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2023.07.27

YOASOBI「アイドル」はなぜここまで売れた? アニソン、J-POPを超越する異質さと“世界に届く理由”【リスアニ!RADIO #36】

YOASOBI「アイドル」はなぜここまで売れた? アニソン、J-POPを超越する異質さと“世界に届く理由”【リスアニ!RADIO #36】

Spotifyにて隔週火曜日より配信中のアニソン情報トーク番組「リスアニ!RADIO」。ここでは音楽プロデューサー/音楽評論家の冨田明宏、ラジオパーソナリティ・MCの青木佑磨、リスアニ!編集長の馬嶋 亮の3人が旬のアニソン情報を発信している。

リスアニ!RADIO

7月25日より配信中の最新エピソード(#36)では、アニソンをディープに解説するコーナー「アニソン!Notable points!」にて、TVアニメ『【推しの子】』OPテーマとなったYOASOBI「アイドル」に改めて注目。同楽曲は、YouTubeではMV2億回再生を達成、ビルボード・グローバル・チャート(“Global Excl. U.S.”)では日本語楽曲初の1位獲得など、世界規模の大ヒットを記録中だ。そんななか、「この曲がここまで売れた(有名になった)理由はなんだと思いますか?」というリスナーからの質問をきっかけに、楽曲をあらゆる側面から掘り下げる熱いトークが繰り広げられた。


青木 YOASOBIの曲も、日本の面白いアニソンもいっぱいある中で、なぜ「アイドル」がこんなにも突出したのか、という話ですよね。

冨田 曲の話で言うと、ひとえに「今までのYOASOBIの曲の中で一番ポップでキャッチー」ということでしょ!間違いなく。

青木 たしかに!YOASOBIって、売れ方に対して、そこまでメロはポップではないというか、サブスク世代に向けた刺激物というほどではなかったというか。そのYOASOBIを知ってる人にも、我々みたいに日本のアニメの割と尖った音楽を聴いてる人のリテラシーから見ても「変な曲だ!」って思うんだから、それを知らない海外の人が聴いたら「なんじゃこりゃ!?」ってなるよなと。

冨田 昨今は日本のJ-POPとかアニソンとか、あとボカロとかも総称した「Gacha Pop」ってプレイリストのど真ん中にいるのがこの曲なんですよ。

青木 Adoとか、ずとまよ(ずっと真夜中でいいのに。)とか、藤井 風とかが(一括りになった)ジャンル分けとして「Gacha Pop」になっている。

馬嶋 そうだね。Vtuberとかも含めて。だからアニソンだけじゃない。あれは面白いよね。

冨田 (「アイドル」が)「Gacha Pop」らしいなって思うのが……この曲って、イントロにクワイアが入ってたり、オーケストラが入ってたり、今はほとんど使われないオーケストラヒットみたいなシンセの音がバンバン入ってたりとかしていて。YOASOBIの曲の中でも異質すぎるんだよね。今までのサウンドのテイストと全然違うし。なんだろうな、やっちゃいけない禁じ手をドッカンドッカンやってる感じ。

青木 はい、はい!(笑)。

冨田 今まで聴いてきたYOASOBIのアニソンもすごく優秀だったけど、一番アニソンっぽいハチャメチャ感、まさに「Gacha Pop」な感じがある。あとは、アイドルのことをテーマにしているのに、アイドルに対する皮肉がめちゃくちゃ詰まっているという批評性みたいなものも含めて、隙がないよね。曲として。

馬嶋 『【推しの子】』のアニメ自体と歌詞とのリンクもちゃんとしてるし。アニソンとして作品の解像度を上げてることも評価できるけど……やっぱりそれ以上に、楽曲の異質さだよね。だから『【推しの子】』を観てなくても聴けちゃうし、聴いちゃうし。っていうのもヒットの要因なんだろうね。

青木 しかも、「まったく知らないものが突然現れた」というよりは、日本人にとって1990年代から続くJ-POPの一番刺激的な……それこそ「オケヒ」の多用みたいな、既に通りすぎた文化、20~30年分くらいの文化を、「引きで見てメタでギュッ!とした」みたいな。

冨田 そうそうそう!「メタ」(=俯瞰的に物事を見た表現)なんだよね。この曲ってめっちゃメタなんだよ。

青木 だから、歴史を知らない人から見たときには衝撃もあるし、知ってる人からすると、「なんでこの要素とこの要素が同居してるの?」「なんで今これがここにあるの?」みたいな。それが異質なんですよね。

馬嶋 あと、この曲が世界的なヒットになった理由の1つとして、楽曲を海外に輩出するためのディストリビューターに「The Orchard」っていうところを使っているのがあって。海外流通にめちゃくちゃ有効な機能を果たす優秀なディストリビューターなんだけど、こことがっつり組んでやっていることで、BTSだとか、K-POPの世界的なヒットにも近いようなプロモーションをやれてる。

青木 世界に届きやすい流通経路ってことですね。

冨田 そういう話でいうと……ビルボード・グローバル・チャートの“Global Excl. U.S.”、つまり北米以外の国と地域でのランキングなんだけれど、「アイドル」があそこで1位をとったタイミング(2023年6月10日付)っていうのが、前の週の金曜日に英語バージョンを公開して、再生数が数千万回伸びたりしていた直後で。戦略が見事!

馬嶋 そうだね。

冨田 だから、YOASOBIのチーム全体がすごいんだと思う。もちろんYOASOBIの2人が作る曲とパフォーマンス、Ayaseくんikuraさん、すごいね!っていう前提はありつつ。彼らを取り巻いているあのチームには「世界で売ってやろう!」っていうのが明確じゃない。

青木 「当てにいって当てた」感がちゃんとありますもんね。

馬嶋 そうだね。世界各国のチームの「これ、絶対いけるから売ろう!」っていう気概もヒットの要因だと思う。

冨田 あとは、YOASOBIってずっと(楽曲を翻訳した)「英語バージョン」を作り続けているじゃない?(日本語のように聴こえる)空耳の入った英語バージョンで。あれを「アイドル」でももちろんやってるわけですよ。それが何か、先々まで見通していた伏線のようでもあるし、あのコニー青木さんの翻訳はマジですごいと思う。

馬嶋 すごいよね、あれは。そういうことを繰り返して出た集大成の1個なんだろうね。これだけのスマッシュヒットを出すというのは。

冨田 そうだと思う。だから一朝一夕ではできないというか、ちゃんと積み上げてきた結果の大ヒットが、ここぞというときに出たぞと。でっかいでっかい「かめはめ波が出た」みたいな。

青木 はははは!(笑)。

馬嶋 出た、出た(笑)。それも、別に「かめはめ~…」って溜め続けてたわけじゃなくて、ずっと撃ってる。そこがすごいよね。


こちらの内容を含む「リスアニ!RADIO #36」は、Spotifyにて無料配信中。8月8日配信予定の次回「リスアニ!RADIO #37」もお楽しみに!

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