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INTERVIEW

2023.08.02

最新アルバム『LEAP』が完成!初の全曲書き下ろしとなる本作に込めた想いを栗林みな実に聞く

最新アルバム『LEAP』が完成!初の全曲書き下ろしとなる本作に込めた想いを栗林みな実に聞く

環境を変えることで世に出すものも少しずつ変化を

――「マロンな両想い」はファンへのメッセージソングですよね。

栗林 そうですね。私はファンの方を「栗家族」って呼ばせてもらっているんですけど、そのファンのみんなのことを歌にしたくて作りました。20年やらせてもらった感謝の気持ちを込めて。

――これまでも感謝の気持ちを幾度か曲に込められてきたと思いますが、今回は恋愛風に描いたところが違いですね。

栗林 確かに。そこはポイントですね。今までよりも直接的ですし。私はいつも、ファンのみんなとは両想いでいたいという話をしているんです。「両想い」ってすごくいい状態じゃないですか? 究極を言えば、「お互いが片想い」みたいな状態が一番理想ではないかと思っていて、ことあるごとにそのことを話しているので、サビにも「ちゃんと片想いしてる」と入れました。でも、私は「人生は楽しい!」みたいなマインドで生きていないので、実は意識しないとこういう曲は作れないんですよね。私が作ったアニソンに「あんりある♡パラダイス」という曲があるんですけど、それと方向性は同じですね。「すごく楽しい曲ってどういうふうに作ったらできるんだろう?」というところを考えて、まずリズムから決めました。めっちゃ楽しそうなリズムじゃないですか?(笑)。

――自然にしているとどういう曲ができるんですか?

栗林 「Crystal Energy」ができます(笑)。

――なかなか激しい曲ですね。

栗林 はい、「運命を背負ってる」曲になっちゃうんです。そういう曲が好きでもありますけど、「得意」という感覚ですね、マイナー調のドラマチックな曲が。あとは「君の中の英雄」みたいな。やっぱり、意識しないとすぐにコードが暗くなるんですよ。だからそのあたりを工夫して、明るく、ふわっとして、ときめきを感じてもらえるようなコード進行をすごく意識していました。

――今回はフルオリジナルアルバムということで、タイアップと違い、全曲を自由に作ることができたと思いますが、需要とかバランスとかを気にせず、「今の自分の気持ち」を込めたみたいに衝動で曲を作ってみるということは考えなかったですか?

栗林 なかったです。私、気分で曲を作ることってないんですよね。でも10年以上前、そういう話を「TIGHT KNOT」ツアーのMCでしたとき、ライブのサポートバンドでピアノとコーラスをしてくださっている(佐々木)真里さんにも言われたことがあります。

――「作ることはないの?」って。

栗林 そうです。私が曲を作るときは必ず理由や理屈が存在していて。多分、100%気分で音楽を作ったことはないと思います。

――生粋の職業作家ということですよね。

栗林 そういう意味ではアニメソングの仕事は本当に向いていたと思います。多分、私にとって音楽って小さい頃から「やらされるもの」だからなんですよね。「もっと練習しなさい」「遊びに行っちゃダメ」という感じで「やりなさい、やりなさい」だったから。音楽って遊び心を持つべきものだとはすごく思いますけど、全くその辺が育っていないんですよ。気分で「カブトムシのうた」を作るとか、そういうところを通ってきていない。だから、音楽をやっていて楽しいかと言われたらすごく怪しい(笑)。

――20年目の衝撃の告白ですね(笑)。

栗林 例えば、中学校や高校で「歌いたいからバンド組みました」みたいな始まりだったら、「音楽って楽しい」しかないじゃないですか? でも、親の目がある中でやらなきゃいけないものとして長く続けていたので。それもあって「声優になりたい」だったんですよね。音楽にいい思い出がなかったし、音楽で食べていくなんて夢みたいなことだと思っていたから。「夢みたいなことを20年やらせてもらって今さら何言ってんだ」って話ですけど(笑)。

――では音楽となる「種」については、アニソンでは作品から、オリジナルでは友達や周囲の人からもらっているということですね。

栗林 そうですね。そういう意味では一番アーティストっぽい作り方をしたのは「♡に気をつけて。」かもしれない。

――ではいつか、栗林さんの内部から湧き出た衝動で作られた曲も。たくさんいる栗林さんのファンも聴きたいでしょうし。

栗林 そうですね。本当ですね。

――「マロンな両想い」は編曲がh-wonderさんですよね。

栗林 はい。h-wonderさんも初めてお仕事をご一緒したんですけど、お名前は色々なところでお見かけしていましたし、いつかお願いしたい憧れの一人でした。アレンジを聴いた瞬間にベテラン感というか、「仕上がっている」と思いましたね。ベテランといえば飯塚(昌明)さんもですけど、今回のアルバムでは全10曲で幅広い年齢の方に色を添えていただいて、本当にありがたいと思いました。

――飯塚さんにアレンジをお願いするというのは最初から決めていましたか?

栗林 いえ、ディレクターさんがお願いしてくれたんですよ。私も、一緒にやりたい気持ちは常にあるんですけど、今はGRANRODEOとして活動されているので、簡単にお願いできないということは周りを見ていて感じていました。

――ゲーム『君が望む永遠』(以下『君望』)に携わった仲間として20年以上の付き合いがあっても遠慮してしまうものですか?

