――「Life Goes On」についてはどのような意図から誕生した曲でしたか?
亜咲花 『ゆるキャン△』の楽曲を歌う以前はEDMを基調としたものが多かったんですけど、『ゆるキャン△』の歌をうたうことでグルーヴ感ある曲も自分に似合うと気づいたんですよね。デビュー3年目にしてやっと(笑)。だから、亜咲花の曲の8割はロックなんですけど、『ゆるキャン△』で亜咲花を知ってくれた方のためにも『ゆるキャン△』を感じさせるような、7、80年代ゴスペルを思わせる曲を入れたいと思いました。なので、大人数で歌うような、厚みがあってグルーブ感のある楽曲をお願いしたら、担当ディレクターさんが見つけてきてくれました。
――歌詞についても教えてください。
亜咲花 『ゆるキャン△』は、キャンプに行く前のワクワクドキドキが歌詞のテーマだったんですよね。でもこの曲ではそこから広げて、生きていく上で直面する問題を無理にクリアしようとすると息苦しくなるので、「視野を広く持とう」「あと回しにしてもいいよ」という応援ソング的な感じで書きました。楽曲をもらったときからコーラスのところは英語詞にすると決めていました。その上で、日本人の耳に残りやすくて発音もしやすい音、ということで濁点、特に「g」で始まる単語などをサビの終わりには意識して選びました。
――この曲でも、亜咲花さんが持つスケールの大きな歌唱を感じました。
亜咲花 そうですね。歌っていると、亜咲花の声ってこういう曲が一番合うんだな、とあらためて思わせてくれました。「No.1」みたいに「希望」を歌う楽曲は、私の声質だと雰囲気が少し重くなるんですよね。声と音が矛盾してしまうところがあって。でも、「Life Goes On」のようにグルーヴ感があるとハスキーさが味になるんです。ただ、ライブで歌う曲はロックが多いので、バランスや塩梅をどうとるかは宿題ですね。だから、自分に合う曲でもあり、自分への課題も見つけられた、収穫が多かった曲でした。
――ラストに収録された「追想」はかなり攻めた楽曲ですね。
亜咲花 「追想」は、(所属事務所のCAT entertainmentの)伊藤(中也)社長からいただいた、「(昭和)歌謡曲」というアイディアから生まれました。いろいろな亜咲花の顔を見せるというコンセプトがあったんですけど、前に演歌っぽい曲は歌ったことがありましたし、あとは歌謡曲だな、というところでした。それに私が元々歌謡曲をすごく好きだったんですよね。実際にレコーディングした歌を聴いてみると、アニソン歌手にしては斬新すぎるとは思うんですけど(笑)、でも、シングルだとタイアップ曲が作品を背負っているので、カップリング曲といえどもなかなか振り切った曲は作りにくいんですよね。チャレンジするならアルバムしかない、という気持ちでした。編曲は都志見隆さんにお願いし、サックスも吹いていただいているで、ガチの歌謡曲になったと思います。そこに、平成生まれの私が歌詞を書くという(笑)。
――歌謡曲といえば、作詞においても優れた作家陣が名を連ねていました。
亜咲花 阿久悠さんとか。
――なかにし礼さんとか。作詞は難しくなかったですか?
亜咲花 意外と得意というか、すらすらと出てきました。「携帯」がない時代であるとか、いろいろな制約はありましたけど、「波止場」とか「カモメ」とか「曇りガラス」とか「ネオン」とか、世代だったスタッフの皆さんに言葉を募りながら当時を思わせる歌詞を作っていきました。「トレンチコート」は伊藤社長からの推薦でしたね。私は「ルージュ」とか入れたかったんですけど、もう入れる余裕がなくて(笑)。あとは、歌謡曲って晴れよりも曇天、むしろ雨が降っている中で聴くような、大人な世界のイメージがあったので、歌詞を聴いたときに情景が浮かぶ詞を意識しました。
――大人なイメージという意味では亜咲花さんの声質は合っていますね。
亜咲花 そうですね。いつもは引き算の考え方ですけど、今回はやりすぎてもいいと思いました。しゃくり入れ込んで。
――収録される既存曲についてはどのような想いがありますか?
亜咲花 デジタルシングルのみの配信曲や、亜咲花名義のCDとしてはリリースされていない曲をようやく入れられた、というところはありますね。『シンスメモリーズ星天の下で』の主題歌だった「光と影のラプラス」もゲームのイベントでは歌わせてもらいましたけど、自分のイベントやライブでは1回も歌っていないんです。亜咲花名義でリリースしていない曲を自分のライブで歌うのはちょっと違う気がして……。やっぱり、「亜咲花」を追ってCDを買う人は知らないかもしれないじゃないですか? だから、(ゲーム『ゆるキャン△ Have a nice day!』オープニング主題歌)の「See The Light」もライブでは歌っていません。(ゲーム『ANONYMOUS;CODE』グランドエンディングテーマの)主題歌集に入っているだけだった「Mob’s God’s」もそうです。ツアーで歌える曲が一気に増えた感じですね。
――シングルリリースされていない曲で特に印象に残っている曲はありますか?
亜咲花 「Mob’s God’s」については歌詞をいただいたとき、どういう意図が込められているのかまったく理解できなくて。(作詞曲した)志倉(千代丸)さんの曲ってわりとそういう感じなんですけど、このときは本当に読めなかったです。なので、無機質な感じの曲に合わせて、機械のように歌ったことを覚えています。ここで亜咲花を出してしまうと世界観が壊れてしまう、とも思ったんですよ。亜咲花のカラーは歌い上げるところにあると思っていたので、レコーディングしたときは不安でいっぱいだったんですけど、でもゲームとすごく合っていました。だから、作品に合っているかどうかって一か八かなところがあるんですけど、それはすごく面白くて印象には残ってます。
――アルバムを『Who’s Me?』と名づけた理由については?
亜咲花 ここ数年間でのいろいろな経験を経て、自分がアニソン歌手として何をみんなに伝えていきたいのか、自問自答する時期に入ったと感じたんですよ。そこからですね。あとは、いつもリリース時の年齢とタイトルを絡めていて。今回は23歳の時に出すアルバムなので「ひぃ(1)、ふぅ(2)、みぃ(3)」の「ふぅ」と「みぃ」からとりました(笑)。
――今回のアルバムでは、三冠を獲る、No.1を獲る、という覚悟を示していますが、そうやって自身を突き動かす最大のモチベーションは何でしょうか?
亜咲花 根源はやっぱり、亜咲花の歌を聴いてほしいというところだと思います。どれだけ競馬をやろうと、声優のお友達の番組に呼んでいただこうと。ただ、そのときに「アーティストの亜咲花」ではなく、「アニソン歌手の亜咲花です」と紹介してもらうようにはしています。「アニソン歌手」という言葉はこの業界だけにとどまっている印象があるんですよね。まだまだアンダーグラウンドというか。なので、私が少しでも世に出ていくことで「アニメ専門で歌う歌手がいるんだ」「アニソン歌手にこんな人がいるんだ」と知ってもらえたら嬉しいです。『プレイボーイ』さんでグラビアをやらせてもらったときも「アニソンを歌うシンガーの」という言い方にしてもらったんですけど、気持ちとしてはアニソン歌手の誰もやったことがないことをやっていこうというところがあります。勿論、歌がベースにはありますけど、TVで見たとか雑誌で見たとか、ライブに来てもらう入口は何だっていいので。最近だと「競馬」から亜咲花に入ってくる方もすごく多いんですよ。
――競馬関係者への周知度も上がっていますよね。
亜咲花 ガチの予想屋と対決もしていますしね(笑)。やっぱり、歌を聴いてほしいなら自分からきっかけを作らないとダメなので。こんな(手を広げて受け身のポーズをして)感じなのに「私の歌を聴いてくれない」って言う資格はないと思うんですよね。受け身なのに「なんでMVが再生されないんだろう?」と思うのはエゴであって。でも、努力して努力して、少しでも名前を知ってもらうきっかけを作った上でなら間違いではないと思うので、発言に説得力を持たせるというところもあるかもしれないです。
――その意味では、アニソンを知らない競馬ファンやグラビアファンなどが聴く可能性のあるアルバムということにもなります。
亜咲花 だから、「Triple Crown」や「No.1」のように、そっちの畑の言葉を引用したりモチーフにしたりすることでハードルを下げています。自分とは違う畑にいる人たちにどう響かせるか、そこを考えて下から下から攻めています(笑)。
――一方で、アニソンもJ-Popも、ではなく、アニソン歌手という肩書にこだわる理由はなんでしょうか?
亜咲花 それ、よく言われます。でも、ドラマの主題歌を歌うことがあったとしても「アニソン歌手」と言い続けます。アーティストとは名乗らないです。ボイトレの先生には、私みたいに「聴かせる」タイプはJ-Pop向きだと言われたこともあるんですよ。アニソンだとやっぱり声優さんみたいな可愛い声の方がウケるし。でも、亜咲花がここまで死に物狂いで頑張ってきた理由はやっぱり、歌よりもアニソンが好きだからなんですよね。アニソンを歌い続けてきた中で「歌うのって楽しいな」と気づけたのであって。それに先日、ささきいさおさんにお話を聞く機会があったんですけど、自分はアニソン歌手であると仰っていたんです。いろいろな活動をしてきた大先輩がアニソン歌手を名乗っているんですから、私も絶対死ぬまで続けようという気持ちになれました。そこで、先輩が作ってきた道を次の世代のアニソン歌手につなげていきたいですね。
――そんな亜咲花の強みというと?
亜咲花 アニソン歌手の使命って、作品にどれだけ寄せられるか、どれだけ命を費やせるか、だと思うんですよ。亜咲花のカラーは後回しにして、カメレオンのように作品に染まっていく中で、亜咲花を好きになってくれた人をどう満足させるか。となるとそこはカップリング曲が個性を出していく場かな、と思っています。亜咲花はファンとの繋がりを大事にする曲を作ってくれた、と思ってもらうとか。昔は、グループ感のある声で勝負したいと思った時期もありましたけど、それこそ自分から可能性を狭める行為だと思うので。どんな作品にでも染まって生きる自分を強みにしていきます。
――曲を聴いたあとでクレジットを見て亜咲花さんと気づく、それくらいがアニソン歌手としては本望かもしれないですね。
亜咲花 なので、いろいろな曲が歌える器用さが自分のカラーにできていると思っています。あともう一つ挙げるとすると「英語」。
――ですね。
亜咲花 うん、ここだと思います。カップリング曲はファンに向けているので日本語詞が増えていますけど、タイアップ曲は世界にも届けることを視野に入れつつ、4割は英語詞入れることにしているので。歌詞でも個性を出していきたいとは思っています。
――今回の新曲にはそういったカップリングでの蓄積が詰め込まれていますね。
亜咲花 はい。『ゆるキャン△』もあれば『ひぐらしのなく頃に』もあるし、そうなると自分のカラーなんて消えるし、ライブもすごく難しくなるんですよね。さっきもお話ししたように私の曲はロックが多いので、その中で『ゆるキャン△』を聴きに来た人をどう楽しませるかという点で。実際、予想と違っていたと思ったお客さんもいたと思うんですけど、そのお客さんを納得させるものをカップリング曲で用意しているんです。私はアニソンを歌う以上のことは望んでいないので、とにかく作品に寄り添ってはいくんですけど、それ以外のところでも亜咲花の歌を楽しんでもらう土壌を作り続けてもいきたいですね。
●リリース情報
亜咲花
『Whoʻs Me?』
発売中
【DVD付盤(CD+DVD)】
品番 USSW-0413
価格:¥6,050(税込)
【通常盤(CD)】
品番 USSW-0414
価格:¥3,850(税込)
初回購入特典
DVD付盤、通常盤 共通 初回封入特典:亜咲花オリジナル生写真(プリントサイン入り)※全5種類のうち1枚をランダム封入
DVD付盤のみ 初回封入特典:亜咲花直筆サイン入りCD(盤面に本人サイン) をランダム封入
<CD>
1.「Triple Crown」 (BS11「アニゲー☆イレブン!」 2023 年 6 月エンディングテーマ)
2.「No.1」
3.「Life Goes On」
4.「Sun Is Coming Up」 (映画「ゆるキャン△」オープニングテーマ)
5.「Easy Life, Easy Curry -カレーメシのうた-」 (「日清カレーメシ」×「ゆるキャン△」コラボソング)
6.「See The Light」 (Switch/PS4「ゆるキャン△ Have a nice day!」オープニングテーマ)
7.「Ready Set Go!!」 (TV アニメ「賢者の弟子を名乗る賢者」オープニングテーマ)
8.「夏夢ノイジー」 (TV アニメ「サマータイムレンダ」2nd オープニングテーマ)
9.「BELIEVE MYSELF」 (TV アニメ「シキザクラ」オープニングテーマ)
10.「光と影のラプラス」 (Switch/PS4「シンスメモリーズ星天の下で」オープニング主題歌)
11.「Mob’s God’s」 (ゲーム「ANONYMOUS;CODE」グランド ED テーマ)
12.「燈火」 (Switch/PS4「サマータイムレンダ Another Horizon」オープニングテーマ)
13.「Trust My Heart」
14.「バラッド」 (TV アニメ「賢者の弟子を名乗る賢者」8話エンディング)
15.「追想」 (亜咲花の捜査 FILE エンディングテーマ)
<DVD>
「Triple Crown」 Music Video
「Triple Crown」 Music Video Making Movie
亜咲花オフィシャルサイト
http://asaka1007.jp/
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