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INTERVIEW

2023.07.26

【連載】「幹葉の森 おしゃべりルーム」第3回:幹葉(スピラ・スピカ)×斉藤壮馬

【連載】「幹葉の森 おしゃべりルーム」第3回:幹葉(スピラ・スピカ)×斉藤壮馬

スピラ・スピカ(以下、スピスピ)の幹葉が、自身の憧れの人物に直接会いに行き、その人たちから様々な話を聞く対談形式の連載企画「幹葉の森 おしゃべりルーム」。

今年はソロ体制となり、初となる全国ツアーをスタート。持ち前の太陽のような明るさで聴く人の心に寄り添い勇気づける楽曲への共感や、その楽しさとハッピーが溢れるライブが話題となった。そして、2022年12⽉のソロプロジェクトとして初のワンマンライブにて披露し、ツアーでも歌ってきた新曲「私の物語」が、スピスピのデビュー日である8月8日に配信リリースされる。

スピスピの新しい物語が始まるなか、第3回となる「幹葉の森 おしゃべりルーム」で幹葉が会いに行ったのは、レーベルメイトでもあり、先輩でもある斉藤壮馬。今回、幹葉の熱烈なオファーに快く応えてくれた斉藤へ、根掘り葉掘り、幹葉ならではの対話を繰り広げる!

INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
PHOTOGRAPHY BY 堀内彩香

■「幹葉の森 おしゃべりルーム」連載一覧はこちら

【連載】幹葉の森 おしゃべりルーム

「初対面のときから、カリスマ性を感じていました」

幹葉 今回は斉藤壮馬さんに会いに来ました!お忙しいなか、本当にありがとうございます。

斉藤壮馬 こちらこそ、今回はお声がけいただきありがとうございます。

幹葉 壮馬さんはSACRA MUSICの先輩で、実はプロデューサーが一緒なんですよね。

──本日はよろしくお願いします。まず、お二人が最初にお会いしたのはいつくらいなんでしょう?

幹葉 “SACRA MUSIC FES.2019 -NEW GENERATION-”ですね!当日、楽屋が隣でご挨拶させていただいたのがきっかけです。スピラ・スピカは大きな舞台にまだ慣れていなくて、自分たちの楽屋でソワソワ、ガヤガヤとしていたのでご迷惑をおかけしていたんじゃないかと思います。今日は数年越しの謝罪を……。

斉藤 いやいや(笑)。当時から舞台慣れしているのかなと思っていたので、今お話を聞いて驚いたくらいです。そのときから、幹葉さんは一瞬で場の空気を明るく華やかにしてくれる人という印象があって。

幹葉 えっ、嬉しいです!

斉藤 あと、楽屋から全然帰らないなって(笑)。

一同 (笑)

幹葉 ついつい盛り上がってしまって……壮馬さんの楽屋に居座る人はなかなかいないかもしれませんね(苦笑)。

斉藤 いやぁ、あのときは盛り上がりましたね。自分も“SACRA MUSIC FES.”は初めてでそわそわしていたので、スピスピの皆さんが楽屋に来てくれたことで空気が明るくなって、ポジティブな気持ちでステージに臨むことができました。だから僕としては、すごくありがたかったんですよ。幹葉さんは緊張したりするんですか?

幹葉 めちゃくちゃ緊張します……!特に昨年の“SACRA MUSIC FES. 2022 -5th Anniversary-”は、3人からソロになったタイミングで。1人であれだけ大勢の人たちの前に立つのが初めてでしたし、間にMCをやらせていただくこともあって、心臓バクバクでしたね。

斉藤 そうだったんですね!僕はバンドで参加させていただきましたが、出番的にスピラ・スピカの次ということで、ステージ裏で一緒に阿波おどりをやらせてもらって。「あの人(幹葉)が一番ロックだな」って思っていました。

