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INTERVIEW

2023.08.17

【連載】「NARUTO THE LIVE」開催記念アーティストインタビュー 番外編:作曲家・高梨康治――「和ロックを世界に持っていきたい」という意思を継ぎ、叶えることができた作品

【連載】「NARUTO THE LIVE」開催記念アーティストインタビュー 番外編:作曲家・高梨康治――「和ロックを世界に持っていきたい」という意思を継ぎ、叶えることができた作品

アニメ『NARUTO-ナルト-』が放送された際、「音楽」としてクレジットされていた「増田俊郎 & 六三四プロジェクト」。和楽器ロックバンド・六三四Musashiに参加していたのが高梨康治だった。あれから20年。ナルトが青年へと成長していく『NARUTO-ナルト- 疾風伝』では自身の名前で音楽を担い、その意思は木ノ葉の里の者たちの心に在る火の意思のように燃えたまま『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』へと続いていく。今回、「NARUTO THE LIVE」の劇伴ライブパートをプロデュースする高梨に、この20年、ナルトと共に駆け抜けてきた想いを聞いた。

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【連載】「NARUTO THE LIVE」開催記念アーティストインタビュー

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY 堀内彩香

『NARUTO-ナルト-』の象徴であるテーマソングが生まれたときのこと

――アニメ放送20周年を迎えた『NARUTO-ナルト-』(以下、NARUTO)へ。共に走り続けてきた高梨さんからメッセージをいただきたいです。

高梨康治 20周年、すごいですね。20周年続けるというのはなかなか出来ることではないですが、それはやはり応援してくださる人たちが世界中にいることが一番大きいと思っています。これだけ世界中から愛される作品というのは、たくさんの作品があるなかでも数少ないと思いますから。そんな『NARUTO』と共に20年を歩んでこられたことは本当に幸せなことだなと思っています。そして応援してくださるファンと制作に携わったスタッフの皆さん、それからなんといっても作者の岸本(斉史)先生にとても感謝したいと思います。

――作品が20周年ということは、高梨さんが楽曲を作られたのはもっと前のことだったと思います。劇伴を担当されることとなった経緯を教えてください。

高梨 そもそもは当時、僕がやっていた六三四Musashiという和楽器を使ったロックバンドがあるのですが、アニメ制作側の『NARUTO』の音楽に関する話の中で、六三四Musashiにお願いしたらどうだろうか、と出たらしいんです。そしてもう1人、劇伴を担当されていた増田俊郎さんが日常系の楽曲を得意とされていましたから、日常の楽曲は増田さんが、バトル系の劇伴については六三四Musashiで担う、と共作のお話を引き受けたところが始まりでした。それから『NARUTO-ナルト- 疾風伝』(以下、疾風伝)になるときに、ストーリー的にも音楽的にもシリアスになるということで、シリーズも変わるから作家も変えようという話にもなったそうなんですが、やはり和楽器の要素が欲しいから、とお話をいただいたんです。そこで六三四Musashiのプロデューサーの小針克之助さんと「こういう話があるんですけど」と相談をしまして。そうしたら「良い話じゃん。お前に任せるよ」ということで、『疾風伝』以降は僕を中心に、あれやこれやと20年やらせていただいています。

高梨康治

高梨康治

――喧噪の中にあるような和楽器と威勢のいい男性たちの声、そしてラウドに響くヘヴィなロックで紡がれるメインテーマは、それこそシリーズを越えて世界中で愛される1曲。20年を共に歩んできたこの曲への想いをお聞かせください。

高梨 あの尺八の旋律を、プロデューサーの小針さんが持ってきてくださって。それを六三四Musashiでスタジオに入って、ああでもない、こうでもない、とアレンジしていった曲なんです。だから僕が作ったというよりも、小針さんが最初にメロディを持ってきて、それをバンドアレンジしたことでできた曲です。ただあの曲は『疾風伝』になってから一度封印されているんですよ。

