INTERVIEW
2023.08.23
弱冠15歳ながらも、エモーショナルかつ表現豊かな歌声で注目を集める新世代シンガーのRainy。が、ニューシングル「…and Rescue Me」をリリースする。TVアニメ『名探偵コナン』のEDテーマとしてオンエア中の表題曲は、GARNET CROWのメンバーAZUKI七が歌詞を提供した、夏の淡く切ない情景が浮かぶ鮮烈なマイナーアップチューン。さらにカップリング曲「世界は君とはじまる」もAZUKI七が作詞、そしてGARNET CROW「夏の幻」のアコースティックカバーも収録した、強力な1枚になっている。TVアニメ『名探偵コナン ゼロの⽇常』のED主題歌「Find the truth」でデビューし、『コナン』やアニメに対する愛も深い彼女に話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
――TVアニメ『名探偵コナン ゼロの⽇常』のED主題歌「Find the truth」でデビューしてから1年弱になりますが、デビュー当初と比べてどんな変化を感じますか?
Rainy。 私は元々練習嫌いで、今でも正直めんどくさいなあと思うことがあるんですけど(苦笑)、応援してくれるファンの皆さんがいると思えることでモチベーションがアップして、「これができたら楽しんでくれるんじゃないかな?」とか、ファンの皆さんのことを第一に生活するようになりました。それこそ食生活も変わりましたし、日々のルーティンを確立するようになって。それと私は普段からすごくよくしゃべる人間なんですけど、より自分の発言内容を考えるようにもなりました。
――というのは?
Rainy。 今、地元の福岡でラジオ番組(FM FUKUOKA「Rainy。のChoco Chat CAFE」)をやらせていただいているのですが、昔は自分が何気なく思ったことをただしゃべっているイメージだったんですけど、今は順序だててしゃべるようになって、「話すのが上手くなったね」と言われることも増えたんです。今でも気持ちが昂ってしまうとバーッてしゃべっちゃうんですけどね(笑)。でも、Rainy。として活動し始めてから、自分の生き方も変わってきているように思います。
――ファンのことを意識するようになったのも含めて、客観的な視点が培われてきたんでしょうね。
Rainy。 確かに客観的、という部分は自分でも意識するようになりました。
――福岡在住で、なおかつまだ中学生ということで、普段の学校生活とアーティスト活動の両立は大変ではないですか?
Rainy。 大変ではないと言えばウソになりますけど、自分で選んだ道ですし、私は5歳の頃から歌手を目指していて、歌は私の根本にあるものなので、「好き」だけではやっていけないこともありますけど、その「好き」という気持ちを思い出すことによってへっちゃらになるんです。つらいこともあるけど、乗り越えられるという気持ちです。
――15歳の誕生日に当たる今年の6月28日には、1stアルバム『Rainy。UNIVERSE』をリリースされましたが、ご自身としてはどんな作品になったと感じていますか?
Rainy。 収録されている11曲それぞれを通して色んな私の歌い方や表現、多種多様な想いが感じ取れる作品になっていると思いますし、10人の方が聴いたら、10人分の違った感想があるんじゃないかと思えるくらい、色んな楽曲が盛りだくさんな作品になりました。
――それはご自身もアルバムを通して色んな自分を知ってほしい気持ちがあってのこと?
Rainy。 はい!Rainy。はもちろん芯もあるんですけど、色んな楽曲を通して顔を変えていきたくて。かっこいい曲だったらちょっと自慢気に歌うRainy。がいたり、「素直になれたら」という楽曲では真っ直ぐに想いを伝えるRainy。がいたりして。それぞれの楽曲の歌詞から感じたことを伝えているイメージです。
――そのようにアルバムで色んなRainy。を表現したなかで、自分にとっての新たな発見や気づきはありましたか?
