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INTERVIEW

2023.08.13

SawanoHiroyuki[nZk]の新曲は、『七つの大罪』、そして岡野昭仁(ポルノグラフィティ)との大団円ソング!澤野弘之が語る「odd:I」の魅力。

SawanoHiroyuki[nZk]の新曲は、『七つの大罪』、そして岡野昭仁(ポルノグラフィティ)との大団円ソング!澤野弘之が語る「odd:I」の魅力。

2014年のTVシリーズより澤野弘之が音楽を担当してきた人気シリーズ『七つの大罪』。その最新作となる映画『七つの大罪 怨嗟のエジンバラ 後編』がこの8月に公開となり、同時にその主題歌となる澤野のボーカルプロジェクト・SawanoHiroyuki[nZk]による新曲「odd:I」も発表された。本作はこれまで『七つの大罪』シリーズで、澤野とタッグを組んだ楽曲を発表してきたポルノグラフィティの岡野昭仁をフィーチャーし、一方で作詞では澤野がプロデュースを務めるSennaRinを迎えるという刺激的な布陣での1曲。今回は『七つの大罪』と岡野という2つの関係性から導き出された壮大なミディアムナンバーが生まれた背景を、そして自身のこれからについて聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一

僕と岡野さん、僕と『七つの大罪』という2つの大団円

――澤野さんが劇伴も手がけるNetflixで配信中の映画『七つの大罪 怨嗟のエジンバラ』ですが、XAIさんを迎えてSawanoHiroyuki[nZk]として主題歌(「LEMONADE」)を手がけた前編に引き続き、後編の主題歌も[nZk]が担当することになりました。『七つの大罪』も2014年の最初のTVシリーズから続いて、非常に長い付き合いになりましたね。

澤野弘之 もう来年で10年になるんですよね。『七つの大罪』と関わった当初はそこまで長くやる作品だとは思っていなかったので、それは『進撃の巨人』もそうですし、今度新作をやる『青の祓魔師』もそうですけど、こんなに長く作品に携わることができるんだなと意外に思う一方で、幸せなことだなと感じますね。

――これまで劇伴のほかにも主題歌でも関わられてきたシリーズですが、今回の「odd:I」は[nZk]として、こちらも『七つの大罪』とは縁深い岡野昭仁さん(ポルノグラフィティ)を迎えての楽曲となりました。

澤野 元々今回の話をいただいたときに、前編・後編の主題歌を[nZk]で、というお話をいただいていて、前編は女性ボーカルで後編は男性ボーカルでという制作サイドの意向があったんですよ。それでこれまで岡野さん名義で『七つの大罪』の主題歌で自分も関わらせていただける機会があったので、今回は[nZk]名義で岡野さんに参加してもらって主題歌をやれたら、『七つの大罪』の流れ的にもドラマ性があると思ったし、僕もやってもらいたいなという気持ちがあったので、岡野さんにオファーしました。

――たしかに過去に岡野さんと澤野さんは「光あれ」「その先の光へ」と『七つの大罪』の主題歌を担当してこられましたが、そうした歴史もあっての今回の「odd:I」。澤野さんのなかでも岡野さんとの制作でどんなビジョンが見えていましたか?

澤野 曲に関しては前編とは変わってスローテンポの曲がほしいという制作サイドの要望があったんですね。それと岡野さんとはこれまで岡野さん名義の楽曲や、[nZk]に最初に参加してもらった曲(『R∃/MEMBER』収録「EVERCHiLD」)もテンポは速くない曲ですけど、基本的にはちょっとリズムが立っている曲でお願いしてきた部分があったので、スローテンポの曲を岡野さんに歌ってもらったことがなかったんですよね。そういった意味でも岡野さんに歌ってもらうのは面白いんじゃないかなとは思っていましたね。

――たしかに今回の「odd:I」は、冒頭からほとんどビートがない、ピアノ主体のサウンドに岡野さんのボーカルからスタートしますよね。そこはこれまでと違うところかなと。

澤野 せっかく岡野さんとご一緒するんだったら同じことをやるよりも、常にお互いにとって「こういう感じにもなるんだね、こういうサウンドになるんだね」みたいなものを感じ合えるような制作にしたいなというのがあって。あと、『七つの大罪』は次の『黙示録の四騎士』も控えていて、今回はそこに繋がるものではあるんですけど、ひとまずの区切りとなる作品だったので、こういったバラード曲をやれることはすごくベストな形だったんじゃないかなと思っています。

――たしかにサウンドとしても大団円感もあるような広がりがありますよね。

澤野 そうですね。もちろん『七つの大罪』のファンの方たちには、僕と岡野さんの関係というより、純粋に作品としての終わりの楽曲として聴いてくださるのかもしれないですけども、僕にとっては僕と岡野さんとのこれまでの流れと、僕と『七つの大罪』という関係性の2つの意味での大団円というか、すごく感慨深い楽曲になった気がしますね。

