――そしてTVアニメ第7話の劇中歌、古賀小春(CV:小森結梨)の初オリジナル曲「アイム・ア・リトル・プリンセス~お星さまにお願い~」も、チェルさんの作編曲でした。
渡部 小春に関しては、薫よりも前から意識をしていたところがあって。実は誕生日(4月1日)が一緒なんです。
――えっ!そうだったんですね。
渡部 ちょうど「私色ギフト」がTVアニメでオンエアされた頃に、きらりの誕生日(9月1日)があったので、おめでとうツイートをしたんですよ。それをきっかけに、自分の書いた曲を歌ってくれたアイドルの誕生日にはツイートするようになったのですが、そのときに色々調べていたら、自分と同じ誕生日のアイドルがいることに気付いたんですね。それで気になって深掘りするうちに、だんだん娘みたいに愛着が湧いてしまって……まあ、今では孫でもおかしくないくらいの年齢差になりましたけど(笑)。薫は2ヵ月に1回くらい遊びに来るまさに孫のような存在だとしたら、小春は一緒に育っていきたい感覚があるので、やっぱり娘なんですよね。自分の中での2人の位置づけとしては。
――今回の小春ソロ曲は、コンペではなくご指名だったのですか?
渡部 そうです。さっきお話した忘年会のとき、柏谷さんには薫と小春の曲を書きたいと話していたんですよ。よく覚えていたなあと思いましたが(笑)。
――この楽曲は劇中でも特殊な使われ方をして、アニメの描写に合わせてまるでミュージカルのように展開していましたが、どのように制作を進めたのでしょうか。
渡部 お話をいただいたときには脚本がほぼ出来上がっていて、楽曲自体の流れのようなものも、脚本家の方がキーになるワードをいくつか提示してくださっていたんです。それがA-A’-B-Cくらいに分かれていて、それを元に「尺はこのくらいの曲にしてください」というオーダーでした。
――普通の楽曲に比べるとかなり特殊なオーダーですね。
渡部 でも自分は劇伴作家でもあるので、そういう作業は慣れていたし、サウンドイメージも「ザ・ミュージカル」という方向で決まっていたので、悩むことはなかったですね。ただ、ミュージカルっぽさを出すために、例えばAとA’でメロを揃えたりせず、言葉を優先してメロディを作っていくという方法を取ったので、まず劇中で使われる部分の歌詞を書いてもらって、それに合わせてメロディを作りました。で、歌詞に関しても、字数を揃えたりせず、なるべくばらける感じにしてほしいと、自分からお願いしました。
――そうすることによって、メロディがリフレインするのではない、ミュージカル的な楽曲になるようにしたわけですね。
渡部 ただ、その後、尺の関係もあってTVサイズは色々カットされたので、その辺りの工夫はフルサイズのバージョンを聴いてもらえるとわかると思います。
――そもそもTVサイズとフルバージョンでは、楽曲のテンポ感も少し違ったりしますよね。
渡部 曲の頭のところですね。最初のサビで入るところは、まず脚本に基づいて歌詞を書いてもらって、それに曲を付けたのですが、その後に、アニメでは冒頭でお母さんと一緒にアカペラで歌う、という演出になったんです。なのでフルバージョンは、曲の頭にサビが付いていて、TVサイズとはまったく違うものになりました。
――フルバージョンのものを聴くと、2番以降の歌詞では迷子になるような展開も入っているので、アニメで描かれた物語の流れとも連動するようなところがありますよね。
渡部 まずテレビ用のワンコーラスが完成したあとに、フルサイズを作り始めたのですが、今度は自分が第7話で流れることを意識して、「こういうパートを作りたい」という構成とサウンドの見本を作ったうえで、それを朝倉さんに渡して、脚本に沿った歌詞を書いてもらいました。迷子になるところと、雨が止むところは、メロディがない状態で歌詞を作ってもらって、それに合わせてメロディを作った感じです。「小春が好きな映画の曲」という位置づけの曲なのですが、そういうソロ曲は今までなかったパターンだったので、作っていて楽しかったですね。
――ちなみに小森さんのレコーディングには立ち会われたのでしょうか。
渡部 朝倉さんとは入れ違いになる感じで、後半のレコーディングから立ち会ったのですが、私が到着したときにはTVサイズのレコーディングはもう終了していました。ただ、苦労はされていましたね。「おねシン(お願い!シンデレラ)」が初めてのレコーディングだったらしいので。その後に「よりみちリトルスター」や「グッデイ・グッナイ」「Shine In The Sky☆」を含め、短期間の中で何曲も歌われていたので、初めての人には大変だったと思いますけど、よく頑張ってくれました。
――そしてTVアニメ最終回となる第12話の劇中歌として制作されたのが「キラメキ☆」。物語のクライマックス、U149がステージデビューするライブシーンで歌われた楽曲です。
渡部 これもコンペだったのですが、「よりみちリトルスター」を一曲入魂で制作しつつ、その合い間に「アイム・ア・リトル・プリンセス~お星さまにお願い~」の歌詞ができるのを待っていたくらいの時期に、「最終話ライブ曲のコンペがあります」というお話をいただいて、「え!?まだあったの?」と思って(苦笑)。「よりみちリトルスター」でここ何年か分のコンペに対する体力をつぎ込んでしまったところに、さらにもう1曲どうしても獲りたい曲があると。自分の身と心を立て直すのになかなか苦労しました。
――それでも絶対に書きたかったわけですね。楽曲のテーマとしては、どんなオーダーがあったのでしょうか?
