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REPORT

2023.07.24

それでも生きていく――ReoNaがお歌に込めた“HUMAN”たちに伝えたい想い。全国ツアー<ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2023 “HUMAN”>ファイナル公演を振り返る

それでも生きていく――ReoNaがお歌に込めた“HUMAN”たちに伝えたい想い。全国ツアー<ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2023 “HUMAN”>ファイナル公演を振り返る

“絶望系アニソンシンガー”ことReoNaの全国ツアー<ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2023 “HUMAN” >のファイナル公演が、7月13日、東京・LINE CUBE SHIBUYAで開催された。今年3月にリリースした2ndアルバム『HUMAN』を携えて、5月から7月にかけて全国7都市8公演を巡った今回のツアー。ふたを開けてみると、そこには、初の日本武道館ワンマン「ReoNa ONE-MAN Concert 2023“ピルグリム” at 日本武道館 ~3.6day 逃げて逢おうね~」を経て、なお意欲的に前進する彼女の姿があった。

TEXT BY 北野 創

鮮烈なアップから物語調のバラードまで――ステージで紡がれる『HUMAN』の音世界

開演前、会場のSEに耳を向けると、洋楽の懐かしいナンバーが流れ出す。それはエリック・クラプトンのヒット曲「My Father’s Eyes」。彼が1998年に発表したアルバム『Pilgrim(ピルグリム)』に収録されていたナンバーだ。本公演が武道館ワンマン“ピルグリム”と地続きにあることを示しているようで、早くも少し胸が熱くなる。やがて照明が暗転し、アルバム『HUMAN』収録曲「Weaker」の勇壮なイントロが奏でられると、ライトが激しく明滅して、いつの間にかReoNaが登場。ステージ中央に設置された縦長のLEDステージが光の道のように浮かぶその先端に立ち、“弱い僕ら(=Weaker)”の気持ちを束ねて代弁するように、その進む道を指し示すように、力強く鮮烈な歌声を放つ。2番ではギターの山口隆志、ベースの二村 学もステージ前までせり出してきて熱くパフォーマンス。本公演は観客の声出しOKということで、Dメロのコール&レスポンスのパートでは客席からも“wow”という声が上がり、連帯を確かめ合う。

「最後までゆっくり楽しんでいってね」と軽く挨拶したReoNaは、続いて「生命線」を披露。バンドマスター兼キーボードの荒幡亮平が奏でる厳かなピアノの響き、そして黒と赤の対比が際立つ照明演出により、ステージに神秘的な夜の帳が下りると、ReoNaは凄みさえ感じさせるボーカルで楽曲のひりつくような世界観を表現する。サビ前では客席からクラップが巻き起こり、そこから閃光のごときサビへと至る快感は他では得難いものがある。そこから荒幡亮平によるパイプオルガンのような音色の厳粛なソロ演奏に続き、ゴシックな雰囲気が魅力の「ないない」に突入。二村 学もウッドベースに持ち替え、ReoNaとバンドで妖しくも魅惑的な音世界を作り上げていく。

雄大なサウンドスケープに乗せて、どんなに絶望的な状況であっても今生きていることの意味を肯定してくれる「Alive」を届けると、続いてReoNaは愛用のアコギを手にして「FRIENDS」を歌唱。友人に語り掛けるように気さくな歌声が耳に心地良い。この2曲はどちらもReoNa本人が作詞に関わっているため(ruiとの共作名義)、彼女が普段抱いている気持ちに近づけたような気がする……なんて考えていると、彼女自身の半生をモチーフにした1stアルバム『unknown』収録曲「絶望年表」をここで披露するのだからズルい。ReoNaは優しいトイピアノの前奏を弾くと、ゆっくりとマイクスタンド前まで進んで、まずは自身のアコギのみを伴奏に歌を届ける。1番サビでキーボードが加わり、2番でその他のバンドメンバーの演奏も加わると、カントリー調の陽気なリズムに合わせて客席からも自然とクラップが。温かな光景だけど、なぜこんなにも胸が締め付けられるのか。ReoNaというシンガーの、いや、放浪の末に自分の居場所を見つけて優しい歌をうたう1人の女性の希望が、その歌声には込められているような気がした。

