INTERVIEW
2023.06.28
RAISE A SUILENによる11枚目のシングル「-N-E-M-E-S-I-S-」を聴いて驚かされたのは、終盤の歌詞の“覚えたか? 名は “RAISE A SUILEN”と”だ。本作には過去曲の英語詞セルフカバーも収録されており、これらも併せて彼女たちが世界を視野にして改めて高らかに名乗りを上げる、RAS王道の楽曲とシングル。これらの楽曲へどのように取り組んだのか、直近のライブの手応えとその先の想いとともに話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉
PHOTOGRAPHY BY 小島マサヒロ
――まずは5月28日に開催された“RAISE A SUILEN LIVE 2023「EXCLAMATION HIGHLAND」”について教えてください。昨年にも同時期・同会場で“RAISE A SUILEN LIVE 2022「OVERKILL」”が行われましたが、今回の手応えはいかがでしたか?
紡木吏佐 前回と比べて大きく違ったのが、お客さんの声出しが解禁されたことでした。やっとみんなの声を聞きながらライブができる嬉しさが爆発したライブでしたね。
Raychell やっぱり全然違いますね。かつての場に帰ってきたようなライブだったな、と歌ったり弾いたりしながら感慨深く思いました。コロナ禍に入ってからは配信だったり入場者数を半分に減らしたりしながらの開催だったので、ファンの方に声を出していただけることが、私達にとってどれだけ大きなものだったのかを改めて実感したライブでした。来てくれたみんなをもっともっと楽しませたいとか、好きになってもらいたいという気持ちが自然と湧き上がりましたね。
――紡木さんはDJとして煽ったりして盛り上げる役割もありますしね。
紡木 そうなんです。配信ライブのときはカメラに向かって煽るわけで、ちゃんと届いているのか不安だったのですが、現在は直接振りを伝えることができますし、それを皆さんが真似してくださるんです。こんなにもみんなが1つになれる瞬間を目の当たりにできるのは、やはりお客さんがいてこそです。今回はお客さんの声出しをありきとした初披露の曲もありまして、私自身もそれを見ながら動いたり煽ってみたりするパフォーマンスもありました。そうした皆さんからの発信を受けて私も動けた部分があって、楽しかったですね。
Raychell 私達のライブは後ろのモニターに歌詞が出るので、お客さんもそれを追って一緒に歌ってくれたりするんです。今まではメンバーとともにコーラス部分を歌っていただいていたのですが、今回はメインの部分も一緒に歌ってくれていて、それがイヤモニ越しに聞こえてきたのが嬉しかったです。
――屋外でのライブとなりましたが、開けたところでのライブではパフォーマンスにどんな影響をもたらしますか?
紡木 RAISE A SUILEN(以下、RAS)の野外ライブは毎回ドンピシャで雨が降るんですよ(笑)。今回もそうでした。でも逆にそれがファンの皆さんの中で「RASっぽいよね」とまで言われるようになりまして、むしろ雨を望むという(笑)。今回ゲストアクトにRoseliaさんが来てくださったんですけど、そのときは降っていなかったのに、RASが出演した瞬間にまた雨。ファンの皆さんは、それがむしろご褒美みたいな感じでした(笑)。
Raychell もはや天候すらもRASの演出になっていると言えますね(笑)。昨年は、雨が降ったあとに虹が出まして、それもまた素敵な演出となりました。ライティングや舞台チームのスタッフさんたちも上手く調整してくださって、とても素敵な演出をしてくださって。雨のときと曇りのときでは音の抜け感や響き方も異なるので、音響チームと相談して音の当てているポジションを変えています。それらも含め、屋外の自然もRASのライブの一部として取り入れていますし、屋内の場合は天井の高さや奥行き、暗幕の有無など環境にこだわった音作りをライブでは行なっています。
――では新作の表題曲「-N-E-M-E-S-I-S-」についてお話を伺わせてください。楽曲を聴いてどのように感じましたか?
Raychell まず、メロディの印象が強かったですね。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビで歌い上げるメロが全然違うけれども、その中に起承転結がしっかりとあるんです。Aメロは異国情緒溢れる中東的なメロディで、そんなサウンドは今までのRASにはありませんでしたし、個人的にも好みなエッセンスでした。そこからBメロに入ると、RASらしい切なさや情緒的な思いが溢れ込み上げてくるようなメロと盛り上がりがあります。そこの歌にかぶせてのラップでまたアガっていく感じがすごく好きですし、サビでまた疾走感が出てきて、最後は“打ち立てるのさ 金字塔を”と叫ぶ。楽曲のLow感やメロの流れが綺麗で、聴いたときにすごくテンションが上がって、早くレコーディングしたいなと思いました。
紡木 第一印象として、RASド真ん中のメロディやサウンドらしさを感じました。最近のRASは「灼熱 Bonfire!」のように少しずつ新しいジャンルを開拓しつつありましたが、今回は本当ストレートなRASというか、歌詞にもある通り、もうこれぞRAS!みたいな感じで、1曲でRASのことが全部詰まっています。Raychellさんのドシッとしたボーカルも入っていて疾走感のあるメロディがあり、ラップもある。初めて聴く方に「RASってどんなバンド?」と尋ねられたときにオススメしたい楽曲トップ5に入る、格好良い曲だなと思いました。
――冒頭のラップの部分が、もうすごい歌詞ですよね。
紡木 歌詞の中身もすごいし、畳み掛けるラップがすご過ぎてたくさん練習しました。
――紡木さんはRASでラップを歌うときにはどんな点に注意を払っていますか?
紡木 自分の中でラップをラップだと思って歌ってはいないかもしれません。どちらかというと、「チュチュ(役)としてのセリフ」という認識で、彼女がリズムに乗ってこの言葉を吐き捨ててるみたいな感じ。なので、セリフだと思うと自ずと言葉が立ってきたり、そういう強弱が出てくるのかなと思います。
――紡木さんはレコーディングやライブのたびにチュチュを宿しているわけですね。そのあたり、演者とステージに立つ人が同じである「BanG Dream!」というコンテンツならではですね。
紡木 そうですね。私はチュチュだと思って演っていますし、チュチュという子がいなかったら、こうしたパフォーマンスは一切できていなかったと思います。ラップ然り、煽りのパフォーマンス然り。彼女がいるから今の私がいると言っても過言ではないですね。
――Raychellさんが主線を歌ううえでのポイントや歌詞でお好きな部分を教えてください。
Raychell この曲は、どちらかといえばラップがメインになっています。それに比べれば歌のほうは、どちらかというとゆったりとしている感じなので、言葉を一語一句大事にして、丁寧にしっかりと伝わるように歌わせていただきました。ラップで好きな部分は、“唯一無二のキラーワード 覚えたか? 名は “RAISE A SUILEN” と さあ! It’s time for the battle!!”の部分です。やっぱり自分たちの名前が歌詞に出てくるのはすごくエモいですし、入れていただいてありがとうございます!という感じです。ただ、吏佐ちゃんはこの部分、飛び抜けて難しかっただろうなぁと思いました。私もレイヤとしてレコーディングするうえで、このチュチュの煽りや高揚感に負けないように歌うにはどうすればいいかとスイッチを入れて臨みました。
――こういう強い歌詞を訴えかけるときには、どういうふうに伝えていますか?
Raychell この歌の中に“弱さは強さと知るたび 世界は色を与えた”というフレーズがあります。これを読んだときに、強さだけではなくその裏にある弱さの部分をすごく感じたんです。やっぱり、弱さを知ってるからこそ、強くいることができる。それはRASだけではなく、Raychellという1人の人間としてもそう感じているんです。RASってみんな弱い部分を持っていて、弱さを知ってる5人だからこそ、揃って奏でたときに強くなれる。そういう意味合いも込められているんじゃないかなって。聴いてくださる皆さんにとっても、弱さというのはどちらかといえば後ろめたかったり隠したい部分かと思いますが、逆にそれを愛おしく思ってポジティブやプラスの方に考えていってほしいなという熱を込めて歌いました。「弱くたっていいんだよ!」みたいな感じで背中を押せるようなものにしたいなと思っていますね。(演じる)レイヤは高校生なんですけど、姉さん気質みたいな部分もあるので、そういう想いを届けたいなと歌っていました。
紡木 今回のライブは私の弱いところばかりが出てしまって。2曲目の「DEAD HEAT BEAT」のときに盛大に噛み散らかして、怖くて怖くて怖すぎて、突然、頭がスンってなってしまいました。以降、ラップで噛むことはなかったのですがMCでは噛みまくって、思い出しただけでも涙が出ます……。ライブしてる私でさえこんな弱いんだから、みんなは全然大丈夫ですよ。いやはや、精進いたします。
――でも、そういった弱さをインタビューでカミングアウトできるというのはバンドとしての成熟を感じますね。そこも含めて、歌詞の中に「唯一無二のキラーワード 覚えたか? 名は “RAISE A SUILEN” と」といった、バンドとしての名乗りが盛り込まれていたのかなと思います。
紡木 それは間違いないですね。
Raychell 「BanG Dream!」ゲーム中でのストーリーやアニメの中で、RASのプロデューサーを務めているチュチュは負けん気が強くて、そういう個性も入っていると思いますし、レイヤも普段話してるときは結構おっとりしてるんですけど、ライブになると人格が変わったようにスイッチが入ったりします。そういう点でリアルバンドの私達に反映されていたり、成立しているのかなと思います。
SHARE