渡部 このときは珍しく、監督から具体的なリファレンスの楽曲が示されていて。それを聴いたときに、これを「アイマス」でやるとしたら「マスピ(M@STERPIECE)」を使うしかないな、というようなイメージの楽曲だったんですよ、自分的には。そのときから自分の頭の中に「M@STERPIECE」しか鳴らなくなってしまって(苦笑)。それを拭い去って全然違うものを作ろうと思ってもどうにもならなかったので、3日目くらいに考え方を変えて、自分にとっての「M@STERPIECE」を作ろうと思ったんですね。別に似ちゃってもいいじゃんって思って。イントロが「M@STERPIECE」に寄せたものになっているんですけど、あのイントロが出来たときからスコン!と1コーラス出てきたんですよ。のちにAメロは変えちゃうんですけど、これはいけるな、と思った瞬間があって。あとでバックアップファイルを見ると、メモ書きみたいな感じでしたが、ほぼ3時間くらいで書いたみたいでした。
――そこから調整されて完成形に仕上げていったと。
渡部 はい。いわゆるサビ始まりでインパクトを出すやり方は避けたくて、でもいきなりAメロに入るだけだとインパクトが足りないので、最初に「よりみちリトルスター」のイントロのフレーズを歌う形にしました。最終回にちょっとリフレインで思い出してもらえたらいいなと思って。そうしたら、作詞の高瀬(愛虹)さんが、その場所に“キラキラ”という歌詞を当ててくれたんですよ。自分は元々、ここは「ラララ♪」とかでいいかなと思っていたんですけど。これはハマったと思って。
――“キラキラ”というワードはこの楽曲で象徴的に使われていますが、そういう経緯があったんですね。
渡部 今でこそサビに“キラキラ”がたくさん入っていますけど、実は高瀬さんの第1稿にはあまり入っていなくて。ただ最後のリフレインするサビのフックの部分に入っていた“キラキラ”がすごくキャッチーで心にすごく残ったので、「もっと“キラキラ”を入れたいんですけど、どうでしょう?」と提案したら、そこと同じメロディの部分はすべて“キラキラ”を入れてくれて。それで一気にインパクトが上がりましたね。最後のサビに入るところの転調も完全に「M@STERPIECE」そのままで。これで(コンペに)落ちたら、もうしょうがないと(笑)。
――歌詞もそうですが、楽曲自体もキラキラと煌めいている印象があって。やはりU149のメンバーがステージ上で輝いている姿をイメージして制作されたのでしょうか。
渡部 そうですね。コミックの「サマーライブ編」に、メンバー13人が並んで同じポーズを取っている絵があって、それが見開き2枚分の大きさなので本だと一度には見られないんですけど、それを繋いで一枚の絵にしてくれたものを、廾之さんが以前、ツイッターに上げていたんですね。その絵を(PCの)バックグランドにしながら曲を書いていました。
――めちゃくちゃいい話じゃないですか!この取材の時点ではまだTVアニメは放送中の段階ですが、ご自身としては大きな達成感も得られたのではないでしょうか。
渡部 達成感としては、第3芸能課のみんなが実際のステージで歌う曲を書けた喜びは相当大きかったですね。ぶっちゃけ、俊龍くんが「ドレミファクトリー!」(2018年発売)を書くと聞いたときに、ものすごく悔しかった思い出があるので(笑)。とにかく自分としては第3芸能課の全体曲を書きたいとずっと思っていたので、今回のアニメでは2曲も使っていただけてありがたかったです。薫と小春のソロは、書ける状況になったら書かせてもらえるんじゃないかと思っていましたが、U149に関してはアニメ化されるまで、作るかどうかもわからない状況だったわけで。そこに2曲も書かせてもらえることになったのはちょっと出来すぎだし、これで運をすべて使い果たしたんじゃないかなと思っています。
――それだけ情熱をかけてコンペに臨んだ結果だと思いますし、逆に言うと、それほどの気力を捧げることのできる作品に出会えたということですよね。
渡部 それは嬉しいですよね。自分が好きなマンガのアニメ化に携われることは人生の中でも多くないでしょうし。ツイッターにも書きましたけど、今回は自分の作曲家人生にとっての最後の花道だと思っていて。最後に1つ大きな花を添えてもらった気持ちでいっぱいなんですよね。この記事が載るのは最終回が終わったあとになりますけど、多分、最終回が終わったあとの自分は干からびて何にも残らないんじゃないかと思っていて(笑)。このあと自分は何をして生きていくんだろうって感じです。
――いやいや!「U149」もコミックを含めてまだまだ展開があると思いますし、チェルさんには今後もたくさんの楽曲を書いてほしいです。
渡部 まだソロ曲のない(「U149」の)アイドルが4人いますしね。自分はこの先の計画をまったく知らないですけど、「U149」の曲はできるだけ書かせていただけたら嬉しいですね。それと自分は作曲家というよりもキーボード弾きの意識が強いので、もし「U149」のライブがあり、生バンドで行われるならば、何かしら弾かせてもらえると嬉しいです。作曲で人の楽曲を聴いて嫉妬することはあまりないのですが、シンデレラバンド(※「アイドルマスターシンデレラガールズ」のライブをサポートするスペシャルバンド)が発表されたときには、タッキー(滝澤俊輔/キーボード担当)くんに相当嫉妬したので(笑)。
