INTERVIEW
2023.07.26
Aimerから通算7作目となるオリジナルアルバム『Open α Door』が届けられた。前作アルバム『Walpurgis』から約2年3ヵ月ぶりとなる本作には、『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』オープニングテーマ「残響散歌」をはじめ、 同じく『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』エンディングテーマ「朝が来る」、 アニメ『チェンソーマン』エンディングテーマ「Deep down」、アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』オープニングテーマ「escalate」、アニメ『王様ランキング 勇気の宝箱』エンディングテーマ「あてもなく」などを収録。まさに“扉を開く”感覚に溢れた本作の制作、ボーカリストとしての変化などについてAimer自身に語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之
――約2年3ヵ月ぶりとなるニューアルバム『Open α Door』が完成しました。まずはAimerさんご自身の手ごたえを聞かせていただけますか?
Aimer かなり久しぶりのアルバムなんですよね。『Walpurgis』を出したのが一昨年の4月で、その後は10周年イヤーと銘打った「残響散歌」をはじめとした色々なリリースがあったり、初めてのアリーナツアーを回らせてもらったり。駆け抜けるように活動したあと、一旦落ち着いて振り返って、腰を据えてアルバムの制作に取り掛かったんですよ。こうして出来上がってみると、なるべくしてなったアルバムだなと思いますね。
――10周年の活動のなかで感じたことも反映されている?
Aimer そうですね。この10年のなかでたくさんの感情を体験してきて、嬉しいこともあったし、辛い想いもあって……一番得た大きいものって何だろう?と考えると、“居場所”だなって思ったんです。居場所とは何かというと、1つ1つ、「こういうものがいいかな」と思いながら作ってきた音楽を受け取ってくれて、聴いてくれる人がいること、そういう関係をちゃんと作れたということだなって。音楽家としての自分と一緒にいてくれる人がいることって、本当に幸せなことだなと改めて実感したんですよね。それと同時に、居場所を守り続けること、維持し続けること、もっと大きくしていく使命が自分にはあると思っていて。
――新たな役割が生まれた、と。
Aimer それはすごく大変なことだし、そのためには今まで知らなかったことを知っていく必要がある。私と、聴いてくれる人たちの居場所のために、色々なものに触れたり知らなかった扉を開けてみたり。このアルバムに対しては、そういう想いが強いんですよね。時代の流れも、どこかで意識していましたね。デビュー当初は部屋にこもって制作していたし、目の前のことだけでいっぱいいっぱいだったんです。年数を重ねていくうちに、素晴らしい才能を持ったアーティストがたくさん出てきたり、サブスクが浸透したり、色々な変化があって。それこそこの数年の大きな出来事もそうだし、AIが色々なところで使われるようになったり、今までとはまったく違う世界が訪れようとしているんじゃないかなと思うこともありますし。アルバムタイトルに“α”を付けたのも、そのことと関係しているんです。“α”はすべての起源、始まりという意味があるらしくて、それはまさに今の時代だなと。
――新しい扉を開けるという想いと、これから始まる新しい時代が重なっているんですね。アルバムの収録曲からも、Aimerさん自身のリアルな感情が伝わってきました。まずはリード曲の「Resonantia」。憂いと激しさを併せ持ったメロディが印象的なアッパーチューンです。
Aimer 「残響散歌」と対になるような曲を作ってみたいという想いがあったんですよね。「残響散歌」はこちらが想定していた以上に大きな反響があったし、「私のアッパーな曲を好んで聴いてくれる人がこんなにいるんだな」と強く実感して。そこに応えられる曲がアルバムの中にもう1曲あってもいいのかなと。最近のライブでみんなで盛り上がれるような曲を何曲か続けるコーナーがあるんですが、そういうパートをアルバムの中で作ってみたい気持ちもありました。「Resonantia」はラテン語で“共鳴”という意味があって、「残響散歌」で私と出会ってくれた方々、もちろんずっと前から聴いてくださっている皆さんを含めて、自分と共鳴し続けてくれたらいいなという想いも込めてます。
――アルバムには『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』エンディングテーマ「朝が来る」も収録。改めてお聞きしたいのですが、『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』とのコラボレーションはAimerさんのキャリアにとってどんな意味があったと思いますか?
Aimer 「“Aimer”って何て読むの?」って言われることがあんなに多かった時期は、デビュー当初以来でしたね(笑)。それくらい、色んな国の方や色んな年代の方、たくさんの方に曲が届いたんだなって。「残響散歌」によって、それこそ自分が触ったことのない扉を開けた感覚もあったし、その先にある世界に立って曲を作ることも出来ました。色々な意味で触発された楽曲になりましたね。
――「群青色の空」は穏やかな感情が伝わってくる楽曲。ノスタルジックな手触りの旋律も印象的ですが、どんなテーマで制作された楽曲なんでしょうか?
Aimer 「群青色の空」はアルバム制作の最後に出来た曲。楽曲を並べてみたときに「こんな雰囲気の曲が欲しいな」と思って、そのイメージに近いサウンドになってます。テーマとしては、夕方から夜になる瞬間ですね。まだ明るさも残っているけど、星もきらめいているっていう。そういう時間帯を切り取った曲がなかったんですよね、今まで。
――夕暮れと夜空の間、いわゆる“マジックアワー”と呼ばれる時間ですね。
Aimer そういう瞬間は自分も大好きなんですけど、曲にしたことはなかったんですよね。どちらかというと深夜というか、深い時間帯のことを歌うことが多かったので。夕方って、その日のニュースが入ってくるじゃないですか。普段は悲しいニュースのほうが多いし、「悲しい出来事ばかりがどうしてこんなに早く伝わるんだろう?」と思っていたんですが、そうじゃなかった日があったんです。心温まるニュースが多くて、こういう日もあるんだなって……そのことがすごく印象に残っていたんですよね。ニュースが悲しくなかったというだけで、明日、明後日、その先の毎日にも希望が持てそうな気がして。それはすごく尊いことだと思うし、今を頑張って生きている人たち、目標に向かって頑張っている人たちを応援できるような曲にしたいという気持ちもありました。
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