INTERVIEW
2023.06.23
ギタリスト・トラックメイカーのSera、そして作詞・メロディメイカーのかっさんの2人組ユニット・Neko Hackerが担当している、TVアニメ『トニカクカワイイ(シーズン2)』のOPテーマ「刹那の誓い(feat. 由崎司)」。シーズン1のOPテーマであるYunomiの「恋のうた(feat. 由崎司)」の流れを引き継ぎつつ、テクニカルなギターフレーズを多用するなどNeko Hackerらしさを盛り込み、名曲に仕立て上げている。TVアニメ『トニカクカワイイ』や楽曲について、そして今回も見事なボーカルを披露した由崎 司役の鬼頭明里の歌声について語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 塚越淳一
――「刹那の誓い(feat. 由崎司)」は、どのようなところから制作し始めたのでしょうか。
かっさん 直属の先輩であり、良くしてもらっていたYunomiさんがシーズン1のOPテーマを書かれていたので、アニメは観ていたんです。そこからお話をいただいて、改めて原作を読ませていただきました。実際に読んでみたら、まさかこんな話だったとは!という感じで!
――夫婦がいちゃいちゃしている話ではなく(笑)。
かっさん そうなんです(笑)。僕らの心持ちとしてはシーズン2もそういういちゃいちゃした感じなんだろうなと思って打ち合わせに臨んだんですけど、「人はなぜ結婚するのか」「結婚とは何かを突き詰めてください」みたいな話で……。
Sera 前面には出さないけれど、原作にはそういう裏テーマがありますと言われたんです。
かっさん しかもリファレンス(参照曲)で出していただいたのが、僕らの曲の中でもマイナーな「命(仮歌)」という曲だったんです。それは、僕らが主にやっているかわいくてポップな路線ではなくちょっと攻めた楽曲だったので、驚きましたね。
Sera でもそれは嬉しいことでもあって。そんなに聴いてくれている方からオファーしていただけていることが嬉しすぎて、ぶち上がっていたんです(笑)。この曲がリファレンスとして上がってくるのは初めてだ!って。どマイナー曲だったので、作っていて良かったと思いました。
かっさん 「そのNeko Hackerが欲しい」と言われたことが一番嬉しかったポイントかもしれないですね。
――タイアップ曲を作るときは、原作をしっかり読み込んでから作るのですか?
かっさん そうですね。結構読み込んで作りました。OPテーマが公開されたときに、ネタバレが多すぎるというコメントもあったのですが、内容的にはシーズン2から少しはみ出ているかもというところまで、原作からさらっている感じになります。
――それは歌詞よりも、映像の影響かもしれないですね。
かっさん 僕らも(絵コンテを担当している)畑 健二郎先生、やりすぎなのでは……!?って思いました(笑)。
Sera ただ、作った側としても原作ファンの方も意図がよくわかったと思うんですけど、アニメをシーズン1から観ている人には、どう観えているのかなという気はしましたね。
――ちなみに原作を読まれたときは、率直にどんな感想を持ちましたか?
かっさん タイミングとしては、裏テーマの話を聞いてから原作を読んだんです。でも、そのテーマも原作を読めば伝わる感じだったので、なるほど、いちゃいちゃしているところよりも、そちらにフォーカスした曲が求められているんだと感じましたね。ただ、そちらに寄り過ぎると、テーマ的に“トニカクカワイイ”ではなくなると思い、そこの塩梅は様子を見つつ作りました。なので、原作を読んだうえで、僕なりのテーマへの回答を歌詞に落とし込んだ感じではあります。
Sera 表面的には楽しいし、目を隠すくらい恥ずかしい感じでいちゃいちゃしているんですけど、人間関係の理想的な姿も描かれている感じがしたんです。登場人物同士が、どうお互いを思っていて、長い間関わってきていたというのが要所で出てきているんですよね。あとは主人公の司ちゃんがどんな想いで歩んできたのかなど、すごく深いなと思って読んでいました。
――ちなみに、お二人は最近結婚を発表されていますよね?(2022年11月3日)
かっさん はい、ちょうどこの曲を書いているくらいのタイミングくらいで。
Sera 書いてリリースするまでの間に、2人とも結婚したんです。
――では、結婚とは何かを考えるタイミングでもあったんですね。
Sera 多分この時期じゃないと、曲を書けていないかもしれない(笑)。因果がありますね。
――結婚するときは、「結婚とは何か」を考えますからね。
かっさん やっぱり人生の分岐点ですから。結婚するとなったときに『トニカクカワイイ』を読んで、やっぱり結婚って良いな!結婚しよう!って思う、みたいな(笑)。
Sera 結婚生活のバイブルやと思ってます!
――楽曲を書くにあたってリファレンスもあったとのことですが、シーズン1のOPテーマである「恋のうた(feat.由崎司)」も意識されているのかなと。この辺りについてはいかがですか?
