INTERVIEW
2023.07.26
――そんな『てんぷる』のOPテーマ「煩悩☆パラダイス」ですが、今回は愛美さんご自身が作詞されていますね。どんな流れで制作を進めたのでしょうか。
愛美 OPテーマのお話をいただいて、コンペで楽曲を選び、アレンジを決めて、そのあとに自分で歌詞を書きました。コンペの楽曲選びには私も毎回必ず参加するのですが、今回は『てんぷる』の賑やかなイメージから「ザ・アニソン」という感じの王道の楽曲が似合うだろうと思って選びました。実際にすごく賑やかな楽曲になったので、アニソンフェスなどで初見の人でも盛り上がれると思います。
――作詞するにあたっては、作品のどんな部分を汲み取ろうと思いましたか?
愛美 寺で起こるドタバタ劇や、ヒロインたちの乙女心、それと作品の大きなテーマである「煩悩」をピックアップして書きました。なので結月目線も結構入っていますし、どのヒロインにも当てはまるような歌詞になっています。OPテーマの場合、作詞に迷ったときも、原作を見ればそこに答えがあるのがすごくいいなあと思いました。
――確かに『てんぷる』らしさが満載の歌詞ですよね。その意味で上手くいったと思うフレーズはありますか?
愛美 うーん……全部ですね(笑)。煩悩ならではの“108”というフレーズだとか、最初は“煩悩 NO パラダイス!”だったのが最後は“煩悩 YES パラダイス!”になるところとか。あとは2番の“修繕不可能!解散!真剣(マジ)な気持ち足りないのカナ?”のところは、『てんぷる』の舞台になっている三日月寺の本堂を修繕しなくてはいけない状況にあって、その修繕費用を巡ってのトラブルが色々起きている部分もありつつ、恋愛模様としての“修繕不可能”にもかけていて。他にも「初心忘れるべからず」の「初心」を“ウブ”と読ませてみたり……なので語り始めると言葉すべてにこだわりがあります。
――ですよね。個人的には2番の“座禅!写経!魔境体験!”の勢い任せな感じが大好きで。こういったユーモラスな言葉選びが、先ほどおっしゃっていた「ザ・アニソン」らしさに繋がっているような気がします。
愛美 ありがとうございます!『てんぷる』にはとんでもない修行のシーンが出てくるんですけど(笑)、その中でも「魔境」を体験するサウナ回がすごく印象的だったので、そこはぜひ歌詞に入れたいなと思って。あとは、作中に登場する“5つの教え”が入っているところは、アニソンならではの仕掛けができて嬉しかったです。セリフが楽曲に入る感じもアニソンっぽい。
――確かに。そもそもタイトルの「煩悩☆パラダイス」からして秀逸ですよね。「煩悩」と「パラダイス」という言葉が合わさったそのインパクトたるや。
愛美 このタイトルはスッと出てきたんです。自分で歌詞を書いたときは、たいていタイトルは最後に決めるんですけど、「煩悩」と「パラダイス」は歌詞の中にも出てくるし、合わせるとハーレム的なニュアンスで『てんぷる』にピッタリだなと思って。
――結月たちヒロイン側の気持ちだけでなく、煩悩を自制しようと思っても自制しきれない、主人公の赤神の気持ちも表現されているように感じました。
愛美 まさにそうです。煩悩に抗う気持ちはふんだんに入れたので、赤神くん目線でも存分に楽しめる楽曲になったと思います。
――ちなみに愛美さんは煩悩に抗うタイプですか?それとも煩悩に従順なタイプですか?
愛美 従順だと思います!自分に甘いので(笑)。だからあまりヒマにしてはいけないタイプだと思っていて。休みを与えすぎると堕落してしまう恐れがあるんですよ。忙しいほうが自分にとって煩悩を制御できていいのかなと思います。
――でも休むことも大切ですよね。歌詞の“5つの教え”にも“その3 休みも修行の内”とありますし。それに絡めて、この“5つの教え”の中で特に身に染みたものを選ぶとすれば?