Rainy。 「自分の歌がこんなふうに聴こえるんだ!」ということは、レコーディングのときに感じました。かわいく歌ったつもりではなかったんですけど、ディレクターさんから「今のかわいかったね」と言われることがあったり、「すごくかっこ良かった!」と言われると、そこに私の思う「かっこいい」をさらにプラスしたらどんなふうに聴こえるかなって考えたり。私1人の気持ちだけでなく、ディレクターさんとのコミュニケーションや色んな人の意見も混じったものなので、イメージカラーとしてよく使う青だけでなく、その中にピンクや黄色も入っていたり、色が移り変わっていくようなイメージが伝わっていたらいいなと思います。
――ディレクターさんの意見も客観性の1つですし、今は色んな人からの見え方を意識しながら、自分の歌を形にしている最中なんでしょうね。
Rainy。 そうですね。あと、私はコミュニケーションだけでなく自分の想いを伝えることを大切にしたいので、言葉はすごく大事なツールだと思っていて。英語だと一単語でしか表せられない想いも、日本語であればもっとたくさんの種類の言葉があって、絶妙なニュアンスの違いを表現できるし、逆に英語は音楽にするときに乗せやすかったり、英語でも日本語にはない表現の幅があったりして……言葉は追求するのがすごく楽しいツールだと思うんです。なので私はその言葉の粒の1つ1つを、聴いてる方に受け止めていただけることを意識しながら歌っています。
――少し話が逸れるかもしれませんが、普段から自分の気持ちを伝えることを意識しているのですか?
Rainy。 班活動とかでもよく発言するタイプだし、自分の想いを人に伝えたら、どういう反応をしてくれるかを知るのが好きで、たまにお友だちに「これ、どう思う?」って聞いて意見交換したりもします。自分にとっては斬新で全然違う角度の意見もあったりするので、そういうときにすごく面白さを感じるんですよね。
――言葉を大事にしているという意味では、アルバム収録曲の「ME」で作詞もされていますよね。葛藤しつつ、でも未来に希望を見出すようなところがあって、等身大のRainy。さんの気持ちが詰まっているんだろうなと思いました。
Rainy。 はい!作詞はすごく貴重な体験でした。でも、元々デビューする前から詩が好きで、言葉を書き留めたりしていて。「ME」は13歳のときに感じていたもやもやとか葛藤を書きなぐったものを、スタッフの方が「歌詞にしてみようよ」と言ってくださって、まとめたものなんです。最初に書きなぐっていたときは、自分の想いを吐露している感じだったのですが、それを歌詞にまとめる作業のときは、曲を聴いてくれた人がそれぞれの解釈で受け取ってもらえるように一般化・普遍化することを意識したので、すごく国語しているなぁと感じました(笑)。
――普段書き留めている言葉というのは、自分の気持ちを思いのままに書いているわけですか?
Rainy。 日々感じる感情の中で「今のこの気持ち、忘れたくないな」と思うものがあれば、とりあえずメモをとるようにしていて。それは別にアーティストになることを意識してやっていたわけではなくて、小さい頃から続けていますね。最近はスマホに書き溜めているので、たまに嫌なことがあると全部消しちゃったりするんですけど(笑)。でも小さい頃に書いたものは今も残っています。
――それを見返したりは?
Rainy。 いやあ、恥ずかしくて無理ですね。本格的に詩みたいなものを書き始めたのは小学校高学年に上がる頃だったんですけど、その前の本当に小さい頃は、「たこ焼き」とか「ケーキ」とか「ひな祭り」みたいなことしか書いていないので(笑)。多分、覚えておきたい思い出だったんですよね。日記を書くのは続かないんですけど、「〇月×日、友達と遊んだ」みたいなひと言日記は今でも毎日続けています。
――それはきっと、年月が経つほど大切になっていくものだと思います。
Rainy。 でも、今はまだ恥ずかしいです(笑)。ただ、そういうのを続けてきたことで、言葉を発することにあまり恐れを感じないところがあって。話すことによって理解してくれることもあるし、お互いの気持ちが通じることもあるので、その意味ではやっていて良かったと思います。
――今回CDシングル化される「…and Rescue Me」は前述のアルバムにも収録されていた楽曲で、TVアニメ『名探偵コナン』のEDテーマとしてオンエア中です。やはり放送後の反応・反響も大きかったのではないでしょうか。
Rainy。 大きかったですね。初めてエンディングが放送されたときは、「新EDいいじゃん!」とか「Rainy。って誰?」みたいな感じで、そのときに私のことをたくさんの方に知っていただけたと思いましたし、前から応援してくださった方からは「聴いたよ~!」という反応もあって嬉しかったです。「…and Rescue Me」からSunny。(Rainy。のファンネーム)になったという方もいらっしゃって……私は結構エゴサをするんですけど、毎日のエゴサに拍車がかかりました(笑)。
――最初に『名探偵コナン』のEDテーマを歌うことが知らされたときはどう思いましたか?
