――シングルのカップリング曲として全形態に収録される「SLOW MOTION」は岩里祐穂さんが作詞をしていますが、どんなテーマで書かれたものなのですか?
東山 シングルが夏発売で、振り返ると夏モチーフの楽曲ってあまり歌ってこなかったなと思ったんです。「ネバギバ音頭」という変わった曲があるんですけど、あれは音頭とは言っていても一年中聴ける電波ソングなので(笑)。夏っぽい曲を作ることがスタートでした。色んなタイプの夏曲があるけど、透明感、海の青さを感じられるような曲にトライさせていただき、夏の刹那的な一瞬を切り取ってみました。でも不思議な曲で、取材で話す機会をいただけても、上手に説明できないんですよね。歌詞も岩里さんとは綿密にやり取りさせていただき、岩里さん自身も色んなチャレンジをして作詞をしてくださり、小説のような美しい言葉の並びになっているんですけど、掴みどころがないというか……。
――実はそれは感じていまして。確かに掴みどころがないんですよね。
東山 でもそれで良くて、そうお願いしていたんですよ。具体的な夏のストーリーを描きたいわけではなく、具体的な登場人物も出さず、ただ夏っぽいジメジメした空気感や、海や夕暮れの美しさという空気感を行間で伝えるだけの歌にしたいと。そういう絶妙なお願いをして書いていただいているんです。
――“何もかもを抱きしめ 変わりつづけてゆくことを 怖れないで”というところは、唯一メッセージになっているのかなと。
東山 そこだけですよね。まさにここが私たちのディスカッションポイントで、そこすら煙に巻いて空気感だけでいくことも考えたんですけど、ここまできてから、Dメロで少しだけメッセージを入るのがメリハリになって、心に残るかもしれないと思ったので、そこに引っかかってくれて良かったです(笑)。
ディレクター 印象派の映画みたいな感じで作った曲であり、文学的な感じなんです。最初はもっと文学的な要素が盛り込まれていたんですけど、相談しながら今の形になっています。その人の持っている経験と照らし合わせることで、幾通りものストーリーが描ける曲になったのかなと思います。
東山 「君」というのも、男性なのか女性なのか、友達なのか恋人なのか、家族なのかもわからないくらい、聴いてくださる皆さんに委ねる曲になっています。
――初回限定盤と通常盤に収録されている「living」は、これまでにない曲ですね。
東山 私、今年はカフェ声優として生きていくつもりなんです(笑)。これは自分のラジオでも言っていて、コーヒーを豆から挽いて楽しんでいるんです。この曲は今回のシングル制作の最後に生まれたんですけど、どういう曲を作ろうかと夜な夜なディレクターさんと長電話をしたりしていて、そのときにコーヒーが好きな話をしたら、「カフェミュージックみたいなのはどうですか?」という話になり、そこから生まれた、ボサノヴァの曲になっています。
――なるほど。そういったジャンルの曲もやってみたかったのですか?
東山 聴くのは好きですけど、歌うとなると、恐る恐るではありました(笑)。ソロだけでなく、350曲以上キャラソンを歌ってきた中でもボサノヴァは通って来なかったので、私の中にボサノヴァのリズム感があるのか、はたまた声質に合っているのかまで含めて挑戦だったんです。だから、大人っぽい声に聞こえるとは思うんですけど、わざとそうしたつもりはなく、ありのままで歌ったら、こういうしっとりとした歌声になったというだけというか。
――ボサノヴァのシンガーというと、日本だと小野リサさんが有名ですよね。
東山 まさに小野リサさんの曲はいっぱい聴きましたし、こうやって歌いたいな~って思っていました。実際にレコーディングで歌ってみると、いつもの私の声質だとあまりノれなくて、自然と声が低くなっていったんですよね。ボサノヴァに即した発声ってあるんだろうなと思いました。
――この曲では歌詞も書いていますね?