愛美 “その4 全ての縁を大切にし感謝すること”は特に印象深いです。直接対面している人だけが繋がっているのではなくて、さらにその先があるわけで、自分の側にいる人だけが縁じゃないんですよね。今こうやってご飯を食べていけているのも、それはただ単に自分が働いている、ということだけではなくて、色んな縁が繋がって今があるわけじゃないですか。“全ての縁”という言葉には、そういう意味があるんだろうなあと感じました。
――確かに。普段意識することはあまりないですが、改めて言葉にされると深い教えですね。
愛美 でも、この教えは私が普段考えていることと似ているから、特にしみじみ考えちゃうんだろうなとも思っていて。例えば、SNSでも、1つ発言することで、目の前のファンは喜んでくれるかもしれないけれど、その奥の人はもしかしたら不快に感じるかもしれない。そういうことを色々考えてしまうんです。その先を全部想像するのは難しいですけど。
――でも、そういう心構えでいること、自分1人の行動の先にも誰かがいるのを意識すること自体が大切ですよね。
愛美 この楽曲も意外と「深イイ曲」になった気がします。『てんぷる』には学びがあるんですよね。今まで知らなかった知識を得ることができますし、こうやって“教え”を通じて色々考えさせてくれますし。
――話を戻して、この曲のレコーディングでこだわったポイントは?
愛美 “5つの教え”のセリフのところは、実際にどれくらいの長さにすれば尺に合うか、当日現場で相談しながら考えました。ここは元々、2番のあとにすぐギターソロが入る構成だったんですけど、別のセリフを入れる案も含め、色々試して尺を調整してもらったんです。
――このパート、ライブでも愛美さんがセリフを言うわけですよね。
愛美 “その1”とかの部分はみんなに言ってほしくて。もちろん教えを覚えてくれた人は、私と一緒に言ってくれてもいいんですけど(笑)。“NO! NO! 煩悩!NO!”の部分もコールできると思うので、ライブでもみんなで盛り上がれる曲になったと思います。ただ、場所によってコールの回数が3回だったり4回だったりするので、何回も聴いて修行を積んで覚えてもらえると嬉しいです!
――MVも評判になっていますが、今までになくユニークな内容ですね。
愛美 お寺で賑やかに撮影させていただきました。私の音楽活動は、バンドサウンドの軸を持ちつつ、フットワーク軽く色んなことに挑戦できればと思っていて。今回は、初めてダンサーさんに参加してもらったんですけど、みんながずっと楽しく賑やかにやってくれたので、私も最後まで楽しく撮影することができました。
――ダンサーの皆さんとまくら投げしているシーンもありましたね。
愛美 楽しかったです!最初はみんな、私に枕を当てるのはまずいかなと思って遠慮していたんですけど、遠慮なくガンガン当ててもらいました(笑)。あと、私が写経しているシーンでは、後ろでダンサーちゃんたちがUNOをやっていたんですけど、それがめちゃめちゃガチで盛り上がっていたのが羨ましかったです(笑)。
――ちなみにシングルの初回限定盤の特典映像として「愛美と千春の寺修行体験!!」を収録されたそうですが、こちらはどんな内容になっているのでしょう?
愛美 千春と2人で、座禅、写経、精進料理を食べるという企画だったのですが、私たちは雑念・煩悩が多い姉妹なので、楽しみでウキウキしてお寺に行きました。
――ウキウキしている時点で、修行ではなく煩悩を感じますが(笑)。
愛美 2人とも、「私たち、修行したら生まれ変わるんじゃない?」みたいに楽しみにしていました。特に印象に残っているのが、「目の前で起こっていることを、受け入れるのではなくて、受け止めるだけでいい」というお話で。これは自分の解釈になるんですけど、受け入れようとすると、人にはキャパシティがあるのでキャパオーバーになることもあるけれど、受け止めるだけであれば、自分の中には入っていないから事実として受け止めるだけでいいので、色んな物事も意外と大丈夫になるっていう。そういう考え方、すごくいいなあと思って。帰ってからも千春と一緒に「これからは受け止めていこう!」っていう話で盛り上がりました(笑)。
――でも確かにその考え方になるだけで、気持ちが軽くなりそうですね。
愛美 全部を自分のことと思ってしまうと大変だし、仮に自分のことだとしても、受け入れる必要はないときもあるなあと思って。学びでした。
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