Rainy。 「えっ!?」という感じで、それが3日間くらい抜けませんでした(笑)。デビューのときもスピンオフ作品のED主題歌を歌えるということで感無量だったのですが、そのときに「本編のテーマソングもいつか担当できたらな…」みたいなことを想像していたので、まさかそれが実現するとは今でも信じられないです。しかもGARNET CROWのAZUKI七さんが歌詞を書き下ろしてくださって。本当に光栄なことばかりで、嬉しさでいっぱいでした。
――楽曲を受け取ったときの印象はいかがでしたか?
Rainy。 やっぱり歌詞の印象が強かったです。AZUKI七さんに書き下ろしてもらえることが決まったときから、GARNET CROWさんの楽曲をたくさん聴くようになったのですが、AZUKIさんの書く歌詞は抽象的なんだけど、どんな人が聴いても心にグッと刺さるようなところがあって。聴く人によって思い浮かべる景色は違うけど、でも何かがみんなの心に刺さる。それがこの「…and Rescue Me」でもダイレクトに感じられました。だって歌詞の始まりが“残酷なくらいに憂鬱な⽬覚め”ってすごくないですか?
――確かにすごいインパクトの歌詞です。
Rainy。 それ以外もひと言ひと言のフレーズが全部強烈なのに、まとまっていることがすごいなと思って。メロディーも、最初はキラキラした水面みたいなイメージのゆったりとした音色から、ギターがジャーン!と入って、“残酷なくらいに憂鬱な⽬覚め”で歌が始まるこの3段階がすごく気持ち良くて、歌うときもその気持ち良さをダイレクトに感じました。
――今、抽象的とおっしゃいましたが、Rainy。さんはこの歌詞をどう解釈しましたか?
Rainy。 具体的には、初夏のある日に出会ってしまった2人を思い浮かべながらレコーディングしたのですが、“ʻ幸福ʼみたいな曖昧な定義(もの)を 追いかけてここにいる”という歌詞から、「私にとっての幸福って何だろう?」ということを考えてみたり、色んな情景を思い浮かべました。
――今のお話で気になったのですが、Rainy。さんにとっての幸福ってどんなものなのでしょう?
Rainy。 先日、海老名のビナウォークでFMヨコハマさんの公開収録への出演とミニライブを行ったのですが、そのときに、私の歌がたくさんの人に届いていることを実感できたし、歌手になった自分を再確認することができて、「こんなに幸せなことってないな」と思ったんです。今までずっと歌いたい想いがあって、デビューすることができて。それが現実になっていることにすごく幸せを感じますし、ファンの方と触れ合っているときにも幸せを感じます。
――そのお話をこの歌詞に当てはめるとしたら、Rainy。さんは「歌手になってファンと触れ合う」という幸せを追いかけて、今ここにいるっていうことですよね。
Rainy。 Rainy。としてはそれが幸福なんですけど、この曲を歌うときは小さな幸福から想像していったんですよ。例えば、おいしいケーキを食べてるときとか、眠るときとか、色んな小さな幸せを考えて。どんなにつらいことがあっても、そういう日々の小さな幸せによって乗り越えながら生きているから、“曖昧”という言葉を使っているんじゃないかと思ったんです。ケーキを食べたり眠ることは日常だという人もいれば、聴く人によってはそういう普遍的なことが幸せに感じるかもしれなくて。だからこそ“幸福”は“曖昧な定義(もの)”だし、そういうものを追いかけて今日まで生きてきたんだよ、という風に私は解釈しました。
――なるほど。抽象的に書かれているからこそ、色んな捉え方ができて面白いですね。
Rainy。 ですよね!私の想像だけでも、たくさんの解釈ができるし、正解がないからこそ、色んな解釈で歌うことができるのも、この曲の魅力だと思います。
――ほかに自分の気持ちに重ねられたり、共感できる歌詞のフレーズはありましたか?
