2023年8月23日に『SUMIRE UESAKA LIVE 2023 TALES OF SUMIPE』のBlu-rayが発売される。こちらは上坂すみれが2023年3月18・19日に立川ステージガーデンで行った同名の2Daysライブの2日目を収録したもの。1日目は「運命の書」と銘打たれ、昨年10月にリリースされた5thアルバムをフィーチャーした内容だったが、2日目の「同人の書」では今年で10周年を迎える上坂のアーティスト活動を振り返る内容も加味されていた。両日ともに声出しが解禁され、「同志」(=上坂すみれファン)と久々に激しくコール&レスポンスを交わした様子が収められている。その本人に熱いライブをどのように受け止めていたのか振り返ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)
――当日のMCで、声出し解禁を受けて直前にセットリストを変更した、という話をされていました。その点も含めて、コンセプトや「TALES OF」というタイトルに込めた意味など、まずはツアー前の準備段階について教えてください。
上坂すみれ 「運命の書」も「同人の書」もセットリストを組んでいたあとに声出し解禁が決まったので、5~6曲くらいは入れ替えました。基本的なコンセプトとしては、5thアルバム『ANTHOLOGY & DESTINY』をメインにして、2日目はこの10年間で出した色々な曲を振り返るという意味も少し込めていて。なのでセットリストも少しだけ違っているんですけど、コロナ禍にリリースした曲が結構ライブ向きといいますか、コールの入る曲が多かったのでそういうのを多く入れていきました。ツアータイトルに関しては『ANTHOLOGY & DESTINY』を感じさせるものいいと思いつつも、アルバムタイトルとは変えたいという気持ちがまずあって。「TALES」にはお話や物語という意味があって……。この単語のついたRPG作品もありますし、私もそのシリーズは好きなんですけど、語感がいいというのもありました。そういうところで「この10年の物語」みたいなイメージでつけました。
――2Daysということで内容をガラリと変えようという気持ちはなかったですか?
上坂 どちらかの日しか行けないという人もいるので、両方行かないとわからない、というライブにはしないつもりでした。1日だけでも十分楽しめるけど両方来たらすべての要素が楽しめる、くらいの感覚ですね。前後編みたいにはしない方がいいかと思っていました。
――上坂さんからのアイデア出しも多かったですか?
上坂 基本的にタイトルやセットリスト、幕間映像で何をするかを考えたり、衣装のテーマを決めたりというのは私が原案みたいなものを出して、そこから色々と決まっていきましたね。
――衣装についても、という話ですが今回のステージ衣装はどのようなテーマでしたか?
上坂 『ANTHOLOGY & DESTINY』は本がたくさん並んでいるジャケット写真が印象的だったので、そこから1着目は魔法図書館の司書のイメージでお願いしました。衣装はちょっとレトロでクラシカルな雰囲気を残した感じで。ただ、ステージセットが割と暗めだったのと、春の公演だったのもあって、明るめの色味のものがいいですね、と話し合いで決まりました。スタイリストさんがかなりカラフルにしてくださって、パステルの千鳥格子もご提案いただきました。
――2日目の2着目は、白ゴスな感じでした。
上坂 あのパートが元々は落ち着いた曲をやる想定だったので、少しクラシックロリータみたいな感じになっています。1日目は黒と赤のロリータ系だったんですけど、両日で図書館やそこにある本に住んでいる天使と悪魔という対比を狙っていました。だから、曲の構成がコール多めに変わったとき、衣装と曲の相性が合うのか少し不安だったんですけど、映像で見たら白ロリータって照明によって結構見え方が変わるので、色々な雰囲気を出せたのが良かったですね。
――3着目の、腰に双眼鏡をつけた衣装はどういったイメージから生まれましたか?
上坂 あれはスチームパンク的な衣装をやってみたかったんですね。クラシカルでレトロな世界観のセットや、今回の公演テーマとの相性がいいと思いました。
――冒険物に旅立つ主人公のようでした。
上坂 そうですね。ライブのかなり終盤で、激しいライブ曲が多くて盛り上がるところだったので、他の2着に比べて強めの印象になるように、冒険者風のお衣装をお願いしました。スチームパンクだとブリキ系のような渋めの色になりがちなところ、鮮やかな緑を使っていただいて。光がしっかりと反射する感じにしていただけたので良かったです。
――急遽セットリストを変更したという点では、リハーサルなどの準備はいかがでしたか?
上坂 リハーサルをしている途中で声出し解禁に変わったんですけど、みんなのコールの感じとか4年前のこととかを思い出しながらリハーサルしていました。みんなの掛け声に合わせてつい歌が早くなっちゃうとか、私はそういうこともあるので。あとは、「同人の書」のセットリストには、すごく久しぶりに歌う曲や初めてコールをする曲、あとは「Car♡Wash♡Girl」のようにみんなで振付をする曲など色々入っていて、セットリストを見たときはバラバラな感じになるかと思ったんですけれども、やってみたらすごく統一感があって。楽しみながらリハをやることができました。
――ここからはライブ当日について振り返っていただければと思います。まず開演は清野茂樹アナによる実況から始まりました。
上坂 今までもライブの始まりはプロレスの入場を意識していたんですけど、今回の1曲目の「趣味者のテーマ ~ underground heaven!!」はまさに(プロレスの)大きな大会のテーマ曲のような曲なのでリングサイドの口上が合うと思っていました。あとは、みんなにとって久々の声出しになるということで、声出しをアシストするものが欲しかったんですね。あの口上の文言は清野さんが考えてくださったもので、私も舞台裏で聞きながら入場するとき、すごくテンションが上がりました。元々「overture」(=ここでは入場曲の意)があると私はすごく勇気づけられるんですけど、今回のライブではそこに歓声が重なって、しかも1曲目は最初からボルテージの高い「筐体哀歌」だったので、すごくピッタリな始まり方だったと思いました。
――久しぶりに同志の歓声を受けたときの気持ちは?
上坂 私のライブって、電波ソングやロックのようにみんなのコールありきの楽曲がすごく多くて。事前にライブ映像を見て感覚を取り戻してくれたり、楽曲をすごく聞き込んでくれたり、みんなが予習をすごくしっかりしてくれるのがわかりましたよね。初見の方でも楽しんでくれるライブだと思いますけれども、何年も来てくださっている方が率先してコールしてくれていたんじゃないかと思います。
――「筐体哀歌」から、MCを挟んでも「Inner Urge」とコールの激しい曲が続きました。ファンの声出しをアシスト、という話も先ほど出ましたが、声出ししてくれるかについて不安はありましたか?
上坂 そうですね。でも、声出しができない間のイベントでも、拍手とかでみんなが自分なりに盛り上がることができるとわかっていましたから心配はなかったですね。「Inner Urge」もすごくコールしやすい構成の曲ですけど、コールしなくてもペンライトや手を振ることだけでも盛り上がれる曲なので。
――では、幕間映像の前、前半終了として袖に下がったときはライブの手応えなどを感じていましたか?
上坂 転換の時間というか幕間映像の時間は決まっていて絶対にその間に着替えやメイクの変更を間に合わせなければいけないので、何か考えるというよりは次のパートのことを考えていました。例えば、幕間前の「地獄でホットケーキ」と後の「海風のモノローグ」ではだいぶ曲の速さやテンションが違うので気持ちが走らないように一回仕切り直そう、みたいに。
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