リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2023.07.19

収録曲全部が主役級!TrySail、5thアルバム『SuperBloom』を徹底解剖!

収録曲全部が主役級!TrySail、5thアルバム『SuperBloom』を徹底解剖!

今年デビュー8周年を迎えたTrySailの5thアルバム、『SuperBloom』が7月19日にリリースされた。「華麗ワンターン」をはじめとする振り切った曲から、かわいさに全振りした曲まで、個性的な楽曲たちを3人はどのように表現したのか? また、8月からは久しぶりに声出し解禁のツアーがスタート! 声出しができないなか、観客と共に振りを楽しむという文化を確立させたTrySailが、次に目指す場所とは――?

INTERVIEW BY 青木佑磨(学園祭学園) TEXT BY 金子光晴

キラキラした個性が詰まった「宝石箱」

——ニューアルバム『SuperBloom』ですが、改めて完成したアルバムはどんな作品になりましたか?

夏川椎菜 アルバムのコンセプトが「宝石箱」なんですけど、本当にコンセプト通り、個性豊かというか、色も違えば形も違うような楽曲たちが集まったアルバムになったと思います。

——その「宝石箱」というコンセプトを初めて聞いた時はどう思いましたか?

夏川 実は、アルバムのコンセプトは収録が終わったあとに知ったんです。私たちの中でもレコーディングしている最中は「これどういうアルバムになるんだ?」みたいな(笑)。1曲1曲にちゃんと向き合いはしたけれど、かなりバラバラだったので、「これ、まとまるのかな?」って思ったりして、新曲だけを収録していた時には、あっちゃこっちゃいってるなって感じは正直ありました(笑)。でも、既存の曲が合わさったときに、意外と合間にスッと入るような曲が多かったんだなっていうのはすごく思いましたね。ちゃんと既存曲の個性も立っていて、すごくいい流れになっていました。

麻倉もも 1曲1曲がすごく個性的で、今までやったことがないような曲調もたくさんありました。ただ、今まで歌ってきたような、すべてを受け入れてくれるような曲たちも入っていて、1枚になったときにすごくまとまりのあるアルバムになりましたね。5枚目にして、またTrySailが大きく成長したなと思ってもらえるようなアルバムになったんじゃないかなって。それくらい新しい表現方法だったり、色々なアプローチで歌っている曲が多いので、成長を感じていただけたら嬉しいですね。

——1曲1曲が本当に個性的で。

雨宮天 そうなんですよ。だからキラキラというか、ギラギラっていうか、輝きが押しつけがましい、みたいな(笑)。

夏川 確かにね、どれも「主役です!」みたいな(笑)。

雨宮 自分が主役になりたい曲たちを無理やり詰め込んだみたいな、そのパワー感がすごいなと思いました。大きいライブでもTrySailは盛り上げ担当みたいなポジションを担わせてもらうことが多くて、「TrySailはパワフル、元気系でいいんだな」って思えていた時だからこそ、このくらいギラギラしてていいのかもなとは思いましたね。

——皆さんが今のTrySailの強みについて、「とにかくライブが盛り上がる」「楽しい」とおっしゃっていましたが、その強みをさらに強化するような曲ばかりですね。

雨宮 これだけ個性的な曲でもパワフルにやれるんだぞ!って。「ザ・盛り上がり曲」で個性でも突っ切れまっせ、みたいなのがアピールできるのかなと。

夏川 試されているような気はします(笑)。ライブでやれるのか、乗りこなせるのか、みたいな。

麻倉 レコーディングもだけど、「ライブでこれどうやるの?」って試されている感はありますね。

夏川 あまりにも曲に沿いすぎるのも、自分たちの個性が負けてしまうことになりかねないので、その塩梅も難しいところでしたね。

持てる「フレッシュ」感を全部出す!

——では新曲について触れていきたいのですが、まずはリード曲の「SuperBloom」ですね。今までの表題曲の流れを汲んだ楽曲ですけど、今まではここに「若手っぽさ」が乗っていたと思うんですよ。でも、この楽曲はみんなを連れて行くパワー、推進力のほうにステータスを振った感じがあります。

雨宮 本人たち的には、持てる「フレッシュ感」を出しましょうみたいな感じでした(笑)。その結果、推進力を感じてもらえたのだとしたら、新人だったときとは持てる力の最大値が全然違うからですかね?自分なりのフレッシュ感を出した結果が「推進力」になっていたとしたら、もうそれが「強み」になったということなのかも。

——本人的にはそこまでパワーに振ってるつもりはないですか?

