声優・峯田茉優が、8月2日にミニアルバム『WHO ARE ME?』でアーティストとしてソロデビューを飾る。力強く歌われた、ハードなデジタルロックであるリード曲「WHO ARE ME?」を筆頭に、これまで演じる機会の多かった明るく元気なキャラクターとしての歌とは異なる魅力を感じられる楽曲を6曲収録した。今回は各楽曲自体についてはもちろん、アーティスト活動についての想いも含めて、峯田自身にたっぷりと語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
――まずは、アーティストデビューのお話を最初に聞いたときの、率直な感想からお教えいただけますでしょうか。
峯田茉優 去年の5月頃にマネージャーさんからメールで第一報をいただいたんですけど、そのときちょうど友達とごはんを食べていたところだったので、「……いー!?!?!?」って挙動不審になっちゃって。理由を言えなかったので、すごく心配されたのを覚えています(笑)。ただ、私は声優になりたいのと同じくらいアーティストとして歌をうたっていきたいという夢も持っていたので、「所属6年目にして、やっと夢が叶うんだ!」と思って。それは率直に嬉しかったですね。
――嬉しさと、それが届いたときの衝撃とがあった。
峯田 いやもう、衝撃は大きかったです!マネージャーさんにはこれまで面談などで「歌をやりたい」というお話をしたことがあったので、実際に資料を見せていただいたときにも「もし峯田が本気でやりたいならやろう」と言ってくださって……もちろんまったく迷いなく「やります」とお答えしました。だから、不安とかはまったくなかったですね。やっぱり自分の力だけではやりたいことを全部叶えられないので、不安よりも「このチャンス、絶対掴み取ってやるぜ!」という気持ちでした。
――そのときの資料には、方向性の提示などはあったんですか?
峯田 いや、それはありませんでした。そのあとの打ち合わせのなかで、私が好きな曲やジャンルをお話させていただいたうえで、それを反映して制作していったんです。あとは、まずミニアルバムという形でCDを出させていただけるということで、「いきなり6曲も歌えるなら、どうせだったら今まで皆さんが見たことのないような、色んな表情の峯田を見てもらいたいな」という気持ちもありました。
――たしかに、6曲ともジャンルがそれぞれ異なるものになっていますね。
峯田 その結果、すごく味付けの濃いアルバムになったように思っています。ただ、やっぱりアルバム全体で言ったら、リード曲兼タイトルチューンの「WHO ARE ME?」が一番引っ張っていってくれている印象が強いんですよね。それは、この曲にはアーティストとしてまだ未知数である峯田茉優の「こういう姿になっていきたい」という理想の、“カリスマ性溢れる強い女性”に憧れる姿を重ねているからなんですよ。ほかにも、6曲目の「ENTR’ACTE」も「突き進んでいこうぜ!」っていう感じのかなり力強い曲になっていますし……やっぱり、全体的に強いアルバムですよね(笑)。
――「ENTR’ACTE」が本作のラストにくることで、ファンとしてはここから先の峯田さんの活動への期待や楽しみが、より持てると思います。
峯田 そうなんですよ!特に「ENTR’ACTE」には、まさにその通り“これから”に続いていってほしいという想いを込めたんです。この「ENTR’ACTE」という言葉は、私が元々大好きなミュージカルの、第一幕と第二幕の間に流れる曲……という意味のオペラ用語で。それをアルバムの最後に持ってきたのは「次に繋がるぜ」という意味を込めたからなんです。次にどういう形でCDを出せるかはわからないんですけど、みんなに期待してほしいなという想いを込めて、一番最後に持ってくることにしました。
――その狙い自体もそうですし、歌声の面からも力強さやカッコよさを感じられる曲になっていますよね。
峯田 そうですね。特にサビは音程がずっと高いですし、歌詞も「心臓を刺してきっと頂上へ」みたいに、だいぶ言葉が強い曲でもあるんですけど(笑)。でもレコーディング中、歌いながら私自身もすごく勇気をもらえた曲なので、歌詞の意味を味わいながら聴いていただけたら、皆さんにも勇気を与えてくれる存在になるんじゃないかなと思っています。
――特にどんな部分から、勇気やメッセージ性を強く感じましたか?
峯田 私自身がそれを特に強く感じたのは、Dメロの部分でしたね。ここはメロディに乗せて“歌う”というよりも、ほぼ台詞という感じで……相手の顔をがしっと持って、「いいか!前に進むんだぞ!」と言っているくらいの強さを感じたので(笑)、ここは一番気持ちを込めて歌いました。
――では続いて、リード曲「WHO ARE ME?」についてもお聞かせいただけますか?
峯田 はい。私この曲をいただいたとき、悔しかったんですよ。
――悔しかったんですか?
峯田 もちろんめちゃくちゃ嬉しかったんですけど、「……理想どおりじゃん!私の超好み、どストライクじゃん!なんでわかるの!?」とも思って(笑)。答えを突きつけられたような感じがしたからなんです。
――楽曲のオーダー時にイメージなどを伝えられてはいたけれども。
峯田 はい。今回はどの曲もWEARTさんというクリエイターチームの方々が作ってくださったんですけど、私は「魔法使い集団だな」と思っているんですよね。“音”って目に見える形はないですけど、「私の夢がこうやって、そこに存在する形で1個叶った!」と感じられたんです。だから私、このアルバムのことを勝手に「宝石箱」と呼んでいるんですけど、そのなかでも「私が身にまとえる、もっと輝くためのジュエリーが1個出来上がった!すごーい!」と思ったんです。でもだからこそ、さらに何度もワガママを言ってしまったんですよね……(笑)。
――より細かく、調整のお願いをしていかれた。
峯田 そうなんです。「WHO ARE ME?」は、歌詞やメロディを「ここはこうしてください」とお願いするようなやり取りが、一番多かったんです。歌詞も部分的に、自分で考えさせてもらった場所もありますし……その作業自体もキャラソンにはない初めてのことだったので、「おもしろーい……!こうやって、曲って作られていくんだ!」というワクワクをいっぱい感じました。
――ちなみに、キャラソンとの違いは歌うなかでも感じるものでしたか?
峯田 結構大きいように感じています。私自身としては、今までやらせていただいていたカラオケ配信のなかで色んな歌い方をしてきていたのもあって、歌いづらさみたいなものは特になかったんですけど、やっぱり「WHO ARE ME?」が初解禁されたときにはびっくりした方も多かったような気がしていて。今まで元気だったり天真爛漫なキャラクターのキャラソンを歌うことが多かったのもあってか、「キャラソンの歌い方のほうが好き」という方もいっぱいいたんですよ。でも私は、それはそれでいいと思っていて。キャラソンが好きな方はキャラソンをいっぱい聴いてくれたら、私もそのキャラクターも嬉しいし、それとはまた違った峯田自身の歌声を「好き」と言ってくださっている方には、この1枚の中で色んな峯田の可能性を感じていただけたら嬉しいです。
――その歌声もただカッコいいだけではなくて、1曲の中で様々な表情が覗いているように感じました。
峯田 ……そうなんですよ!それは正直、狙っていました(笑)。そうなったのは、この曲のどこを切り取っても印象に残ってほしいからなんですよね。だってこんなに素敵な曲なのに、例えば「サビはめっちゃすごいけど、それ以外の部分ってどんなんだっけ?」みたいに思われたら、悔しいじゃないですか?だから全部印象に残ってほしくて、だいぶクセは強めで歌いました。
――歌詞やサウンドの流れを汲み取ったうえで、印象付けられるようなトライをされていった。
峯田 そうですね。そういう考えを持てたのは、声優として歌ってきた経験が大きな役割を果たしているからなんですよ。例えば「笑顔」という歌詞があったら、声だけでもそのキャラクターが思いっきり笑っている姿が伝わるように歌おうとずっと心がけてきたので、今まで歌わせていただいてきたキャラクターたちからちょっとずつヒントも得たりしながら……アーティストとして歌わせていただきましたけど、ちょっとお芝居のような要素もあるというか。言葉を読み取って感情を乗せているというのを、「WHO ARE ME?」1曲だけでもかなり感じていただけるんじゃないかなと思います。
――本当に歌唱表現としておいしいポイントもたくさんある曲なので、リリース後には聴き込んだ方からの感想がどんどん増えていくんでしょうね。
峯田 たしかに。でも実際に生で歌うとなったら、また違った歌い方をしそうな気がしているんですよね……(笑)。
――その場の雰囲気や前の曲からの流れによって、ステージ上での感情って違うものですから。
峯田 そうなんです。だから毎回変えていきたいなぁって。実際お話ししている時点ではまだ発売前なのになんなんですけど……「WHO ARE ME?」をこれから先、過去のものにしたくないんです。それくらい愛を注いだ曲なので、一緒に成長していけたら嬉しいですね。
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