幹葉 それをライブ終わりに聞いて、嬉しくて泣いちゃったんですよ。

斉藤 でも、さっき阿波おどりに関する衝撃の事実が発覚してしまい……。

──取材前に盛り上がっていましたね(笑)。

斉藤 僕がイメージする阿波おどりで踊ってしまったんですけど、幹葉さんに話を伺ったところ、阿波おどりは男女でフォルムが違うそうで。

幹葉 阿波おどりは女性の場合は全員揃って腕を高く挙げて踊るんですけど、男性の場合は腰の位置がすごく低くて、なおかつ色々な方向に手を向けるんですよ。それが男らしくて、めちゃくちゃカッコいいんです。

斉藤 フリースタイルなんですね。話は戻りますが、あのステージで阿波おどりをして、みんなを踊らせてしまうというのがすごくカッコいいなと思って。僕が言うことではないんですけど、この方はカリスマ性があるんだなと思ったんですよ。惹きつけられてしまうものがある。最初にステージを見たときからそれは明らかでしたけど、改めてすごいなと思いましたね。

幹葉 そんな……!たくさん褒めていただいて、嬉しいです。

──それこそカリスマ性という部分を、幹葉さんは斉藤さんに感じられているのではないでしょうか。

幹葉 はい。“SACRA MUSIC FES.”で、壮馬さんがステージに立たれて空気がガラりと変わったんですよね。私たちが騒いだあとに、まったく違う壮馬さんの色を出されていて。

斉藤 MCもせず、大きい音だけ出して帰るみたいな。

幹葉 そのギャップが最高で、それこそロックでカッコよかったです。

斉藤 でも、幹葉さんたちが会場をすごく盛り上げてくれたおかげでステージに出やすかったんですよ。自分たちのやりたい、ダークな音楽をやってもいいのかなと。助かりましたね。

──そうした出会いを経て、今回「幹葉の森」にお越しいただきましたが、実は今回は幹葉さん直々に御本人にオファーしていて。しかも、それが「手紙」という形だったというお話についても、ぜひ。

幹葉 一度ゆっくりお喋りしてみたいなと思っていたので、先ほど話に上がったプロデューサーを通じて、「この連載に出てほしい」と壮馬さんにお手紙を出させてもらったんです。日々色々な活動をされているので、対談するお時間なんてあるのかな?と思いつつも、対談じゃないとしっかり話せないかも、とも思って。手紙という形でオファーさせていただくのは初めてだったので、まさかきちんと御本人の元に届くなんて!

斉藤 面白かったですよ。プロデューサーから「よくわからないけど、手紙をいただいています」と言われて(笑)。でも、そういう気持ちを直筆でくださるのはものすごく嬉しいことで、あれをいただいたら「ぜひ!」ってなりますよ。それに自分としても、ぜひお話してみたかったんです。繰り返しになりますけど、この人はすごい、というのが第一印象からあったので。

幹葉 いやいや……。

斉藤 すごく素敵な部分がたくさんあると思うんですよ。個人的には声が好きで。

幹葉 えええええ!?(と、叫びながらキャスター付きの椅子で後ずさり壁にぶつかる)

斉藤 結構ぶつかりましたけど、大丈夫!?(笑)……こういう人柄も含めて、ちょっとお話しただけでも心を掴まれてしまうんですよね。天性の才能といいますか。この人はもっと大きなステージに立つ人なんだろうな、と最初にお会いしたときから思っていました。周りから言われませんか?

幹葉 いやいや……!たくさんお褒めの言葉をいただいて嬉しいんですが、私自身も声に関して壮馬さんに伺いたいことがたくさんあって。質問してもいいですか?

斉藤 もちろんです。

幹葉 どういう流れで声優、アーティスト活動をされるようになったのか、改めて壮馬さん御本人から直接お話をお伺いしたくて。生まれたときから「良い声かも」って思ってました……?

斉藤 いやいや、違いますね(笑)。自分でそう思ったことはありません。

幹葉 そんなに素敵な声をお持ちなのに?

