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INTERVIEW

2023.08.23

May’nはどこまでも強く、真っ直ぐに、これからも歌い続ける。ニューシングル「LIES GOES ON」を軸に、音楽、そして自らの生き方に対する真摯な想いを語ったロングインタビュー

May’nはどこまでも強く、真っ直ぐに、これからも歌い続ける。ニューシングル「LIES GOES ON」を軸に、音楽、そして自らの生き方に対する真摯な想いを語ったロングインタビュー

「LIES GOES ON」(嘘をつき続けろ)、その言葉にはMay’nが歌手活動の中で、直面する現実の中で感じた想いが込められている。アニメ『ライアー・ライアー』のOP主題歌として誕生した曲だが、May’nにとって大切な信念を聴く者にも突きつける。逃避や保身、ときには誰かを守るための手段として用いられながら、いつしか虚構の枠を飛び出して事実との区別が曖昧になっていく“嘘”。そのテーマは表題曲以外の2曲にも侵食し、ニューシングル『LIES GOES ON』はMay’nが新たな形で自身をさらけ出した1枚となっている。

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)

本当にMay’nらしい曲だと思います

――「LIES GOES ON」はどのようなイメージから誕生した曲でしたか?

May’n 「これから『ライアー・ライアー』が始まる」というOP主題歌でしたので、『ライアー・ライアー』の持つデジタルな部分、戦いを表すような疾走感を併せ持ったナンバーをテーマとしました。制作サイドからもらっていた、デジタルなアッパーチューンというオファーも合わせて、アグレッシブな1曲に仕上げさせていただきました。

――楽曲をJUVENILEさんとTeddyLoidさんにお願いした意図についても教えてください。

May’n お二人ともそれぞれに私は楽曲制作をご一緒したことがあるんですけど、JUVENILEさんとTeddyLoidさんのお二人も仲が良くて、タッグを組んでの活動も最近は増えてきたんですね。JUVENILEさんからは、TeddyLoidさんとはお互いに得意なものを100%ぶつけ合えるからすごく楽しいという話をよく伺っていましたし、JUVENILEさんはとてもメロディアスな楽曲が、TeddyLoidさんはソリッドに攻めたアレンジが得意でもあるということで、今回はお二人とご一緒させてもらうことにしました。

――実際の制作の流れはどのような形でしたか?

May’n 今回は先にアニメサイズの89秒を作ってから、それを広げていくという形で制作しました。アニメの主題歌を作るとき、出来上がったフルサイズから90秒や89秒のアニメサイズを作ることもありますが、先に89秒を作るなかで「フルではもっと遊びたいよね」という話をしたのはすごく覚えています。アニメサイズは作品に合っているしキャッチーだし、という実感があったからこそ、フルではライブで盛り上がりそうな箇所を作るといった話が出たんだと思います。

――お二人から楽曲を最初にいただいた時の印象は?

May’n 原作小説を読んだときの、デジタル感やギミックの効いた感じ、ソリッドなかっこ良さをトラックにも感じました。なので、私も刺激をいただきながら歌詞を書き始めることができましたね。お二人ともトラックメーカーということで、ほぼ完成したアレンジでいただけたので歌詞も書きやすかったです。楽曲を聴いたときにまず「LIES GOES ON」というタイトルが浮かんだんですよ。それで、嘘をつき続ける歌にしようと思いました。

――「嘘」というテーマは書くのに苦労するものではなかったですか?

May’n 今回、歌詞では古屋(真)さんにお手伝いいただいていて、私が一度、最初から最後まで一気に書いてからよりキャッチーにしていただくという順番でした。最初に“嘘”で歌詞を書こうと思ったとき、どうやったら書けるのか?と悩みましたが、『ライアー・ライアー』から、自分を高めるために嘘をつき、その嘘に食らいついて、本当に自分を変えていけばいいじゃん!というメッセージを感じとれたことで、そのテーマで歌詞を書けると思いました。自分の人生を振り返っても、そうやって自分を高め続けてきたので。頑張っている人ほど、自分を高める嘘が必要なときがあるんじゃないかと思いながら歌詞を書きました。

――May’nさんにも嘘で奮い立たせる瞬間がありましたか?

May’n ありますよ。例えば、2008年に初めてシンガポールでライブをさせていただいたとき、英語がそんなにできなかったんですけど、アーティストとしてそれはかっこ悪いと思いました。だから、「私は英語がしゃべれますよ」という顔をしたくて、1ヵ月間かけてMCを丸暗記して、すべて英語でしゃべりました。その嘘をずっと続けてきているので、海外でライブをすることが多くなった今では、本番前に少し英語を確認するだけで、自分でMCを考えられるようになりました。嘘を本当にしてやるというのはこのエピソードからも来ていて、高い目標を掲げてなりたい自分になる、ということを続けてきたとは感じますね。

――May’nさんは、ネガティブなテーマも前向きに変換した歌詞を書かれますよね。あまり沈んだ姿を見せないというか。

May’n 常に前進していたいという気持ちは強いので、確かに前向きな歌詞は多いかもしれないですね。特にこの数年は、1つの物事を色々な角度から見たいとすごく思っていて。例えば、正義も別の側面から見たら誰かにとっての悪になるとか、色々な可能性を考えたり感じたりしたいと思っているんですよ。本当なら、自分に正直に生きていたいし、自分の本当の声をちゃんと聞いていたいんですけど、自分に嘘をつかないといけないときもあるとも思うんです。自分の感情に蓋をしてでも頑張らなきゃいけない瞬間がある。しかも、「私は今、蓋をする」「頑張るためには必要だよね」と覚悟を決めて自分で自分を奮い立たせれば、心が壊れることもなく、むしろパワーに変わると思うんです。その意味では、「ときには自分に嘘をついてでも頑張ろうよ」というメッセージは今だからこそ書けたかもしれないですね。若い頃は、自分が気づかないうちに自分の感情を押し殺して、それで疲れてしまうことも多かったんです。でも、最近は意識的に自分に問いかけながら、「ここは頑張ろうよ」と言えるところに辿り着けているので。だからこそ届けられるメッセージかもしれないです。

――与えられたテーマから、自分自身を結び付けられた歌詞ということですね。

May’n そうですね。ネガティブな感情を自分自身でぶつけることってすごく大事だと思うんですよ。でも、こういうメッセージって表立って言うのは難しくて。ただ私は、頑張っている人こそ自分を守るべきだと思っているので。友達を見ていてもよく、「心の中でくらい他人のせいにすればいいじゃん」って思うんですよ。上手くいかないときは時に心の中だけで他人のせいにするとか、常にそうやって切り替えることで私も自分を守っていますね。人生のテーマはいくつかありますけど、基本として「健康に生きていく」ということは決めていて、よく食べ、よく遊び、よく寝る。そうやって、健康に生きています。

――できないときに客観的な視点を持つということですね。無理難題を与えられたのに自分を責めるのは不健康ですし、自分に責任がないと吹っ切ってやり直せるなら確実にそちらのほうが建設的です。

May’n そう思います。「あなたのせいだ」って理不尽に他人にぶつけるのは違うと思いますが、心の中だけはそう思って自分を納得させるのなら、そう思うことも必要なんじゃないかなって。

――では今度は、歌唱の面で意識されたことについて教えてください。

May’n 疾走感や想いの強さは一番出したいところだったので、パワフルさを失わないようなボーカルにはこだわりました。Aメロも、ちょっと低めなキーなんですけど、自分の中に沸々と湧き上がる熱情を表現しようと思い、パワーはなるべく落とさないことを心掛けていました。なので、レコーディングは本当に汗だくで(笑)。JUVENILEさんがディレクションしてくださったんですけど、「あ、いい感じ」「大丈夫!」みたいな感じで終わりそうなところを、「いや、もう少しやらせてください」って、それこそ自分を高めながら、高い目標に向かいながらレコーディングできましたね。

――Aメロのキーを低く、というところはMay’nさんのアイデアですか?

May’n というか、JUVENILEさんも他の作家さんも、最初にキーを教えてくださいと言ってくださるんですけど、私はいつも「どんなキーでも歌います」って返すんですよ。その曲が一番輝くメロディを引き出すのがボーカリストだと私は思っているので。レンジはこのキーからこのキーまでですとか、このキーが得意ですとか言わず、好き勝手に作ってくださいって言いますね。ただ、高いキーのほうが勢いを出せるので、そういう楽曲が多くはなりますが、低いキーも得意なので、疾走感を失わずに下のレンジを出せたとは思っています。

――キーを気にしなくて良いとなるとクリエイターとしても腕が鳴りますね。

May’n JUVENILEさんからもすごく作りやすかったと言っていただきました。メロディはJUVENILEさんが中心となって作られたんですけど、「このキーでいきたいけど出ないかもしれないな」ということは一切考えず、曲としてどうなのかだけを考えながら作れたので楽しかった、とおっしゃっていましたね。自分でもチャレンジ的な部分が多かったですが、楽曲が一番大事なので。ドラマを届けられる構成になったと思います。

――JUVENILEさんのディレクションはどんな印象を持っていますか?

May’n 時間をかけないというか、最初から「3回くらいしか録らないですから」って言うんですよ。そういう人はあまりいなくて。

――ですよね(笑)。

May’n (「蒼の鼓動」を提供した草野)華余子さんもそうだったんですけどね。私は何十回でも録りたいタイプなので、たくさん録らせていただけることもすごく楽しいんです。ただ、最初にそう宣言されたので、私も「じゃあ1回目はこう歌ってみよう」「2回目はちょっとこう変えてみよう」みたいにイメージしながら3パターン歌いました。それを2人で聴いてみて、物足りなかったら別テイクを自分でも提案して、みたいに相談しながら進める感じでしたね。新しいレコーディングに出会うと私も新しい引き出しを出せるので楽しかったです。JUVENILEさんにも華余子さんにも以前ご一緒させていただいた大石昌良さんも、アーティストとしての個性を大事にしながらのディレクションをしてもらった感覚がすごくあります。多分、皆さんアーティスト活動をされている方だからだと思うんですけど。技術的な部分ももちろんですが、感情的な部分を重視してくださったと思います。

――「LIES GOES ON」は、去る7月30日に開催された“リスアニ!LIVE SPECIAL EDITION ナツヤスミ”でも披露されました。歌ってみての手応えを教えてもらえますか?

May’n すごく手応えは感じました。リリース前でしたがアニメの放送は始まっていたので、メッセージやSNSですでに反響はいただいていて。でも、フル尺での披露ということで展開の多さを存分に見せられましたし、ライブナンバーだと実感もできましたね。

――「LIES GOES ON」を含めた流れというところで、当日のセットリストの理由も聞いていいですか?

May’n まず、私の代表曲から始めたかったので頭は「Chase the world」にしました。それからライブタイトルが“ナツヤスミ”だったので2曲目は夏らしい「ギラギラサマー(^ω^)ノ」を入れました。(『マクロスF』の)シェリル・ノームの曲ではありますけど本編で使われていないので、どれくらい知ってもらえているかと思っていました。でも曲が持つキャッチーさがあるので、思った以上に盛り上がっていただけたと感じています。また、光栄なことにトリを務めさせていただけるというお話だったので、ライブの盛り上がりを締めるというところを考え、「LIES GOES ON」「graphite/diamond」「Belief」と畳みかけることにしました。「いけるところまでいきたい!」と思ったんですよね。そうしたら結果的に、全部がダンサー曲になってしまって、ダンサーチームからは「体力がもたないかも……」みたいな声が出たんですよ。ボーカルとしても、ハイトーン楽曲がずっと続くので「きついかな」とは一瞬思いましたが、「これがベストのセットリストだ」「ここは食らいつかなきゃいけない」「あれ?この気持ちって「LIES GOES ON」なのでは?」と思えたんですよね。

――なるほど!

May’n ダンサーチームにも「これが今一番やりたいことだから。みんなならできるよ」って奮い立たせて。実際にはこんな優しい言い方じゃなかったと思うんですけど(笑)。でも当日終わったら、何年もライブに参加してくれているダンサーのMITSUが「今までで1番鬼なパフォーマンスだった」「命燃やしました」と言ってくれて。自分を高めた人にしか辿り着けないゾーンがあるんだなと実感できましたね。

――嘘が真実になった瞬間ですね。

May’n 人間の体力って自分が限界を決めているんですよね。ランナーズハイという言葉があるように、精神が超えてくれる部分もあるんです。あの日のセットリストを終えたときに思ったのは、「LIES GOES ON」に込めたテーマで私は常に人生を歩んできたんだな、というところですね。本当にMay’nらしい曲だと思います。

次ページ:3曲に共通する良さを認めてあげるという気持ち

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