瑞々しい感性を持ったシンガーソングライターが新しい風を吹かす。フライングドッグ / e-stone musicから、1人のアーティストが『シュガーアップル・フェアリーテイル』第2クールOP主題歌「サプライズ」でメジャーデビューする。
彼女の名前は中島 怜(なかしまれい)。フライングドッグが開催したオーディション「犬コン!」の声優・歌手・シンガーソングライター部門で見事グランプリを射止めた愛知県出身の18歳だ。無邪気で飾り気のない天然素材。混ざりもののない、透明感のある歌声はどこから生まれたのだろうか?その萌芽の軌跡と、デビューシングルについて話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
――怜さんは小さい頃からものづくりがお好きだったそうですね。
中島 怜 小さい頃から絵を描くことが好きだったんです。両親ともに仕事が忙しかったので保育園に遅くまで残っていることも多くて、ずっと絵を描いていました。そのときに絵を褒められる機会があって「自分で何かを生み出すのが好きなんだな」って。
――アニメを初めて観たのもその頃ですか?
中島 母がアニメ好きなんです。特にCLAMP先生の作品が大好きだったので、最初に観たアニメが『カードキャプターさくら』でした。気づいたら私もハマっていて、初めての夜更かしも『カードキャプターさくら』を観たいからという理由で(笑)。そこから主題歌をよく口ずさむようになって。挿入歌もよく歌っていたんです。特に(大道寺)知世ちゃんの「夜の歌」が好きで、学童や塾の帰り道によく歌っていました。
――怜さんの音楽面において、ほかに影響を与えた作品というと……?
中島 『けいおん!』が好きでした。(リードギター&ボーカルの)平沢 唯ちゃんと誕生日が一緒で!「性格も似てるね」と言われることも多く、運命を感じて、その時に音楽をやっている人ってかっこいいなっていう憧れができました。
――では、アニメソング以外で影響を受けたアーティストはいますか?
中島 洋楽、邦楽、時代問わず色々な音楽を聴いているんです。“怜”という名前も、レイ・チャールズ好きな母がつけたもので。邦ロックも好きなので、sumika、コレサワ、緑黄色社会、あいみょんなどの影響も受けています。
――ロックも好きなのかなとなんとなく感じていました。それでいて、賛美歌や聖歌のような優しく穏やかな雰囲気もあって……。
中島 通っていた中学校が聖歌隊のいる学校だったので、歌のテストも定期的にありました。担当の先生が厳しいと評判だったのですが、歌を聴いてもらったときに「なんでそんなに上手いの?」「音大に行ったほうがいい」と言ってもらえて、本当に嬉しくて!元々は勉強が苦手なタイプだったので、先生の言葉で自分の中の世界が開けた感覚がありました。
――中学の先生の一言によって、怜さんの音楽人生にはどのような変化があったんでしょうか?
中島 音大を目指すようになりました。また、高校2年生のときからボイストレーニングにも通い始めました。そこで先生から「ギターを弾いてみたら?」と言われて、ギターを触って、曲を作ってみようと。そしたら作れたんです!
――Fコードが押さえられず挫折する人が多いなかですごいですね。
中島 私、手はすごく小さいのですが、コードを押さえることはできたんです。先生に教えてもらったギターのコードくらいしかわからない状態でしたが、なんとか曲は作れました。表立った活動はしていないのですが、曲作りは続けていて。
――フライングドッグが開催したオーディション「犬コン!」に応募されたきっかけはなんだったのでしょうか?
中島 ボイトレの教室に「犬コン!」のポスターが貼ってあったんです。ポスターやHPにさくらちゃんが載ってたんですよね。「あ、さくらちゃんだ!受けてみよう!」と。元々『カードキャプターさくら』で坂本真綾さんが好きだったのですが……でもレーベルとかは意識したことがまったくなくて(苦笑)。
――蓋を開けてびっくりという状態?
中島 はい!(笑)。「私の好きなアニメを(フライングドッグが)たくさんやってる……!」って。むしろ「私、それで育ちました!」という作品ばかりで、気づいたときに運命を感じました。
――グランプリを取ったときはどのような気持ちでしたか?
中島 私、落ちると思っていたんです(苦笑)。オリジナル曲のギター弾き語りの時には緊張しすぎてストロークがガタガタに……その次に「愛・おぼえていますか」(映画『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』主題歌)を歌ったときは、緊張が一気に消えて、極度のリラックス状態になって、歌詞を噛んでしまったんですね。そこで思わず笑ってしまって。サビ前になんとか挽回したのですが、「絶対に落ちたな」と。だからびっくりしすぎて「合格ってもしかして別の意味があるのかも……?」と調べたくらいで。
――(笑)。自然体の怜さんが光ったのかもしれませんね。怜さんはこうやってお話しされている時はふわっとした雰囲気。でも火がついた時のアグレッシブさがすごいなと。
中島 何事もやらないと気がすまない性格なんです。諦めるという選択肢がないので、ギターを買ってもらうときも、何度もお願いをして母には「くどい!」と言われていました(笑)。曲作りのときも納得するまでやらないと気がすまなくて。それは歌う時もそうです。元々こだわりが強いタイプなんですよね。話がそれてしまうのですが、私、普段から色々なところに体をぶつけてしまうんです。で、右だけぶつけてしまうのが嫌で、左側もぶつけようって。
――え!?(笑)。
中島 右だけ痛いっていうのが気持ち悪くて、バランスを取ろうと。色々なことに対して、気になり始めるとキリがない。周りからは「おかしいよ」って言われます(笑)。でも父も母も、小さい頃から自分の好きやそういうこだわりを否定しないでいてくれました。
――のびのびと育ててくれたんですね。あのきれいで澄んだ歌声はどこから生まれるんだろうって思っていたのでなんだか納得しました。ご自宅は緑豊かな場所に?
中島 はい。愛知県瀬戸市出身なのですが、実家は山の方というか……自然に囲まれた場所にあります。父が仕事柄、海外に出張する機会が多く、その時には一緒についていって。特にアメリカのミシガン州には長くいたので、リスと遊んでいました(笑)。
――「サプライズ」のMVも自然に囲まれた場所での撮影でしたね。
中島 「サプライズ」のMVは地元の瀬戸市に少し近い雰囲気です。「サプライズ」をレコーディングした時はまだ地元にいたのですが、曲を初めて聴いたときに、瀬戸市の雰囲気にすごく似合ってるなって。「こういう自分でいたい」と思う自分を形にしてくださっている感覚があって、とてもありがたいです。MV1つからも、プロデューサーの福田(正夫)さんと目指す方向性が一致しているようにも思っていて。良いスタッフさんに恵まれ、フライングドッグに所属させてもらえて良かったなってしみじみ思います。
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