー服”カラーのブルーに染め上げるなか、4人とも満開の笑顔を咲かせてキュンとくる青春ナンバーを届けてくれた。
ピュアな歌声といえば、続いて登場した花澤香菜もその持ち主。まずはストリングスも従えて歌唱した「ドラマチックじゃなくても」では、ピンクのペンライトの輝きが埋め尽くす会場に向けて、温かく柔らかな表情とともに透き通る歌声で楽曲を彩っていく。だがそんな雰囲気とは打って変わって、2曲目に歌った「灰色」は、ボーカルに悲しみを帯びさせて表現していくミドルバラード。その悲しみが過剰になりすぎないように、歌声を僅かに震わせることで仄かに添加していき、最後のフレーズを消え入りそうに弱く歌って締め括るというのも非常に印象的。巧みなボーカルワークを用いて、各楽曲の世界へと観客をいざなっていった。
続くASCAは、まず最新曲「リンネ」から出番をスタート。やや静かめな歌い出しから、疾走感を増す曲に沿わせて徐々に歌声のアクセルをふかしていき、最後には激情とともにSSAを赤く染め上げる。2-Bメロでは特にぐわっと歌声を広げていき、ラストまでいっぱいに想いを乗せてカットアウトする。さて、ASCAも声出しOKのアニサマ出演は今回が初。ということで、トロッコに乗り込み「Howling」を歌い、タイトル通りにオーディエンスを思いっきり吠えさせていく。曲が進むにつれてぐんぐん加速するトロッコ上においても歌声をブレさせず、観客を煽りながら力強い歌声を叩きつけ続けて場内にさらなるパワーを与えた。
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