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INTERVIEW

2023.07.26

TVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』第2クールEDテーマ「door」をリリース!「大人へのシフト」をテーマにしたシングルについて東山奈央に聞く

TVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』第2クールEDテーマ「door」をリリース!「大人へのシフト」をテーマにしたシングルについて東山奈央に聞く

東山奈央のニューシングル「door」が7月26日にリリースされた。タイトル曲は、TVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』第2クールEDテーマになっている。昨年9月にリリースした3rdアルバム『Welcome to MY WONDERLAND』は、幻のテーマパークを舞台にエンタメに特化した作品だったが、今回のシングルでは「大人へのシフト」をテーマにしている。カップリング曲の「SLOW MOTION」、初回限定盤・通常盤に収録される「living」とアニメ限定盤に収録される「オーダーメイド」の新曲4曲について、たっぷり話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 塚越淳一

自分の心に素直にやったことを
みんなも面白がってくれたらいいな

――TVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』の第1クールを見て、どんなことを感じていましたか?

東山奈央 物語以前に、世界観が美しいと感じていました。おとぎ話の中にいるようなタッチで、作画の色彩も明るくキラキラしているなって。最終話まで絵がずっときれいでした。シャル・フェン・シャルもかっこいいし、アン・ハルフォードちゃんはきれいだし、飯塚晴子さんのキャラクターデザインが本当に素敵でした。砂糖菓子の表現もきれいで、透明感とかキラキラした輝き、繊細さを絵で表現できるんだ!と驚きましたし、品評会のシーンは芸術を見ているかのようでした。

――映像は本当に美しかったですよね。アンも前向きに突き進んでいきました。

東山 そうですね! お母さんが亡くなり、一人ぼっちからスタートして、そこから仲間が増えていく。何度も夢を挫かれても立ち上がって頑張っているアンを見て、周りが応援したくなりチームができ、少しずつ夢を叶えていく姿が頼もしくて、勇気をもらえました。

――EDテーマを歌うお話を聞いたときは、いかがでしたか?

東山 実は第2クールのEDテーマになることは、第1クールが始まる前から伝えられていたんです。第1クールの最終話を見た方はわかると思うんですけど、シャルが連れ去られてしまうんですよね。1つの夢を叶えたと思ったら、大きな存在を失ってしまう。アンの夢を叶えるため、シャル自らが取引をしてアンの元を去ってしまうんですけど、そんな重大なところから始まるので、EDテーマは優しく包み込むような、未来は温かくて、自分を待ってくれているんだよというメッセージ性を込めたいなと思いました。でも実は最初、そういう物語の経緯(第2クールがどこから始まるかなど)を知らなかったので、サビの“行く先を失くしても”が、あたたかな曲調のわりに重く聴こえてしまったんですね。せっかく心地よく曲を聴いてくれていても、歌詞がドーンと重たく感じてしまうかもしれないから変えたほうがいいのではないかと、ディレクターさんに相談したんです。でも、物語の流れを説明いただき、「なおちゃんの声で、行く先を失くしても大丈夫と語りかけてくれたら、みんな安心すると思うから良い歌詞だと思うよ」と言ってくださって。実際歌わせていただいたら、物語とすごくフィットしていたので、良かったなぁと思いました。

――希望に溢れている歌詞の中で、唯一と言っていい陰があるところでしたからね。今回「door」というタイトルですが、ドアって、変化やわからないところへ飛び込むようなイメージがあるワードだと思っているんです。このタイトルについてはいかがでしょう?

東山 アンちゃんは色んな扉を開けていく子だと思うんです。見知らぬ人と出会い、見知らぬ場所へ旅をしてっていう新しいドアの連続なので、そういう作品にピッタリ寄り添った言葉だと思うし、私自身も今回は歌手として「大人へのシフト」というテーマを掲げていたんです。

――そうだったんですね!

東山 それもディレクターさんが考えてくださって。

ディレクター 「door」を発注しているときから、シフトというテーマを歌詞にしてほしいとお願いしていたんです。だから、アンは苦難を乗り越えるけど、前向きに乗り越えるだけではないという部分を強調してほしかったし、東山さんが年齢的にちょうどいいところにいるので、それも反映してほしいと。そのやり取りをする中で、今回のシングルは「大人へのシフト」をテーマにしようと自然になっていきました。

東山 「大人へのシフト」というのは「door」だけでなく、シングル全体でのテーマにもなっているので、まとまりのあるものになっているんです。前作『Welcome to MY WONDERLAND』が遊園地をテーマにしたアルバムで、にぎやかで、エンタメの一番楽しいところまで突き詰めて考えていたから、それが一段落して、私も別の方向へシフトしていこうと考えていたんです。だから、今までのてんこ盛りな作品とは違う、引き算というところも考えて歌わせていただけるような音楽性のものにもチャレンジしているんです。

――アルバムからの流れで、今回のシングルがあるんですね。

東山 私のシングルは毎回4曲の新曲を収録しているのですが、これまではどの曲もあえて音楽ジャンルをバラバラにしていたんです。でも今回は「大人へのシフト」というコンセプチュアルな1枚になったので、1枚通して同じ空気感が漂っていて、心地いい感じが、私の中であります。

――引き算という話ですが、「door」のボーカルもすごく素直に、ストレートに思いを伝えている感じがしました。

東山 作り込むより、ありのままの心地良い声音で、のびのびと歌っていく感じでした。ラジオで初解禁したとき、「東山奈央って感じの曲だ」という感想がたくさんあって、私のイメージがみんなの中で生まれているんだなと思いました。「聴いていて、多幸感に包まれる」とか「未来が輝いていて、悪いものではないなという気がして元気になれる」という感想もあって、伝えたい空気感が、真っ直ぐみんなに伝わっているんだなとわかりホッとしましたね。

――“大好きな場所は きっと光で輝いてる”という歌詞もありますが、東山さんも新しいことを始めるときは、“きっと”楽しいことがあるんだ!と思って始めるタイプですか?