●リリース情報
「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 01 Shine In The Sky☆」
発売中
品番:COCC-18121
価格:¥1,650(税込)
収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/COCC-18121.html
配信URL
https://imas-u149.lnk.to/Shine-In-The-Sky
「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 02 よりみちリトルスター」
発売中
品番:COCC-18122
価格:¥1,760(税込)
収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/COCC-18122.html
配信URL
https://imas-u149.lnk.to/Yorimichi-LittleStar
「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 03 Nightwear」
発売中
品番:COCC-18123
価格:¥1,650 (税込)
収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/COCC-18123.html
配信URL
https://imas-u149.lnk.to/Nightwear
「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 04 ゼロトゥワン!!」
発売中
品番:COCC-18124
価格:¥1,760(税込)
収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/COCC-18124.html
配信URL
https://imas-u149.lnk.to/Zero-to-One
「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 05 グッデイ・グッナイ」
発売中
品番:COCC-18125
価格:¥1,760(税込)
収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/u149music/#COCC-18125
配信URL
https://imas-u149.lnk.to/GoodDayGoodNight
「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149 ANIMATION MASTER 06 キラメキ☆」
2023年7月5日発売予定
品番:COCC-18126
価格:¥1,650(税込)
収録詳細
https://columbia.jp/idolmaster/u149music/#COCC-18126
●TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」アイドル別プレイリスト
https://lit.link/U149PLAYLIST
●作品情報
TV アニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」
原作:バンダイナムコエンターテインメント
原案:「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」 廾之(サイコミ連載)
【スタッフ】
監督:岡本学
副監督:高嶋宏之
シリーズ構成:村山沖
アニメーションキャラクターデザイン:井川典恵
コンセプトアート:大久保錦一
デザインワークス:
野田 猛 小田崎恵子 中村倫子 渡部尭皓 槙田路子
美術設定:曽野由大
高橋武之 金平和茂
美術監督:井上一宏
色彩設計:土居真紀子
3DCG:石川寛貢 榊正宗 神谷宣幸
撮影監督:関谷能弘
編集:三嶋章紀
音響監督:岡本学
音楽:宮崎誠 川田瑠夏 睦月周平
音楽制作:日本コロムビア
アニメーション制作:CygamesPictures
【キャスト】
橘ありす:佐藤亜美菜
櫻井桃華:照井春佳
赤城みりあ :黒沢ともよ
的場梨沙:集貝はな
結城晴:小市眞琴
佐々木千枝:今井麻夏
龍崎薫:春瀬なつみ
市原仁奈:久野美咲
古賀小春:小森結梨
プロデューサー:米内佑希
©Bandai Namco Entertainment Inc. /PROJECT U149
TV アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』
公式HP
https://cinderella-u149-anime.idolmaster-official.jp/
公式Twitter
https://twitter.com/u149_anime
渡部チェル 公式Twitter
https://twitter.com/cher_vOwO
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