――そうでしたか⁉

高梨 しばらく出てこなかったんだけど、「忍界大戦篇」になったときに流れたんです。そのときにはもう小針さんが亡くなられていましたし、僕にとっても思い出深い曲だったので、スタッフの方たちに「あの曲をもう一回復活させられませんか?」とお話をさせていただき、最終章に新たにレコーディングし直したんです。そのときにはもう離れてしまった六三四Musashiのメンバーも呼んでのレコ-ディングで。小針さんの持ってきたあのメロディを、ナルトの物語の最初と最後にやれたことが僕的にはとても印象深いです。最初にモチーフをくれた小針さんの想いと、『NARUTO』の音楽を始めたときのメンバーが再集結できた。そこにはドラマがあったなと思います。ナルトとサスケがようやく会えたような、そんなドラマが音楽の中にもあったので、思い出深いですね。

――『NARUTO』を愛する人たちの傍には、常に在った1曲ですよね。

高梨 それを世界中の人たちが感じてくれていたんだ、と思うと胸が熱いです。そもそも僕はバンドマンなので、海外のバンドと接する機会もあるんですけれど、昔に自分がCDを買ったりライブを観に行ったりしていたようなバンドの人たちが「『NARUTO』の曲、聴いていたぜ!」と声をかけてくれたり「大好きなんだ!」って言ってくれるんです。『NARUTO』が繋いでくれて、たくさんの人との出会いになりましたし、世界中の人が20年もの間聴き続けてくれたことも素晴らしいことだなと思っています。

ナルトからボルトの時代へ――時の進んだ木ノ葉の里に流れる音楽とは

――そんなナルトの物語と共に歩んだ時間の先に、彼の息子であるボルトの物語の音楽を作られることとなりました。木ノ葉の里で時代が先に進んでいるのと同じく、高梨さんの作る音楽でも時代が進んでいる感じが出ていました。制作する際に意識されたのはどんなことでしたか?

高梨 『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』(以下、BORUTO)になるときに、アニメ制作側の意図で一度和楽器を封印しまして。絶対に使ってはいけない、ということではなかったのですが、『BORUTO』では新しい世代になるからロックの中にもっと電子音楽を取り入れることで、時代が変わったな、テクノロジーが入ったな、ということを音楽でも表現したいというご依頼だったんです。それで『BORUTO』の放送開始時点では和楽器の使用と、和旋律も抑えたんです。そこで、個人的には音楽にモダンさが入りました。スタート地点では和っぽいテイストに振っていたものを違う方向にしていたのですが、途中からはナルト世代のメンバーがたくさん出てくるようになって、サスケが活躍もするようになったところで和楽器が解禁されて。『BORUTO』の途中から和楽器や和旋律が復活しているんです。そういった制作サイドの思惑も楽曲には反映されていました。

――実際に木ノ葉の里も、“里”というより“街”というふうに近代都市化していましたしね。

高梨 そうなんですよ。それでシーケンスの成分が入って、キーボードが前に出てくるような音になり、泥臭さが減っていったところもありました。

高梨康治

――制作サイドの変化はありましたか?

高梨 音響監督が変わったことでの変化はすごく感じています。『NARUTO』はえびなやすのりさんでしたが、『BORUTO』では名倉 靖さん。現在の座組の皆さんも、すごく理解を示してくださいますし、音楽を尊重してくださるんですよね。自由にやらせていただいています。

――高梨さんご自身がこだわったのはどんなところですか?

高梨 『BORUTO』に変わるときには作家を変える、という選択肢もあったと思うんです。それでも僕を使ってくださったということは、根本は変えないで、ということなのかなと思っていたんです。ガラッと変えたければ別の作家さんも選べたと思うので、その根本を変えずに新しくすることを目指しているのかなと思いました。『NARUTO』はそもそも泥くさい物語なので、そこでの熱さや人間味や温かみはサウンドの中にずっと残していくことは普遍的にやってきましたね。

――それこそ、時代が変わろうとも木ノ葉の里に生きる人たちの芯にあるものが変わらないように……。

高梨 火の意思を継ぐという想いで、僕もやっています。そしてスタートの段階での気持ちですね。プロデューサーの小針さんは、それこそ日本で最初に和楽器のバンドをプロデュースされた方ですが、その小針さんが「和ロックを世界に持っていきたいんだ」と僕らがまだ若いバンドマンだったときから言っていたので、それを『NARUTO』で叶えることができた。それこそ柱間の意思を引き継いでいくように、僕らも走ってきたので、そこで木ノ葉の物語ともリンクするなと思っています。

高梨の推しキャラはナルト、ミナト、そしてイタチ

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