斉藤 原体験から言うと、僕は両親が教員なんです。母が国語の専門で、幼少期の頃から絵本の読み聞かせをしてくれていたんです。母は関西人ということもあってか、読み聞かせが上手だったんですよね。ただ、日々仕事で忙しいからすぐ寝てしまうことがあって……それで「自分で読んだほうが早いな」と本を読んでいるうちに、物語が好きになっていきました。授業で音読をするときにたまに褒めてもらうことはあったけれど、自分が良い声だとか、お芝居をしよう、とはまったく思ってなくて。

幹葉 そうだったんですね。

斉藤 高校1年生のとき、色々あって学校に行きたくなくなってしまって。そのときにアニメや映画をたくさん見て、掛け値なしに救われたんです。自分もその世界に行ってみたい、という憧れの気持ちからスタートしましたね。むしろ声優という仕事をする前に、中学時代から趣味でバンドをやっていて、ミュージシャンか作家になりたいと思っていました。

幹葉 ミュージシャンか作家!すごく興味深いお話です。

斉藤 でも不思議なもので、学校に行っていない間にお芝居に出会って、その道を地道に歩んできた結果、今音楽をやらせてもらったり、文章を書かせてもらっていて。自分としては音楽活動はご褒美のような気持ちです。

幹葉 先日のライブ(2023年5月“斉藤壮馬 5th Anniversary Live”)を拝見させていただきましたが、すごく楽しそうな姿が印象的でした。

斉藤 楽しかったですね。それこそ、ギターでバンマスのSakuさんとライブ後にお話ししたときに印象に残っていることがあって。Sakuさんが「俺はもうバンドはやらないと思ってた。そのバンドが色々あって上手くいかなくなって今はアレンジャーや作家として活動しているけれど、壮馬くんと出会って、斉藤壮馬バンドで色々な活動をしてきて、もう一度バンドって楽しいものなんだなと思えたんだよね」ってお話をしてくれたんです。で、そのあとにラジオにも来てくれたんですけど、ラジオではそれを喋らず(笑)。

幹葉 良いお話なのに(笑)。

斉藤 ビックリしたのが、僕もまったく同じことを思っていたことで。自分が音楽をやるときに「人とやるのは向いていないだろうな」と漠然と思っていたんです。でもSakuさんや黒田プロデューサーをはじめ、今のチームに出会って「バンドってやっぱり楽しいんだな」ってもう一度思うことができました。年々楽しくなってますね。

幹葉 サポートメンバーという形を飛び越えて、皆さんが楽しそうで、自分も見ていてすっごくテンションが上がりました。

斉藤 サポートメンバーという感覚は僕自身まったくなくて、斉藤壮馬という名義だけど、チームだし、バンドであるという考え方なんです。本当はもっとスタジオに入りたいくらい!この間幹葉さんに来ていただいたライブでは、ダブルアンコールの最後に「いさな」という曲をやったんですけど、イントロを伸ばして、みんなが1人ずつ集まってきて向かい合って演奏する、という場面があって。僕自身ジーンときて泣いちゃいそうだなぁってパッと横を見たら、Sakuさんが泣いていて「早めに泣いてる人がいるぞ!」と(笑)。あとでキーボードの重永(亮介)さんも「俺も泣きそうになったけど、Sakuちゃんがめちゃくちゃ泣いてたから、涙が引っ込んだわ」と言っていました。今回のライブはあれこれ考えすぎず、シンプルに楽しめましたね。

10代のときのお互いの音楽観は真逆?

幹葉 ライブのこだわりは中学生の頃からの経験に繋がっているんですか?

斉藤 どうなんですかね?中高でやっていたバンドは打ち込みも使ってたんですよ。

幹葉 中学の頃からですか!それはすごい。

斉藤 田舎あるあるかもしれないんですけど、ドラムがいないっていう。だからギターボーカル、ギター、ベースとサンプラーでやっていて。もうちょっと洋楽っぽい感じでやっていました。

幹葉 その頃からオリジナル曲をやっていたということですか?

斉藤 そう、それが好きだったんですよ。バンドが好きというより、何かを作るのが好きで。そのときはマイルールのような縛りがあって……例えばビブラートを使ったら負けとか。いわゆるメジャーシーンにいるようなバンドの音楽は絶対にやらないって思っていたんですね。メジャーシーンにいるような、っていうのは当時、勝手に思っていただけですけどね。

幹葉 尖ってる!

斉藤 中高生あるあるというか(笑)。当時と書いている曲の方向性はそこまで変わっていないんですが、スタンスというか、心の間口は広くなっているような気はします。今は単純にビブラートはできたほうが良いだろう、って思っていますし。

幹葉 ほかにもマイルールがあったんですか?

