TVアニメ『ライザのアトリエ』EDテーマ「アロー」が貫く“始まりの景色”と“果て”への意識――Awkmiuが初アニメタイアップにかけた想いに迫る

バンドの転機となった楽曲「dice」に込められた“果て”への意識

――「dice」はAwkmiuとして新しく制作した曲ということですが、バンドならではの勢いがあってめちゃくちゃいいですよね。

シキ　そう、シンプルにいい曲なんですよ。自分はいつもリード然とした曲を書きがちで、Aメロは静かめ、Bメロで場面が変わって、サビでガーン！と上がって、Dメロでドーン！みたいなものばかり書いてしまうんですけど、この曲はデモの段階から、もうちょっと単調であまり味がしない感じだったんです。だから私自身は全然いいと思ってなかったんですけど、スタッフさんがすごく推してくれて……。

関根　いや、めっちゃいい曲じゃん！

シキ　その感覚がもうバグってて、どんどん足したくなっちゃうんですよね。でも、みんながいいって言うからやってみようと思って。で、いつもは詰め込みまくるんですけど、そればっかりだと幅が生まれないので、この曲はみんなでラフに作ってみることにして。これはDメロありきの曲だと思っているんですけど、自分はこの曲に限らず2Aという立ち位置がすごく好きで。

――それはなぜ？

シキ　1サビまではその楽曲の自己紹介みたいなものだとしたら、それがあったうえでの味変をしやすいのが2Aなんですよね。あと、2Aは音数が多いので言葉をたくさん詰め込めるし、言葉遊びをしやすいんですよ。この曲も2Aに猫の鳴き声を入れたりしていて。あれ、米哉さんの幼馴染が飼っている猫なんだよね？

関根　そうそう。最初にデモを聴いたときに、「ここに猫の鳴き声を入れようよ」ってふざけて言ったら、「めっちゃいいね！」って食いついてきて。そういうときのシキちゃんは怖いんですよ（笑）。

シキ　「絶対やれ！」って（笑）。猫へのオーダーも出したんだよね、こういう鳴き声でお願いしますって。

関根　だから幼馴染の家に行って、スマホを持って猫が鳴くまで待って（笑）。クレジットにも猫の名前を入れてます。

シキ　そうやって心から楽しんでアレンジができたし、暗いけど明るいし、すごくキラキラしているけど悲しさも感じるような、バランスが取れた曲になりました。

――この曲、みんなで前のめりになって演奏している感じがすごく良くて。

関根　シンプルじゃないけどシンプルなんですよね。

カヤ　そう、シンプルで演奏が鬼つらい（笑）。前は「難しいことをするぞ！」っていう意識で難しいことをやっていたんですけど、今は、シンプルなのに超ムズい感じになってきて。

関根　「アロー」の前はみんな効率的で、目的地に向かうためにバスとかを使う人たちだったのが、最近は「よし！みんなでチャリに乗って行こうぜ！」って感じになって（笑）。そう考えるようになったきっかけが「アロー」で、実際にチャリに乗って行ったのが「dice」っていう気がする。ベースとドラムなんて、「アロー」と比べたら、突然走り出す感じだもんね。とにかく速くっていう。

カヤ　途中で息切れして追いつかなくなるくらいだからね。

――Akiさんのエレピもいいですよね。

Aki　この曲は「サイコロっぽい感じで」って言われたんですよ。じゃあと思ってエレピで弾いてみたら受けが良くて。

シキ　サイコロっぽかった！この曲は「サイコロっぽい」が誉め言葉なので（笑）。

関根　ゲームっぽい感じも入れたかったんですよね。

Aki　テレビゲームではなく、ボードゲーム感っていう。

カヤ　「dice」はイメージを全員で共有するという点で、初めてしっかり意識できたところもあって。

関根　確かに。色んなところから意見を集めて、一発で決まったからね。あと、シキちゃんがライナーノーツに「あとがきにしたい」って書いていたけど、なるほどなと思って。「アロー」は従来の力をもって進化させたけど、「dice」は周りの力を素直に受け入れて、飾り立てない感じで力を出すことができて。だからこの曲で締めて、また次に行こうよ、っていう感じになったのかなって思う。

シキ　「アロー」と「dice」は結局同じことを歌っているんですよ、多分。どっちの歌詞にも“果て”という言葉が出てくるんですけど、「アロー」の“果て”が現実に目指している目標を意味するとしたら、「dice」の“果て”は“死”とか今の現実からはみ出た場所に逃げてもいいっていう感じで。だからどこか暗いイメージもある曲になったんだと思います。

――その“果て”に対する、シキさんのイメージが気になります。

シキ　どの楽曲を書いていても、そういうのがあるんですよね。ひと言で言うと“死”だと思うんだけど、別に暗い意味ではなくて、それがあるから生きているわけじゃないですか。“死”は自分たちでコントロールできることではないから、怖いと思うのは自然なことだし、何かを作り出すときはそれが意識されていてもいいと思っていて。だから、楽曲を書いたり言葉を出す作業は、そこに向かっている意識がすごく強いですね……なんかすごく心配されそうなことを言ってますけど（笑）。

関根　シキちゃんは多分、日常のキラキラを見つけるのが得意なんですよ。だから生まれてから死ぬまでのことも、特別なことというよりも、色んな日常があるっていう表現の1つなのかなって思っていて。

シキ　あとはなくなるからきれいなものってあるじゃないですか。

カヤ　桜とかね。

シキ　そうそう。桜も飽きられる前に散るのが偉いなって思うし、きっといつか死ぬからこそ、楽しく生きなくちゃって思うんだろうし。死ぬことがわかっているから、今ここにあるはずのきらめきを見たいと思うし、そういうことを書きたいんですよね。

――その一方で、“果て”という言葉は“夢”や“理想”という言い方に置き換えることもできると思うのですが、シキさんの書かれる曲には、見果てぬ理想に向けて進むようなイメージも浮かぶんですよね。

シキ　“死”は普通に考えると悪い意味に捉えられたり、真っ黒なイメージじゃないですか。でも、真っ暗闇のところから見た光はすごくまぶしいし、強い光が作る影はすごく暗くて。だから明るいことを言うときにそういうモチーフがあると、すごく明るい光になるだろうなっていうのが、無意識にあるのかもしれないですね。

関根　あと“果て”の話で思い出したのは、俺がバンドに入ったとき、シキちゃんが「できるだけ遠くにみんなで行こう」って言ったんですよ。多分それがシキちゃんの“果て”に対する意識で。みんなで遠くまで行けば色々なことができるわけじゃないですか。チャリにも乗れるようになるし、そうするとバスのありがたみもわかるし、無駄も楽しめるようになって。

シキ　そうだね、それが遊び心だね。今の表現、すごくわかりやすいから、使いまわしたい（笑）。

――そのようにみんなで“果て”に向けて進み出した今、バンドとしては今後どんな展望を抱いていますか？

カヤ　僕は本当にシンプルで、たくさんの人の前で演奏したいというのが目標なので、これからももっと色んな人に曲を聴いてもらって、ライブに足を運んでもらいたいです。

Aki　老若男女、国内外問わず、可能な限り多くの人に届けたいし、色んな人にライブに来てもらいたくて。垣根なく、たくさんの人をギュッと1つの会場に集められたら最高だなと思います。

関根　今後はタイアップを含め色んな人とイメージを共有する制作もしたいですけど、でもやっぱりライブありきだと思っていて。まだ結成から間もないのであまりライブはできてないけど、さっき話したチャリに乗れるようになってから、みんな「ライブやりてえ！」ってなっていて（笑）。ライブバンドの側面と、音源でもこだわりまくった構築を目指して進んでいきたいです。

シキ　自分たちがかっこいいものを作り続けるのはもちろんですけど、やっぱり「できるだけ遠くに行こうね」っていう気持ちが一番強くて。メンバーだけじゃなくて、お客さんや関わってくれる周りの方も含めて、大切な人たちを全員連れて、どこまでも遠くに行こうね、っていう感じですね。

●リリース情報
「アロー」
8月23日発売

【期間生産限定盤（CD＋Blu-ray）】

価格：￥3,200（税込）
品番：VVCL-2331～2332

【通常盤（CD）】

価格：￥2,500（税込）
品番：VVCL-2330

＜CD＞
M1. アロー
M2. Mr.Crier
M3. そこから
M4. 1089
M5. dice

＜Blu-ray＞
01. アロー -Music Video-
02. TVアニメ『ライザのアトリエ～常闇の女王と秘密の隠れ家～』ノンクレジットエンディング

●ライブ情報
Awkmiu presents LIVE“Gift Shop”
2023年9月16日（土）東京都・Shibuya eggman
ゲストアーティスト：Aooo

［チケット料金］
1F全自由／整理番号付き：3,500円（税込）＋ドリンク代
※6才以上チケット必要。5才以下入場不可
※枚数制限：お1人様4枚まで