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REPORT

2023.08.17

“僕”の歌から“僕たち”の歌へ――MyGO!!!!!キャスト解禁後初のワンマン5th LIVE「迷うことに迷わない」レポート

“僕”の歌から“僕たち”の歌へ――MyGO!!!!!キャスト解禁後初のワンマン5th LIVE「迷うことに迷わない」レポート

「BanG Dream!(バンドリ!)」発の“現実(リアル)”と“仮想(キャラクター)”の同期をコンセプトに掲げたバンド、MyGO!!!!!のワンマンライブ“MyGO!!!!! 5th LIVE「迷うことに迷わない」”が、8月12日に神奈川・KT Zepp Yokohamaで開催された。前回の4th LIVEでキャストが公開されてから初の単独公演、しかもMyGO!!!!!をフィーチャーしたアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』が放送中という絶好のタイミングで行われた今回のライブ。会場チケットは完売し、全国映画館でのライブ・ビューイングや配信が実施されるなど大きな注目を集めるなか、彼女たちはバンドとしての成長と絆、MyGO!!!!!として伝えたい想い、そして最高の“パンクロック”を観る者の脳裏に焼き付けた。

TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY ハタサトシ

アコースティックパートにも挑戦!進化を続けるMyGO!!!!!のライブ

本公演は、MyGO!!!!!にとって、1st LIVE「僕たちはここで叫ぶ」以来となるライブハウスでの開催。1階席は基本スタンディングとなっており、ホール会場とはまた違った熱気が感じられる。MyGO!!!!!のグッズやTシャツを身に着けたファンが期待の表情を浮かべて待つなか、照明が暗転してついに開演。暗闇の中、どこからともなくMyGO!!!!!の5人の会話が聴こえてくる。「雨、止んで良かった」(燈)、「それじゃあ撮るよー」(愛音)――そして会場に響き渡るスマホの録画ボタンを押したような音。それを合図に晴れ間のような光がステージと5人のメンバーを照らし出し、アニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』のOPテーマ「壱雫空」でライブの幕が開ける。冒頭の会話はオープニングアニメの映像(バンドが屋外で演奏するMV風の映像)を撮影するときの様子だったのだろう。アニメとライブの同期を感じさせる心憎い演出だ。

サイドギターとして安定した演奏を聴かせつつ、「オイ!オイ!」と手を振って盛り上げる愛音(立石 凛)、時折クルッとターンしたかと思えばお立ち台に上がったりと自由に動きながらギターを弾く楽奈(青木陽菜)、リズムに身を揺らせながらノリの良いグルーヴを形成するベースのそよ(小日向美香)、2ビートなどを交えたパンキッシュかつ力強いドラムで楽曲に勢いをつける立希(林 鼓子)、そして清々しいほどの真っ直ぐさと透明感を湛えた歌声を響き渡らせる燈(羊宮妃那)。2022年7月の初ライブから約1年が経ち、数々の大舞台を経験してきた5人のアンサンブルは、間違いなく今が最高潮に感じられる。何より今回はキャスト名が伏せられていた過去の単独公演と違って、最初から顔出しでステージに立っているので、5人の嬉しそうな表情がこちら側にも伝播して思わず笑顔になってしまう。終盤で右手のこぶしを高く上げて歌う燈も印象的だった。

続いて燈が「この雨も忘れずに、僕たちはここで叫ぶんだ」と語ると、次曲「迷星叫」へ。1st LIVEで初披露されたMyGO!!!!!にとって最初のオリジナル曲であり、迷うことを否定しない彼女たちのスタンスを象徴すると同時に、すべての迷える人を導く星と言うべき、まさに“迷い星のうた”だ。その後のMCで改めて(キャラクターとして)挨拶をすると、続いて燈と楽奈のダブルボーカルによる楽曲「無路矢」を披露。ブルージーなギターリフが牽引するワイルドなロックサウンドを土台に、燈のひと際パワーのこもった歌声と楽奈のホイッスルボイスが狼煙のように天高く上昇していく。そこから間髪入れず、バンドリ!の先輩バンドであるPoppin’Partyの人気曲「Time Lapse」のカバーに突入。5人の熱の入ったパフォーマンスに、オーディエンスも「oh oh…」と声を上げながら熱狂する。

冒頭から熱い楽曲で飛ばしてきたMyGO!!!!!だが、ここで一旦クールダウン。ワンマンライブでは初の試みとなる、アコースティックセットが披露される。最初に歌われたのは、アニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』のEDテーマ「栞」。1番では愛音と楽奈がつま弾く2本のアコースティックギター、2番ではそよのベースと立希のカホン+シンバルが加わった涼やかなアンサンブルをバックに、燈の優しくも繊細な歌声が会場を包み込む。さらに爽やかな高揚感をもたらしてくれた「音一会」、落ちサビでのメンバーで呼吸を合わせての演奏に絆を感じさせた「迷星叫」を披露。どちらのアコースティックバージョンもメンバーによる美麗なコーラスやハーモニーが加わって、オリジナルのアレンジとはまた違った魅力があった(個人的にはクロスビー・スティスル・ナッシュ&ヤングのようなフォークロックに通じる魅力を感じた)。

