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REPORT

2023.07.12

デビュー20年を記念した自身最大規模での“アニメ縛り”、そこで見たのはFLOWが歩んだ険しくも楽しい幸せな道のり――。

デビュー20年を記念した自身最大規模での“アニメ縛り”、そこで見たのはFLOWが歩んだ険しくも楽しい幸せな道のり――。

2003年7月2日。シングル「ブラスター」でメジャーデビューを果たしたFLOW。あれから20年。2023年7月2日に彼らは、デビュー20周年を迎えた。そんな記念すべき日の前日である7月1日、彼らの名を遠く海外にまで轟かせたアニメソングを引っ提げてアニメタイアップ曲だけでライブを展開する“アニメ縛り”を、実に3年ぶりに、しかもバンド史上最大規模の会場で開催。この日のために長い時間をかけ、綿密な準備を進めてきたFLOW。これまで関わってきた作品で共に歩んできたゲストや盟友も駆けつけ、丸1日をかけてファンを楽しませた。彼らがこのフェスを通して届けたかったものとは――。

TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY eri shibata、MASANORI FUJIKAWA

FLOWが作り上げたFLOWによるアニメコンベンション!?

午前11時にオープンとなった幕張メッセ国際展示場。ライブ会場の開場時間を前に、サブステージではアニソンDJとしてお馴染み、DJシーザーがFLOWの楽曲をはじめとした様々なアニメの人気曲をプレイしていた。まだ午前中ながら、会場は完全にアニクラ化。フロアに集ったオーディエンスが思い思いに手に持つペンライトを輝かせ、響く楽曲に声を合わせ、時にチャントを入れながら楽しんだ。会場にはほかに射的などの出店をはじめ、フェス飯の屋台が並ぶスペースも設置され、この日1日をFLOWとアニメと共に楽しめるフェス仕様となっていた。
DJのあとにステージに現れたのはアニメソングの有識者たち。「クリエイターズトーク」と題された時間に登壇したのは日本が誇るアニソンフェスの一柱・“Animelo Supper Live”のプロデューサーである齋藤P、日本のみならず海外でも活躍するアニソンDJのDJ和、内田真礼やClariSらを手がける音楽プロデューサーにして音楽評論家でもある冨田明宏、そしてFLOWのボーカル2人と高校のクラスメイトでもあったリスアニ!編集長・馬嶋 亮だ。ニッポン放送の吉田尚記アナウンサー(酔ったTAKEに遭遇し「MCやって」とオファーされたのだとか!)を司会に迎えてのトークセッションが開幕。後方のスクリーンにお題が映し出され、近代のアニソンをつぶさに見続けてきた彼らが想いを放ち合う。そのトークを見るために、ステージ前は多くの観客が集結した。「FLOWデビュー2003年以前のアニソンとその後のアニソン」「バンドサウンドとアニソンの歴史」とお題が出れば、2005年に初開催となった“アニサマ”の立ち上げ、2010年には「リスアニ!」が創刊時のことやアニクラの台頭、世間に認知されるようになっていったアニソンの軌跡など、それぞれの立場や見識からとても興味深い話が飛び出す。その様子はまるで海外で開催しているアニメコンベンションのようだった。FLOWが海外のアニメコンベンションに初めて出向いたのはアメリカ・ダラスの“AnimeFest 2006”。近年、海外でのアニメコンベンションは各地で活発に開催され、FLOWも数多く参加。そんなイベントを彷彿とさせるサブステージだ。

有識者たちのトークに続いたのは「カラオケFLOWグランプリ」の決勝。今年4月の肉フェス2023会場内で行われた予選を勝ち残った3名が出場し、FLOWソングを聴かせると、フロアではペンライトが揺れた。このフェスに出店していたWEB3×AI×アニメという共創型アニメスタジオ・ZEROアニメーションによるトークのあとにステージを華やかに彩ったのは『コードギアス 反逆のルルーシュ』のキャラクターに扮したコスプレイヤーたちによるショーだった。国内外で人気を誇るコスプレイヤー・コノミアキラたちが見せたのは、海外のアニメコンベンション会場やアニメイベントで見られるコンセプチュアルなショー。FLOWが紡いできた『コードギアス 反逆のルルーシュ』の楽曲に合わせて、ダンスパフォーマンスで物語を魅せる。16年前からコスプレパフォーマンスをしてきたというコノミ。当時は冷ややかな視線にさらされてきたが、16年を経た今では多くの人たちの拍手を受けるまでとなったと話し、辛いときも支えてくれたFLOWの音楽への感謝の想いで作ったステージだと涙ながらに語ると、暖かな拍手が送られた。