Rainy。 共感というよりも、自分の日常の中で想像がしやすかったのは、今お話した“ʻ幸福ʼみたいな曖昧な定義(もの)を 追いかけてここにいる”のところなんですけど、“やさしい歌じゃ⼼が晴れない 無限の闇がある”という歌詞の意味を考えたときに、「優しい歌じゃ⼼が晴れないのなら、どんな歌がいいんですか?」ということを言いたいのではなくて、優しい歌では心が晴れないくらいの闇があるけど、そこから光を見つけていくようなイメージが浮かんで。だから自分とリンクするというよりは、その歌詞の情景を思い浮かべるイメージで歌いました。
――プラスしてこの楽曲は『名探偵コナン』のEDテーマでもあるわけで、歌うときに『コナン』の世界観を思い浮かべることもあったのでしょうか。
Rainy。 それも少し意識しました。エンディングのアニメが付いたらどんな内容になるのかを想像して。「ここは少年探偵団が出てきたらいいなあ」とか、「ここは絶対に黒の組織が出るやん!」って自分で勝手にアニメーションの構成を考えるのが楽しかったです(笑)。
――それは『コナン』が好きだからこそイメージが沸いたわけですよね。
Rainy。 はい。私は赤井(秀一)さん推しなので、エンディングアニメにも出てほしいなあと思っていました。ここで狙撃してくれないかなあって(笑)。
――『コナン』のアニメは昔から好きで観ていたのですか?
Rainy。 小さい頃から結構観ていたんですけど、「Find the truth」でデビューすることが決まったときに、さらに拍車がかかって大好きになりました(笑)。もっと勉強しないといけないなと思っているんですけど、今は赤井さん推しで止まっています。赤井さんがかっこ良すぎて爆イケなので。
――爆イケですか(笑)。赤井のどんなところに魅力を感じるのでしょう?
Rainy。 元々かっこいいなと思っていたんですけど、きっかけは劇場版『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』です。あの作品で赤井さんと安室(透)さんが、なぜか観覧車の上でバトルするんですよ。観ながら「何でこんなところでバトルするの?」「早く爆弾を止めろよ!」って思ったりもしたんですけど(笑)、でも安室さんからしたら因縁の相手だし、赤井さんは安室さんに事情を弁明することもできるけど、それを話すと安室さんが悲しむから言わない。その自分が恨まれてもいいから彼の大切なものを守り抜く覚悟に、すごく男らしさを感じたんです。その後に『名探偵コナン 緋色の弾丸』を観て、あの「了解」というセリフで落ちました(笑)。
――落ちたんですね(笑)。
Rainy。 完全にやられました。だって『緋色の弾丸』の赤井さんって、やることが人間業ではないじゃないですか。でも、それをやってのけそうな雰囲気すらあるのがかっこよくて。でも、『コナン』のキャラクターはみんなそういうかっこよさがあると思うんです。(毛利)蘭姉ちゃんもかっこいいし、(江戸川)コナンくんもかっこいい。キャラクターの1人1人にすごく濃いバックグラウンドがあるので、セリフの掛け合いにも夢中になれるところがあるんですよね。「コナンくん!それは(灰原)哀ちゃんに言っちゃダメ!」みたいな(笑)。キャラクターの1人1人に寄り添えるところが魅力ですよね。
――それだけ『コナン』愛があるのであれば、実際に「…and Rescue Me」のエンディングアニメをご覧になったときは感動したのでは?
Rainy。 まず1回泣きました。「哀ちゃん……幸せになってね(泣)」と思って。でも、ひと言でまとめられない想いが溢れ出ましたし、歌詞とリンクしているようなシーンもあって。一番最後の少年探偵団と阿笠博士のところに、コナンくんと哀ちゃんが一緒に行く感じも、「哀ちゃんにはちゃんと居場所があるんだ~!(泣)」と思ってウルウルしましたし、何回観ても飽きないです。
――ちなみにRainy。さんが演技に挑戦しているMVもYouTubeで公開されていますが、あれはどんなコンセプトで制作されたのですか?
Rainy。 あれは『コナン』というよりも、私とSunny。の皆さんの出会いをイメージして作ったMVになります。ストーリーとしては、まずRainy。が砂漠の中を1人でさまよっていて、ある日“サニまる”というウサギのぬいぐるみと出会い、相棒として一緒に冒険していくお話になっていて。これからSunny。の皆さんと一緒にもっと羽ばたいていきますよ、というメッセージが込められているので、皆さんにもそれを感じ取ってもらえると嬉しいです。
――終盤にもう1人のRainy。さんが登場しますよね。個人的にあれは未来のRainy。さんを象徴しているのかなと思ったのですが。
Rainy。 なるほど。私は「別世界のRainy。」という解釈でした。だからこそ色んなRainy。がいることを知らせるシーンなのかなと思って。演技も頑張ったのでぜひ観てください!(笑)。
SHARE