声優・戸松 遥がおよそ3年8ヵ月ぶりとなるニューシングル「Alter Echo」をリリースする。「スロット ソードアート・オンライン」のために書き下ろされた「Alter Echo」は、アグレッシブなロックサウンドのなかで力強いボーカルが聴かれる、ロックな戸松 遥を印象づける1曲である一方で、新たな表現にチャレンジした“新・戸松 遥”を見せる仕上がりとなった。久々の新曲で彼女が目指したものとは、そして15年に迫るソロキャリアのなかで彼女が改めて見つめたものとは――。
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
――ニューシングル「Alter Echo」は、前作「Resolution」から3年8ヵ月ぶりのリリースとなりますが、こうしてリスアニ!でソロの取材するのもまさに「Resolution」以来なんですよね。
戸松 遥 本当に3年以上ぶりですね。 私も久しぶりに個人の歌のインタビューを受けました(笑)。
――久々のリリースはどんな気持ちですか?
戸松 実際には3年8ヵ月も経った感じが正直少なくて。「そんなに経ってました?」みたいな。
――感覚的にはもっと短い?
戸松 はい。感覚的には1年くらいしか空いてないなんじゃないかという気持ちでいたんです。なので、こうして「3年以上経っています」って言われたときに、「思っていたより結構空いてたんだな」っていうのが率直な感想ですね。あと、「Alter Echo」をレコーディングしたのが去年の夏くらいだったのもあるのかな?そのときはまだ具体的なリリースは決まっていなかったのですが、久しぶりに戸松 遥として1曲歌えるというのが単純に嬉しかったんです。それから1年以上経って、配信とシングルカットされることが決まり、 結果的に3年8ヵ月経ったという。
――たしかに「Resolution」以降も『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ-』の公開などがあったので、3年以上も経ったのかという感覚にもなりますよね。
戸松 そうなんですよね。『ソードアート』自体も作品としての関わりもあって、色んな形での収録や宣伝、舞台挨拶なんかがあったりして、作品と離れている期間がなかったのもあるかもしれないですね。
――今回の「Alter Echo」も、「スロット ソードアート・オンライン」のために書かれた楽曲ということですが、過去の楽曲も含めて、改めて『ソードアート・オンライン』楽曲への向き合い方はまた特別なもの?
戸松 最初に歌った「ユメセカイ」以降は、「courage」とか結構ロックな曲が多かったので、 エネルギーを使うという感覚でしたね。あと歌詞の世界観も作品に沿ったものになるので、 自分が演じるアスナのこと、作品のことを思いながら、歌うのは戸松 遥としてですけど、気持ちとしては役に寄り添うような気持ちで歌っています。SAOに限らずですが、作品のタイアップのときは作品の力を借りて、自分の歌として表現させていただくみたいな感じなので、そういう意味ではノンタイアップで歌うのとはまた背負うものが少し違いますね。
――「courage」や「Resolution」は作品のオープニングを飾るものでもあり、そこでよりアグレッシブなものになっていくというか。今回の「Alter Echo」もロッキンなサウンドが印象的な1曲となりましたが、最初に聴いた感想はいかがでしたか?
戸松 最初に聴いたときは、自分が歌うビジョンが見えなくて。「私が歌ったらどうなるんだろう?」みたいな、正解が見つからなかったというか。戸松 遥として久々に歌うというのもありましたし、今まで歌ったことのない楽曲のテイストでした。
――最初から正解が見えるような楽曲ではなかった?
戸松 最初のテスト収録のときに、「どんな感じのテンションで歌いましょう?とりあえず闇雲に歌ってみます!」という感じでとりあえずやってみる、みたいな(笑)。そこから「「今だと女の子を女の子してかわいいから、かわいい成分を削ぎ落としてやってみようか」みたいにして、少しずつ方向性を決めていきました。
――歌いながら徐々に今の形を作っていったと。
戸松 でも、細かく録っていくとエネルギーが切れてきちゃうので、こういう楽曲だとある程度の短い時間で、自分の体力とエネルギーがあるうちに勢いで録ったほうがいい部分もあったので、時間との戦いみたいな部分もありました。
――たしかに楽曲を聴くと、「courage」や「Resolution」のようなメロディアスさというよりかは、勢いのある攻めたアプローチを感じさせます。
戸松 「Resolution」のときは、『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』というシリアスなお話のOPテーマというのもあって、戦いに行くような感覚で歌っていたんですけど、「Alter Echo」はどちらかというと陽の気持ちというか、ちょっと笑顔があって歌ってもいいのかなという感覚がありましたね。
――それらを踏まえて、改めて戸松 遥としての久々のレコーディングはいかがでしたか?
戸松 ありがたいことに、この3年以上の間でもキャラソン含め色々と歌っていたので、そんなに久しぶりみたいな感じはなかったんですけど、“戸松 遥として”というのは本当に久々だったので、逆に遊ぶような気持ちというか、「こう歌ったらどう聴こえるかな?」とか色々やってみて。
――新しい自分を試すというか。
戸松 そうですそうです、“新・戸松”みたいな(笑)。何か新しいものを作れるチャンスだなと思って。ブランクなくずっとやっていると、“戸松 遥の正解”みたいなものがベースとして出来上がっちゃったりするんですけど、久々だからこそ、周りのスタッフさんとも久々でしたし、どんな戸松が出てくるんだろう?みたいな感覚が待っているというか。最初から「こういうふうに歌うのが戸松 遥だから」みたいに決め込まずに、「今の私が歌ったらどんな音になるかな?」って、自分でもちょっとワクワクしながら歌っていましたね。
――ある種のブランクを逆手にとるというか、そういった形で“新・戸松 遥”を作り上げていったわけですね。それをあまり時間をかけずにパッと録りきるという集中力もさすがというか……。
戸松 この曲に関しては、私が勝手に決めていたことなんですけど、短い時間で録り終わりたいっていうのがあって。 自分も集中力が長持ちするタイプじゃないし、いきなり集中力が切れちゃうので(笑)、そこは自分との戦いでしたね。喉が温まってきて、そこからコンパクトにギュッと録れたという感覚です。
――ブランクがあるだけにじっくりやっていくものだと思っていました。
戸松 人によってそれぞれやり方があると思うんですけど、私の場合はメインボーカルを録ったあとに、ハモリもコーラスも全部その日に録っちゃうんです。なので、「元気なうちに頑張ろう!」みたいな(笑)。
――そこは長年のキャリアによって身についたものでもあるかもしれませんね。
戸松 そうですね。なので、本当にあまりブランクを感じなかったというか。
――そうした勢いの良さというものが特に感じられるのが、2コーラス目のあとの、“意味の無い くだらない感情”と始まるパートで、最後の“Break out”とロングトーンで聴かせるまでのテンション感が素晴らしくて。
戸松 嬉しい!そこはすごくすごく頑張りました!仮歌を聴いたときから、自分でもこの曲のいちばんの肝だなと思ったポイントだったんです。ディレクターさんとも「どうやってやるのが正解ですかね?」みたいな話をしながら、やっぱり“Break out”でピークを持っていきたかったので、テンションをどんどん上乗せしていくような気持ちで、でもやっぱり最後は勢いというか。頭で考えすぎても勢いがなくなっちゃうので、慣れるまで練習して、勢いが乗ってきたら「……今だーっ! これ録ろう!」みたいな。
――エネルギーが爆発した、戸松さんの今の声が聴ける1曲になりましたね。
戸松 ありがとうございます。久々に出すのにはピッタリなテンション感かなって思いましたね。挑戦も詰まってるし、作品としてもやっぱり自分がすごく大切にしている『ソードアート・オンライン』のタイアップでもあるし。挑戦と明るさと、色んなものが詰まっていて、久々に出すのにすごくいい曲になったんじゃないかなと思いますね。
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