――たしかに、サビでのシンセの鳴りは「その先の光へ」を思わせるものがあって、これまでの歴史を感じさせる一方で、改めて冒頭のほぼピアノとボーカルという音数を抜いた構成も印象深くて。

澤野 ありがとうございます。 あそこはめちゃくちゃ意識したってわけではないんですけど、昨今の海外のサウンドってものすごいシンプルにしているじゃないですか。そこに自分も影響を受けている部分はあって。なのでこれは本当に結果論なんですけど、岡野さんと僕との関係性も考えると、ピアノという僕が演奏する楽器と岡野さんのボーカルという2人だけの空間を作っている、みたいな演出も偶然だけどできたんだなって思います。

ベテランと新人、その間の自分という3人だからこそ作れた空間

――ソングライティングの面においては、澤野さんがプロデュースを務めるシンガーのSennaRin(クレジットは「茜雫凛」名義)さんが作詞を担当されていますね。

澤野 以前も話したことがあるかもしれないですけど、僕は彼女が書く歌詞がすごく面白いと思っていて。面白い言葉の繋げ方をするし、それがすごく魅力的で音に気持ち良くはまっているというか、そういう彼女の作詞のセンスっていうのは、ボーカルと同じくらいリスペクトしている部分があって。だからどこかで彼女自身が歌わない曲でも、日本語の歌詞がメインになる曲を彼女に書いてもらうのは、[nZk]にも面白い広がりが生まれるんじゃないかなという期待があったんです。それで今回岡野さんの曲でお願いしてみようとなって。いわゆる大ベテランと新人という関係でどんな科学反応が起きるのかを見たかったというのもありましたし。

――ちなみに今回、澤野さんがRinさんにオファーしたときの彼女の反応はいかがでしたか?

澤野 この作品が決まる前から、彼女には「[nZk]で日本語メインの歌詞を書いてみたいって思う?」みたいなことを聞いていたんですよね。そしたらあの明るい感じのノリで「やりたいですーっ!」とは言っていて(笑)。それである日「こういう曲があるから書いてみない?」って言ったら「是非やります!」みたいな感じだったんですけど、さすがにボーカルが岡野さんって言ったときには驚いてましたね。もちろん『七つの大罪』の曲だから作品の内容を意識しながら書いていましたけど、岡野さんが歌うということで、本人なりに意識して言葉をチョイスしたところもあったみたいなことは言っていましたね。

――もちろん作詞の提供というのはRinさんにとっては大きなチャレンジだったと思いますし、一方澤野さんもプロデューサーとして彼女の成長を伺える瞬間でもあったのかなと。

澤野 そうですね。だからこういう経験が彼女の活動の刺激にもなってくれたらいいなと思います。ちょっと立場は違うんですけど、僕の尊敬しているASKAさんも若い頃には「ボヘミアン」(1982年にASKAが歌詞提供したヒット曲)とかを書いていたし、そういうのは今のASKAさんにも重要な経験だったんだろうなって思ったりすると、Rinちゃんにとっても作詞で関わることで、また1つ彼女の感覚が広がったらいいんじゃないかなと思って。

――Rinさんの歌詞はどう感じましたか?

澤野 改めて、Rinちゃんの書く歌詞は自分にはまったくないセンスだなっていうのを思い知らされたというか。またそれに対する岡野さんの、色んな経験を積んできたからこその歌やエモーションというのもありますよね。岡野さんって、すごく経験を積んできた大御所感のある歌い方をする人って思ってないんですよ。常に若々しいというとチープですけど、常にかっこ良くあるというか。もちろんデビューしてから本人なりに変わっている部分はあると思いますが、勢いは変わらないし、どんな楽曲に対しても、自分なりにアプローチしている。それはもちろんキャリアがあるからこそアプローチできる部分もあるかもしれないですけども、それを踏まえても若くあろうとするというか、かっこ良くあろうとする。それってすごく意識してるわけじゃないと思うんですけど、そのかっこ良さが伝わってくるボーカリストだなというのを見せつけられた気がしましたね。

――新しい世代のアプローチの歌詞に対しても対応できる柔軟さや声の魅力というのがあるわけですね。それを踏まえて、岡野さんとのレコーディングはいかがでしたか?

澤野 今回もディレクションをやらせてもらったのですが、いちばん最初の頃のような、すごくガチガチに緊張しながらやるのとは違って、単純に楽曲に対してどうやってアプローチするかというのを、話し合いながら進められた部分もありました。でも今回ちょっと新鮮だったのが、現場に作詞家としてRinちゃんにもいてもらったんですよ。その空間もちょっと新しかったですよね。彼女にも岡野さんの歌のすごさを感じてもらいながら、制作している時間は貴重だなと思いました。

――ベテランと若手というキャリアの異なるシンガーが共存する現場というのは澤野さんにとっても刺激的だったと。

澤野 それでいうと僕がそのちょうど間くらいの人間なんですよ。この3人だったからこそ面白い空間が作れたのかなって感じはしていますね。

次ページ:作曲家・プロデューサーとしてどう広げていけるかという1年

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