――MVは先ほどの通り、麻倉さんがやりたいアイデアがしっかり反映されていると思いますが、撮影はいかがでしたか?
麻倉 私のイメージいっぱい汲み取ってくださって、プラスアルファでクスっと笑えるような部分も色々作ってもらいました。撮影は私としては、ピカーっと晴れてる空の下で、みんなで踊って夏を楽しむようなイメージだったんですけど、梅雨の時期に入ってしまっていて、当日も雨が降ってて「終わった……」と思っていたんですけど、なんとか小雨のタイミングで撮影できて、映像は後から現代の技術でそれはもう素晴らしく晴れてるように仕上げていただいて、ひたすら技術に感心してました(笑)。でも今回の撮影は私だけじゃなくて、ライブでもお世話になってるダンサーの皆さんが来てくれて、一緒に踊ったり水を浴びたりしてすごく楽しい撮影でした。監督さんも私のMVをずっと撮ってくれている方なので、見知ったみんなとわちゃわちゃ遊んでる感覚で、とても楽しかったです。
――全体的にとても夏っぽくて素敵なMVなんですけど、1点だけ気になるのがパイナップルのくだりで、あれは、あの……一体何なんでしょう?
麻倉 あの、実は私もちょっとよくわからないんですけど(笑)。まず撮影時点では「パイナップルが動きます」とだけ説明されていて、日常の風景にファンタジー感というか、ちょっとコミカルな要素を加えてくれたんだと思うんですけど……あの挙動を見たら何なんだアイツって思いますよね(笑)。
――なんかイメージとか概念的なキャラなのかと思いきや、一番最後のシーンは明確に見られてることを意識してるじゃないですか。あれはどういう説明を受けて撮ったセクションなのかどうしても気になってしまって。
麻倉 撮影中は「サングラスをかけたらパイナップルが動き出します」とか、「パイナップルが浮かんできたら「コラー!」みたいに怒ってください」とか説明を受けていたんですけど、水中シーンの撮影でカメラマンさんがすごく寒そうだったんですよ。水温が低くて。それが心配で早く終わらせないとって必死で(笑)。撮り終わって完成した絵を見たら、アイツがサングラスのせいか思った以上に不審で(笑)。
――こういうキャラって、今までの麻倉もも世界観にあまりなかった要素だと思うんですよ。でもこういうマスコットキャラ少女マンガにたまにいますよね。恋してる主人公にちょっかい出してくるみたいな。
麻倉 あー確かにいますね。
――ファンの皆さんの反応も楽しみですね。ではカップリング曲「嫌いになれない。」のお話も伺いましょう。こちらはどういった意図でチョイスされたんですか?
麻倉 「シュワワ!」が夏で元気で王道っていう曲だったので、カップリングはちょっと大人っぽい夏の夜みたいなイメージで集めていただきました。私の「あしあと」っていう曲くらいから、チームの中で「チルい曲いいよね」みたいな流行があって、私は最初「チルい」の意味を知らなかったんですけど、今回もチルい曲で行きましょうみたいな流れになって、集めていただいた曲の中から、私が歌ってみたいなと思った曲を選ばせてもらいました。
――ジャンルで言うとローファイヒップホップ系の候補曲が集まってきたと。この曲を選んだ決め手は何だったんでしょう?
麻倉 単純に良い曲だな、良いメロディだなと思ったのもありますし、ラップも今までこんなにしっかりやったことはなかったし、自分の進化という意味でもこの曲がピンときて選びました。
――「あしあと」を聴いたときに、「こっちの方向に進んでくれるんだ」っていう嬉しさと驚きがあったんです。この方向性はチーム的にも狙っていたわけですね。
麻倉 そうですね。私も歌っていて楽しいですし。でも最初は難しくて、「Agapanthus」くらいの時期からちょっと囁くようなパートが増えて、どういう声量やマイクとの距離感で歌えばいいんだろうって試行錯誤して、こう歌えばこう聴こえるんだっていう感覚が掴めてきたので、まさにこういう曲をまた歌いたいなと思っていたんです。
――レコーディングに臨むにあたって、どんな主人公が思い浮かびましたか?
麻倉 年齢は「シュワワ!」の子と同じくらいで、表題曲の明るく王道な夏、カップリングのしっとりした夏の夜みたいに、女の子も対照的なイメージでした。「嫌いになれない。」の子は好きな相手のことを想う時に、あまり相談とかせず1人で色々考えちゃう子なのかなって思いながら歌いました。
――勝手な想像なんですけど、「シュワワ!」の子が主人公のマンガのサブキャラにいそうだなと思ってました。主役の子とは別軸で恋の話が進んでいく感じで。
麻倉 まさにそうですね。「シュワワ!」の子のクラスメイトだけど、そっちの輪には入ってないクールな女の子というか。
――麻倉さんの曲の登場人物って、もしも全員が同じ世界観の中で生きていたらと思うと、巨大な世界の大系ができて面白そうですね。
麻倉 確かにみんな年齢感も近いし、共通点は色々あるので、もし同じ世界線だったらって考えるのは面白いかもですね。
――麻倉さん楽曲の方向性的に、主人公はやっぱり10代くらいが多いですか?
麻倉 そうですね。基本的には高校生から大学生くらいですね。あまり大人に設定しすぎると雰囲気がディープになってくるのかなというのがあって、それは麻倉ももの世界観とはちょっとズレるのかなと。あくまでも少女のキラキラかわいい世界観を届けたいので、年齢も学生ぐらいに設定することが多いですね。
――あまり恋の倦怠感とかは描かないですよね。「シュークリーム」は珍しい切り口だなと思いましたけど。
麻倉 あの曲も発表するまではそんなにザワつかれると思ってなかったんですよ(笑)。確かに傍から見たら大丈夫?って思う恋でも、主人公は不満もあるけど日々幸せを感じてるし、基本的な世界感は他の曲とあまり違わないんじゃないかとは自分では思ってたんですけど……。
――そこに本人的な“麻倉もも”像に対する一貫性があるのは面白いですね。「嫌いになれない。」のレコーディングはいかがでしたか?