そしてここからは、物語のような味わいを持ったバラード2曲が続く。ReoNaによる、まるで子供に絵本を読み聞かせるような口調のイントロダクションを経て披露されたのは「さよナラ」。“おおかみのナラ”と“にんげんのさよこ”、友人同士だった両者の切ない“さよなら”を描いた、傘村トータ(LIVE LAB.)提供の楽曲だ。沈黙の間や物語の進展に合わせて転換するライト演出を含め、聴覚的にも視覚的にもドラマチックに表現される。続く「一番星」はバンマスの荒幡亮平が詞曲を含めて手がけた楽曲で(作詞は宮嶋淳子との共作)、こちらもまた“別れ”がモチーフになっている。荒幡亮平が奏でるピアノのしっとりとした響きに合わせて、繊細に歌声を紡ぐReoNa。足元のLEDステージが星空のようにまたたく。彼女は歌詞のラストの一節をアカペラで歌い、最後は荒幡の切なさを湛えたピアノの後奏が締め括った。

ここでドラムの比田井 修、マニピュレーターの篠﨑恭一を含むバンドメンバーの紹介し、ツアーの思い出を和やかに振り返ると(メンバーから「ツアー中に食べたもので一番美味しかったもの」を聞かれ、その場にしゃがんで考え込むReoNaがかわいらしかった)、続いてNHK「みんなのうた」2023年4-5月の「地球が一枚の板だったら」を歌唱。現時点での最新曲となるこの楽曲も傘村トータが作詞・作曲を担当しており、傘村トータらしい優しいまなざしの世界観が、2ndアルバム『HUMAN』の収録曲を中心とした本公演のセットリストにもなじむ。そこから同じく傘村トータが提供した「ライフ・イズ・ビューティフォー」へ。ReoNaの持ち曲のなかでもひと際爽快なこの楽曲。ステージの照明も一気に明るくなったなか、ReoNaもバンドが奏でる軽快なグルーヴに乗せてしなやかな歌声を響かせる。終盤には観客もヨコ乗りで揺れながらクラップ。その美しい光景と彼女が歌う“あぁ 生きてりゃいいのよ”というフレーズが、心を軽くさせてくれた。

神崎エルザ楽曲から2ndアルバム表題曲「HUMAN」までを貫くReoNaの芯

続いては近年のReoNaのライブでは欠かせない楽曲となっている「シャル・ウィ・ダンス?」。彼女が「踊る準備はできてますか?」と告げると、ステージの両サイドから総勢10名のダンサー、通称シャドウダンサーズの面々が登場。「今だけはすべてを忘れて踊りましょう」という言葉を合図に舞踏会の幕が開け、オーディエンスも一緒に踊りながらジャジーでシックだけどどこか享楽的な楽曲の世界を楽しむ。そんな華やかな雰囲気から一転、ReoNaは「病めるときも、健やかなるときも、いつかは終わっていく。忘する事無かれ」と静かに語り、エモーショナルなアップチューン「メメント・モリ」を投げかける。そのタイトルの意味は「死を忘れるな」。すべての物事にはいつか終わりが訪れること、でもだからこそ、今生きているこの瞬間がかけがえのないものだということ。そんな当たり前かもしれない事実のなかで、何もかもを吹き飛ばすような歌を届ける彼女が美しい。

そこから間髪入れず歌われたのが「VITA」。「メメント・モリ」と同じく、ReoNaの活動に欠かせないクリエイターの1人、毛蟹(LIVE LAB.)が詞曲を手がけたナンバーであり、ReoNaのアニソンシンガーとしての側面を形作った作品、『ソードアート・オンライン』シリーズにまつわる楽曲のフレーズを散りばめた、ある種の集大成的な楽曲でもある。閃光のようなライトが舞うなか、壮絶とも言えるバンドのアグレッシブなプレイとReoNaの迫真のボーカルが会場に熱狂を呼び込む。“命はあなたを忘れない”――その言葉は「メメント・モリ」のメッセージと表裏一体のように響き合い、様々な“絶望”と隣り合わせの世界で生きる我々の心に寄り添う。いや、この日の激しいパフォーマンスに「心に寄り添う」という言葉は似合わない。「心に刻み付ける」や「焼き付ける」といった表現のほうが妥当だ。その激しさもまた人の心を動かす力となる。