かっさん そこは皆さんも感じてくれていたと思うんですけど、僕がメロディを作るにあたって意識していたのが、「シーズン1のほうが良かったな」とか「シーズン1と繋がりがないのが嫌だ」と言われない曲にしよう、ということだったんです。自分もアニメを観るときに、第1期の曲のほうが良かったなと思ってしまうことがあったので、それは絶対に思わせないぞ!というのがテーマとしてありました。で、その1つの手法が、シーズン1の曲の作り方をサンプリングみたいにして使うことで。Yunomiさんが直属の先輩ということもあり、作り方を見てきているというのもあるんですけど、早口になるところで「恋のうた」は、最終的に“恋だ”という文字にいくために韻を踏んでいるんですね。そのやり方を引っ張ってきて、僕たちは“出逢い”から、韻を踏んで広がっていく方法にしよう、と。だから、やり方やアイデアを借りて、自分なりに組み立てていくという作り方になりました。
――前クールの楽曲とどこかしらに繋がりがあるというのは、アニメファンとしても嬉しいですからね。
かっさん 僕らに依頼していただいた時点で、そこまで求められているのかなと思って。まったく異なるテイストの曲を作ってほしいのであれば、関係値のないところに頼まれると思うんです。Yunomiさんから僕らへの流れにしてくれたのは、そこも考えられていたんだと思います。
――出逢いが広がっていくというのも、作品に通じるところがありますね。
かっさん そうですね、特に歌詞は作品をすごく意識しています。歌詞を書くにあたって提出した資料があるんですけど、それには「原作のこのコマのここを使っています」みたいなことを書いたんです。セリフをそのまま借りていたり、このシーンをイメージして書いています、というのがわかるように。
――プレゼン資料みたいな感じですね。
かっさん そうですそうです。こういう意図で書いていますというのをしっかり伝えたいと思ったんですよね。
Sera でも曲を提出したときは、正直だいぶヒヤヒヤしていました。楽曲も、サビにいくところでボーカルがなくなり、ギターだけ弾いている感じだったので、楽曲として、アニソンとして成立しているのか?っていうところもあったから、震えていました(笑)。
――たしかに。でも「恋のうた」もアニソンとしてはかなりの変化球でしたし。
かっさん やっぱり先駆者がいたというのは大きい。
Sera Yunomiさんのでかすぎる背中と、制作も好き勝手やってくださいという感じでいてくれたので、そこはすごくやりやすかったです。
かっさん でも本当に構成はかなりトリッキーなんですよ。Seraさんが構成を作ることが多いんですけど、サビがどこだかわからないようにしようって話をしていて、一番気持ちが良いところでギターが鳴るんです(笑)。
Sera 89秒の中で、どこに何を持ってくるのかだけを考えて組み立てたんです。最初静かに始まって、ここや!ってところでボーカルを抜いてギターを入れる。それに続いてサビがくるようにしようという仕組みから考えて。
――ギターが鳴るところでタイトルが出るという。シーズン1に引き続き、中盤でタイトルが出るのは新鮮でした。シーズン1はEDMっぽいサウンドでしたが、今回ギターをフィーチャーした理由はあるのですか?
Sera 大きいのは、最初のリファレンスに「ギターは必ず弾いてください」と書いてあったからで。
かっさん それもめちゃめちゃ嬉しかったです。
Sera まず、「ギター弾いていいんや!」と思いつつ(笑)、ダンスミュージックみたいなものとJ-POPらしい歌心とギターというのがセットで僕らの音楽性だと思っているので、もちろん必ずギターは入れようと思っていました。
――結果的に、ギターがかなり目立つ音楽になったのですね。
Sera メタルとかプログレッシブみたいな、先進的なジャンルで使われるギターフレーズも入れているんです。タッピングとかも駆使しているし、何だこれ?みたいなフレーズを、アニソンを通じて皆さんに知ってもらいたかったんです。ギターってこんな弾き方があるんだよ!って。
かっさん プログレの布教をしたかったんだ。
Sera あと、メタルの布教をアニソンを使ってしました(笑)。意地でも簡単なことはしない!と思って。僕、好きなアニソンがあるとコピーするのが好きだったんですよ。今回もやってくれたら嬉しいなって思いつつ、自分でも上手く弾けないようなフレーズだからできるのかな?って思ったら、意外とみんな弾いてくれていましたね。
――Seraさん自身がギターを弾いている動画を挙げていましたが、ぜひフルで、途中のそれこそプログレみたいなギターソロを弾いてほしいんですけど……。
Sera いやいや、フルはもう弾けないっす(笑)。あれもアニソン尺からフル尺を聴いたときにびっくりさせたかったんですよね。まさか1サビが終わったあとにこんな訳のわからん展開になろうとは誰も思ってないだろう!って。
――そこのギターは、音色も含めてすごく良かったです。
Sera あえてのクリーンなサウンドで、それこそタッピングとか速弾きを入れたり、テクニカルかつ情熱的な感じで弾きました。実現は……頑張ったらできるかもしれないけど、どう弾いたかもすでに覚えていなくて(笑)。
かっさん そこはぜひライブで見てください!
――最前列で、ギターキッズが見ているかもしれないですね。
Sera プレッシャーやわ。お手柔らかにお願いします(笑)。
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