栗林 そうですね、アーティストへの発注、ということになるので。そういった中でやっていただけたことになってとても嬉しかったです。しかも、この(楽曲の)物語の主人公は、すごく傷つきやすくて、自分の繊細な部分とずっと戦っているような女の子で。さっきの話に少し繋がりますけど、活動初期から作っているような、自分でも持ち味だと思っている曲調なんですよ。そういった曲を飯塚さんにアレンジしてもらえて、『君望』感を出せたと思っています。『君望』はアニメ化してから今年で20年になります。新しさもありますけど当時の空気感も詰め込んだ楽曲に仕上げることができたので、みんなに懐かしいと思いながら聴いてもらえる曲になったかと思います。そして、ギターソロが本当に素敵なので、皆さんにも聴いていただきたいです。「飯塚さん、現れました!」っていう感じですね。

――栗林さんはライブでもCD音源と同じクオリティのボーカルを聴かせていただけるシンガーだと思いますが、逆に今回のアルバムを聴かせていただいたとき、研ぎ澄まされた高いクオリティのままでライブ感もまとっていると感じました。今回のアルバムレコーディングはどのような意識で臨まれましたか?

栗林 今回、「find oneself」以外はディレクターさんと伊根さんがそれぞれ半分ずつくらい分け合って録ってくれたんですね。それがすごく面白くて。

――面白いというのは?

栗林 世代が異なる方たちなのでチョイスが私と違うんですよ。レコーディングって、何パターンも録りながらOKテイクを選んでいくんですけど、そうなると、選ばれるかどうかはディレクターのセンスになるわけですよね。そのOKテイクの選び方がエモーショナルというか、「私だったらそれは多分選ばない」っていうテイクが結構選ばれたりして。そこが面白かったですし、「私は落ち着いちゃっているな」と思いました。私は平均的な表現のものを好んでしまうタイプなんですよね。

――全体的に合格ラインを満たしたテイクを選ぶような?

栗林 そう。一つひとつのテイクが同じ歌にはならないように録っているので、「どれを選ぶのかな?」と思いながら作業していたんですけど、しっかり表現しているものが選ばれた気がしました。様々な人たちとの出会いによって、世に出すものが少しずつ変わっていくというのはすごく面白いですよね。事務所のみんなと作れて本当に良かったです。

――そこでも集団であることの強みをそこでも実感したわけですね。

栗林 本当にそう思いました。「自分」は一人しかいないので難しい部分がありますし、環境を変えることは大切だと思いました。新しい自分を発見してもらえましたからね。(事務所に所属しなければ)写真集だって絶対に出さなかったと思います。

――あれは衝撃でしたね。ランジェリー姿は誰の発案ですか?

栗林 誰だろう? あ、マネージャーらしいです。本当に、周りの方もみんな応援してくださったからこそできたと思いますね。写真集も記念になりましたし、アルバム、ツアーも含めて、20周年という節目を大切に考えていただき、日々支えてくれている事務所のスタッフさんたちに感謝の気持ちでいっぱいです。


●リリース情報
『LEAP』
8月2日発売

■mora
通常/配信リンクはこちら

価格:¥3,300(税込)
品番:CNKA-0011
レーベル:CloudNine

<収録楽曲>
01. LEAP
作詞・作曲:栗林みな実 編曲:小高光太郎
02. ♡に気をつけて。
作詞・作曲:栗林みな実 編曲:前口ワタル
03. 曖昧♪モーメント
作詞・作曲:栗林みな実 編曲:三好啓太
04. Prism Girl
作詞・作曲:栗林みな実 編曲:伊根
05. 星の息吹
作詞・作曲:栗林みな実 編曲:太田貴之
06. seed of hope
作詞・作曲:栗林みな実 編曲:田熊知存 (Dream Monster)
07. find oneself
作詞・作曲:栗林みな実 編曲:和賀裕希
08. マロンな両想い
作詞・作曲:栗林みな実 編曲:h-wonder
09. 永遠の少女たちへ
作詞・作曲:栗林みな実 編曲:飯塚昌明
10. voice again
作詞・作曲:栗林みな実 編曲:Saku

●ライブ情報
栗林みな実LIVE TOUR 2023 “voice trajectory”
チケット発売中

詳細はオフィシャルサイトをチェック!

<栗林みな実 プロフィール>
2001年に発売された PC ゲーム『君が望む永遠』OP 主題歌「Rumbling hearts」でデビュー。
のちに、TV アニメ『君が望む永遠』OP 主題歌「Precious Memories」でアニソンシンガーとしての歴史がスタート。
これをきっかけとして数々の TV アニメ・ゲーム主題歌を続々と担当し、 海外でのライブなどにも精力的に活動。
多くの作品で作詞・作曲を担当し、作家としてもその才能を発揮している。
2021 年には歌手デビュー20周年、2023 年にはアニソンシンガーとして 20 周年を迎え
今後もまだまだアニソン界の女神として進化し続けていく。

関連リンク

栗林みな実オフィシャルサイト
http://kuribayashi-minami.jp/

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