続いてサブステージに上がったのは氏原ワタル(DOES)、YOU-TA(MADKID)、SHiNNOSUKE(ROOKiEZ is PUNK’D)、kevin mitsunaga(fhána)、熊谷和海(BURNOUT SYNDROMES)。ここからは数々のアニメタイアップを経験してきた“ロックバンド”のメンバーによるアーティストトークだ。「幼い頃に好きだったアニソン」からはじまり「タイアップで楽曲を提供するときの作り方のこだわり」「アニメタイアップをすることによってバンドにもたらされた変化」など、お題に対しての熱いトークセッションが繰り広げられた。『銀魂』『BLEACH』『デュラララ』『青の祓魔師』『テイルズ オブ』シリーズや『ハイキュー!!』など、錚々たる作品とのコラボで愛すべき楽曲を世に届けてきた彼ら。過去の名曲たちの話から「現代のアニソン」に至るまでのターニングポイントの話など、一瞬たりとも聞き逃すことのできないものだった。いよいよサブステージの終幕へ。ラストはメインMCを務めた吉田によるDJタイム。「これでもか!」とテンションのアガるセレクトで大歓声と歌声、会場を揺らすほどのジャンプに迎えられ、熱気と共にサブステージを締め括った。

アニメ×バンド!ダンサブルなロックンロールのコラボ曲で宴の幕が上がる!

観客がメインステージの前の座席に続々とついていく。アニメ縛り恒例のライブの注意事項をアナウンスする影ナレーションを今回担うのは『七つの大罪』の主人公・メリオダスを演じる声優・梶 裕貴だ。サプライズで響く声に、会場から歓声が沸く。梶としてしゃべっていたところに突然現れたメリオダス。そんなナレーションに誘われるようにフロアの照明が消え、“アニメ縛りフェス”の1曲目として響いたのは澤野弘之が手がけるアニメ『七つの大罪』のメインテーマ「Perfect Time」だ。ファンには馴染み深い1曲。フィドルのフレーズと共にIWASAKIのドラムとGOT’Sのベース、さらにボーカル部分はTAKEとGRANRODEOのe-ZUKAの2人による巧みなギタープレイで紡ぎ、これまで聴いたことのない躍動感が「Perfect Time」に生まれると、ステージ後方にスポットがあたる。浮かび上がったのはKOHSHI、KEIGO、そしてGRANRODEOのKISHOWだ。そのままライブは軽快な「7-seven-」へ。メリオダスたち七つの大罪が腰をツイストさせながら歌っていた映像が蘇る。「こりごりこりごりよ!」「ノリノリノリノリよ!」と会場が一体となって歌声を重ねれば、笑みを浮かべるステージ上のFLOW×GRANRODEO。アニメのEDテーマだったギターリフの競演で聴かせるアッパーチューンを、2バンド分の、3人のボーカルによるパワフルな歌声で響かせる。地を揺らすようなビートで始まった「Howling」は同じく『七つの大罪』のOPテーマ。大歓声はいつしか大きな歌声に。熱を帯びたシャウトにも満員のオーディエンスの声が加わり、スクリーンに映し出されるアニメのシーンもオーディエンスの熱を高めていく。

「我々の20周年にかこつけて、色んな人、(ゲストに)呼んじゃってますから!今宵もアニメ、縛らさせてもらいまーす!」とKEIGOの声がフロアにこだまし「騒ぎ倒す元気は出来ていますか!?」と煽ると「最後までブチ上がっていくぞ!」とKEIGOの声に続いて、KOHSHIのシャウトからグルーヴ感あるラウドロックのTVアニメ『べるぜバブ』OPテーマ「Hey!!!」が始まった。アタックの強いビートに「Hey!Come on!My Baby!」と歓声が乗ると、TVアニメ『ペルソナ~トリニティ・ソウル~』のOPテーマ「WORLD OF THE VOICE」へ。曇天のような仄暗さあるサウンドから一筋の光のような歌声が伸び、フロアの大合唱も重なる。2色のボーカルのユニゾンが美しいTVアニメ『バック・アロウ』のEDテーマ「United Sparrows」ではクラップの音が曲をその温もりで彩り、さらに「Oi!Oi!」のチャントで会場が揺れたTVアニメ『シャドウバース』のOPテーマ「新世界」では、どこまでも広がっていくようなKOHSHIとKEIGOのボーカルを堪能させた。

全身全霊でぶつかり合いながら魅せたのは、手に汗にぎる豪華コラボ!