東山 そんなことはなかったと思います。むしろ私の原動力は「不安」にあると言っても間違いじゃないくらいです(笑)。最近は変わってきて、自分の願望や好奇心に基づいて動き出せるマインドに、それこそシフトしていきましたけど、これまでは不安と自信のなさが私を突き動かしていたんです。今のままではダメだとか、これではとてもじゃないけど人前に立てないとか。でも、そうやって努力している過程も不思議なことに楽しかったですし、頑張っている自分も嫌いではなかったので、別にネガティブなことばかりではなかったんです。この曲も、キラキラ楽しい!ばかりで歌っていても響かないなと思って、テイクを重ねていく中で試行錯誤はしました。みんなにハッピーな気持ちになってもらいたいから、思い切りハッピーを盛り込んで歌ったテイクもあったんですよ(笑)。でもそうじゃなくて、まだちょっと不安だけど勇気を出して一歩踏み出そう、って弱さと戦っている歌のほうが、聴いていて勇気づけられるんじゃないかなって。その方向で歌ってみたらしっくりきたんです。きっと、どこかで弱さを感じている私だから歌っていい楽曲なんだなと、そのときに思いました。

――基本は陽な声だけど、どこか憂いがあるようなところが曲調にもマッチしているのかもしれないですね。作・編曲の黒川陽介さんは久々ですよね?

東山 以前、私がやらせていただいていたラジオ番組の中に出てくるオリジナルキャラクターのキャラソンを書いてくださったんです。そのときの楽曲コンペに本来はあまりないことなのですが、私も参加させていただき、私が良いと思った曲が、黒川さんの曲であることが多かったんですよね。そして今回のシングル表題曲でも楽曲コンペをやらせていただいたんですけど、私が選んだのがたまたま黒川さんの曲で。何か心に惹かれるものがあるんです。実は「SLOW MOTION」もコンペで、名前を知らされずに選んだら黒川さんの作曲でした。

――どこに惹かれたんですかね?

東山 音楽で感じたことを言葉で表現するのってすごく難しいんですけど、感覚で良いと思ったんですよね。

ディレクター 「door」のときは、かわいいって言っていました。

東山 そうだそうだ。確かにかわいいって言っていました。最初のコーラスが本当にきれいで、世界へいざなってくれる感じが良かったし、かわいい感じは、アンちゃんが一歩ずつ頑張っていく姿に重なったというか。繊細な感じとかわいい感じが合っていると思ったんです。

ディレクター 最初のコーラスは、妖精の囁きのようなイメージでもあるんです。

東山 それがおとぎ話っぽい感じで、きれいに聴こえたんでしょうね。ふわ~~~って感じで、自分の曲なのにずっと聴いていたいと思うんですよ。自分で歌った照れとかも全然なく、聴いていたくなる曲です。

――個人的に、“(一緒なら)どんな色になる?”のところで、“一緒なら”のあとに声が重なるところが、すごく良い演出だなと思いました。

東山 それはレコーディングのときに、声を重ねてみませんか?と私が言ったんだと思います。重ねるのが大好きなので(笑)。それで、ここでやったらいいんじゃないかという話になったんだと思います。

――ここはお気に入りです。

東山 ありがとうございます。私は2番のAメロもお気に入りなんです。ベースの音がよく聞こえてきて、1番とは雰囲気がかなり変わっているんですよ。私はこの曲の本領発揮は2番からだと思っているので、そこは聴きどころだと思います!

――ボーカルも、後半へ行くに従って気持ちがこもっているような感じがしますしね。そして歌詞にちなんだ質問です。“誰もひとりじゃない だから探せるんだ”とか、“君とドアを開けるんだ”という歌詞がありますが、東山さんは誰かがいるから頑張れるとか、誰かのためにやることが前へ進む力になったりしますか?

東山 そうですね。いつもそうだと思います。みんなに楽しんでもらいたいから頑張れるし、みんなはどう思うかな?っていうのが頭の中にありました。もちろん自分がしたいことをしてきてはいるんですけど、まず最初に考えることがそっちだったんですね。「自分がやりたいこと」と「みんなが興味を持っていること」が重なるところを探していたというか。でも今はもう少しラフに、これ面白そうだなとか、やったことがないからやってみよう。ダメだったら次は違う角度でやればいいよね、という感じになってきているんです。ソロ活動のチームのみなさんもチャレンジを一緒にしてくださるので、そこは気楽になれたというのはあります。これまでの遊園地テイストの活動から一気に方向転換するのも怖くないって思えたし、今の自分の心に素直にやったことを、みんなも面白がってくれたらいいな~っていう時期にシフトしてきているのかなって思います。

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