東山 カフェミュージックというのが急遽決まったので、作詞はどうしましょうとなったとき「コーヒー好きなんだから自分で書いてみては?」って提案され、まさかそんなことを言われるとは思っていなかったんでガガガガーン!って(笑)。私、作詞は下手したら2ヶ月以上かかることもあるので……。だから「2週間で」と言われたときは、無理かも!ってなりました。そしたらディレクターさんに「なおちゃん。大人へのシフトだよ!」と言われ、それが後押しになりました。やるしかない、と気合を入れましたね。2週間ちょっとで書きあげました。
――2週間は越えちゃったんですね(笑)。
東山 はい(笑)。でも、1サビの歌詞はすぐに書き上げられたんですよ! “かららからっと”というのは、実際に豆を挽いていてコーヒーミルからこういう音がするんです。実体験に基づいて書いているので、生粋のコーヒー好きの歌になったと思います。 あと“奏でてみる?”もミルとかけていたり、“愛が膨らむ”も豆が膨らむ様子をイメージしたりしているんです。
――このサビは韻も踏んでいるし、すごく良いと思いました。でも、お湯を注いだときにコーヒー豆が膨らんでいく景色まで描いていたんですね! これはカフェで聴いてみたい。
東山 ゆったりできると思います(笑)。好きが高じてできた曲になりますね。
――アニメ限定盤収録の「オーダーメイド」は、『シュガーアップル・フェアリーテイル』の劇伴も手がけている椿山日南子さんが作詞・作曲・編曲を担当されていますが、椿山さんは、ワルキューレでもお世話になっている作家さんですよね。
東山 もう大好きなんです! ワルキューレの「唇の凍傷」は本当に大好きだし、ほかの声優アーティストの方に提供されている椿山さんの曲も好きで。
――ピアノからストリングスまで、ものすごいですよね。
東山 壮大ですよね! カップリング曲ですけど、みんなびっくりするんじゃないかなっていうくらい素晴らしい曲で、歌詞も頭から終わりまで終始メッセージが美しくて、「え、ずっと素敵……!」って思いました。「何でこんなに素敵な言葉が生まれてくるの!」って。
――“鼓動、それは砂時計 命を削り、生きかた訊ねる”とか、素敵です。
東山 1つ1つの言葉が響きますよね! 私が好きだったのが、“昨日、それは風見鶏 明日次第で見え方が変わる”で。風が吹くままに、自由な心で、目の前のことに向き合っていけたら、自分にとって悲しかったかもしれない昨日までの出来事が、意味のあるものに思えるかもしれないという、優しいメッセージだと思ったんですね。それは直近の自分の出来事とも重なって、すごく響いてしまって……。ものすごく悲しい出来事があったけど、それもきっと自分にとって意味のある出来事なんだろうと思うことができたんです。歌っているときもそう思えたし、時を経て、色んな人に響く歌詞になるんじゃないかなって思いました。
――そんな新曲たちが収録されたシングルが発売されましたが、もうすぐリリースイベントがありますね!
東山 8月5日(土)に兵庫エリア、12日(土)に東京エリアでリリイベをやらせていただきます。兵庫エリアは人数制限なくご覧いただけます。先月は仙台に行かせていただいたんですけど、久々に色々な場所に会いに行けるのが嬉しいです。お渡し会もありますので、ぜひ初めての方も気軽に遊びに来ていただけたらな、と思います!短い時間ですけど、充実した時間を皆さんと過ごせると思うと本当に楽しみです。いい夏の思い出を一緒に作りましょう!
●リリース情報
「door」
東山奈央
7月26日発売
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:VTZL-228
価格:¥3,520(税込)
【通常盤(CD)】
品番:VTCL-35359
価格:¥1,430(税込)
<CD>
01.door
作詞:矢吹香那 作曲・編曲:黒川陽介
02.SLOW MOTION
作詞:岩里祐穂 作・編曲:黒川陽介
03. living
作詞:東山奈央 作・編曲:長谷川智樹
04. door Instrumental ver.
05. SLOW MOTION Instrumental ver.
06. living Instrumental ver.
<Blu-ray>
オフィシャルクラブ『虹のわっか』会員限定ライブ「にじかいっ!! vol.3」ダイジェスト映像(約60分収録)
①OVER!!
②夜光
③あした会えたら
④off
⑤Wonder Love
⑥Mode Style
⑦冷めない魔法
⑧さよならモラトリアム
⑨ガラクタフルワールド
⑩未来YELL!
【アニメ限定盤(CD+DVD)】
品番:VTZL-229
価格:¥2,200(税込)
<CD>
01.door
作詞:矢吹香那 作曲・編曲:黒川陽介
02.SLOW MOTION
作詞:岩里祐穂 作・編曲:黒川陽介
03.オーダーメイド
作詞・作編曲:椿山日南子
04.door TV size ver.
05.door Instrumental ver.
06.SLOW MOTION Instrumental ver.
07.オーダーメイド Instrumental ver.
<DVD>
東山奈央 スペシャルバラエティ番組 「なおぼう、エレクトーン弾くってよ」
東山奈央オフィシャルサイト
http://toyamanao.com/
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