リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2023.07.28

『ひろがるスカイ!プリキュア』ボーカルアルバム発売記念!作曲家・森いづみが振り返る『プリキュア』シリーズとの歩みと、『ひろプリ』愛に満ちたキャラソン制作秘話

『ひろがるスカイ!プリキュア』ボーカルアルバム発売記念!作曲家・森いづみが振り返る『プリキュア』シリーズとの歩みと、『ひろプリ』愛に満ちたキャラソン制作秘話

新譜『ひろがるスカイ!プリキュア』(以下『ひろプリ』)ボーカルアルバム~FLY TOGETHER!!!!!~が7月19日にリリースされる。その構成は、7曲のキャラクターソング、3曲のプリキュアシンガー歌唱曲に、TVサイズのOP・ED主題歌と名曲「シェアして!プリキュア」の新録曲を合わせた全13曲(+ボーナストラック2曲)。今回は、全キャラクターソングで作曲または編曲に携わったコンポーザー・森いづみへのインタビューを通して、『ひろプリ』ボーカルアルバムの魅力に迫る。『ヒーリングっど♥プリキュア』(以下『ヒープリ』)から『トロピカル~ジュ!プリキュア』(以下『トロプリ』)『デリシャスパーティ♡プリキュア』(以下『デパプリ』)『ひろプリ』と4作連続で『プリキュア』シリーズに楽曲を提供し、20周年記念作『映画プリキュアオールスターズF』でも温故知新を具現化したようなOPテーマ「For “F”」を誕生させた彼女の視野を探れば、『ひろプリ』とそのメインキャラクターのソラたち、そして『プリキュア』の魅力が浮かび上がる。

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司

毎年変わるテーマに合わせてどうアプローチできるかを考える

――森さんと『プリキュア』シリーズとの関わりを時系列順に辿りながら、ボーカルアルバム~FLY TOGETHER!!!!!~に辿り着ければと思うのですが、お仕事をする前の『プリキュア』経験について教えていただけますか? 『プリキュア』シリーズをご覧になっていましたか?

森いづみ 「世代」と言えたらすごく素敵だったのですが、年齢が少し上で……。

森いづみ

――それは『ひろプリ』の劇伴を担当した深澤恵梨香さんのインタビューでの答えと全く同じですね(笑)。

 妹も上の世代だったので、リアルタイムでは観れていなかったんです。ただ、あのOP主題歌(「DANZEN! ふたりはプリキュア」)のキャッチーさに衝撃を受けたことは覚えています。

――ということは、聴いたときはすでに専門家的な視点で?

 そうですね。私は高校から音楽専門の学校に通っていたので。そこでアニメの楽曲を耳にすることも多かったのですが、「世の中にこんなキャッチーなメロディの曲があるなんて」と思いました。“メじゃない!”や“ブッ飛ぶぅ~!”のような掛け声の要素が多いですし、ガヤのような声が入っているのも楽しいですよね。一緒に合いの手をしたくなるし、ついつい歌いたくなる不思議な曲で、そこが自分には新鮮でした。

――最初にお仕事として関わったのは、『映画ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』のED主題歌「やくそく」でした。当時のことは覚えていますか?

 初めてのお仕事が映画の主題歌という大役でしたので、大きな喜びと共にプレッシャーがありました。でも、「過去最高の楽曲を書いて次に繋げよう!」と気合い十分で取り組んでいたことを覚えています。「ゆったりとした優しいEDテーマ」というご要望でしたので、キャッチーななかにも優しさがにじみ出ているような曲にしたい、という気持ちでしたね。

――子供向け・女の子向けという点は意識されましたか?

 私は『プリキュア』の楽曲を書かせていただくとき、いい意味でそういった固定概念を捨てるようにしています。自分なりに『プリキュア』と向き合った結果、曲ができる、という感覚ですね。自分が子供だった頃を思い返すと、意外に色々なことを見抜いていたというか、子供扱いされるのが嫌いで、子供向けとか、大人が真剣に取り組んでいるとか、そういうところを見透かしているような感覚があったので、大人として正直に偽りなく書くようにしました。

――『ヒープリ』で『プリキュア』と初めて向き合ってみて、『プリキュア』楽曲に必要な要素に気づいたところはありましたか?