麻倉 これはもう本当にどうしようか悩んで、現場で組み立てていった感じでした。「シュワワ!」と違って、どれぐらいの距離感で歌おうとかのプランがフワッとしたまま現場へ行って、何回も歌って細かく調整して録っていくレコーディングでした。
――聴いていても、チームが目指していた「チルさ」と、曲の世界観のバランスが結構シビアそうだなと思いました。
麻倉 そうですね。確かにこの曲は気を抜くと大人っぽくなりそうですが、歌詞の中身は可愛い感じの語尾だったり、「リボンで可愛く閉じ込めた」みたいなワードが多くて、それを自由に歌えたので、あまり大人になりすぎずやり切れたのかなって思います。
――ちなみに、歌詞って最初からこの方向性だったんですか?しっかりと麻倉さんの世界観にフィットしていてすごいなと思ったんですけど。
麻倉 最初からこの歌詞だったんですよ。仮歌詞のままでいくケースって少ないんですけど、曲選びの段階からこの感じで来てました。最初はワンコーラスだけだったんですけど、「割とこのイメージですよね?」って言われて、私もこのイメージですってお伝えして2番以降を書いていただきました。
――以前から言われている通り、「ヤバい」とか「LINE」みたいな現代的な言葉も出てきませんね。今時の普通の高校生の女の子としては使われていても特に変じゃないのに。
麻倉 実は2番のサビの部分で、最初“ナチュラルな仕草でキスして”っていう歌詞があって、私としてはこの曲の中では特に違和感はなかったのでスルーしてたんですけど、チームの中でちょっとディープになりすぎないかみたいな話になって、最終的に変えていただいたんです。
――言われてみれば、麻倉さんの曲でこれまで「キス」という単語が出てきたことってありましたっけ?
麻倉 「パンプキン・ミート・パイ」と「ユメシンデレラ」で使っているんですけど、どっちもキスを否定する形なので、主人公がキスするような描写はないんですよ。それで今回の曲もあくまで夏の夜にリラックスしてみたいな方向性なので、シチュエーション的にちょっと違うということで変更になりました。
――では今後使うとしたら本当に必殺技を使う時なんですね。
麻倉 ここだー!みたいなタイミングで使えたらいいですね。
――今後の楽曲や活動において、他にやってみたい世界観や物語はありますか?
麻倉 私としては変わったことをしようとか、今までやったことないことをやろうみたいな野望は持っていないんです。基本的に私の好きな世界観や主人公像が結構決まっていて、タイプは似ているかもしれないんですが、それぞれ存在するシチュエーションがみんな違うので、あんまり被りとかを気にしたこともないですね。
――長く活動を続けていると、転換点としてディープな世界観を歌ったり、イメージをガラっと変えてびっくりさせようみたいな方向に行きがちですが、麻倉さんチームは全員で一定のラインを守り続けてるのが面白いですね。
麻倉 でも今回はコンセプト的にこうなっただけかもしれなくて、今後もしかしたら誰かが言い出すかもしれないですね。
――麻倉さん的には、恋愛という軸も取っ払ったりして、全然違う角度の表現をしたいとかもないですか?
麻倉 最初に右も左もわからないところからソロが始まって、色々模索してやっと今に行き着いたところなので、ここが心地良いというか、まだこの世界感で歌っていきたいですね。でも何というか、面白い曲みたいなのは歌いたいんですけどね。
――面白い曲というのは?
麻倉 確かラジオのメールで教えてもらったんですけど、どなたかのライブで開演前にみんなでラジオ体操第一をやるらしいんですよ。
――あー、ゆずですかね?
麻倉 そうかもしれないです。確かにライブってみんなも動くし、準備が必要だしそれ良いなって思って。そういう体操の曲みたいなのを作って、ライブ前に流しといてみんなが勝手にやってるみたいな。アルバムとか麻倉ももの作品内に入れるのはちょっと考えますけど(笑)。あとはお勉強の曲、学生さんが聴いて覚える元素記号の曲とか。そういうちょっとした遊びっぽい曲は楽しそうだなって思いました。
――本当にまったく違う角度でしたね(笑)。でも確かに欲しいですし、ファンにも喜ばれるし、麻倉さんにバッチリ似合う気がしますね。麻倉さんがお姉さんになっていき、リスナーに年下の学生の子も増えてきてっていうなかで、そういうアプローチは素敵ですね。
麻倉 やっぱり勉強もただやるより、歌になっていたほうが暗記もしやすそうですし。
――シングルの話を聞きに来て思わぬアイデアまで聞けてしまいました。ありがとうございます。
●リリース情報
「シュワワ!」
8月16日発売
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
価格:¥2,300(税込)
品番:SMCL-826~827 BD
【通常盤(CD)】
価格:¥1,400(税込)
品番:SMCL-828
<CD>
1.シュワワ!
作詞:宮嶋淳子 作曲・編曲:塩野 海
2.嫌いになれない。
作詞:M!SATO 作曲・編曲:宮川 麿
3.シュワワ!(Instrumental)
4.嫌いになれない。(Instrumental)
<BD>
「シュワワ!」MusicVideo
「シュワワ!」TV SPOT 15sec+30sec
麻倉もも Official Site
https://www.sonymusic.co.jp/artist/asakuramomo/
麻倉もも Official Twitter
https://twitter.com/Asakura_Staff
麻倉もも Official YouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCeO-6koTkcLNKLFcCiW1SGQ
SHARE