ゲスト紹介のVTRはルーレットのような作りに。回転していた写真が止まったのは「バンドリ!ガールズバンドパーティー!」のバンド・Aftergrowの美竹 蘭とその声を担当する佐倉綾音の姿。湧き上がる大歓声の中、畳みかけるようなドラムとベースのビートがフロアを席捲し、佐倉が登場。FLOWとAftergrowのコラボ曲であり、ゲームで期間限定実装曲としてファンも聴き込んでいた「優勝 feat,Aftergrow」が鳴り出すと、骨太な美竹蘭の歌声がKEIGO、KOHSHIの歌と全力でぶつかり合い、フロアを大いに沸かせた。「Aftergrow、おじゃまします!」と佐倉。「改めてこの曲、やっとやれました」とKEIGOが笑顔で声をかける。2年前にレコーディングが行われたこの曲は「いつか(ライブで)やりたいですね」とFLOWから声を掛けられてはいたものの「絶対に社交辞令だ」と思っていたという佐倉は「呼んでいただけて嬉しい」と笑顔を見せる。AftergrowとFLOWのコラボということで、この日はAfterFLOWでのライブだと話す彼ら。せっかくなので、とAftergrowの曲「Y.O.L.O!!!!!」を聴かせる。「幕張!踊れー!」と佐倉の声に割れそうな歓声が沸くと、スクリーンに映し出されるAfterglowのライブと重なるように、ガールズバンドとしても荒々しいまでのエモーショナルなロックンロールが鳴り響いた。

佐倉がステージを降り、静かになったフロアにTVアニメ『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』の主人公・スレイとミクリオの声が響く。アニメ縛りならではの、キャラクターたちのタイトルコール。観客席を見て、興奮するスレイを微笑ましく見つめるミクリオが浮かんでくる。彼らの世界と幕張とを繋ぐ歌「風ノ唄」を会場一体で呼べば、ギターが鳴りだし、オーディエンスの「Wowow~!」の歌声が湧く。フロアはペンライトによって一斉に青に染められ、ケルティックなロックというFLOWの新境地を感じさせた1曲が会場を席捲していく。続けて攻撃力高い音が畳みかけるように迫りくるEDテーマ「INNOSENSE」だ。バトルシーンの臨場感やファンタジックな世界で巻き起こった出来事が、アニメ映像と共に思い出される一曲を、大合唱が支えた。

続くゲストアーティストの紹介映像で映し出されたのは影山ヒロノブ。その瞬間、天井を突き抜けるかと思うほどの歓声が沸いた。「歌おうぜー!」と叫ぶ影山。1989年に生まれ、FLOWによって2013年にカバーされた国民的アニメソング「CHA-LA HEAD-CHA-LA」の大合唱でライブはクライマックスの熱気に。フロアには7つの巨大ドラゴンボールが舞い上がり、オーディエンスの元気玉を集めたFLOWと影山のパワーと共に幕張の空に神龍を呼び出した……はず!さらに超豪華コラボのサプライズ。JAM PROJECTの名曲「SKILL」を、美竹蘭こと佐倉綾音とGRANRODEOの2人を加えて、9人の大所帯バンドでかき鳴らしたのだ!「Motto! Motto!!」と絶叫にも近い声が会場全体に響く。幕張メッセ全体で遥かな大宇宙に光の矢を放ったのだった。

ロックバトルのようなステージが一瞬、静かになる。「私には大切なものがある……」と響く凛とした声。エウレカの声だ。スポットがあたり、そこに現れた名塚佳織がエウレカの想いを切々と紡ぐと、「約束しただろ?君を守るって」とレントンの声も届く。血潮のように赤く染まっていたフロアが一瞬にしてグリーンのライト一色の美しい光景に。そしてレントン役の三瓶由布子が客席へと「ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん!」とレントンの名言を叫ぶと、会場も共に叫ぶ。そして観客とエウレカ、レントンとで「I can fly!!」と絶叫すると、それを合図に鳴り出したのは「DAYS」!2005年のシングルはTVアニメ『交響詩篇エウレカセブン』の幕開けの1曲。彼らの物語は疾走感に溢れた爽快エレクトロロックで始まった。ライブはそのまま『エウレカセブンAO』のOPテーマで「DAYS」のオマージュも詰まった「ブレイブルー」へ。切なさ滲みながらも力強い歌がラウドなダンサブルチューンに軽やかに乗り、会場は高く飛ぶように手を挙げた。

次ページ:ルルーシュの登場で幕張はエリア11の一角に!? ギアスを飲み込み、宴を楽しめ!

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