雨宮 ないですね。フレッシュ、若さみたいなのは意識しましたけど、気づかないうちに強さを得ていたのかもしれないです(笑)。

麻倉 本当に、元気で明るくて、フレッシュな感じが私も第一印象でありました。8年くらい活動してきて、また新たに初心に戻って「もう1回みんなで出航するぞ!」という気持ちも入れながらレコーディングをしましたね。すごく個性的な曲たちをまとめる表題曲というのもあって、誰も振り落とさないぞっていう気合いは確かに入っているかもしれないです。

夏川 曲の作りとしては、とにかくずっとハイテンション。最初の走り出しからバン!っていくし、Aメロ、Bメロで1回落ちるのかなと思いきやずっとそのままキープして、またサビで、Dメロにいってもさらにさらに上にいく曲なので、力押しもできるんだけど、それだと盛り上がりが逆に作りづらいと思って。なのでバーンって勢いはあるんだけど、その中でも抑揚をつけられるようにというのは意識して歌いました。

——これはライブで皆さんに声を出してもらう曲、ですかね?

夏川 そうですね!「大発見!」「イエーイ!」ってやってくれる感じなのかな。

雨宮 あー、確かに。

麻倉 「Boom Boom Boom!」とかは言いたくなるような感じかな。

——歌録りの時もフレッシュ、若いというイメージでしたか?

雨宮 かわいさというより、「元気感」ですね。

夏川 パワフル!

麻倉 キラキラ!

夏川 ギラギラ!(笑)。

今回の「最かわ枠」はこれ!

——続いては「ちゅるちゅわ」。

夏川 この曲は恥ずかしがらずに、とにかく「かわいいをやっていいよ」って言われている曲だなと理解したので、自分にできる最大限の「かわいい」を突き詰めました。

雨宮 今回のかわいい枠。

夏川 最かわ枠(笑)。TrySailの中でもここまでやりきったことはないんじゃないかっていう、かわいいだけにステータスを振っている感じですね。今までも「かわいい元気」「かわいい癒し」はあったけど、「あざとい」みたいなところまでいけているのはなかなかないんじゃないかと思います。

——確かに「はなれない距離」なんかはウィスパーとか、かわいいに別の要素を足していますしね。

麻倉 確かに純粋なかわいさというよりも、「狙っていくかわいさ」みたいな、もう「わかっている」人たちが表現するかわいいという感じですね。歌詞の単語とかもかわいくて、「ちゅるちゅわ」って言葉自体もそうなんですけど、〝もっときゅっとなって〞〝楽しい?辛い?分かんない!〞とか、やりやすそうな単語が揃っていて、ナンちゃん(夏川)が言ってくれたみたいに、「やってください」と言わんばかりの歌だったので、すごく楽しく歌わせてもらいました。

——それは具体的にディレクションで言われるんですか?

夏川 多分、「言わなくてもわかるでしょ」くらいな感じです(笑)。

雨宮 でも、K-POP っぽい雰囲気のある楽曲なので、あまり日本語をはっきり歌いすぎないほうがかわいく聴こえたりして、そういう発音の部分は結構ディレクションしてもらいましたね。

——「かわいいに振る」という話でしたが、具体的にどうアプローチするものなんでしょうか?

夏川 私はちょっと吐息多めにしました。発音にも通ずるところなんですけど、はっきりパキパキ発音すると、声質のこともあって元気に聴こえがちなので、かわいく歌おうと思ったら、ちょっと声自体もふわふわさせるというか、年齢感を下げるのは意識しました。

麻倉 私は歌の語尾をいつも以上に跳ね上げたり、「う」の口を結構大げさにやったりとか。「ちゅるちゅわ」っていう単語がたくさん出てくるんですけど、普通に言うよりも、「う」を強調して言うとかわいい感じの雰囲気になるので、口を尖らせる感じで歌っていますね。

雨宮 かわいければ、思いついたことをどんどんやっていても許されそうなところがありますね。例えば、突然ささやきボイスを入れてみたりとか、ちょっとセリフっぽく聞こえるような音があってもいいし、かわいければ滑舌をサボってもいいし。「溢れる」じゃなくて「あふぅれぇるぅ」みたいにちょっと口を開きめで言うとか。だから、砂糖投げて、蜂蜜投げて、キャラメル投げて、みたいな(笑)。糖分であれば何でもやってみるのを許される曲かなって思います。

——でもライブで、このレコーディングのときのキャラにガラリと変えられるものなんですか?

夏川 それも試されてる感がありますよね(笑)。耐えられるのかな、みたいな。

麻倉 基本的にライブのセットリストを組むときも、自分たちがやりやすいように、気持ちの変化とかを考えながら作るので、多分大丈夫ではあるんですけど(笑)。

雨宮 最初が〝ちゅるちゅちゅるちゅーわ〞って歌詞なので、そこで持っていってくれることを祈る。

夏川 そこで持っていけたら勝ちだよね。それに、これを聴いて「ライブで観たいな」と思ってくれている人は、やればやるだけ喜んでくれると思う(笑)。やり上げていても全然、「ありがとうございます!」ってなる(笑)。私たちが気を付けなきゃいけないのは、私たちが面白くなっちゃいすぎないようにってことだよね。

雨宮 ナンちゃんは笑っちゃうタイプだもんね。

——「わー、みんなの前で〝ちゅるちゅる〞言ってるわー」って(笑)。

夏川 冷静にならない。冷静になっちゃダメ(笑)。

「Sunset カンフー」「華麗ワンターン」の系譜

——では「Ah! La Vie En Ro se!!! -ア!ラ・ビ・アン・ローズ-」は?

夏川 私は「あっ、(スタッフさんが)味を占めたな」って感じでした(笑)。これまでのTrySailがやってきた曲の系譜で、「Sunset カンフー」で「異国感いけるんだ」、「華麗ワンターン」で「セリフっぽい歌い方もいけるんだ」っていうことで、「Sunset カンフー」と「華麗ワンターン」のいいとこ取りをしてるなというのはすごく感じましたという。

——あと、TrySailが〝船〞をテーマにしてるから、色んな異国に行けるというのもありますよね。

夏川 確かにそうかも! 異国に行きやすいんだ、我々(笑)。

——TrySailが旅をしているんだなって思えちゃうんですよ。

麻倉 確かに。歌詞も〝旅立とう〞から始まってるし。私も曲を受け取ったときは、スッと受け入れられて……感覚マヒしてるのかな?(笑)。もし数年前にこの曲を受け取っていたら、「えっ、これTrySailの曲?」って戸惑いがあると思うんですけど、「Sunset カンフー」以降、少しずつレベルを上げられてきているので、割とすんなり受け入れられました。ただアラビアンな曲って今まで聴くほうでも触れたことがなくて、こぶしを入れたり、喉を「ワレワレハ、ウチュウジンダ」みたいな感じで震わせて歌ってみたりとか、今までやったことないような方法で歌ったので、新鮮なレコーディングでしたね。

——あまりポップスにない歌唱方法をやっていますが、そのようなディレクションがあったんですか?

雨宮 そうですね、仮歌さんもやっていたので、これは求められてるぞって。

麻倉 それプラス、レコーティングで「もっとこうしよう」っていうふうに作っていった感じですね。

雨宮 スタッフさんが味を占めているのはわかっていたんですよ(笑)。そういう意味ではもちちゃん(麻倉)と同じように「あー、今度はアラビアね、確かにまだそこやってなかったね」って(笑)。仮歌を聴いた時点で、私、演歌を聴くのも好きなので、節を合わせるのが楽しそうだなってワクワクしましたね。ただレコーティング現場では、Aメロで節を回して、アラビアンを意識したとして、AメロとBメロ、さらにサビと、場面がどんどん変わっていく感じがあるので、どういうふうに歌声を切り替えればいいか、みたいなことは話し合いながら進めていきました。

——確かに、ふざけるだけではなくて、サビにガッと盛り上がる瞬間がちゃんとあって。

雨宮 そうですね。前に出していくパワー感がないと、ライブでやって楽しい曲にはならないと思ったので、そこは意識しました。

——割と今のTrySailの理想的な状態なのかもしれないですね。本人たちの思っている強みと、お客さんが求めているTrySail像と、スタッフの思惑が、きれいにかみ合ってるという。でも、コンセプトとしてアラビアンナイトに振り切った曲も多いと思うんですけど、この曲は現代の普通の女の子が主人公。

雨宮 そうですね。だからキャラっぽさを求められてるのかなと思ったので、ちょっと子供っぽく歌ってみたりもしました。

——こういう振り切った曲と、素材の味、出汁の味を求められる曲、TrySailでやるにあたってどっちが得意というのはありますか?

夏川 最終的にライブでやることを考えると、振り切れば振り切るほどやりやすいなとは思います。その場の盛り上がりが作りやすいですからね。「出汁」曲だと、自分たちの中でやっていくしかないけど、外に向けての曲だったらお客さんからの盛り上がりもエネルギーに変えていけるので。

麻倉 確かに、ライブで歌う前提なので、個性的な盛り上がり曲のほうが、その時のお客さんの状態によってもまた違った曲になっていきますし、キャッチボールみたいに「こう来たから私たちもこう返す」という感じで、どんどん高みに行けるという意味では、ライブのTrySailとしてはそっちのほうが向いているのかなとは思いますね。

雨宮 私も振り切った曲好きですね。振り切った曲のほうが色々演じられるから楽しいです。燃えるし!「こういうの来ました、じゃあどう演じますか?」って言われている気がするから、「やってやろうじゃん!演じてやろうじゃん!」みたいな。結果的に今回は振り切った曲が多いから、色んな役を演じた気がして楽しかったです。

次ページ:歌謡曲?それともハロプロ?

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP