halcaの9thシングル「恋愛ミリフィルム」は、現在放送中のTVアニメ『彼女、お借りします』(以下、『かのかり』)第3期のOPテーマ。作詞・作曲は、今年1月にリリースされた2ndアルバム『nolca solca』収録の「BUZZER BEATER」で初コラボを果たしたthe peggiesの北澤ゆうほが手がけた。
『かのかり』の世界にしっかりと寄り添いながら、バンド感溢れるサウンドとキャッチーな歌声を届けるhalcaに、北澤ゆうほとの二人三脚の楽曲制作を語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
――『かのかり』とのコラボは、2020年以来、3年ぶりになるんですね。
halca 気がつけばそうなんです!「告白バンジージャンプ」が第1期のEDテーマで、特別エンディングでも「FIRST DROP」を流していただけたので、「恋愛ミリフィルム」がhalcaとしては3曲目。お話をもらった時は、またご一緒できる!と、本当に嬉しかったです。私も『かのかり』は大好きなので2期もずっと観ていましたし、イベントにも出させてもらう機会もあったんです。だから、私の気持ちは「お久しぶりです!ただいま!」なんです。
――「ただいま!」って素敵な言葉ですよね。
halca 『かのかり』ファンの方からも、SNSで温かいメッセージをたくさんいただきました。だから私も、第1期でOPテーマ「センチメートル」を歌っていたthe peggiesの北澤ゆうほちゃんに、今回、曲を書いてもらったんです。アニメが始まった第1期のみんなでワイワイ盛り上がってる感じを、第3期に一緒に連れて帰ってこれたらいいなと思ったら、ゆうほちゃんの顔が頭に浮かんで。メロディの感じやサウンド感でも、『かのかり』ファンの方に、あの時の気持ちを思い出してもらえたらと思いました。
――そういえば、今年4月の<LAWSON presents halca first tour 2023“nolca solca culca”>東京公演にも北澤ゆうほさんがゲストで来られましたね。その時は、まだ「恋愛ミリフィルム」の存在は明かされていませんでしたが、実はあれも“匂わせ”だった!と(笑)。
halca そうなんです!本当は「『かのかり』の主題歌のお話しも決まっていて、ゆうほちゃんに作ってもらってるんだよ!」って言いたかったんですけど、めちゃくちゃ匂わせちゃいましたよね(笑)。
――『nolca solca』で北澤さんに「BUZZER BEATER」を楽曲提供してもらった時は、the peggiesらしい曲をお願いしたと話していましたが、「恋愛ミリフィルム」も北澤さん節がしっかり詰め込まれつつ、halcaさんの声が乗ることで、ポップだけどバンド感の強いキャッチーなナンバーになっていますね。
halca はい。元々声質や歌い方が、ゆうほちゃんとは若干重なる部分もあるので、今回もゆうほちゃんが歌っていてもおかしくない曲にしてほしかったんです。私は初めてご一緒したんですけど、編曲を江口 亮さんにお願いしたのも、ゆうほちゃんのアイデアでした。
――北澤さんとはプライベートでも仲良しですし、『かのかり』のこともよくご存じ。意思疎通もバッチリですからね。
halca もう信頼しかなかったです!曲作りの前からLINEでやりとりしたり、スタッフさんと一緒に打ち合わせもしましたけど、基本的にはお任せで。ゆうほちゃんも脚本をすごく読み込んでくれて、大事なところには「たくさん丸つけた!」って言ってました(笑)。あと、大事にしたかったのは、私たちだからできる『かのかり』コラボ。ゆうほちゃんが歌った「センチメートル」とリンクする部分があったら面白いよね!と伝えて、歌詞を書いてもらったんです。
――確かに、歌詞を見ると2曲がリンクするところ、ありますよね。
halca そうなんです!“難解な方程式を 解くような毎日の中で”というフレーズは、「センチメートル」の“(会えない時間+君が笑った瞬間)÷2のこのときめきと”という歌詞を思い出させてくれて、見た瞬間にウワーッ!となりました。あと、第1期から物語が進んでいるので、主人公の(木ノ下)和也とヒロインの(水原)千鶴の関係性にも変化がある。タイトルに“センチ”からグッと距離が近づいた“ミリ”という言葉を入れてくれたのも、嬉しかったです。
――第3期の物語は、和也が千鶴の主演映画を自主制作するために奔走するお話。映画撮影のフィルムは35 mmフィルムですが、この曲では“恋愛ミリ”の“フィルム”に、大好きな人をまぶたのスクリーンに焼き付けようという想いが描かれていますね。
halca そうなんです。だから「恋愛ミリフィルム」。あと、ゆうほちゃんにはまだ聞いてないんですけど、タイトルが漢字+カタカナになっているじゃないですか。もしかしたら「告白バンジージャンプ」の言葉の感じも意識してくれたのかな?って、勝手に思っています(笑)。曲調も歌詞も完璧ですし、halcaの曲としてもすごく新しい気持ちで歌えました。
――サウンドやアレンジの感じも、いつもと違いますしね。
halca そうなんです。江口さんのアレンジを初めて経験したからというのもあると思うんですけど、今までのhalcaナンバーは、派手な音でメリハリのある曲が多かった気がしていて。でも「恋愛ミリフィルム」は、すごくベーシックなサウンド感を大切にしている。サウンドプロデューサーは、ザ・ビートルズのようだとおっしゃっていました。かっこいいサウンドは時代に関係なく、ベーシックなところがちゃんとかっこいい。江口さんのサウンドで、改めてそう感じました。
――halcaさんが、「恋愛ミリフィルム」曲中でとくに気に入っているところは?
halca “どんな君も一番綺麗だ”というフレーズですね。この曲からは、千鶴を大好きな和也目線を感じてもらえると思うんですけど……「和也イケメン!! 」って思いました。
――レコーディングでも、和也の気持ちになって歌いました?
halca はい。なりきって歌いました。和也の気持ちや和也のキャラって、すごく自分に共通するものがあるなって、ずっと思ってるんです。なんか、こう……常に情けなかったり、頼りなかったりするところが(苦笑)。そんな和也も、やるときはやるぞ!な人だから、そこもすごく共感できる。素直に歌っていったら、泣きそうな声色になったり、喉が詰まったり鼻にかかって、ちょっとかすれた歌声になったり……自然に気持ちを込めて歌うことができました。
――歌詞カードには書かれてないですけど、大サビ前の“あのね!”と言うセリフも聴きどころだなと。伝えたい想いが溢れて、つい口から出てしまった感じにグッときました。
halca あ~っ!(笑)。“あのね!”は、言い方もすごい悩んだんです。下を向くんじゃなく、大きな決心をして上を向いて「君が好きだ!」という想いを出したかったので、勢いをつけてぶつけるように言ってみました。他にも2番には“君のいない世界は……”というメロに続いて“嫌だよ!”とセリフで言うんですけど、“嫌だよ!”が怖く聞こえないように、軽い感じを出すのがすごく難しかったです。
――「恋愛ミリフィルム」はMVも楽しい映像になりましたね。halcaさんがサングラス姿で映画監督に扮して、一人二役のhalcaさん本人を含めて色々な人をオーディションしますが、最後に選んだのはイケメンのマネキンだったというコミカルな内容です。
halca 他にもバンド演奏とリップシンクで歌っている映像を組み合わせたり、俳優さんにラブストーリーを演じてもらうとか、私が好きな人のことを部屋の中で妄想する案とかいろいろあったんですけど、あまり真面目すぎるのもhalcaっぽくないかな?というので、一番“おもしろ”なのが選ばれました(笑)。私が好き好き!って迫っているマネキンさんも、顔がイケメンなマネキンとスタイルのいいマネキンを組み合わせていて、メイクもしてもらったんですよ。途中に出てくるメイクさんたちも、みんな本物のスタッフさんです。
――撮影も楽しそうですね。
halca はい、すごく楽しかったです。映画監督としてカメラを回すシーンも、あまりに楽しくて本気でレンズを動かして撮影の真似事をさせてもらったんです。いつもは歌っているところを撮られるほうなんですけど、動いている人にピントを合わせるって、ものすごく難しい!撮影スタッフさんの苦労が理解できました(笑)。曲だけ聴くのと、MVで聴くのとでは、曲の印象もまったく変わるので、ぜひ観てください!
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