斉藤 結構色々あったな……。例えば、コード進行の縛りとか。今はそのコード進行もめっちゃ使ってますけどね(笑)。あと「ひとりじゃないよ」って曲よりも、「ひとりでもいいよ」っていう曲を作りたいな、と。僕自身、そういう曲に救われてきたんですよね。だから当時も今も、メッセージソングは書かないと決めています。自分の音楽はエンタメであり、フィクションだと思っているので、聴いた人それぞれが自分なりの意味を見つけてくれたらいいかなって。それで「背中を押された」「勇気が出た」と思ってもらっても、「深く沈んで寄り添ってくれる」と感じてもらってもいいし。あまり自分と地続きというより、どこかにそういう物語があるだけ……という。

幹葉 ライブで、ファンの皆さんが色々な受け取り方をされているんだなというのを感じました。盛り上がってる方も、聴き入ってる方もいて。それぞれが自分の中でこの曲の物語を作ってるのかなと、今お話を聞きながら思いました。

斉藤 そうなってくれていたら嬉しいですね。ライブの感想はどんな言葉でも嬉しいんですけど、「バンドパートのときはペンライトを振るよりも拳を振り上げたかった」といった感想を見かけて、なるほど、と。今、チームでも「ライブハウスツアーもやりたいよね」って話をしているんです。ライブって相互的なものというか、実際にその空間を共有しないと味わえないものってあるじゃないですか。僕らがもらえるものもかなり多いんですよね。

幹葉 うんうん。

斉藤 ただ、10代の自分はライブをやりたくなくて。

幹葉 じゃあ、その頃にライブでは作った曲は披露してなかったんですか?

斉藤 ほとんどやってなかったですね。「最高の音源を作りたい」という気持ちのほうが強かった。そういうのが好きだったんでしょうね。

幹葉 中高の時代にそう思えるってすごい。私はむしろ「ライブで完成させようぜ!」って感じでやっていました。

斉藤 学園祭などでバンドを組んでステージでやろうぜ、というノリがあるじゃないですか。そういう人たちと俺らは違うんだぜ、みたいなヤツでしたね(笑)。

幹葉 私は前者です(笑)。

斉藤 今考えると、そっちのほうが絶対に楽しいんですよ。それは声優の仕事を始めて、ご縁があって音楽活動もやらせてもらえるようになって……考え方がシンプルになっていったからこそ生まれた気持ちだなと思いますね。

幹葉 削ぎ落とされていくものですか。

斉藤 いや、増えていくことだと考えています。結果的には引き算かもしれないんですけど、好きだな、楽しいなってことがプラスで増えていって。昔は「ビブラートを使っちゃダメ」とか思っていましたけど、どこかで考え方が変わって「この人のビブラートが好きだな」と思うようになったんですよね。僕は宇多田ヒカルさんや、梅原裕一郎くんのビブラートが好きで。そう思えたほうが楽しいし、こういう気づきから考え方が変わっていきましたね。声優としてキャラクターソングをライブで歌わせてもらい、斉藤壮馬としてライブをする経験を重ねてきた経験も大きいかもしれません。

幹葉 これからライブでどんなことが行われるようになるのか、ますます楽しみになりますね。

斉藤 まだ次のライブの予定は決まっていないんですけど、何も決まっていないということは、音響的にも、映像演出的にも、ある程度なんでもできるということですから、楽しみですね。

幹葉 楽しみ!そういえば、壮馬さんのライブの1曲目に登場したカズー(膜鳴楽器の一種)をゲットしたんです。ゲットしたというか、壮馬さんのライブをみて欲しいー!と言っていたら重永さんが誕生日プレゼントとしてくださって。

斉藤 カズーはぜひ、スピスピでも使ってもらいたいですね。

幹葉 吹いてみて、ビックリしました。私も次のライブで使ってみたいなぁって。盗ませてもらいました(笑)。

斉藤 良かったです。SACRA MUSICでカズーを流行らせましょう(笑)。

斉藤壮馬のライブの作り方

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