 いえ、とにかく必死で、「絶対にチャンスを掴む!」みたいな気持ち以外、あまり覚えていないのが正直なところですね。必死なうちに1年が終わったというか……。と同時に、音楽プロデューサーの井上(洸)さんはもちろん、歌唱者や演奏者の皆さんなど、周囲の方々に助けられながら楽曲が完成していった感覚はありました。

――「歌唱者」とおっしゃられましたが、プリキュアシンガーに助けられたと感じた出来事について教えてもらえますか?

 『ヒーリングっど♥プリキュア ボーカルベストアルバム ~We are Alive~』で「We are Alive!!」という曲を作らせていただいたとき、歌唱が北川理恵さんだったのですが、(キーが)ハイFくらいのところを地声で、しかもロングトーンで出されていて。その突き抜ける歌声にすごく感動しました。そのときも含めて、「やはり歌の力はすごく大きい」ということを実感した1年だったと思います。北川さんの音域が広いことはあらかじめわかっていたのですが、あんなにすごい方は初めてでした。でものちに、もっと高いキーを歌ってもらうことになるのですが……(笑)。

――『トロプリ』や『デパプリ』に携わる際に意識したことはありましたか?

 『ヒープリ』から4年続けて携わらせていただいていますが、毎作品のコンセプトに合わせて、どんな音楽や楽器でアプローチするかは、常に考えながらワクワクしています。特に『トロプリ』以降は、作品カラーを音楽で表現するために、直感的に思いついたことを遊び心として積極的に入れるようにしています。例えば、『デパプリ』で後期エンディング主題歌(「ココロデリシャス」)を書かせていただいたとき、2番に包丁が(食材を)刻む音を入れてみました。

――『映画デリシャスパーティ♡プリキュア 夢みる♡お子さまランチ!』の主題歌「ようこそ、 お子さま♡ドリーミア」、『トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』の主題歌「シャンティア~しあわせのくに~」についても聞かせていただけますか?

 「ようこそ、 お子さま♡ドリーミア」は、9分くらいの中に色んな音楽ジャンルのサウンドが混在し、曲調が変わっていく楽曲なのですが、「3楽章形式で同じメロディをアレンジで七変化させていく」といったオーダーをいただいたんです。でも、最初はどう作ればいいのか、頭を抱えてしまって……(苦笑)。それで、明るい長調の枠や短調の枠を組み合わせたり、展開の持っていき方や、映画のための楽曲なので使われるシーンを考えながら、何回も井上さんに質問して制作した記憶があります。

――クラシックなら楽章形式もわかりますが、アニメソングではかなり珍しいですよね。

 そうですね。マネージャーも「アニメの歌ものでこういうオーダーは初めて」と言っていました。私にとっても、表情が変わっていくような楽曲は新鮮でしたし、腕の鳴る仕事でしたね。「シャンティア~しあわせのくに~」は、(映画の舞台である)雪の王国・シャンティアの国歌で、温かくも切なくもありつつ救いのあるメロディで、雪の国の民みんなが歌えるもの、というオーダーでした。井上さんからの発注書は複雑で、読み解いていくような作業も必要になるのですが、その指定通りに作り上げてみると「これしかない!」という正解に行き着くんです。自分の中では、「合唱」をテーマに「どういう曲なら『トロプリ』の5人の想いが乗るんだろう?」とずっと考えていました。やっぱり、みんなの気持ちを1曲の中で消化しなければいけないですし、しかも物語の核となる楽曲だったので。かなり悩みましたね。

――最新作となる『ひろプリ』に参加する際はどのような意識で臨みましたか?

 まず、オープニング主題歌の「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」はコンぺだったので、「絶対取るぞ!」という気持ちでした(笑)。20作品目の主題歌ということで、自分自身でも新しさを楽しめるような、ワクワクするような楽曲にしたくて、始まりには突き抜けるようなコーラスを入れたり、ギターサウンドを効かせるといった工夫をして。コーラス始まりのオープニング主題歌は『スイートプリキュア』(「ラ♪ラ♪ラ♪スイートプリキュア♪」)などでもありましたが、近年はなかったので、そこも「挑戦」でした。井上さんは常に「新しいものを生み出したい」とおっしゃっていたので、振り切ることにしたんです。ギターに関しても、いつもお願いしている田子(剛)さんとバッキー(=椿本匡賜)さんに弾いていただいたら、すごくゴリゴリなギターにしてくださって。その違和感みたいなところも楽しめるような、挑戦的な楽曲になりました。

『プリキュア』と真正面から向き合った楽曲が生まれる環境

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP