INTERVIEW
2023.07.25
和楽器バンドが、7月26日(水)に約3年ぶりとなるオリジナルアルバム『I vs I』をリリースする。
今作品はタイトル通り“戦い”がテーマ。音楽と向き合う自分自身との戦い、ライバルや自分たちを取り巻く環境との戦い、そして、和楽器バンドのメジャーデビュー以来9年間、自分たちの音を世界へ届けるための戦い。詩吟、和楽器と洋楽器、それぞれのプロフェッショナルが集まった孤高のハイブリッドロックエンタテイメントバンドならではの、絢爛で気高い“戦い”が本作では繰り広げられている。それはコロナ禍をそれぞれの持ち場で戦ってきた我々にとっても共感できるもので、同じ目線で共に未来を見ることができる、というのも『I vs I』の特徴ではないだろうか。つまり、今を生きる我々にとってのアンセムでもあるのだ。
戦いの狼煙を上げるのは、アニメ『範馬刃牙』野人戦争編のOPテーマ「The Beast」。無類の『刃牙』シリーズ好きでもある町屋(ギター&ボーカル)、黒流(和太鼓)、山葵(ドラム)の3人に、アニメや『刃牙』シリーズへの想い、アルバム『I vs I』の戦いについて話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
――今回集まった皆さんは、和楽器バンドの中でも『刃牙』シリーズ好きと伺っています。アニメや漫画に触れたきっかけや、『刃牙』シリーズにまつわる思い出を教えてください。
町屋 僕は小学生の頃からアニメが大好きで。北海道の片田舎で育ったんですが、隣の家のお姉ちゃんが当時のアニメ雑誌を定期購読してるような人だったんですよ。だからそのお姉ちゃんから色々教えてもらっていました。幼少期によく読んでいたのは『魍魎戦記MADARA』ですね。小学生のときには『MADARA』や『パトレイバー』、大友(克洋)先生の作品などを、思春期には『砂ぼうず』を読んでいました。『刃牙』シリーズは大人になってから読み始めたんですよ。キックボクシングや格闘技など、色々やってきていたので、読んでいてモチベーション上がるんですよね。ほぼ毎日読んでいます。
――ある種バイブルとも言える存在だったんですね。山葵さんはいかがですか?
山葵 僕も小学生ぐらいからですね。僕は生まれが中国で、当時の帰国子女や中国出身者あるあるなのですが、スカパーに加入していたんですよ。要はスカパーに中国のチャンネルがあるんです。
黒流 へえ。なるほど。
山葵 家族は中国のドラマなどを観ているなかで、僕はスカパーでアニマックスと、カートゥンネットワークを観ていて。だから地上波で放送されているリアルタイムのアニメだけでなく、『ガンダム』シリーズや『らんま1/2』『バカボン』など、少し前の世代のアニメをよく観ていました。漫画に関してもジャンル問わず。『刃牙』は中学生くらいのときから読み始め、追いかけ続けています。特にここ数年はずっと体を鍛えているので、周りから「刃牙みたいだね」と言われるようになって嬉しいんです(笑)。で、僕、1つ夢があって……。
──なんでしょう?
山葵 『刃牙』に出たいんですよね。バトルシーンに偶然居合わせる人になりたい(笑)。
一同 (笑)
黒流 語る役ね(笑)。
――通行人に!
山葵 そうそう。「あんなの人間じゃないですよッ!」って後に語っていく登場人物。あの描写は『刃牙』シリーズの発明だと思っています。この想いがいつか板垣(恵介)先生に届けばなと思っています……!
――期待していますッ!黒流さんはどうでしょうか。
黒流 僕は男3人兄弟の末っ子なんですけど、一番上の兄がコスプレイヤーだったんです。
山葵&町屋 へえ!
黒流 兄がハードロックも好きで、アニメもずっと観ていて……という環境だったので、その影響を受けて育ちました。英才教育というわけじゃないですけど(笑)。むしろそれが当たり前だと思っていて、小学校高学年くらいで「うちは普通の家庭とちょっと違うんだな」と気づきました(笑)。だから少しマニアックなところから入っていますね。また、格闘技も好きで。というのも、格闘技系のイベントには和太鼓をよく使っていただけるんですよね。それもあって親しみがあります。
――アニメも格闘技も、幼いころから身近にあったんですね。
黒流 そうなんです。で、二番目の兄貴は同じ太鼓打ちなんですよね。『NARUTO -ナルト-』の劇伴などに参加しているんです。『範馬刃牙』はTeam-MAXさんが劇伴を作られているんですけども、実は和太鼓を叩いているのが二番目の兄貴で。今回初めての共演になり、個人的には感慨深いです。……と、そんな感じの環境だったので、アニメ、ロック、格闘技は、自分が何もしなくても、そっちのほうからどんどん来るという状態でしたね。
――お話を伺っていると、『範馬刃牙』のオープニングテーマを担当することになったのも、なんだか運命的というか。
黒流 みんなテンション上がってましたね。
町屋 メンバーの中でも特に『刃牙』が好きなのは我々3人なので、楽屋でも『刃牙』の話で盛り上がってて……。
山葵 「スピンオフのあれ見た?」とか。
黒流 「いつかトランプちぎりたいな」とか(『刃牙』シリーズ登場人物・花山 薫のエピソード)。
町屋 そうそう(笑)。本編だけではなくスピンオフもあるので、色々な楽しみ方ができるんですよね。僕も今はスピンオフの異世界転生(『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』)を読んでいます。
――では、アルバム『I vs I』について教えてください。本作はいつくらいから準備されていたんですか?
町屋 既存曲でいえば一昨年ぐらいかな?「生命のアリア」(TVアニメ「MARS RED」のオープニングテーマ)は一昨年の年末には納品していて。実は『範馬刃牙』のオープニングテーマの「The Beast」も1年前くらいには納品しているんです。
山葵 「愛に誉れ」「修羅ノ義」(「義風堂々!!」シリーズ第3弾「スマパチ義風堂々!!~兼続と慶次~3」のテーマソング)も早かったですね。1年半前くらいか。
――そう考えると幅広い時期に作られていたんですね。新曲に関しては最近?
町屋 そうですね。3月から準備をはじめ、4月の半ばから1ヵ月半かけてレコーディングをしていました。時期がばらけたものを曲によってはアルバムミックスして1枚の作品として成立するように作り直しているので、我々も新鮮な気持ちで聴けています。
――まさに通しで聴いたときに、これまで聴いてた曲が別の響きや輝きを持ったかのような新鮮さがありました。
町屋 結構色々変えてるんですよ。例えば「Starlight」(フジテレビ系月9ドラマ「イチケイのカラス」主題歌)は、シンセの音が結構大きくて和楽器は聴こえづらい曲だったんですけど、そこのバランスを反転しているんです。かつ、その前にある「Interlude」で和楽器にフィーチャーしているので、その流れで聴くと和楽器に耳がいくように仕掛けています。聴き込めば聴き込むほど色んな音が聴こえてくると思うので、長く楽しめるアルバムになってると思います。
――そして、アルバムはタイトル通り「戦い」がテーマです。
町屋 今回のタイアップ全般に言えることなのですが、我々に依頼がくるものには“勢いのあるロックで、和物”というものが多くて。例えば、戦闘シーンの音楽やバトルモノのオープニング……そういうものが多いので、アルバムをコンセプチュアルにしようと思ったときに、共通してるテーマとして「戦い」が出てきました。緩急を出すために、後半はその戦いのあとという形で、希望が開けていくようなイメージです。
――「戦い」は和楽器バンドにとっても大事なテーマのように思います。
町屋 そうですね。我々の歴史上、ずっと戦ってきているので(笑)。「戦い」って、多分和楽器バンドに合っていて、かつ求められやすいテーマだと思うんですよね。一番ありふれたテーマに対して、真っ向勝負で向き合う作品になってます。
黒流 コロナ禍で最初に横浜アリーナでライブ(2020年8月“真夏の大新年会2020 天球の架け橋”)をやらせていただいたときも、ものすごく戦っていました。あのときの空気感って、未だに忘れられなくて。「業界全体を止めちゃいけない」という使命感の中で、それぞれが挑んでいました。それと、和楽器バンド自体が、ロックバンドと和楽器が一緒になった唯一無二の存在なので先駆者がいない。道なき道を掻き分けて、ずっと戦ってきたんですよね。最初の頃はそれこそ色々なご意見もいただきましたが、9年間戦い続けてきたからこそ、様々な方に認めていただけています。このタイミングで戦いをテーマにしたアルバムを出すというのは、僕らにとっても必要なことだったのかなと。
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