“迷うことに もう迷わない”――新曲「焚音打」に込められた意志

再び通常のバンドセットに戻っての一発目は、カンザキイオリ「君の神様になりたい。」のカバー。3rd LIVE「声を抱えて生きる」以来の披露となるが、心の叫びを叩きつけるようなエモーショナルな曲調がMyGO!!!!!の世界観にフィットする。特にサビ終わりの“僕は無力だ”というフレーズを連呼するパートは、燈の声を振り絞るような歌い方もあって心に迫るものがあった。そこからポエトリーリディングのパートを含む「潜在表明」で心の中に深く潜りつつ、溜め込んでいた感情を一気に爆発させると、続いては愛音が「皆さん、クラップをお願いします!」と呼びかけて、MyGO!!!!!屈指のダンサブルなナンバー「影色舞」へ。お立ち台に上がった楽奈が同曲のギターフレーズを弾いた瞬間、会場が一気に沸く。「皆さんも一緒に踊ってください」という燈の声に応えるように、サビでは客席のペンライトが左右に揺れてダンスフロアのように盛り上がる。動きを合わせてステップを踏む燈・愛音・楽奈、サビ入り前のキメの部分でお互い目を合わせて演奏するそよ・立希、ラストはエアギターで決める燈など、5人も心から楽しそうに音楽を届けていた。

その後のMCで、客席からの「りっきー(立希のあだ名)、かわいい!」という声を燈が拾って「立希ちゃん」と呼びかけると、立希が「かわいいのは燈でしょ」と返して燈が戸惑う場面も。さらに愛音が「ねえねえ、りっきー、次の曲にいくまえに、私にもかわいいって言ってよ」と懇願し、立希は「はあ?なんで?」と冷たくあしらうも、燈からの「立希ちゃん、お願い」との声に「燈が言うなら……」と渋々応じ、「まあ、かわいい、ほうなんじゃない」とそっけないながらも愛音を褒める珍しい一幕もあった。その後、客席から楽奈にも「かわいいよ」という声が上がったのだが、楽奈は「ねえ、ライブまだ?」とマイペースぶりを発揮。ステージ上ではキャラクターとしての振る舞いを崩さない姿勢に、彼女たちのプロフェッショナルな意識とキャラクターへの愛が伝わってきた(キャラクターを演じたままほぼアドリブで収録されるラジオ番組「迷子集会」での経験も大きいのかもしれない)。

ここからライブは早くも終盤戦へ。まずは彼女たちが1st LIVEの頃からレパートリーにしている04 Limited Sazabys「swim」のカバーを披露。ライブでの定番曲となっていることもあってか、メンバーはお互いの方を向き合ったりと、これまで以上に親密な雰囲気でパフォーマンスを繰り広げる。特に2番では全員が(ポジションの移動ができない)ドラムの立希のほうに近寄って輪になって演奏したり、間奏の楽奈のギターソロでは燈と背中合わせになるなど(離れるときにお互い指をさし合うのも良かった)、メンバー同士の結び付きを感じさせるシーンが多数見られた。

そして燈の「新曲です」という言葉に続いて演奏されたのは「碧天伴走」。アニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』第7話の、5人で初めてのライブシーンで披露された楽曲だ。エモーショナルかつどこか開放感を感じさせる曲調、サビの“迷っても 君と進んでみたいよ”といった言葉を含め、聴き手の背中を押してくれるようなメッセージが込められており、笑顔を浮かべて溌剌と演奏するメンバーや燈の明るい歌声もまた、明日を走るための元気や勇気を与えてくれる。そしてライブ本編の最後に歌われたのは、リリースされたばかりの3rdシングルに収録されている新曲「焚音打」。歌詞に“このパンクロックの中で同じ熱になれるいまがすべて”とあるように、メロコア~ポストハードコア路線のアグレッシブなサウンドに乗せて届けられるのは、例え今はまだ進むべき道がわからないとしても、自らの心の中に灯る種火と、共に迷ってくれる仲間を信じて前に進もうとする強い意志だ。掛け合いによる歌唱パートがバンドの一体感をさらに高めるなか、燈は“大丈夫 僕たちは進もう”と力強く呼びかけ、最後は今回のライブのタイトルにも引用された“迷うことに もう迷わない”という言葉を伝えて締め括った。

“僕”の歌から“僕たち”の歌へ――握りしめたこぶしが繋ぐ絆

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