続くMCで彼女は、自身が劇中曲の歌唱を担当したTVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』に登場する歌姫・神崎エルザについて語る。ReoNaがアニソンシンガーになるきっかけを作った、彼女にとってかけがえのない存在であるエルザ。その大切さは、彼女が神崎エルザ starring ReoNa名義で歌った楽曲「Rea(s)oN」を、初の日本武道館ワンマンのラストナンバーとして披露したことからもわかるはずだ。エルザの姿に自分を重ねたと語る彼女は、ここで神崎エルザ starring ReoNa名義の楽曲「ALONE」を披露。ヴィヴァルディ「四季」をモチーフとしたこの楽曲には、孤独であり孤高の存在である神崎エルザらしい言葉が、そして“絶望に寄り添うお歌”を歌うために自分だけの旅路を続けてきたReoNaらしい言葉が詰まっている。“どこまでも We’re alone”“惜しむ別れも無いだろう”。どこかシニカルで絶望的だが、楽観的とも希望的とも取れるその言葉を、今のReoNaが歌う意味。そんなことを考えさせてくれる、意外だったがこの日の公演にしっくりとくる名演だった。

そしてライブは終盤に。「みんな出会いと別れを繰り返して今がある」「人はひとり、みんなひとり」「We’re alone」「we’re Human」「どうしようもなく生きていく」――そんな言葉を荒幡亮平のピアノ伴奏(しかも「絶望年表」のフレーズ)をバックにつぶやいていくReoNa。そう、前曲の「ALONE」から2ndアルバムの表題曲「HUMAN」へ。彼女のお歌は、それを通して伝えたい想いは、きっと5年前から同じ芯にあって、それがずっと繋がっているのだろう。ステージがスモークに覆われてまるで雲の上のような景色が現出するなか、ReoNaはファルセットを交えながら、人はどこまでいっても1人であること、それでも“どうしようもなく 生きていく”ものであることを、情感豊かに歌い紡いでいく。人間賛歌などという安い言葉では片づけられない人間の本質、逃れられない「孤独」や「個」という絶望のなかでも、“それでも”と生き続ける(あるいは歌い続ける)こと。足元のLEDスクリーンに投影された虹の映像演出を含め、そこには彼女なりの希望が表現されていたように思う。

ReoNaのライブにアンコールはない。「惜しむ別れはなくとも、最後って寂しいものですね」と、後ろ髪を引かれる気持ちを口にする彼女だが、ついに本公演、そして全8公演を巡ったツアーの最後の時間が訪れる。「大好きなお花の名前を、大好きな場所の名前を付けました」と紹介して歌ったラストナンバーは、澤野弘之が提供した2ndアルバム収録曲「SACRA」。桜色のライトがステージを照らすなか、桜の大樹のように、静かな生命力に満ちた歌声を会場いっぱいに響き渡らせるReoNa。この楽曲もまた“別れ”を惜しむ歌であり、同時に“Bye for now”と再会を願う歌でもある。ラストはステージ上に花びらが降り注ぎ美しい光景に包まれると、ReoNaは「めぐる季節の先で、またお歌を受け取ってもらえますか?」とファン1人1人と約束を結び、バンドが演奏を続るなか、ステージの三方でしっかりとお辞儀をして、最後はLEDステージが描く光の道を最後方まで歩み行き、もう一度深くお辞儀すると、光の道が消えると同時に姿を消した。

終わってみると「ANIMA」も「forget-me-not」も「SWEET HURT」もなし、彼女自身がこれまでライブで育ててきたヒット曲をあえて外し、完全に2ndアルバム『HUMAN』の世界観をステージ上で表現することに特化したセットリストだった。アルバムのリリースツアーなので当然といえば当然だが、かなり思い切ったセトリともいえるだろう。だが、だからこそアーティストデビューからもうすぐ5周年を迎える彼女の成長と表現力の幅の拡張をより強く実感することができたし、今のReoNaの核を捉えることができる濃厚なライブになっていたように感じる。次に予定されているのは、オフィシャルファンクラブ「ふあんくらぶ」会員限定ツアー「ReoNa Acoustic Live Tour“ふあんぷらぐど2023”」。久々のアコースティック編成でどんなお歌を紡いでくれるのか、楽しみにしたい。

<セットリスト>
01. Weaker
02. 生命線
03. ないない
04. Alive
05. FRIENDS
06. 絶望年表
07. さよナラ
08. 一番星
09. 地球が一枚の板だったら
10. ライフ・イズ・ビューティフォー
11. シャル・ウィ・ダンス?
12. メメント・モリ
13. VITA
14. ALONE
15. HUMAN
16. SACRA


●リリース情報
LIVE Blu-ray & DVD
『ReoNa ONE-MAN Concert 2023「ピルグリム」at日本武道館 〜3.6 day 逃げて逢おうね〜』
8月30日(水)発売

【初回生産限定盤(Blu-ray+CD)】
品番:VVXL-161~2
価格:¥8,000+税

【通常盤(Blu-ray)】
品番:VVXL-163
価格:¥5,000+税

【初回生産限定盤(DVD+CD)】
品番:VVBL-197~8
価格:¥8,000+税

【通常盤(DVD)】
品番:VVBL-199
価格:¥5,000+税

<収録内容(Blu-ray/DVD共通)>
01. ピルグリム
02. 怪物の詩
03. forget-me-not
04. SWEET HURT
05. ANIMA
06. 生命線
07. Alive
08. ないない
09. シャル・ウィ・ダンス?
10. トウシンダイ
11. 虹の彼方に
12. Lost
13. Someday
14. HUMAN
15. VITA
16. Till the End
17. Rea(s)oN

〇特典 ※初回生産限定盤のみ収録
・ドキュメント映像:Documentary of ReoNa「The pilgrim」
・撮り下ろしフォトブックレット
・LIVE CD

<収録内容(LIVE CD)>
01. ピルグリム
02. 怪物の詩
03. forget-me-not
04. SWEET HURT
05. ANIMA
06. 生命線
07. Alive
08. ないない
09. Someday
10. HUMAN
11. VITA
12. Till the End
13. Rea(s)oN

●リリース情報
ReoNa 2ndフルアルバム
『HUMAN』
発売中

【完全数量生産限定盤(CD+BD+Live CD+フォトブックレット付豪華仕様)】
品番:VVCL 2202-2205
価格:¥6,600(税込)
・特典映像(Music Video含)収録Blu-ray Disc同梱
・ライブCD同梱(ReoNa Acoustic Concert Tour 2022 “Naked” Live at Zepp Haneda(TOKYO) 2022.06.10)
・撮りおろしフォトブック同梱
・豪華BOX仕様

【初回生産限定盤(CD+BD)】
品番:VVCL 2206-2207
価格:¥4,400(税込)
・特典映像(Music Video含)収録Blu-ray Disc同梱

【通常盤(CD)】
品番:VVCL 2208
価格:¥3,300(税込)

<CD>
01. HUMAN ※新録楽曲
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 編曲:島田昌典
02. Weaker ※新録楽曲
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 編曲:堀江晶太
03. ないない ※TVアニメ「シャドーハウス」EDテーマ
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.)、毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:小松一也
04. シャル・ウィ・ダンス? ※TVアニメ「シャドーハウス -2nd Season-」OPテーマ
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:小松一也
05. さよナラ ※新録楽曲
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:荒幡亮平
06. FRIENDS ※新録楽曲
作詞:ReoNa、rui(fade) 作曲:rui(fade) 編曲:rui(fade)
07. ライフ・イズ・ビューティフォー
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:荒幡亮平
08. メメント・モリ ※新録楽曲
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
09. 生命線 ※家庭用ゲーム「月姫 -A piece of blue glass moon-」主題歌
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
10. Alive ※TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」OPテーマ
作詞:rui(fade)、ReoNa 作曲:rui(fade) 編曲:堀江晶太
11. SACRA ※新録楽曲
作詞:cAnON. 作曲:澤野弘之 編曲:澤野弘之
12. VITA ※新録楽曲・家庭用ゲーム「ソードアート・オンライン Last Recollection」主題歌
作詞:毛蟹(LIVE LAB.)、ReoNa 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:荒幡亮平

●ライブ情報
ReoNa Acoustic Live Tour“ふあんぷらぐど2023”

[開催日時]
2023年10月20日(金)三井住友海上しらかわホール
18:00 OPEN/19:00 START

2023年10月27日(金)品川インターシティホール
18:00 OPEN/19:00 START

2023年11月2日(木)福岡DRUM LOGOS
18:00 OPEN/19:00 START

2023年11月10日(金)なんばHatch
18:00 OPEN/19:00 START

[チケット]
全席指定 ¥7,800(税込)
※一部、ドリンク代別

チケット購入はこちら

関連リンク
ReoNa オフィシャルサイト
https://www.reona-reona.com/

ReoNaオフィシャルTwitter
https://twitter.com/xoxleoxox

ReoNaオフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCyUhtF50BuUjr2jOhxF3IjQ

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